HYUGA PRIMARY CARE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

HYUGA PRIMARY CARE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

HYUGA PRIMARY CAREは東証グロース市場に上場し、在宅訪問薬局事業や中小薬局支援のきらりプライム事業、プライマリケアホーム事業を展開しています。直近の業績は、出店費用や人員増加に伴うコスト増により増収減益となりましたが、在宅患者数は過去最高を記録し、事業規模の拡大が続いています。


※本記事は、HYUGA PRIMARY CARE株式会社の有価証券報告書(第19期、自2025年4月1日 至2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. HYUGA PRIMARY CAREってどんな会社?


在宅訪問薬局や介護施設の運営、中小薬局向けの経営支援システムを提供するプライマリーケアのプラットフォーム企業です。

(1) 会社概要


2007年11月に設立され、2008年1月に「きらり薬局」を開局して訪問調剤サービスを開始しました。2019年2月には中小薬局向けの「きらりプライム事業」を、2021年12月には東証マザーズへ上場しました。その後、2023年1月に住宅型有料老人ホームの運営を開始しています。

従業員数は連結で882名、単体で882名です。筆頭株主は創業者の黒木哲史氏で、第2位は資産管理会社である一般社団法人Hyuga、第3位は事業会社であるシーユーシーとなっています。

氏名 持株比率
黒木哲史 19.03%
一般社団法人Hyuga 12.61%
シーユーシー 11.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は黒木哲史氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
黒木哲史 代表取締役社長 2001年アイワ調剤入社。コクミン、沢井製薬を経て2007年同社設立、代表取締役社長に就任。全国介護事業者政治連盟理事などを歴任し、2026年より在宅訪問薬局事業本部長などを兼任より現職。
大西智明 取締役 1998年中部電力入社。CMC、ファースト工房、新日本製薬、楽天などを経て2019年同社入社。2020年取締役管理本部長に就任し、2026年より企画本部・管理本部・HR本部管掌兼企画本部長より現職。
城尾浩平 取締役 2001年大賀薬局入社。2009年同社入社後、店舗運営部長などを歴任。2025年に子会社のPADDY FIELD代表取締役社長に就任し、2026年より同社取締役介護事業推進本部等管掌より現職。


社外取締役は、小川真二郎(全国賃貸住宅新聞社出身)、佐伯恭子(公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「在宅訪問薬局事業」「きらりプライム事業」「プライマリケアホーム事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) 在宅訪問薬局事業


医療機関の発行する処方箋に基づき、在宅患者や外来患者に医薬品の調剤・販売を行っています。特に高齢者施設などと連携した「在宅訪問型」の店舗展開に注力し、24時間体制での訪問サービスやオンライン服薬指導を提供しています。

収益は患者からの医薬品等の販売代金から得ており、運営は同社が行っています。

(2) きらりプライム事業


増加する在宅患者に対応するため、中小規模の薬局事業者に対して在宅訪問薬局の運営ノウハウや独自開発の支援情報システムを提供するコンサルティング事業を行っています。

加盟店からの基本料金やシステム利用料などのサブスクリプション収入、医薬品仕入交渉代行による利用料を収益源とし、運営は同社が行っています。

(3) プライマリケアホーム事業


要介護度や医療依存度が高い在宅患者に対応可能な、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを提供する住宅型有料老人ホームを運営しています。施設を大型化することで効率的な運営を図っています。

施設の利用者から受け取る居室等のサービス利用料や訪問看護サービス料などを収益としており、運営は同社が行っています。

(4) その他事業


主にICT事業として、介護現場の労務負担軽減を目的とした機器の開発・提供を行っています。

自社開発のベッドセンサーなどを福祉用具貸与商品として施設へ提供することによる貸与収入を主な収益源としており、運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大を続けており、在宅患者数や加盟店舗数の増加により成長傾向にあります。一方で、利益面は新規出店費用や人員増強に伴う採用費・労務費の増加などの先行投資が影響し、直近では減益となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 83億円 100億円 120億円
経常利益 7億円 10億円 8億円
利益率(%) 8.7% 10.2% 6.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 7億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益の金額は高い水準を維持していますが、先行投資などの影響により売上総利益率および営業利益率は前年度と比較して低下傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 100億円 120億円
売上総利益 24億円 22億円
売上総利益率(%) 24.1% 18.7%
営業利益 11億円 8億円
営業利益率(%) 10.5% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5億円(構成比34%)、支払手数料が2億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


