三和油化工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三和油化工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・名証メイン上場。産業廃棄物の再資源化や化学品製造を行う環境関連事業を展開しています。2025年3月期は、リユース事業の取扱数量が増加し増収となる一方、化学品事業の販売伸び悩みや材料費等のコスト増加が影響し、減益となりました。


※本記事は、株式会社三和油化工業 の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三和油化工業ってどんな会社?


使用済みの産業廃棄物を「資源」と捉え、再資源化(リユース・リサイクル)や環境に配慮した化学品製造を行う企業です。

(1) 会社概要


1970年に自動車関連企業向けの油剤販売を目的に設立されました。1989年に産業廃棄物の中間処分業許可を取得し、リユース・リサイクル事業へ本格参入しています。1994年には蒸留設備を新設して有機溶剤の再資源化を開始し、2011年には茨城工場を新設して東日本へ拠点を拡大しました。2021年に株式上場を果たし、2024年には九州地方での事業展開を目的に子会社サンワマテリアルソリューションズを設立するなど、事業基盤を強化しています。

2025年3月31日現在の従業員数は連結431名、単体277名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は有限会社エムエムエス、第2位は三和油化社員持株会、第3位は社長の柳均氏となっており、創業家や従業員が主要な持分を保有しています。有限会社エムエムエスは、同社社長が取締役を務める資産管理会社と考えられます。

氏名 持株比率
有限会社エムエムエス 34.80%
三和油化社員持株会 8.06%
柳 均 5.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長執行役員は柳均氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
柳 均 代表取締役社長執行役員 1999年入社。経営企画室長、管理部長、専務を経て2012年より社長を務める。2021年より現職。
熊﨑 聡 取締役執行役員経営管理部長 2002年入社。東京営業所長、管理部長などを歴任。2021年より現職。
髙田 淳 取締役執行役員生管・DX推進部兼茨城事業所担当 1999年入社。製造部長兼石根工場長などを経て、2025年4月より現職。
和田 浩一 取締役常勤監査等委員 元豊田通商理事。エネ・ビジョン代表取締役社長などを経て、2021年より現職。


社外取締役は、神谷俊一(弁護士)、皆見幸(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「環境関連事業」の単一セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) リユース事業


製造業の顧客工場から排出される使用済み廃溶剤、廃酸、有用金属などの産業廃棄物を引き取り、中間処分・再資源化を行っています。蒸留や溶媒抽出などの化学的手法を用いて分離・精製し、元の用途や新たな素材として再利用できる状態に戻します。

収益は主に再生製品の販売から得ています。回収した再生製品を元の顧客に戻して再使用(リユース)してもらうほか、他の顧客に新品の代替原料として販売します。運営は三和油化工業が中心となり行っています。

(2) リサイクル事業


使用済み廃溶剤、汚泥、廃プラスチック類などを中間処分し、再生燃料(サーマルリサイクル)やセメント・鉄鋼の副原料として再資源化する事業です。中和、混合エマルジョン化、混練などの処理を行い、無害化・減量化します。

収益は、排出元からの処理費と、再生燃料や副資材としての販売代金から成ります。運営は三和油化工業のほか、サンワ南海リサイクル、サンワ境リサイクルなどの子会社が担っています。

(3) 化学品事業


有機・無機化学品およびそれらを精製・加工した製品の製造・販売を行っています。汎用化学品のほか、半導体や電池などのエレクトロニクス分野で使用される高純度化学品の製造や受託加工も手掛けています。

収益は、顧客への化学品販売代金および受託加工料です。リユース・リサイクル事業で培った分離・精製技術を活用し、金属分や異物を除去する高度な品質管理に対応しています。運営は主に三和油化工業が行っています。

(4) 自動車事業


自動車メーカーおよび部品メーカー向けに、潤滑油、金属加工油、工業用洗浄剤などの油剤製品や各種副資材を製造・販売しています。顧客ニーズに合わせて原材料をブレンド調合し、環境負荷低減や省エネ効果のある製品を提案しています。

収益は、製品の販売代金です。創業の地である愛知県の自動車産業を基盤とした事業であり、運営は主に三和油化工業が行っています。

(5) エンジニアリング事業


製造業顧客の設備解体・清掃およびそれに伴う廃棄物処理を一貫して提供するソリューション事業です。PCB廃棄物の適正処理支援や、化学プラント等の改廃時のアスベスト分析、解体、収集運搬などをコーディネートします。

