ネットプロテクションズホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ネットプロテクションズホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ネットプロテクションズホールディングスは、東証プライム市場に上場し、「NP後払い」や「atone」をはじめとするBNPL(後払い)決済サービスを提供する決済ソリューション事業を展開しています。直近の業績は、売上収益が前年比9.5%増の252億円、営業利益が同35.4%増の28億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ネットプロテクションズホールディングスの有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ネットプロテクションズホールディングスってどんな会社?


同社は、日本初の信用リスク保証型BNPL(後払い)決済サービスを提供する決済ソリューション企業です。

(1) 会社概要


2000年1月に前身企業が設立され、2002年にB2C向け後払い決済サービス「NP後払い」の提供を開始しました。2011年にはB2B向けの「NP掛け払い」を開始し事業を拡大しています。2018年に株式移転により純粋持株会社として同社が設立され、2021年12月に東証一部へ上場しました。

現在の従業員数は連結で377名、単体で16名です。筆頭株主は事業提携先であるリコーリースで、第2位はファンドの投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズⅤ号、第3位は事業会社のジェーシービーとなっています。

氏名 持株比率
リコーリース 10.91%
投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズⅤ号 10.64%
ジェーシービー 8.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.18%です。代表取締役社長は柴田紳です。社外取締役は7名で、社外取締役比率は63.6%です。

氏名 役職 主な経歴
柴田紳 代表取締役社長 日商岩井、ITXを経て、2001年に旧ネットプロテクションズに出向。2004年に同社代表取締役に就任し転籍。2018年より現職。
山下貴史 取締役CIO NTTソフトウェア等を経て2014年に旧ネットプロテクションズ入社。執行役員等を経て2024年6月より現職。
岡田高幸 取締役CFO モルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券を経て2024年にネットプロテクションズ入社。2026年6月より現職。
秋山瞬 取締役 ジェイブレインを経て2009年に旧ネットプロテクションズ入社。人事・セールス等の要職を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、江尻裕一(元楽天執行役員)、中村公美(元日本板硝子執行役員)、滝田健太郎(リコーリース執行役員)、中野功一(元コナミグループIR部長)、佐藤有紀(弁護士)、石井隆一(元ソネット代表取締役社長・指名・報酬委員長)、市川雄介(アドバンテッジパートナーズパートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「決済ソリューション事業」を展開しています。

B2C取引向けサービス


B2C取引のEC等を対象にしたBNPL(後払い)決済サービスを提供しています。クレジットカード不要で基本情報のみで利用できる「NP後払い」、会員制の「atone」、訪問型役務サービス向けの「NP後払いair」、海外向けの「AFTEE」を展開しています。

収益源は、加盟店から受け取るシステム利用料や債権買取手数料、購入者からの請求書発行手数料等です。運営は主にネットプロテクションズが行い、海外は現地の台湾・ベトナム子会社が担当しています。

B2B取引向けサービス


企業間取引における少額債権を主対象とした掛け払い決済サービス「NP掛け払い」を提供しています。販売元企業は請求関連業務をアウトソースでき、購入企業は事前手続き不要で締め支払いが可能となります。

収益源は、加盟店から受け取るシステム利用料や債権買取手数料、成約サポート手数料等です。運営は主にネットプロテクションズが行い、購入企業向けのオンラインレンディングサービスはNPファイナンスが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の売上収益は直近5期間において一貫して右肩上がりで成長を続けています。一方、税引前利益は先行投資等の影響もあり一時的に赤字を計上した期間がありましたが、直近2期間では黒字転換し、利益率も11%台まで回復して順調な増収増益のトレンドを描いています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 187億円 193億円 208億円 230億円 252億円
税引前利益 6億円 -5億円 -8億円 21億円 29億円
利益率(%) 3.4% -2.7% -3.9% 9.3% 11.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 -4億円 -8億円 14億円 17億円

