セレンディップ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セレンディップ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場する同社は、モノづくり事業、プロフェッショナル・ソリューション事業、インベストメント事業を展開しています。直近の業績は、売上高251億円(前期比27.0%増)、経常利益7.4億円(同23.3%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社セレンディップ・ホールディングス の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セレンディップ・ホールディングスってどんな会社?

同社は、事業承継(投資)とモノづくり(経営)を融合させ、中堅・中小企業の近代化と成長を支援する企業です。

(1) 会社概要

2006年に株式会社T3ネットワークとして設立され、同年セレンディップ・コンサルティングへ商号変更しました。2014年に天竜精機の株式を取得し事業承継ビジネスを開始、2020年に持株会社体制へ移行し現社名となりました。2021年に東証マザーズ(現グロース)へ上場し、直近ではエクセル・グループを子会社化するなど規模を拡大しています。

2025年3月31日時点の連結従業員数は1,122人、単体従業員数は62人です。筆頭株主は代表取締役社長兼CEOの竹内在氏、第2位は取締役CIOの髙村徳康氏であり、第3位は資産管理会社です。経営陣が大株主の上位を占めるオーナーシップの強い構成となっています。

氏名 持株比率
竹内 在 15.86%
髙村 徳康 15.84%
諸戸グループマネジメント 9.96%

(2) 経営陣

同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長兼CEOは竹内 在氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
竹内 在 代表取締役社長兼CEO シンプレクス・コンサルティング執行役員等を経て、2014年同社代表取締役社長に就任。2013年同社監査役、2014年代表取締役社長を経て、2023年より現職。
髙村 徳康 取締役CIO 岡三証券、監査法人トーマツを経て、2006年同社を設立し代表取締役社長に就任。代表取締役会長等を経て、2023年より現職。
北村 隆史 取締役CFO 松下電器産業(現パナソニック)、税理士法人トーマツ、トヨタファイナンシャルサービス等を経て、2018年同社入社。2024年より現職。
西山 一彦 取締役(監査等委員) 日興證券(現SMBC日興証券)、株式会社五合を経て、2018年同社入社し監査役に就任。2024年より現職。


社外取締役は、村松高男(元高松国税局長・税理士)、山口豪(元日産自動車副社長執行役員)、橋詰水音(元裁判官・弁護士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「モノづくり事業」、「プロフェッショナル・ソリューション事業」および「インベストメント事業」を展開しています。

モノづくり事業

自動車内外装部品、精密金属部品、FA装置の製造、試作品製作、美容機器の開発製造販売などを行っています。事業承継を目的としたM&Aによりグループ化したモノづくり企業群が主体となり、自動車産業や製造現場の自動化・省人化ニーズに対応した製品を提供しています。

製品の販売による収益が主となります。運営は、三井屋工業、ユニクレア、エクセル・グループ、天竜精機、アペックス、トライシス、レディーバードなどが各事業領域を担当しています。

プロフェッショナル・ソリューション事業

経営課題を抱える中堅・中小企業に対し、プロ経営者の派遣や経営コンサルティング、エンジニア派遣、システム受託開発などを提供しています。経営の近代化やDX推進、技術開発支援を通じて、企業の成長と課題解決を支援しています。

顧客企業からの役務提供対価(派遣料、コンサルティングフィー、開発受託費など)が収益源です。運営は主にセレンディップ・ホールディングス、セレンディップ・テクノロジーズ、セレンディップ・ロボクロスマーケティングが行っています。

インベストメント事業

事業承継等の課題を抱える企業に対し、M&Aアドバイザリーや共同投資、ファンド運営などを通じたソリューションを提供しています。金融機関等と連携し、事業承継問題に柔軟に対応することで、投資先企業の企業価値向上を図ります。

フィナンシャル・アドバイザリー手数料や、投資先企業の売却によるキャピタルゲイン、ファンド管理報酬などが収益源となります。運営はセレンディップ・フィナンシャルサービスが担当しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。経常利益も波はあるものの増加基調を維持しており、特に直近では大幅な増益となりました。当期利益についても、直近では大きく伸長しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 145億円 138億円 152億円 198億円 251億円
経常利益 4.2億円 1.8億円 3.5億円 6.0億円 7.4億円
利益率(%) 2.9% 1.3% 2.3% 3.0% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.0億円 2.0億円 3.1億円 5.2億円 20.9億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は改善傾向にあります。当期は特別利益として負ののれん発生益を計上したことなどから、当期純利益が大きく増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 198億円 251億円
売上総利益 33億円 42億円
売上総利益率(%) 16.4% 16.9%
営業利益 4.8億円 7.3億円
営業利益率(%) 2.4% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が9.6億円(構成比27%)、荷造運賃が5.4億円(同15%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注加工費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益

