グローバルセキュリティエキスパート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グローバルセキュリティエキスパート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グローバルセキュリティエキスパートは、東京証券取引所グロース市場に上場するサイバーセキュリティ特化の専門企業です。中堅企業向けにコンサルや脆弱性診断等のサービスを提供するほか、専門人材の育成事業も展開しています。旺盛な需要を捉え、直近の業績は売上と利益ともに過去最高となる大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、グローバルセキュリティエキスパートの有価証券報告書(第43期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. グローバルセキュリティエキスパートってどんな会社?


同社は「サイバーセキュリティ教育カンパニー」として、多面的なセキュリティサービスを展開しています。

(1) 会社概要


同社は1984年にビジネスブレイン太田昭和の全額出資により設立されました。2000年にネットワークセキュリティ事業を譲り受け、現在の社名へ変更し専門企業としてスタートしました。2012年に標的型メール訓練サービスの提供を開始し、2021年には東証マザーズ(現グロース市場)への上場を果たしています。

現在の従業員数は連結で221名、単体で187名となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は同社の元親会社であるビジネスブレイン太田昭和で、第2位は資本業務提携先であり同社サービスの販売推進を担う兼松エレクトロニクス、第3位は外資系信託銀行の顧客口座となっています。

氏名 持株比率
ビジネスブレイン太田昭和 39.56%
兼松エレクトロニクス 20.26%
BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC) 3.36%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は青柳史郎氏が務めています。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
青柳史郎 代表取締役社長 1998年ビーコンインフォメーションテクノロジー入社。2012年同社に入社し、2014年執行役員営業本部長等を経て、2018年より現職。
原伸一 代表取締役副社長 1991年アマダメトレックス入社。アドバンスト・リンク代表取締役等を経て、2018年同社に入社し、代表取締役副社長に就任。現在に至る。
三木剛 常務取締役 エリア統括本部 本部長 2007年神戸デジタル・ラボ入社。2019年同社に入社し、西日本支社長や取締役等を経て、2026年より現職。
中村貴之 常務取締役 教育事業本部 本部長 2001年ソフトバンク・テクノロジー入社。スカイディスクを経て2019年同社入社。執行役員営業本部長や取締役等を経て、2025年より現職。
吉見主税 取締役 西日本支社 支社長 2005年パナッシュ(現EPコンサルティングサービス)入社。同社取締役を経て、2020年同社入社。2024年より現職。
鈴木貴志 取締役 サイバーセキュリティ事業本部 副本部長 テクノロジー統括部 統括部長 サイバーセキュリティ研究所 所長 1992年三菱電機入社。フューチャーシステムコンサルティング等を経て2014年同社入社。2024年取締役となり、2025年より現職。
後藤慶 取締役 サイバーセキュリティ事業本部 副本部長 2003年日本サードパーティ入社。ソフトバンクBB等を経て2020年同社入社。CX本部長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、近藤壮一(兼松エレクトロニクス専務取締役)、岡田幸憲(ビジネスブレイン太田昭和執行役員)、上野宣(トライコーダ代表取締役)、井上純二(元日本電気専任監査役)、古谷伸太郎(元EY新日本有限責任監査法人代表社員)、水谷繁幸(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「サイバーセキュリティ事業」などの事業を展開しています。

(1) サイバーセキュリティ事業


企業のサイバーセキュリティに関する課題に対し、コンサルティング、脆弱性診断、セキュリティソリューション、セキュリティ訓練などを提供しています。中堅・中小企業を中心とする民間企業や官公庁が主な顧客です。

顧客に最適なセキュリティ製品の販売や運用管理のサポート、診断や訓練のサービス提供を通じて収益を得ています。運営は同社が主体となって行っています。

(2) セキュリティ教育事業


セキュリティエンジニアやITエンジニア向けに、トレーニングや認定資格試験を提供する事業です。EC-Councilの認定トレーニングや自社開発の「SecuriST(セキュリスト)」等の講座を展開しています。

受講企業や個人の情報セキュリティ担当者、エンジニア等から、講座の受講料や資格試験の受験料を受け取る収益モデルです。運営は同社が行っています。

(3) セキュリティ人材事業


セキュリティ人材に特化したSES(システムエンジニアリングサービス)を提供しています。パートナー企業のIT人材を教育によりリスキリングしたうえで、顧客企業に派遣・提供しています。

専門人材の技術提供を通じて、人材不足に課題を抱える顧客企業からサービス利用料を受け取ります。運営は同社の連結子会社であるCyberSTARが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期分の連結業績を見ると、社会全体のDX化やAI普及に伴いサイバーセキュリティ対策の需要が急増したことを背景に、順調な成長を遂げています。すべての事業においてサービス提供が伸長し、利益率も大きく向上しながら、過去最高の増収増益を達成しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 88億円 110億円
経常利益 16億円 22億円
利益率(%) 17.8% 20.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 15億円

