セレンディップ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セレンディップ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セレンディップ・ホールディングスは東京証券取引所グロース市場に上場し、モノづくり事業、プロフェッショナル・ソリューション事業等を行っています。直近の業績は、M&Aの推進や受注の増加により、売上高が前期比で大幅な増収、経常利益も大幅な増益を達成し、好調に推移しています。


**※本記事は、セレンディップ・ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**

1. セレンディップ・ホールディングスってどんな会社?


M&Aによる事業承継やプロ経営者派遣を通じ、中堅・中小モノづくり企業の成長を支援しています。

(1) 会社概要


2006年にT3ネットワークとして設立され、同年にセレンディップ・コンサルティングへ社名変更しました。2014年以降、天竜精機など複数企業のM&Aを実行し、2020年に現在の社名となりました。2021年に東証マザーズへ上場後もM&Aを継続し、事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で3,185名、単体で68名です。筆頭株主は代表取締役社長兼CEOの竹内在氏で、第2位は取締役CIOの髙村徳康氏、第3位は諸戸グループマネジメントとなっています。

氏名 持株比率
竹内在 15.80%
髙村徳康 15.76%
諸戸グループマネジメント 9.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長兼CEOは竹内在氏が務めており、役員全体における社外取締役の比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
竹内在 代表取締役社長兼CEO ニフティ等を経て2011年シンプレクス・コンサルティング執行役員。2013年同社監査役、2014年代表取締役社長、2023年現職に就任。複数子会社の役員等を歴任。
髙村徳康 取締役CIO 岡三証券等を経て2006年同社設立、代表取締役社長に就任。2016年代表取締役会長、2023年に執行役員および現職に就任。複数子会社の役員等を歴任。
北村隆史 取締役CFO 松下電器産業、税理士法人トーマツ等を経て2015年有限責任監査法人トーマツに入社。2018年同社に入社し、2024年に現職に就任。複数子会社の役員等を歴任。
西山一彦 取締役(監査等委員) 日興證券を経て同社名古屋企業法人部長。2017年五合に入社し、2018年に同社に入社、監査役に就任。2024年に現職に就任。複数子会社の役員等を歴任。


社外取締役は、村松高男氏(元高松国税局長)、山口豪氏(元日産自動車副社長執行役員)、橋詰水音氏(元最高裁判所判事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「モノづくり事業」「プロフェッショナル・ソリューション事業」「インベストメント事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) モノづくり事業


M&Aにより傘下に収めた企業が、自動車内外装部品、自動車精密・金属部品、自動車内装部品の製造や、表面処理加工、FA装置製造、試作品製作、業務用美容機器の開発・製造・販売を提供しています。顧客は主にトヨタ自動車やアイシンなどの自動車関連メーカーを中心としています。

収益は顧客への製品販売や受託製造により得ています。運営は、三井屋工業、ユニクレア、エクセル・グループ、サーテックカリヤ・グループ、天竜精機、アペックス、レディーバードなどの各事業子会社が行っています。

(2) プロフェッショナル・ソリューション事業


事業承継や技術力強化などの経営課題を抱える中堅・中小企業に対し、プロ経営者の派遣や経営・IT・現場改善に関するコンサルティング、および設計・開発・ITエンジニアの派遣やソフトウェア開発のサービスを提供しています。

収益は、顧客企業に対するソリューション提供の対価やエンジニア派遣の利用料として得ています。運営は主に、同社のほか、セレンディップ・ロボクロス、アクストリアの各社が行っています。

(3) インベストメント事業


事業承継等に課題を抱えた中堅・中小企業へのフィナンシャル・アドバイザリーの提供や、金融機関等と連携したファンド運営を通じた共同投資やマイノリティ出資を行っています。

収益は、フィナンシャル・アドバイザリーの提供に伴う手数料や、投資先企業の企業価値向上後の売却を通じたキャピタルゲインなどから得ています。運営は、セレンディップ・フィナンシャルサービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間において売上高は一貫して右肩上がりで拡大し、当期は大幅な増収を達成しています。経常利益も売上高の拡大に伴い連続して増益となっており、堅調な成長基盤の拡大が見て取れます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 138億円 152億円 198億円 251億円 512億円
経常利益 1.8億円 3.5億円 6.0億円 7.4億円 24億円
利益率(%) 1.3% 2.3% 3.0% 2.9% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.2億円 -0.7億円 -1.4億円 -0.3億円 -0.6億円

