三和油化工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三和油化工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三和油化工業は、東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所メイン市場に上場し、産業廃棄物のリユース・リサイクル事業や化学品、油剤製品の製造販売を展開しています。直近の業績は、新規M&Aや環境ニーズの高まりを背景に、売上・利益ともに大幅な増収増益を達成しており、資源循環型社会の実現に向け成長を続けています。


※本記事は、三和油化工業の有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三和油化工業ってどんな会社?


同社は、産業廃棄物の再資源化や化学品の製造販売を通じて、環境負荷の低減と資源循環に貢献する環境リーディングカンパニーです。

(1) 会社概要


1970年に自動車関連企業への油剤・化学品の販売を目的として設立されました。1989年に産業廃棄物中間処分業の許可を取得し、現在の主力であるリユース・リサイクル事業の基盤を構築しました。2021年の上場を経て、2025年には貴金属・レアメタルのリサイクルを手掛ける企業を完全子会社化するなど、環境関連事業の拡大を続けています。

同社グループは連結従業員数458名、単体280名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業家関連とみられる有限会社エムエムエスで、第2位は同社の社員持株会となっています。株主上位には創業家関連の個人も名を連ねており、安定した事業基盤を背景に環境ニーズに応える事業活動を推進しています。

氏名 持株比率
有限会社エムエムエス 34.81%
三和油化社員持株会 8.58%
柳 均 5.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長執行役員は柳均氏が務めており、社外取締役比率は33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
柳 均 代表取締役社長執行役員 1999年同社入社。取締役経営企画室長、常務、専務を経て2012年に代表取締役社長に就任。サンワマテリアルソリューションズなどの関連会社役員を歴任し、2021年より現職。
熊﨑 聡 取締役執行役員経営管理部長 2002年同社入社。東京営業所長、管理副部長などを経て2019年に取締役管理部長に就任。サンワ南海リサイクル等の関連会社役員を歴任し、2021年より現職。
柳 至 取締役執行役員技術部電子材料・農業プロジェクト担当 2009年同社入社。技術部長等を経て2012年に取締役技術部長に就任。サンワ分析センター代表取締役社長等を歴任し、2026年より現職。
和田 浩一 取締役常勤監査等委員 1979年豊田通商入社。同社北海道支店長や関連会社代表取締役社長等を歴任。2020年に同社常勤社外監査役となり、2021年より現職。


社外取締役は、神谷俊一(弁護士・正信法律事務所開設)、皆見幸(公認会計士・税理士・皆見幸会計事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、報告セグメントとして「環境関連事業」の単一セグメントですが、主に5つの事業を展開しています。

リユース事業


製造業顧客から排出される使用済み廃溶剤や廃酸、有用金属等の産業廃棄物を、独自の化学的手法で分離・精製し、塗料や洗浄剤等の素材として再使用できる製品へとマテリアルリサイクルしています。

再生した製品を元の顧客に戻して再使用(リユース)してもらうほか、別の顧客に新品に代わる素材原料として販売することで収益を得ています。事業運営は同社やサンワ石販、エー・アンド・エイチ・ジャパンなどが担っています。

リサイクル事業


元の用途として再使用できない使用済み廃溶剤、汚泥、廃プラスチック類などの産業廃棄物を、中和や混練などの手法により中間処分・無害化し、別の用途で再資源化するサービスを提供しています。

中間処分した回収物を、重油や石炭の代替となる再生燃料(サーマルリサイクル)として販売するほか、セメントや鉄鋼の副原料等として販売することで収益を得ています。運営は同社のほか、サンワ南海リサイクルやサンワ境リサイクルが行っています。

化学品事業


有機化学品や無機化学品等の汎用化学品に加え、半導体や電子機器、電池などのエレクトロニクス分野で使用される高純度化学品の製造・販売、受託加工を行っています。

顧客への製品販売や、原材料指定・仕様等の要望に応じた受託加工の対価が主な収益源です。使用済み薬品の一部はリユース事業の原料として回収し、循環型モデルを形成しています。事業運営は同社およびサンワ石販が担っています。

自動車事業


愛知県の自動車産業をメイン顧客として、潤滑油や金属加工油などの油剤製品、工業用洗浄剤、および自動車製造工程で使用される各種副資材の製造・販売を提供しています。

顧客ニーズに合わせて複数の原材料をブレンド調合し、環境負荷の少ない製品や安全性の高い製品を提案・販売することで収益を得ています。同社の創業からの基盤であり、同社やサンワ石販が事業を運営しています。

