シンプレクス・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シンプレクス・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するシンプレクス・ホールディングスは、銀行や証券会社など大手金融機関向けを中心としたシステムの提案、構築、運用保守などのITソリューション提供や戦略・DXコンサルティングを展開しています。直近の業績は売上収益が587億円、税引前利益が144億円と増収増益の傾向です。


※本記事は、シンプレクス・ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第10期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月11日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. シンプレクス・ホールディングスってどんな会社?


大手金融機関等に向けたITソリューションの提供と戦略・DXコンサルティングを展開しています。

(1) 会社概要


1997年にシンプレクス・リスク・マネジメントとして設立され、証券会社向けにITソリューションの提供を開始しました。その後、銀行や外国為替証拠金取引業者向けなどに事業を拡大し、2016年に持株会社体制へ移行して現社名となりました。2021年にはコンサルティングサービスを開始しています。

従業員数は連結で1,850名、単体で146名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は創業者の金子英樹氏、第3位は事業会社であるSBIホールディングスとなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.58%
金子 英樹 12.20%
SBIホールディングス 5.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。
代表取締役社長CEOは金子英樹氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
金子 英樹 代表取締役社長CEO 1987年アーサー・アンダーセン・アンド・カンパニー入社。シティグループ証券等を経て1997年に同社グループへ入社し、2016年より現職。
助間 孝三 取締役副社長共同COO 1996年アンダーセン・コンサルティング入社。アクセンチュア等を経て2008年に同社グループへ入社し、2021年より現職。
早田 政孝 取締役副社長共同COO 2002年アクセンチュア入社。同社グループとアクセンチュアを経て2020年に同社グループへ入社し、2021年より現職。
江野澤 慶亮 取締役CFO 2007年に同社グループへ入社。2017年に同社へ転籍し、2021年より現職。


社外取締役は、秋山良三氏(元サンガード リスク・アンド・トレーディング代表取締役)、小笠原範之氏(元日興システムソリューションズ代表取締役会長)、杉田庸子氏(元フロネシス・パートナーズ)、高橋麻理氏(Authense法律事務所)、浜西泰人氏(元みずほ証券副社長執行役員)、廣田直人氏(元三菱UFJモルガン・スタンレー証券取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、ITソリューションの提供を中心とする単一セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

ITソリューション


同社グループは、銀行、総合証券、インターネット証券などの大手金融機関や官公庁を含む幅広い顧客に対し、システムの提案、構築、運用保守に係るITソリューションを一気通貫で提供しています。また、先端技術に立脚したDX特化型の戦略立案と実行支援などのコンサルティングサービスも展開しています。

収益は、顧客企業のシステム開発や運用保守、共同利用型サービスの提供に伴う利用料、コンサルティングフィーから得ています。運営は、戦略・DXコンサルティング及び業務設計を担うXspear Consultingと、テクノロジーを軸としたシステム開発や運用保守を担うシンプレクスが一体となって行っています。

その他


主としてハードウェア・ミドルウェアなどの物品販売を行っており、各事業会社がソリューション提供に付随して展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、一貫して増収増益の傾向が続いています。売上収益は順調に拡大を続けており、それに伴い税引前利益も毎期着実に増加しています。利益率も年々向上しており、収益性の改善が継続していることが見受けられます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 306億円 349億円 407億円 474億円 587億円
税引前利益 62億円 73億円 87億円 107億円 144億円
利益率(%) 20.2% 20.9% 21.5% 22.6% 24.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 42億円 54億円 62億円 78億円 105億円

