ネットプロテクションズホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ネットプロテクションズホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、BNPL(後払い)決済サービスを主力事業として展開しています。「NP後払い」や「atone」等のサービスを提供しています。当連結会計年度は取扱高の増加やコスト適正化により増収となり、営業損益および最終損益ともに黒字転換を果たしました。


※本記事は、株式会社ネットプロテクションズホールディングス の有価証券報告書(第7期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ネットプロテクションズホールディングスってどんな会社?


国内初のBNPL(後払い)決済サービス「NP後払い」の提供企業を傘下に持つ純粋持株会社です。

(1) 会社概要


同社グループの祖業は2000年に設立された旧ネットプロテクションズに始まります。2002年にBtoC通販事業者向け「NP後払い」を開始し、2017年には会員制決済「atone」の提供を始めました。2018年に株式移転により持株会社体制へ移行し、現在の商号となりました。2021年に東京証券取引所へ上場し、台湾やベトナムでの現地法人設立など海外展開も進めています。

連結従業員数は336名、単体従業員数は16名です。筆頭株主は資本業務提携先のリコーリースで、第2位は投資ファンド、第3位は資本業務提携先のクレジットカード会社であるジェーシービーとなっています。

氏名 持株比率
リコーリース 10.93%
投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズⅤ号 10.66%
ジェーシービー 8.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は柴田紳氏が務めています。社外取締役比率は63.6%です。

氏名 役職 主な経歴
柴田 紳 代表取締役社長 日商岩井(現双日)、ITXを経て、2001年に旧ネットプロテクションズに出向。2004年に同社代表取締役に就任し、2018年より現職。
渡邉 一治 取締役CFO 朝日監査法人(現あずさ監査法人)、ディスコ、スクウェア・エニックス・ホールディングスCFO等を経て、2021年より現職。
山下 貴史 取締役CIO NTTソフトウェア、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム等を経て、2014年にネットプロテクションズ入社。2024年より現職。
秋山 瞬 取締役 ジェイブレインを経て、2009年にネットプロテクションズ入社。人事総務やセールスの責任者を歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、江尻裕一(株式会社yamanoha代表取締役)、中村公美(株式会社LIFULL社外取締役)、滝田健太郎(リコーリース株式会社執行役員)、中野功一(株式会社ビジコム監査役)、佐藤有紀(弁護士)、石井隆一(クオンタムリープ・グロース・イニシアティブ株式会社代表取締役社長)、市川雄介(株式会社アドバンテッジパートナーズ)です。

2. 事業内容


同社グループは、「決済ソリューション事業」の単一セグメントを展開しています。

(1) BtoC取引向けサービス


個人向けの後払い決済サービス「NP後払い」「atone」「NP後払いair」「AFTEE」等を提供しています。「NP後払い」は通販事業者向け、「atone」はスマートフォンを活用した会員制サービス、「NP後払いair」は訪問型役務サービス向け、「AFTEE」は台湾・ベトナム向けのサービスです。これらにより、購入者は商品到着後に支払いができる安心感を、販売元は代金回収リスクの回避などのメリットを得られます。

収益は、主に販売元(加盟店)から受け取る取引手数料(債権額面に対する所定の手数料率)や請求書発行手数料等から構成されています。また、「NP後払い」等において、購入者から延滞事務手数料を受領する場合もあります。運営は、国内については主に株式会社ネットプロテクションズ、海外についてはNP Taiwan, Inc.等の現地法人が行っています。

(2) BtoB取引向けサービス


企業間取引向けの掛け払い決済サービス「NP掛け払い」を提供しています。企業間取引における少額債権を主な対象とし、与信から請求書発行、入金確認、督促までの請求関連業務を代行するサービスです。販売元企業は業務のアウトソースによる効率化や未回収リスクの低減が可能となり、購入企業は多様な支払い方法やペーパーレス対応のメリットを享受できます。

収益は、販売元企業から受け取る取引手数料(債権額面に対する所定の手数料率)や請求書発行手数料等です。また、2024年10月より「NP掛け払い」の購入企業を対象としたオンライン・レンディングサービス「NPハンディレンディング」も開始しました。運営は株式会社ネットプロテクションズおよび株式会社NPファイナンスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上収益は増加傾向にあります。利益面では2023年3月期と2024年3月期に赤字を計上しましたが、2025年3月期には大幅な増益となり、税引前利益および当期利益ともに黒字転換を果たしました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 181億円 187億円 193億円 208億円 230億円
税引前利益 9億円 6億円 -5億円 -8億円 21億円
利益率(%) 4.8% 3.4% -2.7% -3.9% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 2億円 -4億円 -8億円 14億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上収益は増加し、営業利益は黒字に転換しました。売上総利益率および営業利益率ともに改善が見られます。これは、与信改善施策による貸倒関連費用等の抑制や、業務効率化による販売管理費の対取扱高比率の低下などが寄与したためです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 208億円 230億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 -6億円 21億円
営業利益率(%) -3.0% 9.1%