モノづくり事業が売上の大半を占め、M&A効果等により大幅な増収増益となりました。プロフェッショナル・ソリューション事業もITコンサルティング需要の増加等により増収となり、黒字転換を果たしました。インベストメント事業は前期の大型案件の反動等で減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
モノづくり事業 185億円 234億円 4.8億円 7.0億円 3.0%
プロフェッショナル・ソリューション事業 9.8億円 15.7億円 -1.2億円 0.1億円 0.9%
インベストメント事業 2.8億円 1.3億円 1.2億円 0.2億円 17.6%
連結(合計) 198億円 251億円 4.8億円 7.3億円 2.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

セレンディップ・ホールディングスは、積極的な財務活動により資金調達を拡大しています。営業活動では、主に税金等調整前当期純利益や負ののれん発生益により資金を獲得しました。一方、投資活動では、有形固定資産の取得や子会社株式の取得により資金を使用しました。財務活動では、短期借入金の純増減や長期借入れによる収入、長期借入金の返済により、大幅な資金増加を実現しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 26億円 2.9億円
投資CF -25億円 -40億円
財務CF 8.9億円 60億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「すべてのステークホルダーに価値と成長をもたらす100年企業グループ」創出というグループビジョンを掲げています。また、中小企業経営において変化が求められる現代において、「中小企業経営の近代化」を使命とし、経営の変革を通じて企業価値を継続・発展させていくことを目指しています。

(2) 企業文化

「よき伝統の尊重と戦略合理的経営を追求していくこと」を価値観としています。古き良き伝統のみに縛られるのではなく、社会環境や産業構造の急激な変化を敏感に察知し、時代にフィットした経営を行う「経営の近代化」を重視する風土があります。

(3) 経営計画・目標

経営上目標とする客観的な指標として「経常利益」を選定しています。M&AにおいてLBOファイナンスを活用するため、各子会社の事業収益力の改善だけでなく、財務の健全化と金融費用の最適化による経常利益の確保を重視し、管理目標として設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策

M&Aによる非連続的成長と既存事業のオーガニック成長を両輪で推進し、事業ポートフォリオを強化する方針です。M&Aでは国際競争力が高くサプライチェーンが強固な分野を重点領域とし、PMI(統合プロセス)ではプロ経営者チームによる「標準PMI」を実行して効果を高めます。また、グループ財務機能の強化として、ROICスプレッドの拡大や最適な資金調達を目指します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「年齢も性別も学歴も社歴も国籍も関係なく、意思と意欲あるものに機会を与える」という考えのもと、多様な人材が力を発揮できる環境を目指しています。人材育成を最重要テーマとし、経営者候補の早期選抜育成や女性活躍推進、デジタル人材の育成に取り組んでいます。また、社員エンゲージメントの向上を重視し、働きやすい環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 2.4年 6,917,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 中期経営計画について

同社グループはM&Aを通じた成長モデルを採用しており、中期経営計画は策定時点の環境に基づいています。経済情勢の変化や有効な投資機会の有無、M&Aの実施状況により、資産・負債やキャッシュ・フローが変動し、財政状態や経営成績が計画と乖離する可能性があります。

(2) 投資について

投資先企業には事業再生中の企業も含まれ、将来の不確定要素により業績が変動するリスクがあります。急激な環境変化やPMI(統合プロセス)の遅れにより、当初の計画が未達となる場合、グループ全体の業績やのれんの減損処理などに影響を与える可能性があります。

(3) プロフェッショナル人材の確保・流出について

PMIや事業拡大には、プロ経営者、コンサルタント、エンジニア等の専門人材が不可欠です。これらの優秀な人材を十分に確保できない場合や、流出してしまった場合、グループの成長戦略や事業遂行に支障をきたす可能性があります。

(4) 子会社の業績変動について

グループ全体の業績は子各社の状況に大きく依存しています。特に自動車業界向けの売上比率が高い子会社(三井屋工業、ユニクレア、エクセル・グループ等)については、主要顧客の生産動向や市況の影響を受けやすく、予期せぬ変動がグループ全体の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。