シンプレクス・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シンプレクス・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のシンプレクス・ホールディングスは、金融機関向けのシステム開発やコンサルティングを主力事業としています。直近の業績は、DX需要の拡大を背景にシステムインテグレーションやコンサルティングが伸長し、売上収益・各利益ともに前期を上回る増収増益を達成しています。


※本記事は、シンプレクス・ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第9期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. シンプレクス・ホールディングスってどんな会社?

大手金融機関のテクノロジーパートナーとして、金融とITを融合した高付加価値ソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要

1997年に株式会社シンプレクス・リスク・マネジメントとして設立され、証券会社向けシステム提供を開始しました。2002年にJASDAQへ上場し、その後東証一部へ市場変更しましたが、2013年にMBOにより上場廃止しました。2016年に現在の持株会社を設立して体制を再編し、2021年9月に東証一部(現プライム)へ再上場を果たしました。

連結従業員数は1,560名、単体では104名です。筆頭株主は代表取締役社長CEOの金子英樹氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業者が筆頭株主として経営をリードしつつ、信託銀行などの機関投資家が株主に名を連ねる資本構成となっています。

氏名 持株比率
金子 英樹 12.42%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.87%
日本カストディ銀行(信託口) 6.11%

(2) 経営陣

同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは金子英樹氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
金子 英樹 代表取締役社長CEO アーサー・アンダーセン、ソロモン・ブラザーズを経て1997年にシンプレクス創業。2000年より社長。2016年の持株会社設立に伴い現職。
助間 孝三 取締役副社長共同COO アクセンチュア等を経て2008年に入社。2021年より現職。SBI証券常務取締役、SBI BITS代表取締役を兼任。
早田 政孝 取締役副社長共同COO アクセンチュア等を経て2007年に入社。2021年より現職。コンサルティング子会社のXspear Consulting代表取締役社長を兼任。
江野澤 慶亮 取締役CFO 2007年に新卒入社。2017年に持株会社へ転籍し、2021年より現職。グループ会社の監査役等を兼任。


社外取締役は、秋山良三(元サンガード代表)、小笠原範之(元日興コーディアルグループ執行役副社長)、杉田庸子(公認会計士)、高橋麻理(弁護士)、浜西泰人(元みずほ証券副社長)、廣田直人(元三菱東京UFJ銀行専務)です。

2. 事業内容

同社グループは、ITソリューションの提供を行う単一セグメントですが、主要なビジネス領域として「戦略/DXコンサルティング」「キャピタルマーケット」「金融リテール」「エンタープライズDX」を展開しています。

(1) 戦略/DXコンサルティング

幅広い業種の経営層等に対し、AIやクラウドなどの最先端技術に基づいたDX特化型の戦略立案と実行支援を行っています。コンサルティングとテクノロジーの両面でDXを推進できる人材を擁している点が特徴です。

収益は、顧客企業からのコンサルティングフィーやプロジェクト実行支援に対する報酬から得ています。運営は主に、2021年に始動したコンサルティングファームであるXspear Consulting株式会社が担っています。

(2) キャピタルマーケット

主に大手銀行や総合証券等の金融機関向けに、ディーラーやトレーダーが利用するトレーディング・リスク管理プラットフォームを提供しています。創業以来のコアビジネスとして、高度な金融工学とITを融合したソリューションを展開しています。

収益は、顧客である金融機関からのシステム開発対価や、プラットフォームのライセンス料、保守運用費等から構成されます。運営は主に、グループの中核企業であるシンプレクス株式会社が行っています。

(3) 金融リテール

ネット証券やFX会社、暗号資産交換業者向けに、個人投資家向けの取引プラットフォームを提供しています。FX取引の「SimplexFX」や暗号資産取引システムなど、トップブランドとしての豊富な実績を有しています。

収益は、システム導入時の開発費用のほか、共同利用型サービスとしての月額利用料などのリカーリング収益を得ています。運営は主にシンプレクス株式会社が行っています。

(4) エンタープライズDX

官公庁、通信、製造、エンターテイメント等の非金融機関向けに、DX支援に特化したITソリューションを提供しています。金融領域で培ったAIやUI/UX等の技術を活かし、非金融分野への展開を進めています。