在宅訪問薬局事業とプライマリケアホーム事業は施設の稼働や新規出店により増収となりました。利益面では、きらりプライム事業が安定した収益を計上する一方、新規出店に伴う一時的な費用負担などが利益を圧迫しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
在宅訪問薬局事業 71億円 84億円 6億円 6億円 7.7%
きらりプライム事業 13億円 13億円 8億円 8億円 61.1%
プライマリケアホーム事業 16億円 23億円 2億円 0.3億円 1.3%
その他事業 0.0億円 0.0億円 -0.1億円 -0.4億円 -5901.3%
連結(合計) 100億円 120億円 11億円 8億円 6.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8億円 5億円
投資CF -5億円 -3億円
財務CF -4億円 3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「患者さん(利用者さん)が24時間365日、自宅で『安心』して療養できる社会インフラを創る」を経営理念として掲げています。在宅患者の身近な相談窓口となり、要介護状態になっても水道や電気のような社会インフラと同様に生活の助けとなれるプライマリーケアの提供を目指しています。

(2) 企業文化


同社は医療・介護事業者等と連携し、在宅患者を中心としたネットワークの中で安心して過ごせる体制を構築する「プライマリーケアのプラットフォーム企業」としての役割を重視しています。社会的課題の解決に貢献するため、従業員が経営理念に賛同し、能動的に行動し成長することを大切にする文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


持続的な事業成長を実現するため、同社グループと契約している在宅患者数およびきらりプライム加盟法人数の増加数、プライマリケアホーム事業における施設稼働率と年間施設開設数を客観的な目標指標として定めています。具体的な達成状況を管理しながら、事業規模の拡大を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後は、ドミナント戦略による新規出店や仮想ドミナントの形成を進め、在宅患者数の増加に対応します。また、テクノロジーを活用して業務負荷を低減し、収益性の向上を図ります。さらに、中小薬局との連携を強化してきらりプライム加盟法人を拡大させるとともに、大型の高齢者施設の展開を推進していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営戦略の実現に向けて、多様なサービスを提供するための優秀な人材の獲得と育成を進めています。中途採用を含めた研修体制を充実させるとともに、年齢や性別に関係なく多様な働き方を選択できる仕組みを整備し、従業員のライフステージに合わせた柔軟なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.0歳 2.9年 4,536,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.9%
男性育児休業取得率 73.3%
男女賃金差異(全労働者) 70.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 98.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(66.3%)、育児休業取得率(86.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制や法改正による影響


在宅訪問薬局事業の売上は、薬価基準や調剤報酬の改定に大きく依存しています。また、事業運営に必要な許認可の取得や、介護保険法・介護報酬の改定が行われた場合、同社の業績や出店計画に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保と育成に関するリスク


事業拡大には、薬剤師や看護師、介護福祉士などの専門職に加え、営業やITエンジニアの確保が不可欠です。人材の採用や育成が計画通りに進まない場合や、重要な人材が流出した場合、事業の成長が制約される可能性があります。

(3) 損害賠償や個人情報漏洩のリスク


患者の病歴や薬歴など機微な個人情報を取り扱っているため、情報漏洩が発生した場合、損害賠償や行政処分の対象となる恐れがあります。また、調剤過誤や介護施設での重大な事故が起きた場合、社会的信用が失墜し、業績に影響する可能性があります。

(4) 競合の激化やシステム投資の負担増


新規参入事業者の増加により、中小薬局向けの支援事業などで競争が激化するリスクがあります。さらに、急激なユーザー増に対応するため、想定以上のシステムインフラ投資が必要となった場合、収益を圧迫する要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。