ヤマエグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマエグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマエグループホールディングスは、東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場する総合卸売企業です。食品関連事業を中心に、糖粉・飼料畜産、住宅・不動産関連など幅広く展開しています。直近の業績は、売上高が初の1兆円を突破し、全ての利益項目で過去最高を更新するなど、好調な増収増益トレンドで推移しています。


※本記事は、ヤマエグループホールディングス株式会社の有価証券報告書(第5期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤマエグループホールディングスってどんな会社?


同社は、食品から住宅資材まで幅広く取り扱う総合卸売事業を展開し、サプライチェーン全体を支える企業です。

(1) 会社概要


1950年に江夏商店として設立され、1969年にヤマエ久野へ商号変更しました。1972年に福岡証券取引所、2018年に東京証券取引所第一部に上場しました。2021年に単独株式移転により持株会社であるヤマエグループホールディングスを設立し上場を果たしました。近年は日本ピザハットなどの子会社化を推進しています。

同社グループの従業員数は連結で6,414名、単体で123名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。第2位はヤマエグループ社員持株会、第3位はヤマエ第一食栄会となっており、社内組織や取引先などが上位株主に名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.68%
ヤマエグループ社員持株会 4.90%
ヤマエ第一食栄会 4.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長CEO最高経営責任者を網田日出人氏、代表取締役社長COO最高執行責任者を大森礼仁氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
網田 日出人 代表取締役会長CEO最高経営責任者 1974年ヤマエ久野入社。食品部長、専務取締役等を経て2014年代表取締役社長、2018年代表取締役会長CEO。2021年同社代表取締役会長兼社長を経て現職。
大森 礼仁 代表取締役社長COO最高執行責任者 1979年ヤマエ久野入社。鮮冷部長、取締役副社長等を経て2018年代表取締役社長COO、2021年代表取締役社長。2021年同社取締役副社長を経て現職。
山田 良二 取締役副社長CAO最高総務責任者本社部門統轄 1985年東京証券入社。2003年ヤマエ久野入社。総務部長、取締役等を経て2021年同社常務取締役。2022年ヤマエリアルティ代表取締役社長等を経て現職。
丸山 武子 常務取締役CHO最高人事責任者人事・総務担当 1987年ヤマエ久野入社。海外事業部長、人事部長等を歴任し、2020年執行役員人事部長。2021年同社執行役員、2022年常務執行役員等を経て現職。
工藤 恭二 取締役 1985年ヤマエ久野入社。鮮冷福岡支店長、鮮冷本部長等を歴任し、2021年同社専務取締役営業統轄。2023年ヤマエ久野代表取締役社長等を経て現職。


社外取締役は、安倍寛信(元三菱商事パッケージング代表取締役社長執行役員)、中西常道(監査法人北三会計社代表社員)、下坂正夫(日清製粉グループ本社内部監査部部長)、山本智子(山本智子公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品関連事業」、「糖粉・飼料畜産関連事業」、「住宅・不動産関連事業」および「その他」事業を展開しています。

食品関連事業


一般加工食品、菓子、酒類、冷凍食品などの販売から、弁当や焼酎の製造、農水産物の加工販売、配達飲食サービスまでを幅広く提供しています。国内外の多様な食のニーズに応え、小売業や外食産業などの顧客に対して総合的な機能を提供しています。

収益は、食品や酒類などの商品の販売代金を中心に構成されています。主な運営は、ヤマエ久野をはじめ、みのりホールディングス、コンフェックス、デリカフレンズ、日本ピザハットなど、各分野に強みを持つ多数の子会社が担っています。

糖粉・飼料畜産関連事業


砂糖、小麦粉、油脂などの食品原材料をはじめ、飼料、畜産物、水産物の販売や、畜産農業などを手掛けています。土産物や外食需要向けに安定した原材料供給を行うとともに、技術指導や経営支援を通じた生産者のサポートも実施しています。

収益は、食品原材料や飼料、農水畜産物などの販売代金から得ています。この事業の運営は、ヤマエ久野を中心に、丸永、トップ卵、馬場飼料などの子会社がそれぞれの専門領域を担当して展開しています。

住宅・不動産関連事業


住宅建築資材、住宅設備機器、木材などの販売に加え、建設工事や不動産の売買、賃貸事業を展開しています。プレカット事業と連携した木材や建材のトータル提案を通じて、住宅取得希望者や建設業者などに付加価値の高いサービスを提供しています。

収益モデルは、建築資材や不動産の販売代金、建設工事の請負代金、および不動産の賃貸収入などから成り立っています。運営は、ヤマエ久野のほか、ワイテック、ハイビック、アスティーク、ヤマエリアルティなどの子会社が行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、運送事業、レンタカー事業、燃料関連事業などを展開しています。グループ内の物流資源を共有、活用することで効率的な物流サービスを提供するほか、レンタカー事業など幅広いサービスを提供しています。