※同社はIFRS適用企業であり、売上総利益を損益計算書上で表示していません。営業費用のうち、決済代行に伴う回収手数料が63億円(構成比30%)、貸倒損失が22億円(同11%)、給料手当が17億円(同8%)などを占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは決済ソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの比較情報は記載していません。全体として、BtoBサービスにおける取扱高の伸長や、BtoCサービスにおける延滞事務手数料の導入などが収益増加に寄与しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
Total 203億円 224億円 -6億円 21億円 9.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


* パターン:**積極型**(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 19億円 66億円
投資CF -18億円 -15億円
財務CF 1億円 12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%でプライム市場平均(9.4%)を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.1%でプライム市場平均(非製造業24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「つぎのアタリマエをつくる」をミッションに掲げています。事業面ではBNPL決済ソリューションを提供することで、関わる全てのステークホルダーが手間なく信用リスクなく商取引を実現できるように貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


組織面では、従業員の成長、モチベーション維持およびパフォーマンス向上を目的として、「ティール組織」を採用しています。これは、従業員個々人が自律的に役割を考え業務遂行する組織形態であり、現場担当者の意見を尊重した意思決定の実現を図っています。

(3) 経営計画・目標


2025年5月に策定した中期経営計画(2026年3月期 - 2028年3月期)において、今後の更なる成長を目指し、財務ポリシーとして以下の目標数値を掲げています。

* 2028年3月期のGMV(取扱高)1兆円超
* 2028年3月期の営業利益40億円

(4) 成長戦略と重点施策


収益基盤の拡大に向け、各サービスの加盟店獲得と稼働促進に取り組みます。BtoCでは「NP後払い」の安定収益化と「atone」の成長加速、BtoBでは「NP掛け払い」による大手企業からの受注獲得を目指します。また、独自与信システムの深化による精度向上、情報セキュリティおよびガバナンスの強化、人材の高度化を重点施策として推進していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「自律・分散・協調」を実現するティール型組織を土台とし、従業員が個人の特性や希望に合わせた自己実現を果たすことが経営成績の最大化につながると考えています。採用活動には半数以上の従業員が関わり、価値観の合致を重視しています。また、マネージャー職を廃止した人事評価制度「Natura」や、部署を超えたワーキンググループ制度により、柔軟な意思決定とキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.4歳 1.9年 10,186,166円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.8%
男女賃金差異(正規雇用) 85.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 124.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、直近3年以内に入社した新卒在籍率(87.6%)、育児休業からの復職率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境およびBNPL市場に関するリスク


同社の事業は経済活動に付随するため、経済活動の停滞やEC市場の成長鈍化が業績に影響する可能性があります。また、現金やクレジットカードなど他の決済手段との競争に加え、類似のBNPLサービスを提供する事業者との競争激化により、手数料の減額や顧客離れが生じた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 提供サービスに係るリスク


同社は購入者に対する債権を買い取り、貸倒れリスクを負っています。独自の与信システム等によりリスク管理を行っていますが、想定以上の貸倒れや詐欺的取引が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、加盟店獲得の進捗や主要加盟店との関係悪化、海外展開におけるオペレーションや現地のカントリーリスクも経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 情報システム及び情報管理に係るリスク


サービスはSaaS形式で提供されており、システムトラブルが発生した場合、レピュテーションの悪化や業績への影響が懸念されます。また、多数の個人情報や企業情報を保有しているため、情報漏洩が発生した場合も同様の影響が生じる可能性があります。さらに、技術革新への対応遅れによるシステムの陳腐化もリスク要因として挙げられます。

(4) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに係るリスク


貸倒引当金の計上において、新規サービスや顧客増加により一時的に貸倒実績が増加した場合、想定以上の引当金計上が必要となる可能性があります。また、のれんの減損リスク、借入金利の上昇や財務制限条項への抵触による資金繰りへの影響、将来的な配当実施の方針変更などが、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。