(2) 損益計算書


売上高はM&Aの推進などにより前期から倍増しており、それに伴い売上総利益および営業利益も大幅に増加しています。営業利益率も改善傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 251億円 512億円
売上総利益 42億円 79億円
売上総利益率(%) 16.9% 15.4%
営業利益 7.3億円 22億円
営業利益率(%) 2.9% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が17億円(構成比29%)、支払手数料が10億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力となるモノづくり事業において、既存子会社の受注増加に加え、新たな企業を連結対象としたことで売上が倍増し、全体の増収を牽引しました。プロフェッショナル・ソリューション事業も堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
モノづくり事業 234億円 490億円
プロフェッショナル・ソリューション事業 16億円 20億円
インベストメント事業 1.3億円 1.4億円
連結(合計) 251億円 512億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は38.6%で市場平均を大きく上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は23.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「すべてのステークホルダーに価値と成長をもたらす100年企業グループ」創出というグループビジョンを掲げています。また、「中小企業経営の近代化」を使命とし、「よき伝統の尊重と戦略合理的経営を追求していくこと」を価値観としています。古き良き伝統のみに縛られず、経営の変革により企業価値を継続・発展させていくことを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、グループ共通のサステナビリティ方針として「セレンディップ・サステナビリティ」を定め、「年齢も性別も学歴も社歴も国籍も関係なく、意思と意欲あるものに機会を与える」という考え方を前提としています。多様・多才な人材が力を最大限発揮し、すべての社員が魅力的な仕事に挑戦し、常に学び成長し続けている会社を目指す文化を有しています。

(3) 経営計画・目標


経営上の中核指標(KPI)として「EBITDA」を採用しています。M&Aを通じて事業ポートフォリオを拡充するビジネスモデルにおいて、各子会社の正常収益力やキャッシュ創出力を適切に把握するためです。また、財務健全性およびレバレッジ水準の管理指標として、「Net Debt/EBITDA倍率」を併用し、成長投資と財務規律のバランスを意識した資本効率の向上を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


「M&Aによる非連続的成長」と「既存事業のオーガニック成長(持続的な成長)」を両輪で推進し、事業ポートフォリオを強化する戦略を掲げています。M&Aでは国際競争力が高くサプライチェーンが強固な分野に重点投資を行い、既存事業では標準化された統合プロセスで生産性を向上させます。また、自動化やDX化、新技術の研究開発に積極的に取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を成長モデルを実行し企業価値を創出する主体と位置付け、採用・育成・配置・評価を一体とした戦略を推進しています。「M&A実行人材」「マネジメント実行人材」「バリューアップ実行人材」の3区分を定義し、それぞれに特化した外部採用や内部登用を行っています。また、年次ではなく成果や挑戦意欲を重視し、経営人材の早期登用を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.2歳 3.0年 7,345,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.1%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は従業員規模が300人以下のため、有報には男女の賃金の差異に関する記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 投資先の企業価値評価とM&A戦略の成否に関するリスク


同社はM&Aを活用した事業成長を基本モデルとしており、投資先企業の業績変動や急激な事業環境の変化、PMI(買収後の統合)の遅れなどにより、当初の計画を達成できない可能性があります。また、これに伴いのれんの減損損失が発生し、財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 専門性の高いプロフェッショナル人材の確保・流出リスク


M&A後の統合プロセスやソリューション提供において、プロ経営者やコンサルタント、ITエンジニア等の専門人材が不可欠です。事業拡大に合わせて積極的な採用を進めていますが、優秀な人材が確保できなかった場合や社外へ流出した場合、事業遂行や成長戦略に影響が生じるリスクがあります。

(3) 自動車関連市場への依存とサプライチェーン変動リスク


同社のモノづくり事業は自動車業界への売上構成比が高く、主要顧客の販売台数や設備投資動向に業績が大きく左右されます。また、原材料や部品価格の高騰、供給逼迫による生産遅延、電動化など新技術への対応遅れが発生した場合、収益性の低下や競争力低下を招くリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。