※本記事は、株式会社イー・ロジット の有価証券報告書(第26期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イー・ロジットってどんな会社?
同社は、EC通販事業者向けに商品の保管・在庫管理・配送代行などを一括して請け負う物流代行サービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
2000年に通販物流事業および物流コンサルティングを目的に設立され、2003年以降、関東を中心に物流センターを開設しました。2021年にJASDAQ(スタンダード)へ上場を果たします。2025年にはカタログ通販事業「Northmall」を譲り受け、自社EC事業にも参入しました。
2025年3月31日時点の従業員数は178名(単体)です。筆頭株主は有限会社フクジュコーポレーションで、第2位は投資事業有限責任組合、第3位は株式会社プログレスです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社フクジュコーポレーション | 22.52% |
| G Future Fund1号投資事業有限責任組合 | 15.01% |
| プログレス | 9.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長には児玉和宏氏が就任しています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 児玉 和宏 | 代表取締役会長 | 1992年ジーエフ入社。同社社長を経て2018年より会長。ジーエフホールディングス代表取締役会長兼社長。2025年2月より現職。 |
| 古閑 睦朗 | 常務取締役 | 1984年ジェーエムエーシステムズ入社。クレセント代表取締役、豊田Holdings執行役員などを経て2024年9月より現職。 |
| 角井 亮一 | 取締役 | 1994年船井総合研究所入社。2000年に同社設立、代表取締役社長。会長、代表取締役会長兼社長などを経て2025年2月より現職。 |
| 谷辻 昌也 | 取締役 | トランスコスモス、イケア・ジャパン、コストコホールセールジャパンを経て2022年同社入社。常務取締役COO、代表取締役社長CEOを経て現職。 |
社外取締役は、秋元征紘(ワイ・エイ・パートナーズ代表取締役)、小野田博文(元バンダイロジパル監査役)、芹沢俊太郎(公認会計士・税理士)、淵邊善彦(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「BPOサービス事業」を展開しています。
■(1) BPOサービス事業
EC通販事業者向けに、商品の入荷から保管、受注処理、ピッキング、配送手配、カスタマーサポートまでを一括して代行するフルフィルメントサービスを提供しています。また、物流センターの設立・運営に関するコンサルティングや、EC物流人材の育成サービスも手掛けています。さらに2025年よりカタログ通販事業「Northmall」を開始し、自社でのEC販売も行っています。
フルフィルメントサービスでは、クライアント企業から業務委託料や作業料を受け取る収益モデルです。Northmall事業では、エンドユーザーへの商品販売による売上が収益となります。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年3月期までは売上高が拡大傾向にありましたが、損益面では赤字が続いていました。2025年3月期は、拠点の統廃合等の影響で減収となったものの、固定費削減等の効果や特別利益の計上により、当期純損益は黒字に転換しました。ただし、営業段階では依然として損失を計上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 107億円 | 122億円 | 128億円 | 129億円 | 103億円 |
| 経常利益 | 2.4億円 | -1.9億円 | -2.8億円 | -6.7億円 | -0.8億円 |
| 利益率(%) | 2.3% | -1.6% | -2.2% | -5.2% | -0.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.5億円 | -3.4億円 | -5.7億円 | -16.8億円 | 1.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は約20%減少しました。これは一部拠点の閉鎖や契約解除によるものです。一方で、売上総利益率は改善し、営業損失の幅も大幅に縮小しました。構造改革によるコスト削減が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 129億円 | 103億円 |
| 売上総利益 | 3.1億円 | 5.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 2.4% | 5.5% |
| 営業利益 | -6.9億円 | -0.8億円 |
| 営業利益率(%) | -5.4% | -0.8% |
売上原価のうち、荷造運賃が40億円(構成比42%)、賃借料が20億円(同21%)、労務費が20億円(同21%)を占めています。販売費及び一般管理費においては、給与手当が2.4億円(構成比37%)と主要なコストとなっています。
■(3) セグメント収益
当期は「BPOサービス事業」の単一セグメントです。FC(フルフィルメントセンター)の一部閉鎖や契約移管等の影響で減収となりましたが、不採算拠点の整理や業務効率化により、利益面の改善が進められています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 合計 | 129億円 | 103億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | - | -2.1億円 |
| 投資CF | - | -3.6億円 |
| 財務CF | - | 3.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は126.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は17.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「私たちは、常に顧客視点で変化を先取りし、社会インフラとして成長し続けるEコマースの進化に貢献します」をパーパス(存在意義)として掲げています。また、顧客のビジョンを理解し、エンドユーザーのニーズを考え抜き、サービス品質に妥協しないビジネスパートナーであり続けることを約束しています。
■(2) 企業文化
同社は6つのバリュー(共有価値観)を定めています。「二つのお客様を大切にする心」としてクライアントとその先のエンドユーザー双方を重視すること、「新しい目標と提案力」で改善を追求すること、「スピード感と正しい生産性」、「責任を伴う自由の奨励」、「自分事・誠意・敬意を元にしたチーム志向」、そしてROIを見極める「倹約」を行動指針としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「売上高」と「営業利益」を経営上の重要な目標指標として設定しています。売上高は業界や企業の成長を表す指標として、営業利益は持続的な成長の源泉および株主還元の重要指標として位置づけています。具体的な数値目標は記載されていませんが、AI等のデジタルインフラへの要望を踏まえ、業界成長率を上回る成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
収益性の向上を最優先課題とし、物流センター(FC)の運営モデルを保管型から出荷型へ転換し、賃借床面積の稼働率向上を図っています。また、自動化の促進や高収益資産の構築を進めるとともに、フルフィルメントサービスを主軸に多様な事業者との提携・協業を推進し、サービス拡張による新たな収益源の構築を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
常に顧客視点で課題解決を図る自律した人材の育成を目指し、職務記述書(JD)による役割の明確化や公募制度を通じた昇進機会の提供を行っています。また、専門性の高いスペシャリストコースの導入や、フルフレックス、リモートワーク、副業解禁など、柔軟で自律的な働き方ができる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.8歳 | 3.9年 | 4,183,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 64.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 99.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、パーパスステートメントへの共感度(3.3)、エンゲージメントスコア(2.5)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 継続企業の前提に関する重要事象
同社は営業損失および営業キャッシュ・フローのマイナスが継続しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。これに対し、不採算拠点の閉鎖による固定費削減、人員配置の見直し、新たな資金調達等の対策を講じていますが、業績回復や財務基盤の安定化には時間を要する可能性があります。
■(2) 宅配事業者による影響
同社の事業は宅配事業者への委託により成立しており、運賃値上げや集荷制限の影響を受けるリスクがあります。特に大手宅配事業者への依存度が相対的に高いため、取引関係の変化や宅配事業者の供給能力低下が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人材の確保について
労働人口の減少に伴い、物流現場や専門職の人材確保が困難になるリスクがあります。採用難航や定着率の低下が生じた場合、サービス品質の維持や事業成長に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、採用手法の多様化や職場環境の改善に取り組んでいます。



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