(2) 損益計算書


売上収益の拡大に伴い、売上総利益および営業利益も力強い伸びを示しています。また、売上総利益率と営業利益率の両方が前期から改善しており、コスト効率を高めながら事業規模を拡大していることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 474億円 587億円
売上総利益 74億円 125億円
売上総利益率(%) 15.6% 21.3%
営業利益 108億円 144億円
営業利益率(%) 22.8% 24.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与が88億円、賞与引当金繰入額が21億円、採用教育費が21億円を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループはITソリューションの提供を中心とする単一セグメントで事業を展開しています。システムの構築や運用保守、コンサルティングサービス等の需要が拡大したことにより、前期と比較して大幅な増収増益を達成しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
連結(合計) 474億円 587億円 108億円 144億円 24.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益や資産売却などで得た資金を用いて、借入金の返済を進める改善局面にあるといえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 97億円 107億円
投資CF 5億円 20億円
財務CF -106億円 -117億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「日本発のイノベーションを世界へ向けて発信する」という経営理念のもと、顧客の本質的な課題解決を通じた価値創出を追求しています。ビジネスに深く精通したテクノロジーパートナーとして、顧客ビジネスの成功に貢献する高付加価値サービスの提供を通じ、持続的な成長と高い収益性を実現していくことを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社グループでは、特定の技術領域に閉じることなく、変化を機会として捉え、ビジネスとテクノロジーの双方を横断しながら新たな価値を創出できるハイブリッド人材を重視しています。創業以来、「最高のプレイヤーに最高の報酬を、そして次なる最大のチャンスを」という考え方を大切にし、年次を問わず仕事の成果と質で評価する完全実力主義を実践しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、長期成長戦略「Vision1000」で掲げる売上収益1,000億円の実現時期を2030年3月期に明確化し、2027年3月期から2030年3月期までの4カ年を対象期間とする中期経営計画「中計2030 -Vision1000-」を策定しています。また、重要な経営指標として以下の目標を掲げています。

・ROE目標
・連結配当性向40%

(4) 成長戦略と重点施策


生成AIなどの先端技術を積極的に活用し、サービスの品質と生産性を高めることで、収益性の向上と提供価値の高度化を図ります。また、人員数の増加に過度に依存しない非労働集約型ビジネスの確立を目指します。金融領域における利便性向上や高度化の支援に加え、官公庁を含む多様な非金融領域でのDX支援を通じて、産業横断的な展開を推進し、顧客基盤の拡大と深耕を進めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ビジネスとテクノロジーの双方を横断しながら新たな価値を創出できるハイブリッド人材の獲得・育成・最適配置を最重要戦略としています。新卒では将来の成長可能性を重視したポテンシャル採用を、中途では高い専門性を有する人材の確保を推進します。体系化された育成プログラムや戦略に連動した人員配置を通じて、価値提供の再現性と生産性を高め、従業員の継続的な成長を支えていきます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 33.6歳 4.4年 9,385,342円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.9%
男性育児休業取得率 55.4%
男女賃金差異(全労働者) 93.0%
男女賃金差異(正規労働者) 94.5%
男女賃金差異(非正規労働者) 62.1%


※女性管理職比率及び男性育児休業取得率は、連結会社としての数値を記載しています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総従業員数に対する女性比率(15.9%)、離職率(9.0%)、有給休暇取得率(74.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定業種への依存に関するリスク


同社グループの売上収益は、国内の金融取引業者や銀行などの金融機関向けが高い割合を占めています。非金融機関向けの取引拡大など顧客ポートフォリオの多様化を進めているものの、国内金融機関におけるIT投資動向や事業環境が急変した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 顧客企業の維持・獲得に関するリスク


既存顧客からの売上を維持・増加させるビジネスモデルを展開していますが、提供するソリューションが顧客ニーズに合致しない場合や競争力のある価格で提供できない場合、売上を維持できない可能性があります。また、非金融分野への事業拡大が計画通りに進まない場合も、想定する収益成長を達成できないおそれがあります。

(3) 技術革新への対応に関するリスク


生成AIに代表される先端技術の急速な進展に伴い、顧客のIT投資内容や内製化の動きが変化しています。これらの技術革新や市場環境の変化に適時かつ十分に対応できない場合、同社グループの競争優位性が低下し、受注機会の減少や収益性の悪化が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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