あすか製薬ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

あすか製薬ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のあすか製薬ホールディングスは、産婦人科や甲状腺領域に強みを持つ医療用医薬品事業を中核に、アニマルヘルス事業や海外事業も展開しています。2025年3月期は主力製品の伸長により増収となりましたが、研究開発費の増加や特別利益の反動減等により減益となりました。


※本記事は、あすか製薬ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第4期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. あすか製薬ホールディングスってどんな会社?


医療用医薬品事業を中核に、アニマルヘルスや検査事業を展開する持株会社です。産婦人科領域のスペシャリティファーマとして知られています。

(1) 会社概要


1920年に前身となる帝国社臓器薬研究所が創設され、2005年にグレラン製薬との合併によりあすか製薬へ商号変更しました。2021年に単独株式移転により持株会社あすか製薬ホールディングスを設立し、東証一部(現プライム)に上場しました。2025年にはベトナムの製薬企業を連結子会社化し、海外事業を本格化させています。

同社グループの従業員数は連結1,632名、単体80名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は投資ファンド、第3位は大手医薬品メーカーの武田薬品工業です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.40%
NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC 8.33%
武田薬品工業株式会社 7.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名、計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は山口隆氏です。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
山口  隆 取締役社長(代表取締役) 1978年あすか製薬入社。同社取締役、社長を経て、2021年より現職。あすか製薬代表取締役会長も兼務。
丸尾 篤嗣 専務取締役(代表取締役) 1981年三菱銀行入行。あすか製薬専務、代表取締役専務等を経て、2023年より現職(サステナビリティ担当)。あすか製薬取締役副会長も兼務。
山口 惣大 専務取締役(代表取締役) 2008年日立製作所入社。あすか製薬常務、同社社長等を経て、2021年より現職。あすか製薬代表取締役社長も兼務。
森 麻衣子 取締役常務執行役員 1987年あすか製薬入社。同社信頼性保証本部長、執行役員等を経て、2022年より現職。あすか製薬取締役常務執行役員も兼務。
山口 文豊 取締役常務執行役員 2011年あすか製薬入社。同社執行役員、あすかアニマルヘルス社長等を経て、2022年より現職。


社外取締役は、吉村泰典(元日本産科婦人科学会理事長)、粟林稔(元日本オムニグロー社長)、榎戸康二(元パナソニック代表取締役専務)、苅田香苗(杏林大学医学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」、「アニマルヘルス事業」、「海外事業」および「その他」事業を展開しています。

**(1) 医薬品事業**
主に医療用医薬品の製造・販売を行っており、内科、産婦人科、泌尿器科の3分野に注力しています。特に産婦人科領域ではスペシャリティファーマとして、子宮筋腫治療剤や月経困難症治療剤などの製品を提供しています。

収益は、医療機関や薬局等への医薬品販売から得ています。運営は主にあすか製薬が行っています。

**(2) アニマルヘルス事業**
動物用医薬品や飼料添加物等の製造・販売を行っています。畜産動物向けの製品に加え、コンパニオンアニマル(ペット)向けの製品開発にも取り組んでいます。

収益は、畜産農家や動物病院等への製品販売から得ています。運営は主にあすかアニマルヘルスが行っています。

**(3) 海外事業**
海外において医療用医薬品の製造・販売を行っています。特に東南アジア市場に着目し、現地の製薬企業との協業を通じて事業基盤の拡大を図っています。

収益は、海外市場での医薬品販売から得ています。運営はHa Tay Pharmaceutical Joint Stock Company等が行っています。

**(4) その他事業**
臨床検査事業および医療機器事業等を行っています。ステロイドホルモン測定技術を応用した検査キットの開発・販売など、ヘルスケア関連のビジネスを展開しています。

収益は、検査受託や製品販売等から得ています。運営は主に株式会社あすか製薬メディカル等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は主力製品の伸長により増加傾向にありますが、経常利益は変動が見られます。当期は研究開発費の増加等により利益率が低下しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 566億円 605億円 628億円 641億円
経常利益 49億円 52億円 65億円 51億円
利益率(%) 8.6% 8.7% 10.4% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 6億円 25億円 32億円

(2) 損益計算書


直近2期間では売上高、売上総利益ともに増加しましたが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少しました。売上総利益率は高い水準を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 628億円 641億円
売上総利益 307億円 313億円
売上総利益率(%) 48.8% 48.9%
営業利益 65億円 53億円
営業利益率(%) 10.3% 8.3%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が70億円(構成比27%)、運送保管料が64億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


医薬品事業は薬価改定の影響を受けつつも主力製品が伸長し増収となりましたが、研究開発費の増加等により減益となりました。アニマルヘルス事業は増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
医薬品事業 560億円 567億円
アニマルヘルス事業 67億円 72億円
その他 2億円 2億円
連結(合計) 628億円 641億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

あすか製薬ホールディングスでは、営業活動により安定的に資金を生み出しており、事業活動の基盤を強化しています。一方で、投資活動では積極的な設備投資やM&A等により、将来の成長に向けた投資を行っていることがうかがえます。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払い等を通じて、財務基盤の健全化と株主還元に努めていると考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 15億円 25億円
投資CF 17億円 -61億円
財務CF -39億円 -30億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「先端の創薬を通じて人々の健康と明日の社会に貢献する」という経営理念を掲げています。医療用医薬品事業を中核に、アニマルヘルス事業や検査事業などの医療関連ビジネスを通じ、「トータルヘルスケアカンパニー」として社会から信頼される会社を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社会からの信頼を得る会社であり続けるために、信頼性を重視する組織風土の醸成とコンプライアンスの徹底を重視しています。生命関連企業としての責任を果たし、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた活動を推進することで、豊かな社会の実現への貢献を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは2021年4月から2026年3月末までの中期経営計画を策定しています。最終年度である2025年度の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:700億円
* 営業利益率:8%
* 自己資本当期純利益率(ROE):8%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「スペシャリティファーマを基盤とするトータルヘルスケアカンパニー」の実現に向け、産婦人科領域等のスペシャリティ領域の強化、オープンイノベーションによる新薬創出、アジアを中心とした海外事業の展開に取り組んでいます。また、検査事業やアニマルヘルス事業の強化、IT活用による業務効率化、人材育成にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、成長戦略を実現するための人材育成を掲げています。新規事業や環境変化に対応できる人材の育成・獲得と、女性やシニアなど多様な人材が活躍できる環境づくりを目標とし、従業員のスキルや能力の最大化に取り組んでいます。自律的な学びを支援する教育研修体系の整備も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.2歳 18.7年 9,654,636円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.3%
男女賃金差異(正規) 74.3%
男女賃金差異(非正規) 66.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員に占める女性比率(33.5%)、女性管理職候補比率(20.0%)、キャリア採用比率(69.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 研究開発に関するリスク


医薬品の研究開発には多額の費用と長い期間を要しますが、新製品や新技術に結実する確率は高くありません。期待した有効性が証明できない場合や安全性の問題が明らかになった場合、開発を断念せざるを得ず、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 副作用に関するリスク


医薬品は厳格な審査を経て承認されますが、市販後に予期せぬ副作用が発見される可能性があります。その場合、製品の販売中止や回収を余儀なくされることがあり、同社グループの経営成績や財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

(3) 法規制・制度改革に関するリスク


主力である医療用医薬品事業は、薬価基準の改定をはじめとする様々な法規制や行政施策の影響を受けます。医療制度や健康保険に関連する制度改革の動向によっては、同社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。