HYUGA PRIMARY CARE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

HYUGA PRIMARY CARE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場する同社は、在宅訪問薬局「きらり薬局」の運営を主力事業としています。直近の決算では、在宅患者数の増加や店舗網の拡大、薬局支援事業の成長により、売上高は約99.8億円、経常利益は約10.2億円となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、HYUGA PRIMARY CARE株式会社 の有価証券報告書(第18期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. HYUGA PRIMARY CAREってどんな会社?


在宅訪問に特化した薬局運営と、そのノウハウを全国の薬局へ提供するプラットフォーム事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


2007年に設立され、翌2008年に「きらり薬局」を開局し訪問調剤サービスを開始しました。2019年には薬局向け支援を行う「きらりプライム事業」を立ち上げ、2021年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場を果たしました。その後、2023年に介護施設運営事業へ参入し、事業領域を拡大しています。

2025年3月31日時点で、従業員数は連結・単体ともに708名です。筆頭株主は創業者で社長の黒木哲史氏で、第2位は同氏の資産管理会社である一般社団法人Hyuga、第3位は医療機関向け経営支援等を行う株式会社シーユーシーとなっています。

氏名 持株比率
黒木 哲史 19.03%
一般社団法人Hyuga 12.62%
シーユーシー 11.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は黒木哲史氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
黒木 哲史 代表取締役社長 2001年アイワ調剤入社。2007年11月に同社を設立し代表取締役社長に就任。2024年1月よりPADDY FIELD代表取締役社長を兼務。2007年11月より現職。
山﨑 武夫 取締役 2004年テレウェイヴリンクス入社。ギャザーコム代表取締役等を経て、2015年同社社外取締役。2020年取締役事業開発本部長。2025年4月より在宅訪問薬局事業本部長兼務。
大西 智明 取締役 1998年中部電力入社。新日本製薬、楽天を経て2019年同社入社。2020年取締役管理本部長。2023年9月より企画本部・管理本部管掌兼企画本部長。
城尾 浩平 取締役 2001年大賀薬局入社。2009年同社入社。店舗運営部長等を経て2013年取締役。2025年6月よりPADDY FIELD代表取締役社長。


社外取締役は、小川真二郎(高齢者住宅新聞社取締役)、佐伯恭子(佐伯公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「在宅訪問薬局事業」、「きらりプライム事業」、「プライマリケアホーム事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 在宅訪問薬局事業


在宅医療を受ける患者や高齢者施設入居者に対し、医師の処方箋に基づき薬剤師が薬を届け、服薬指導や管理を行う「きらり薬局」を運営しています。福岡市近郊および横浜・千葉エリアを中心に店舗を展開し、24時間対応や多職種連携を強みとしています。

収益は、国民健康保険団体連合会や支払基金等から受け取る調剤報酬および薬価が主となります。運営は同社が行っています。

(2) きらりプライム事業


中小規模の薬局事業者に対して、在宅訪問薬局の運営ノウハウや自社開発システム「ファムケア」の提供、人材・営業支援等を行うフランチャイズ・ボランタリーチェーン形式の事業です。また、介護施設の開設支援コンサルティングも行っています。

収益は、加盟店から受け取る会費やシステム利用料などのサブスクリプション収入が中心です。システム利用料は処方箋枚数等に応じた従量課金モデルも採用しています。運営は同社が行っています。

(3) プライマリケアホーム事業


医療依存度や要介護度が高い在宅患者に対応可能な、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを併設した住宅型有料老人ホームを運営しています。福岡県や熊本県で大型施設を展開し、ICT活用による効率的な運営を図っています。

収益は、入居者からの家賃・管理費や、介護保険制度に基づく介護サービス収入等からなります。運営は同社および連結子会社のPADDY FIELDが行っています。

(4) その他の事業


介護現場の労務負担軽減を目的としたICT機器の開発・販売を行っています。具体的には、入居者の離床や臥床を検知するベッドセンサーなどを開発し、介護事業者へ提供しています。