収益は、顧客企業からのシステム開発費用やソリューション提供対価から得ています。運営は、シンプレクス株式会社とXspear Consulting株式会社が連携して行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上収益は毎期順調に拡大し、右肩上がりの成長トレンドを描いています。利益面でも、税引前利益および当期利益ともに増加傾向にあり、高い利益率を維持しながら成長を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 275億円 306億円 349億円 407億円 474億円
税引前利益 43億円 62億円 73億円 87億円 107億円
利益率(%) 15.7% 20.2% 20.9% 21.5% 22.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 30億円 42億円 54億円 62億円 78億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上収益の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は40%を超える高水準を維持しており、営業利益率も20%台で推移しています。販管費や研究開発費をコントロールしながら、効率的に利益を創出していることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 407億円 474億円
売上総利益 175億円 196億円
売上総利益率(%) 42.9% 41.4%
営業利益 89億円 108億円
営業利益率(%) 21.7% 22.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与が62億円(構成比85%)、採用教育費が13億円(同18%)を計上しています(出向者分担金によるマイナス計上があるため、構成比の合計は100%を超過します)。人材への投資を積極的に行っていることが窺えます。

(3) セグメント収益

同社は単一セグメントのため、事業ごとの数値比較はありませんが、全体の売上収益は前期比で増加しています。システムインテグレーションや運用サービスが堅調に推移したことに加え、戦略/DXコンサルティングの新規案件獲得が寄与しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
Total 407億円 474億円 89億円 108億円 22.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動によるキャッシュ・フローもプラス(投資有価証券の売却等による)、財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスであることから、営業利益と資産売却で借入返済を進める「改善型」の傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 83億円 97億円
投資CF -37億円 5億円
財務CF -38億円 -106億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.8%で市場平均(プライム非製造業24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「日本発のイノベーションを世界へ向けて発信する」という目標を掲げています。全社員が一丸となり、顧客企業のビジネスの成功に貢献する「高付加価値サービスの創造」を追求し、ビジネスに深く精通したテクノロジーパートナーとして持続的な成長と高い収益性の実現を目指しています。

(2) 企業文化

同社は、独自のビジネスモデルである「Simplex Way」を競争優位の源泉としています。また、行動規範として「5DNA」を、大切にする価値観として「Simplex Philosophy」を掲げています。「働きがい」のある企業であり続けることを重視し、イノベーションを持続的に創出する源泉である人材の活用に重きを置いています。

(3) 経営計画・目標

長期成長戦略として、まずは売上収益1,000億円を目指す「Vision1000」を策定しています。その中間地点として中期経営計画「中計2027」を発表しており、最終年度となる2027年3月期の業績目標として以下を掲げています。

* 売上収益:600億円
* 営業利益:150億円
* ROE:17.0%

(4) 成長戦略と重点施策

「中計2027」では、「事業領域の拡大」「事業領域の深耕」「採用育成の強化」を重点施策としています。非金融領域へのコンサルティング強化や、金融フロンティア領域でのDX推進、そして競争力の源泉である人材の確保と定着に注力することで、持続的な成長と高い収益性の実現を目指します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

ビジネスとテクノロジー双方に精通した「ハイブリッド人材」の採用と育成を最重要戦略としています。新卒ではポテンシャルの高い層を、中途では高い専門性を持つ人材を採用し、OJTを通じて高度なノウハウを習得させます。また、報酬や機会の提供、環境整備などのリテンション施策により、人材の定着と離職率の低減を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.1歳 4.7年 9,541,346円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.2%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 79.0%
男女賃金差異(正規) 80.0%
男女賃金差異(非正規) 61.2%


※連結ベースの数値です。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用者に対する女性比率(13.5%)、離職率(8%)、有給休暇取得率(76.0%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定業種への依存について

同社グループの売上収益の多くは国内金融機関向けが占めており、これは強みである一方で、金融機関のIT投資動向や事業環境の急変、法規制の変更などが業績に影響を与える可能性があります。これに対し、同社は非金融領域への事業拡大を推進し、顧客基盤の分散を図っています。

(2) 顧客企業の維持・獲得について

既存顧客からのリピートオーダーやリカーリングビジネスが収益の柱ですが、提供サービスが顧客ニーズに合致しない場合や競争力を失った場合、契約が維持できない可能性があります。また、エンタープライズDX等の新領域への拡大が計画通りに進まない場合、想定する成長を達成できないリスクがあります。

(3) 技術革新への対応について

同社はAIやクラウド等の最先端技術を活用していますが、技術革新のスピードは速く、変化する顧客ニーズや新たな技術トレンドに対応できなければ競争優位性が低下する恐れがあります。新技術の獲得や研究開発への継続的な投資を行い、環境変化に適応する体制を整えています。

(4) 人材戦略について

ビジネスとテクノロジー双方に精通した優秀な人材の確保・育成が事業の根幹です。技術や業界の変化に対応できる人材を育成できない場合や、採用競争の激化により必要な人材を確保できない場合、サービス品質や収益性の低下を招く可能性があります。これに対し、採用・育成の強化とリテンション施策を最重要戦略として推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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