(2) 損益計算書


同社の損益構造を見ると、順調な売上成長に伴い売上総利益も拡大しています。また、販売管理費のコントロールや業務効率化の推進により、営業利益率も改善傾向にあり、本業での稼ぐ力が着実に強化されていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 230億円 252億円
売上総利益 105億円 120億円
売上総利益率(%) 45.5% 47.5%
営業利益 21億円 28億円
営業利益率(%) 9.1% 11.3%


営業費用のうち、回収手数料が64億円(構成比29%)、貸倒関連費用が38億円(同17%)、請求書発行手数料が18億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは決済ソリューション事業の単一セグメントです。主力サービスにおける加盟店の新規獲得や既存顧客の取引拡大が牽引し、取扱高が伸長しました。債権回収状況の良化等による費用減少も寄与し、着実な増益を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
決済ソリューション事業(合計) 224億円 246億円 21億円 28億円 11.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 67億円 90億円
投資CF -15億円 -17億円
財務CF 12億円 -41億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「つぎのアタリマエをつくる」をミッションに、事業および組織の両面で革新的な仕組みを作り、それを広げていくことを目指しています。事業面ではBNPL決済ソリューションを提供することで、関わる全てのステークホルダーが手間や信用リスクなく商取引を実現できるように貢献しています。

(2) 企業文化


従業員の成長、モチベーションの維持およびパフォーマンスの向上を目的として、従業員個々人が自律的に役割を考え業務遂行する「ティール型組織」を採用しています。階層やマネージャー制度を廃止し、現場担当者の意見を尊重した意思決定を実現することで、歪みのない組織文化を築いています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、毎年ローリング方式で次期からはじまる3ヵ年の中期経営計画を策定しています。「中期経営計画(2027年3月期 - 2029年3月期)」においては、今後のさらなる成長を目指し、取扱高や営業利益などの経営数値目標を掲げています。

* 2029年3月期のGMV(取扱高)1兆4,000億円
* 2029年3月期の営業利益60億円
* 3ヵ年のGMV CAGR(年平均成長率)22%
* 3ヵ年の営業利益CAGR 28%

(4) 成長戦略と重点施策


事業目標の達成に向けて、加盟店の獲得およびサービスの稼働促進による「収益基盤の拡大」を最重要課題としています。また、膨大な取引データを活用した「独自与信システムの深化」や、「AIの活用による競争力強化および収益性の向上」を推進し、業務プロセスの効率化と強固な収益構造の構築を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


市場の変化に適応しイノベーションを生み出す組織基盤を最大の競争優位性と位置づけています。誠実で変革志向を持つ人材を採用し、全体最適と長期視点を持てるよう成長を支援しています。自律分散型組織の土台のもと、誰もが横断的なプロジェクトに参画できる制度を通じ、次世代人材の育成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.4歳 2.6年 11,661,379円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.1%
男性育児休業取得率 116.6%
男女賃金差異(全労働者) 80.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 93.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休業からの復職率(91.7%)、直近3年以内に入社した新卒在籍率(89.7%)、採用に携わった従業員の割合(52.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) BNPL決済市場における競争環境の変化


世界的なBNPL(後払い)決済サービスの拡大に伴い、類似サービスを提供する事業者が増加しています。同社は独自の与信判断システム等により高い競争力を有していますが、新規参入企業との競争激化によって手数料の減額や顧客離れが生じた場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 提供サービスに係る貸倒れおよび詐欺的取引の発生


同社のサービスは、購入者に対する債権を買い取る仕組みのため、貸倒れリスクを負担しています。蓄積したデータを活用し精緻な与信判断を行うことでリスクの未然防止に努めていますが、予想以上の貸倒れや詐欺的取引が発生した場合には、事業展開や業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 情報システムおよび顧客情報の管理体制


サービスをSaaS形式で提供し、多数の個人情報や企業情報を保有しています。自然災害やサイバー攻撃等によるシステムトラブル、または外部からの不正アクセス等による情報の漏洩が発生した場合、同社の信用低下や損害賠償負担が生じ、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。