イー・ロジット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イー・ロジット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イー・ロジットは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、EC通販事業者向けに物流代行やコンサルティング等を提供するBPOサービス事業を展開しています。直近の業績トレンドは、不採算案件の見直し等を進めつつも、出荷ボリュームの減少や先行投資の発生等により売上高が減少し、営業赤字が継続する状況となっています。


※本記事は、株式会社イー・ロジットの有価証券報告書(第27期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イー・ロジットってどんな会社?


BPOサービス事業を展開し、EC事業者向けに物流代行からコンサルティングまでトータル支援を提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は2000年に通販物流事業等を目的として設立されました。2010年に東京フルフィルメントセンターを開設し、2019年には通販物流代行事業を譲受しています。2021年に株式を上場し、2025年にはNorthmall事業を譲受して自社でのEC通販事業にも参入するなど、事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は単体で170名です。筆頭株主は投資事業を展開し同社の関係会社でもあるG Future Fund1号投資事業有限責任組合で、第2位も同様に投資事業を展開するEGGS1号次世代テック投資事業有限責任組合、第3位は個人の須田忠雄氏となっています。

氏名 持株比率
G Future Fund1号投資事業有限責任組合 24.74%
EGGS1号次世代テック投資事業有限責任組合 14.09%
須田 忠雄 7.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長は角井亮一氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
角井亮一 代表取締役会長 1994年船井総合研究所入社。2000年イー・ロジットを設立し代表取締役社長。プログレス代表取締役等を経て、2026年4月より現職。
池田忠史 取締役 1992年伊藤忠商事入社。スタートトゥデイ(現ZOZO)取締役CFO等を経て、2024年イー・ロジット入社。2026年4月より現職。
赤嶺栄治 取締役 1998年日本通運入社。同社アマゾン首都圏事業所川越センター所長等を経て、2022年イー・ロジット入社。2025年6月より現職。
花島晋平 取締役 2012年アーツ&カルチャルマネジメント入社。複数の企業を設立・代表取締役を務め、2025年6月より現職。


社外取締役は、平田恭平(ヒップスタイル代表取締役)、行木明宏(元千葉銀行支店長)、秋元征紘(元ナイキジャパン社長)、芹沢俊太郎(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「BPOサービス事業」の単一セグメントの中で、複数のサービスを展開しています。

(1) フルフィルメントサービス


EC事業者向けに、独自のフルフィルメントセンターや自動倉庫システム、受注処理システム等を活用した総合的な物流代行サービスを提供しています。顧客企業の販売戦略に合わせた柔軟な対応や、内製化・運用改善の支援も行っています。

収益源は、EC事業者から受け取る物流代行業務に関する利用料や作業料、保管料等であり、同社が主体となって運営しています。クラウドビッグデータ基盤を活用した分析レポートの提供など、高付加価値なBPOサービスへの転換を進めています。

(2) EC物流コンサルティングサービス


これまで培ってきた物流ノウハウを生かし、物流関連企業向けにフルフィルメントセンターの設立から運営までのコンサルティングを提供しています。また、EC事業者向けには事業戦略の立案や計画策定などの支援を行っています。

収益源は、物流企業やEC事業者から受け取るコンサルティング報酬であり、同社がサービスを提供しています。短期間での成果創出から中長期的な事業成長の実現まで、顧客企業に伴走する形で戦略見直しや改善提案を行っています。

(3) Northmall事業


レディースファッションを中心としたアパレルアイテムや生活雑貨、インテリア、コスメ、食品などを取り扱う自社EC通販サイト「Northmall」を運営しています。暮らしを豊かにする商品を幅広く展開しています。

