※本記事は、株式会社ヌーラボの有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヌーラボってどんな会社?
ヌーラボは、プロジェクト管理やビジュアルコラボレーションなどのクラウドサービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
2004年3月に福岡市で設立され、2006年7月にプロジェクト管理ツール「Backlog」の提供を開始しました。2010年9月に「Cacoo」、2020年8月に「Nulab Pass」をリリースし、2022年6月に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしています。
現在の従業員数は連結で207名、単体で189名体制となっています。筆頭株主は創業者の橋本正徳氏で、第2位は個人のSHINSUKE TABATA氏、第3位には投資事業組合が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 橋本 正徳 | 24.46% |
| SHINSUKE TABATA | 23.57% |
| Founder Foundry1号投資事業有限責任組合 | 5.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役は橋本正徳氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 橋本 正徳 | 代表取締役 | 1998年4月橋本建装に入社。2001年4月メディアファイブに入社後、2004年3月に同社を設立し代表取締役に就任し現職。 |
| 小川 淳 | 取締役 | 1995年4月リクルート入社。グーグル合同会社、クックパッドCROなどを経て、2026年6月より同社取締役COOに就任。九州工業大学客員教授も務める。 |
| 中島 成一朗 | 取締役 | 2012年4月IHI入社。フリーのアドバイザー事業CPOなどを経て、2025年3月同社入社。2026年6月より取締役CPOに就任。 |
社外取締役は、小笹文(元イベントレジスト最高業務執行責任者)です。
2. 事業内容
同社グループは、クラウドサービス事業を展開しています。
■(1) Backlog
チームで協力しながら作業を進めるためのコラボレーション型プロジェクト管理ツールであり、主にSaaS型で提供しています。大規模なソフトウェア開発から保守運用、オフィスワークのタスク管理まで多岐にわたる用途で活用され、幅広い分野のビジネスパーソンに利用されています。
収益源は、定額でユーザー数無制限の利用が可能となるサブスクリプション型の利用料です。契約主体以外のメンバーとの共同利用が可能であるため口コミでの導入が広がりやすく、製品主導での成長を実現しています。サービスの運営は主にヌーラボが行っています。
■(2) Cacoo
プロジェクトのアイデアやウェブサイトのレイアウトなどをオンライン上で簡単に作成し、チーム内に共有できるビジュアルコラボレーションツールです。ワイヤーフレームやマインドマップなど、豊富なテンプレートをもとに世界中の業種やチームで利用されています。
収益源は、サービスの使用期間や使用容量、ユーザー数などに応じたサブスクリプションモデルの利用料です。クラウド上で図形を作成・共有し、言葉を超えた円滑なコミュニケーションを支援します。サービスの運営は主にヌーラボが行っています。
■(3) Nulab Pass
組織内のIDの一括管理を容易にし、組織の情報セキュリティ・ガバナンスを高めるツールです。サービスへのアクセス管理を強化したい組織や、利用する社員のアカウントを一元管理したい管理者に向けた、セキュリティとガバナンス強化のためのサービスです。
収益源は、ユーザー数に応じた料金体系で提供されるサブスクリプションモデルの利用料です。SAML認証方式によるシングルサインオンや監査ログを提供し、不正アクセスの防止とセキュリティリスクの軽減を実現します。サービスの運営は主にヌーラボが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して成長を続けており、特に主力サービスの有料契約件数の増加が寄与しています。一方、利益面ではマーケティング活動や人材採用などの積極的な投資状況により変動が見られ、直近では広告宣伝費や人件費の増加に伴い経常利益は減少傾向となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 23.3億円 | 27.1億円 | 36.6億円 | 41.1億円 | 43.9億円 |
| 経常利益 | 1.6億円 | 0.9億円 | 3.3億円 | 6.4億円 | 3.7億円 |
| 利益率(%) | 7.0% | 3.4% | 9.0% | 15.6% | 8.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.9億円 | 0.5億円 | 2.8億円 | 5.4億円 | 2.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は70%台の高い水準で推移しています。一方で、将来の成長を見据えた積極的な投資を実施した結果、営業利益および営業利益率は低下する形となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 41.1億円 | 43.9億円 |
| 売上総利益 | 29.6億円 | 32.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 72.1% | 73.8% |
| 営業利益 | 6.4億円 | 3.5億円 |
| 営業利益率(%) | 15.6% | 8.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が8.6億円(構成比29.7%)、広告宣伝費が7.0億円(同24.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はクラウドサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の利益などの記載はありません。全体として、主力サービスの堅調な需要に支えられ、継続的な売上成長を実現しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| クラウドサービス事業 | 41.1億円 | 43.9億円 |
| 連結(合計) | 41.1億円 | 43.9億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7.5億円 | 2.8億円 |
| 投資CF | -1.3億円 | -3.5億円 |
| 財務CF | -0.0億円 | -1.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も43.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
ミッションは「To make creating simple and enjoyable-創造を易しく楽しくする-」です。無の状態から試行錯誤を経て完成したアイデアは、多くのひとを魅了する素晴らしい作品になると考え、無の状態から有を創り出す「研究所」のような会社でありたいという思いを社名に冠しています。
■(2) 企業文化
同社は「“このチームで一緒に仕事できてよかった”を世界中に生み出していく。」をブランドメッセージとして掲げています。個々の従業員が自己決定・自己選択のもとで主体的に行動し、自律した個人同士が互いに協力し合いながら、心理的安全性の高い環境の中でチームとして力を発揮する組織づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
継続的な収益を獲得するため、ARR(Annual Recurring Revenue)、有料契約数、および解約率を重要な指標として重視しています。2027年3月期の業績については、各種施策や事業構造の最適化により、過去最高益の更新を見込んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存プロダクトにおいてAIを活用した機能開発への重点投資を行い、収益基盤の着実な拡大を牽引することを戦略の軸としています。また、新プロダクトの開発とM&Aにも注力し、「Backlog」に依存しない新たな成長モデルを確立することで、非連続な成長を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業拡大に伴う管理部門の強化や、効率的な受注のための販売体制増強に向けた人材の確保と育成を重要な経営課題と位置づけています。「ダイバーシティとインクルージョンのポリシー」を策定し、採用時の勤務地要件を原則廃止するなど、多様な人材が自分らしく自律的に活躍できる環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.5歳 | 4.2年 | 7,762,746円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.5% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) IT投資需要の低迷リスク
経済情勢や景気動向の悪化等により、企業のITシステム投資等が低迷した場合、プロジェクト管理ツール等の市場拡大が想定を下回り、同社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) コラボレーションツール市場での競合激化
同社が属する市場には複数の競合企業が存在し、クラウド市場の拡大やAI技術の進展に伴い新規参入も増加しています。競争激化により想定通りの事業展開が図れない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(3) 予期せぬシステム障害の発生
同社のサービス基盤はインターネット通信網や特定のクラウドコンピューティングサービス(AWS)に依存しています。自然災害やサーバーダウン、不具合の発生によりサービス提供が停止した場合、顧客の信用低下や業績悪化につながるリスクがあります。
■(4) 既存事業への高い依存度
主力サービスである「Backlog」の売上高が全体の9割以上を占めています。外部環境の変化等により当該サービスの売上が著しく減少した場合、同社の事業および業績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。



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