収益は、運送料金やレンタカーの利用料金、燃料の販売代金などから構成されています。これらの事業は、ヤマエオートエナジー、高千穂倉庫運輸、九州栄孝エキスプレスなどの子会社が主体となって運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高と利益の両面で力強い成長を継続しています。売上高はM&Aなどの効果もあり順調に拡大し、直近では初の1兆円を突破しました。経常利益などの各利益項目も毎年過去最高を更新しており、事業規模の拡大と収益性の向上が着実に進んでいることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5036億円 5880億円 7127億円 10069億円 10852億円
経常利益 79億円 122億円 148億円 176億円 187億円
利益率(%) 1.6% 2.1% 2.1% 1.7% 1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 67億円 79億円 85億円 85億円 111億円

(2) 損益計算書


売上高は前年と比較して堅調な増加を見せており、売上総利益率も安定した水準を維持しています。エネルギー価格や物流費の高騰といった外部環境の逆風がある中でも、業務の効率化やグループシナジーの追求により経費をコントロールし、営業利益と営業利益率の向上を実現しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 10069億円 10852億円
売上総利益 1257億円 1355億円
売上総利益率(%) 12.5% 12.5%
営業利益 158億円 181億円
営業利益率(%) 1.6% 1.7%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が423億円(構成比36.0%)、従業員給料及び賞与が192億円(同16.4%)を占めています。また、売上原価は9497億円であり、売上高に対する原価率は87.5%となっています。

(3) セグメント収益


食品関連事業は、インバウンド需要や外食産業の回復を捉え、売上を伸ばしています。糖粉・飼料畜産関連事業も、食品原材料の販売増加により好調です。住宅・不動産関連事業は、資材価格の高騰など厳しい環境下でもグループシナジーを発揮し、増収を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
食品関連事業 7687億円 8390億円
糖粉・飼料畜産関連事業 1160億円 1270億円
住宅・不動産関連事業 987億円 993億円
その他 235億円 199億円
連結(合計) 10069億円 10852億円


本業の営業活動で安定したキャッシュを生み出しており、その資金を設備投資や事業拡大に充てつつ、借入金の返済も進める「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 259億円 242億円
投資CF -190億円 -123億円
財務CF -84億円 -54億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は23.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「業界の公共性を十分理解し、社業の進展を通して社会に奉仕することを目標に、効率の高い営業体制をもって収益の向上に邁進する」を経営の基本理念として掲げています。「流通のトータルサポーター」としての役割を果たし、多様な暮らしを一人ひとりの生活に届けることをグループのパーパスと定義しています。

(2) 企業文化


同社グループは、全従業員が共有すべき価値観や行動規範を「ヤマエWay」として定義しています。この「ヤマエWay」をすべての組織に浸透させることで、経営戦略と個々の行動を合致させ、企業価値の最大化を図ることを重視しています。すべての役職員が一つのチーム(One Team)として結束し、価値を創造する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長を実現する企業グループであり続けることを目指し、2026年度からスタートする新中期経営計画「Create “ONE” 28」を策定しています。2029年3月期の目標として、以下の財務数値を掲げています。

* 売上高1兆5,000億円
* 経常利益330億円
* ROE10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


目標達成に向けて、「M&A戦略」「グローバル戦略」「エリア・物流戦略」「新規事業戦略」の4つを基本戦略として推進します。M&Aや新規事業への成長投資を拡大するとともに、設備投資やAX・DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した効率化投資を実施し、事業領域の拡大と経営基盤の維持向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「人」を最も重要な経営資源と位置づけ、従業員一人ひとりが自主性・積極性を持って行動できる環境作りを推進しています。「従業員ファースト」の考えのもと、企業戦略の実現に必要な人材を惹きつけ、労働市場における競争優位性を確立することを目指し、ダイバーシティの推進や人材育成の強化に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.3歳 2.7年 6,957,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※対象者がいない場合は「-」を記載しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ会社教育・研修参加率(91%)、コンプライアンス研修参加率(100%)、ストレスチェック実施率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内市場・経済動向による影響


同社グループは「食」と「住」を事業の柱としています。国内人口の減少や少子高齢化といった人口構造の変化、および海外情勢や為替相場による取扱商品の価格高騰や物流コストの上昇は、同社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) システムリスク


営業拠点や物流拠点を結ぶ情報システムに依存しているため、国家や組織による高度なサイバー攻撃や予測不能なウイルスの侵入などによりシステムが停止するリスクがあります。データの漏えいや物流の停止が発生した場合、事業活動や信用に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 人材確保と育成のリスク


今後の成長に向けて専門知識や管理能力の高い優秀な人材の確保が不可欠です。雇用情勢の変動により必要な人材が計画通りに確保できない場合や、採用に関する費用が上昇した場合、同社の経営成績や財政状態に影響を与える懸念があります。

(4) 食の安全性に対するリスク


「食」の安心・安全を最重要課題と位置づけ、食品の品質管理を徹底しています。しかし、偶発的な事由も含めて食品の安全性や品質確保に問題が生じた場合、同社グループの社会的信用が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。