収益源は、一般消費者への商品販売による売上代金であり、同社が運営を行っています。ここで得た消費者動向や販売施策、在庫管理等の知見を既存のBPOサービスに還元し、顧客企業の販売強化にも貢献することを目指しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、当期純利益は赤字の計上が続くなど厳しい状況が続いていましたが、前事業年度には一時的に黒字転換を果たしました。しかし当事業年度は再び赤字に転落しており、収益基盤の安定化に向けた事業構造改革の途上にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - - 131億円 - -
経常利益 - - -12億円 - -
利益率(%) - - -9.0% - -
当期純利益 -3億円 -6億円 -17億円 1億円 -2億円

(2) 損益計算書


売上総利益は前事業年度から減少傾向にあります。営業利益も継続して赤字を計上しており、固定費削減や人員体制の最適化等による費用構造の改善を進めているものの、各種コストの上昇や新規事業の先行費用が影響しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - -
売上総利益 6億円 5億円
売上総利益率(%) - -
営業利益 -1億円 -1億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2億円、顧問料が0.8億円、役員報酬が0.8億円を占めています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私たちは、常に顧客視点で変化を先取りし、社会インフラとして成長し続けるEコマースの進化に貢献します」をパーパス(存在意義)として掲げています。また、ブランドプロミス(提供価値)として、顧客のビジョンを深く理解し、サービス品質に妥協することなく成長を支えるビジネスパートナーであり続けることを定めています。

(2) 企業文化


行動指針となるバリュー(共有価値観)として、「二つのお客様を大切にする心」「新しい目標と提案力」「スピード感と正しい生産性」「責任を伴う自由の奨励」「自分事・誠意・敬意を元にしたチーム志向」「倹約」の6つを定めています。クライアントとその先のエンドユーザー両方の満足を追求し、自律的に挑戦し行動する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


客観的な指標として売上高および営業利益の拡大を目標としています。人員計画や設備投資計画の実行、株主還元を行うための重要な指標として、社員一人当たりの稼ぐ力の向上を図りながら営業利益の拡大を目指すとともに、徹底したコストコントロールを進める方針を掲げています。なお、具体的な数値目標は公表されていません。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画「トリプルスリープラン」に基づき、以下の3つの軸を強化して事業拡大を図ります。
・生産性の向上:賃借床面積の高稼働率化と、保管型から出荷型モデルへの転換による収益性向上
・活用資産の収益力向上:自動化促進や新たな収益資産の構築
・サービス拡張:多様な事業者との提携を通じた新たな収益源の構築

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


常に顧客視点で課題解決と成功を模索する自律した人材の育成を目指しています。年齢や性別等を問わず能力と人格を備えた優秀な人材に適切な昇格・昇進の機会を与え、将来の管理職・経営層を育成する方針です。また、職務記述書(JD)に基づく職能型制度やスペシャリストコースの導入、多様な働き方を可能にする制度を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.2歳 5.2年 4,882,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.6%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 68.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 97.3%


※男性労働者の育児休業取得率は、当事業年度において対象者がいないため「-」としています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、パーパスステートメントへの共感度(3.44)、エンゲージメントスコア(2.34)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 宅配事業者への依存とコスト増リスク


同社は商品を消費者へ届けるため宅配事業者に配送を委託しており、資材調達や運送サービスの維持が不可欠です。エネルギー価格や原材料価格の上昇、人材不足に伴う運賃値上げ、資材不足、宅配個数制限などが発生し、そのコスト増加分を適切に販売価格へ転嫁できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) EC物流拠点(FC)の賃貸借に関するリスク


同社はフルフィルメントセンター(FC)を賃借して事業を展開しています。契約更新時における賃借料の上昇や、何らかの事情により拠点の継続使用が困難になった場合、収益性が低下する恐れがあります。また、新規拠点開設時の稼働率が想定を下回る場合も、先行投資負担が業績に影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティ・システム障害リスク


同社は通販事業者の注文に伴い、消費者の個人情報を含む膨大なデータを保有しています。サイバー攻撃や想定外の事故、誤操作等により大規模なシステム障害や個人情報の漏洩事故が発生した場合、業務の停滞や損害賠償請求、社会的信用の失墜を招き、同社の業績や財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。