(2) 損益計算書


直近の損益状況を見ると、増収効果により売上総利益率と営業利益率ともに改善が進んでいます。人的資本への投資を拡充しつつも、原価を意識した効率的な事業運営が奏功し、売上の伸びがコスト増加分を大きく上回る形で利益の創出につながっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 88億円 110億円
売上総利益 31億円 40億円
売上総利益率(%) 34.8% 36.2%
営業利益 16億円 22億円
営業利益率(%) 18.3% 20.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が6.1億円(構成比35%)、役員報酬が2.0億円(同11%)を占めています。売上原価については、材料費が31.4億円(構成比45%)、労務費が9.2億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はサイバーセキュリティ事業の単一セグメントですが、部門別ではすべてのサービスが大きく伸長しています。中堅企業を中心とする旺盛なセキュリティ対策ニーズや、IT人材のリスキリング需要、自社に専門人材を置きたいという派遣ニーズを的確に捉え、全事業部門で前年を大きく上回る売上を記録しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
サイバーセキュリティ事業 62億円 72億円
セキュリティ教育事業 10億円 15億円
セキュリティ人材事業 16億円 23億円
連結(合計) 88億円 110億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は39.8%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も44.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「サイバーセキュリティ教育カンパニー」というコンセプトを掲げています。情報セキュリティに特化した専門会社として、セキュリティの全体像を網羅した教育サービスなどを提供しています。中堅企業を中心にサービスを提供する事業者や人材が不足している現状を踏まえ、長年培った豊富な知見を社会に還元することで、日本の情報セキュリティレベルの向上に貢献することを理念としています。

(2) 企業文化


同社は、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むことで、社会の持続的な発展に貢献できると考えています。その実現に向けて、あらゆるステークホルダーとのエンゲージメントを重視し、公正かつ透明性の高い経営を目指しています。また、多様な属性や経験を持つ人材を積極的に採用し、自己研鑽を促進しながら、社員が健康でモチベーション高く働きやすい環境を整備する文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


同社は成長性と収益性を重視しており、経営計画における重要な経営指標として「売上高の前期比増加率」および「売上高営業利益率」の継続的な向上を掲げています。具体的な数値目標の記載はありませんが、事業活動のあらゆる場面でAIを活用した効率化などの工夫を進め、準大手から中小企業まで最適化したサービスを提供することで、強い経営基盤の構築を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「教育」を軸として中堅・中小企業に最適化したサービスを提供し、顧客の自衛力向上と日本のセキュリティレベル底上げを中長期的戦略としています。今後の重点施策として、AIを活用した既存サービスの高度化・効率化や新サービスの創出、地方金融機関等と連携した日本全国への商圏拡大を推進します。さらに、専門人材やIT人材のリスキリングを通じたセキュリティ人材の提供モデルを確立し、サービスの多角的な連携によるアップセルやクロスセルを図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


サイバーセキュリティ分野における専門人材の不足という課題に対し、採用時点での専門性に限定せず、入社後の教育・研修を通じて専門人材へと育成する方針を掲げています。また、テレワーク勤務や選択式時差出勤、時間単位有給制度などの柔軟な働き方を推進し、ワークライフバランスの実現を支援しています。株式給付信託をはじめとしたインセンティブ制度や福利厚生も充実させ、エンゲージメントの向上と離職防止に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.0歳 4.7年 7,695,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.7%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、男性育児休業取得率および男女賃金差異に関する記載はありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サイバーセキュリティ需要の低迷


中堅企業を中心としたサイバーセキュリティ需要は活況を呈していますが、経済環境の変化などの要因によって需要が著しく低迷した場合、同社グループの事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 中堅企業向け市場での競合出現


同社グループは中堅企業に最適化したサービスと価格を提供し、独自のポジションを獲得しています。現在は直接的な競合は少ないと考えていますが、将来的に同市場へ競合他社が参入してきた場合、同社の優位性が揺らぎ、財務状況に影響を与えるリスクがあります。

(3) 専門知識を有する人材の確保


サイバーセキュリティ業界では専門人材の不足が共通の課題となっています。同社グループでは、社内外での教育講座を通じた人材育成や、柔軟な働き方の推進による定着を図っていますが、事業拡大に見合う十分な人材を確保できない場合、サービス提供の遅延や生産性低下を招く恐れがあります。

(4) 日々変化する技術革新への対応


サイバーセキュリティ分野は、新たな脅威の発生や技術革新による環境変化が激しい特徴があります。同社グループは常に情報収集に努め、実効性の高いサービスを提供していますが、こうした技術革新への対応が遅れ、他社に先行された場合には、事業展開にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。