収益は、解体・清掃作業や廃棄物処理のコーディネート業務に対する対価です。運営は三和油化工業および子会社が連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期まで順調に拡大してきましたが、その後は横ばいから微増で推移しています。一方、利益面では2023年3月期をピークに減少傾向にあり、2025年3月期の経常利益はピーク時の半減以下となっています。利益率も低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 125億円 155億円 174億円 156億円 160億円
経常利益 11億円 16億円 19億円 14億円 9億円
利益率(%) 8.7% 10.5% 11.2% 8.7% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 13億円 13億円 10億円 6億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微増したものの、売上総利益は減少しています。これは売上原価の増加率が売上高の増加率を上回ったためです。さらに、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益は大きく減少しました。営業利益率は8.2%から5.2%へと低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 156億円 160億円
売上総利益 46億円 45億円
売上総利益率(%) 29.6% 28.1%
営業利益 13億円 8億円
営業利益率(%) 8.2% 5.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が約11億円(構成比約30%)、荷造発送費が約10億円(同約27%)を占めています。売上原価に関しては、材料費が約38億円(製造原価の約49%)、経費が約32億円(同約41%)を占めています。

(3) セグメント収益


リユース事業は再生製品の販売価格上昇と取扱数量増により大幅な増収となりました。一方、リサイクル事業は取扱数量が増加しつつあるものの単価下落により微減収、化学品事業と自動車事業は販売数量の伸び悩み等により減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
リユース事業 31億円 40億円
リサイクル事業 56億円 56億円
化学品事業 36億円 32億円
自動車事業 24億円 24億円
エンジニアリング事業 10億円 10億円
連結(合計) 156億円 160億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金を借入返済と投資に充てており、**健全型**のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 20億円 17億円
投資CF -11億円 -25億円
財務CF -12億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「誠実に」「確実に」を社是とし、「責任」「挑戦」「創造」を経営理念に掲げています。「環境ニーズを創造する」をコンセプトとして、環境負荷低減と資源循環への取り組みや環境にやさしい製品づくりを通じて、社会的な価値を創造し、社会から信頼される企業となることを目指しています。

(2) 企業文化


お客様の信用を得ることを第一目的とし、与えられた役割を常に考え、「誠実に、確実にやり遂げる集団」を目指しています。また、過去の事故を教訓に、安全を最優先する文化を根付かせるため、ハード・ソフト両面からの対策や継続的な教育・訓練を実施しています。コンプライアンス遵守も重要課題として位置づけています。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業の事業活動の成果を示す「営業利益」を主な経営指標として注視しています。また、収益性の判断指標として「売上高営業利益率」、および産業廃棄物の引取数量と商品・製品の販売数量の合計である「取扱数量」を掲げています。

* 売上高営業利益率:5.2%(2025年3月期実績)
* 取扱数量:389,076t(2025年3月期実績)

(4) 成長戦略と重点施策


「社会から必要とされる環境リーディングカンパニー」を目指し、中長期的な成長が見込まれる半導体・電池などの電子材料分野への製品供給やサービス提供に注力しています。また、中部・東日本・西日本の3拠点体制に加え、九州地方での新拠点(サンワマテリアルソリューションズ)の稼働準備を進めています。

* 設備投資:国内3拠点を中心とした段階的な投資
* アライアンス:他社との連携による新規顧客開拓と取扱数量増加
* 新拠点:2027年4月の稼働を目指す九州の新会社設立

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材をコストではなく「将来に向けた投資」と捉えています。従業員が自らスキルやマインドを磨くことを支援し、エンゲージメントや組織パフォーマンスの向上を目指しています。また、顧客ニーズの高度化に対応するため、必要な人材の確保と育成を継続的に行うことを課題としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.4歳 9.3年 5,481,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 5.0%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 79.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 89.1%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 19.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有休取得率(64.2%)、月間の平均残業時間(25.2時間)、定着率(90.5%)、女性平均勤続年数(6.97年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 労働災害・安全衛生リスク


同社は多くの生産設備や危険物、化学物質を取り扱っています。過去に茨城事業所で重大な爆発・火災事故が発生した経緯があり、安全管理を最優先課題としていますが、万一重大事故が発生した場合には、補償や復旧費用、社会的信用の失墜により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 許認可および法規制リスク


産業廃棄物処理業等の事業継続には、廃棄物処理法をはじめとする各種法令の遵守と許認可の更新が必須です。法令違反や欠格要件への抵触による事業停止や許可取消し、または環境規制の強化による設備対応費用の増加などが、経営に影響を与える可能性があります。

(3) 市場ニーズの変化


環境関連法規制や顧客ニーズは高度化・細分化が進んでいます。同社は技術力向上等で対応していますが、拡大する需要や新たなニーズを的確に捉えて受注に結び付けられなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 新規事業および設備投資リスク


事業拡大のため、新規事業(九州での新会社設立など)や設備投資を積極的に行っていますが、これらには不確定要素が含まれます。計画通りに事業が進捗しなかった場合、投資負担が重荷となり、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。