エンジニアリング事業


製造業顧客の設備解体・清掃、PCB含有廃棄物などの適正処理に係る収集運搬、許認可を受けた業者による廃棄物処理までの最適なコーディネートを一貫して提供しています。

化学プラント等の改廃時の解体工事やアスベスト分析、産業廃棄物の処理に関するトータルソリューションの対価として収益を得ています。事業運営は同社やサンワ石販などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が概ね右肩上がりで推移しており、直近では202.6億円へと大きく伸長しています。経常利益は一時的に落ち込みが見られた時期もありましたが、直近の期では17.0億円へと大幅な回復を見せています。利益率も8%台に改善しており、環境関連需要の的確な取り込みや事業拡大が奏功しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 155.4億円 173.7億円 156.3億円 160.4億円 202.6億円
経常利益 16.3億円 19.4億円 13.6億円 9.0億円 17.0億円
利益率(%) 10.5% 11.2% 8.7% 5.6% 8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 8.6億円 12.2億円 8.2億円 4.4億円 6.5億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の160.4億円から当期は202.6億円へと約26%の大幅な増収となっています。売上高の拡大に伴い売上総利益も増加し、利益率がわずかに改善しました。その結果、営業利益は前期の8.4億円から当期は15.4億円へと大きく伸長しており、本業の収益性が力強く向上していることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 160.4億円 202.6億円
売上総利益 45.0億円 57.5億円
売上総利益率(%) 28.1% 28.4%
営業利益 8.4億円 15.4億円
営業利益率(%) 5.2% 7.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与(引当金等含む)が13.3億円(構成比32%)、荷造発送費が11.0億円(同26%)を占めています。

(3) セグメント収益


事業別の売上規模を見ると、リユース事業が前期の39.7億円から当期は72.4億円へと大きく成長し、同社の最大事業となっています。リサイクル事業も59.1億円と堅調に推移しています。新規M&Aによる貴金属・レアメタル再資源化の取扱高の増加などが寄与し、環境関連事業全体で大幅な増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
リユース事業 39.7億円 72.4億円
リサイクル事業 55.6億円 59.1億円
化学品事業 31.8億円 32.1億円
自動車事業 23.8億円 23.5億円
エンジニアリング事業 9.5億円 15.6億円
連結(合計) 160.4億円 202.6億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 16.7億円 19.4億円
投資CF -25.0億円 -37.6億円
財務CF -2.9億円 14.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「責任」「挑戦」「創造」を経営理念に掲げ、「環境ニーズを創造する」をコンセプトに事業を展開しています。あらゆるステークホルダーの信用を得ることを第一の目的とし、廃棄物のリユース・リサイクルを通じた環境負荷低減と資源循環への取り組みを実践することで、社会からより信頼される企業となることを使命としています。

(2) 企業文化


1970年の創業以来、「誠実に」「確実に」を社是としており、与えられた役割を常に考え、誠実に、確実にやり遂げる集団を目指しています。安全を最優先する文化を社内に根付かせるため、ハード・ソフト両面からの対策と継続的な教育を重視し、地球規模のサステナビリティに配慮した経営を推進する価値観を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年度を見据えた長期ビジョン「グランドビジョン2030」を策定し、中長期的な成長が見込まれる業界に向けた製品供給や再資源化の提案を進めています。経営目標として以下の客観的な指標を掲げています。

* 売上高営業利益率
* 取扱数量(産業廃棄物の引取数量と商品・製品の販売数量の合計)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、半導体や電池などのエレクトロニクス分野を今後の成長ドライバーと位置づけ、再資源化技術の醸成と設備投資を推進しています。国内3拠点の設備増強やM&Aに加え、新たな拠点構築やアライアンス拡充を通じて新規顧客を開拓し、サーキュラーエコノミーの形成や脱炭素社会の実現に貢献する戦略を描いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材をコストではなく将来に向けた投資と捉え、従業員が自らスキルやマインドを磨くことを支援する「人的資本投資」を推進しています。働き方改革を通じて生産性・多様性・創造性をキーワードにした企業文化改革を進めるとともに、従業員一人ひとりにフォーカスした「人事のパーソナライゼーション」により働きがいのある職場を構築する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.7歳 9.6年 5,773,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 70.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.1%
男女賃金差異(正規雇用) 82.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 29.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有休取得率(63.9%)、月間の平均残業時間(21.6時間)、定着率(90.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 労働災害・安全衛生リスク


多種多様な化学物質や生産設備を取り扱うため、安全管理を徹底していますが、万一重大な事故や爆発・火災などの労働災害が発生した場合、被害者への補償や復旧費用の発生、事業停止などにより、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新事業と設備投資に関するリスク


事業領域の拡大に向けて新規事業やM&A、新工場建設などの設備投資に積極的に取り組んでいますが、不確定要素も多く、事業計画通りに達成できなかった場合、多額の投資負担が業績や財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 知的財産侵害に係るリスク


新規廃棄物の有効利用や化学品新製品の開発等の研究開発を行っています。事前の特許調査を実施していますが、他社保有の知的財産を侵害するリスクを完全に排除することは難しく、万一侵害が発生した場合は損害賠償等により業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。