収益は、開発した機器の販売や福祉用具としての貸与による収入です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期間の業績を見ると、売上高は順調に拡大しており、経常利益および当期利益も大幅な増益傾向にあります。これは主力の在宅訪問薬局事業の拡大に加え、薬局支援事業や介護施設事業が成長していることによるものです。利益率も向上しており、収益性を伴った成長が続いています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 83億円 100億円
経常利益 7.2億円 10.2億円
利益率(%) 8.7% 10.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.4億円 7.3億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も改善しており、本業の収益力が強化されていることが伺えます。コストコントロールが進み、効率的な事業運営が行われている状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 83億円 100億円
売上総利益 19億円 24億円
売上総利益率(%) 22.7% 24.1%
営業利益 7.1億円 10.5億円
営業利益率(%) 8.6% 10.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.6億円(構成比34%)、支払手数料が2.0億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収を達成しています。特にきらりプライム事業とプライマリケアホーム事業は大幅な増収増益となり、全体の成長を牽引しています。在宅訪問薬局事業も堅調に推移しており、安定した収益基盤となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
在宅訪問薬局事業 65億円 71億円 6.4億円 6.5億円 9.1%
きらりプライム事業 8.4億円 13億円 4.9億円 7.8億円 61.2%
プライマリケアホーム事業 8.8億円 16億円 0.1億円 1.8億円 11.6%
その他 0.3億円 0億円 -0.1億円 -0億円 -743.9%
調整額 - - -4.1億円 -5.5億円 -
連結(合計) 83億円 100億円 7.1億円 10.5億円 10.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」です。本業で稼いだキャッシュ(営業CFプラス)を使って借入金の返済(財務CFマイナス)や投資(投資CFマイナス)を行っており、財務の健全化と成長投資のバランスが取れた状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7.1億円 7.7億円
投資CF -11億円 -4.7億円
財務CF 5.4億円 -4.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は35.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「患者さん(利用者さん)が24時間365日、自宅で『安心』して療養できる社会インフラを創る」を経営理念としています。在宅患者の身近な相談窓口となり、水道や電気のような社会インフラと同様に、いつでも生活の助けとなれるプライマリーケアの提供を目指しています。

(2) 企業文化


経営者と従業員が共通の価値観を持つため、社長室主催の座談会等を通じて経営理念や行動指針の浸透を図っています。従業員一人ひとりが理念に賛同し、能動的に動いて成長することを重視しており、患者や利用者への「安心」の提供に向けたベストプラクティスを共有する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は持続的な事業成長のため、以下の指標を重要視し、その向上を目指しています。
* 在宅患者数の増加
* きらりプライム加盟法人数の増加
* プライマリケアホーム事業の施設稼働率
* 年間施設開設数

(4) 成長戦略と重点施策


「プライマリーケアのプラットフォーム企業」を目指し、3つの柱で事業を拡大します。
1. **在宅訪問薬局事業**: ドミナント戦略による出店と業務効率化を推進し、増え続ける在宅患者に対応します。
2. **きらりプライム事業**: 加盟店拡大と連携強化により、全国的な在宅医療ネットワークを構築します。
3. **プライマリケアホーム事業**: 医療・介護依存度の高い患者に対応する大型施設の展開を進め、地域包括ケアに貢献します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


理念実現のため、従業員の能動的な行動と成長を最重要視しています。薬剤師の実務研修や薬局長向けのマネジメント研修など、スキルに応じた育成を実施しています。また、ライフステージに合わせて働き方を選択できる制度(正社員、ワークライフバランス社員など)を整備し、多様な人材が活躍できる環境作りを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.8歳 2.6年 4,523,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.6%
男性育児休業取得率 84.6%
男女賃金差異(全労働者) 66.3%
男女賃金差異(正規雇用) 69.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 77.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(64.5%)、平均勤続年数(2年6か月)、育児休業取得率(94.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 個人情報の保護について


患者の病歴や薬歴等の機微な個人情報を多数取り扱っており、情報漏洩が発生した場合、損害賠償や行政処分、社会的信用の失墜を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。対策として管理体制の強化や従業員教育を行っていますが、外部攻撃や人為的ミスによるリスクは完全には排除できません。

(2) 感染症等の拡大による影響について


感染症の流行により医療機関への受診控えが起き、処方箋枚数が減少するリスクがあります。また、従業員が罹患した場合には店舗運営が困難になり、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 固定資産の減損について


薬局店舗やのれん等の固定資産を保有しており、事業環境の変化等により収益性が低下した場合には減損損失が発生する可能性があります。これにより特別損失が計上され、業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 制度改定について


売上の大半が公的な保険制度(調剤報酬、介護報酬)に依存しているため、薬価基準の引き下げや調剤・介護報酬の改定内容によっては、収益性が低下し業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。