※本記事は、株式会社ヌーラボ の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヌーラボってどんな会社?
同社は、プロジェクト管理ツール「Backlog」をはじめとする、チームのコラボレーションを促進するクラウドサービスを開発・提供しています。
■(1) 会社概要
2004年に福岡県福岡市で有限会社ヌーラボとして設立され、2006年にプロジェクト管理ツール「Backlog」をリリースしました。その後、2010年にビジュアルコラボレーションツール「Cacoo」、2020年にセキュリティ・ガバナンスツール「Nulab Pass」をリリースするなどサービスを拡充し、2022年に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。
同社グループの従業員数は連結で180名、単体で162名です。筆頭株主は創業者の橋本正徳氏で、第2位は役員の田端辰輔氏です。第3位以下にはベンチャーキャピタルなどが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 橋本 正徳 | 23.97% |
| SHINSUKE TABATA | 23.10% |
| Founder Foundry1号投資事業有限責任組合 | 4.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役は橋本 正徳氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 橋本 正徳 | 代表取締役 | 1998年有限会社橋本建装入社。2001年メディアファイブ入社を経て、2004年3月に同社を設立し代表取締役に就任。以後現職。 |
| 田端 辰輔 | 取締役 | 1998年デジタルコミュニケーション入社。メディアファイブを経て2004年3月に同社を設立し取締役に就任。Nulab USA, Inc.等のDirectorも兼任。 |
| 小島 英揮 | 取締役 | 1991年PFU入社。アドビ、アマゾンデータサービスジャパン等を経て、2017年より同社社外取締役。2024年6月より取締役として現職。 |
社外取締役は、小笹 文(合同会社カラフル代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、クラウドサービス事業の単一セグメントにおいて、以下の主要サービスを展開しています。
■Backlog
チームで協力しながら作業を進めるためのプロジェクト・タスク管理ツールです。ソフトウエア開発からデジタルマーケティング、一般のオフィスワークまで幅広い職種で利用されており、直感的な操作性と親しみやすいデザインが特徴です。
収益は、主に利用企業等の顧客から受け取るサブスクリプション形式の月額または年額利用料から構成されています。運営は主に同社が行っています。
■Cacoo
オンライン上でフローチャートやワイヤーフレームなどの図を作成・共有できるビジュアルコラボレーションツールです。豊富なテンプレートを備え、言葉だけでは伝わりにくいアイデアを視覚的に共有することができます。
収益は、顧客から受け取るサブスクリプション形式の利用料から構成されています。運営は主に同社が行っています。
■Nulab Pass
組織内のID管理を一元化し、セキュリティとガバナンスを強化するツールです。SAML認証によるシングルサインオン(SSO)や監査ログ機能を提供し、同社サービスをより安全に利用するための基盤となります。
収益は、顧客である利用組織から受け取るユーザー数に応じた利用料から構成されています。運営は主に同社が行っています。
■その他(Typetalk)
チーム内のコミュニケーションを円滑にするビジネスチャットツール「Typetalk」を提供しています。独自のまとめ機能などを備えていますが、経営資源の選択と集中により、2025年12月をもってサービスを終了する予定です。
収益は、顧客から受け取るサブスクリプション形式の利用料から構成されています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。利益面では、2021年3月期には損失を計上していましたが、その後は黒字転換し、直近の2025年3月期には経常利益率が15.6%に達するなど、収益性が大幅に向上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 19億円 | 23億円 | 27億円 | 37億円 | 41億円 |
| 経常利益 | -0.1億円 | 1.6億円 | 0.9億円 | 3.3億円 | 6.4億円 |
| 利益率(%) | -0.4% | 7.0% | 3.4% | 9.0% | 15.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.4億円 | 1.9億円 | 0.5億円 | 2.8億円 | 5.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに拡大しています。特に営業利益率は前期間と比較して大きく改善しており、売上拡大が利益成長に直結する効率的な事業運営が進んでいることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 37億円 | 41億円 |
| 売上総利益 | 26億円 | 30億円 |
| 売上総利益率(%) | 72.0% | 72.1% |
| 営業利益 | 3.3億円 | 6.4億円 |
| 営業利益率(%) | 9.1% | 15.6% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が6.4億円(構成比27%)、給料及び手当が6.3億円(同27%)を占めています。売上原価においては、通信費が4.5億円(構成比39%)と大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はクラウドサービス事業の単一セグメントですが、サービス別の販売実績を見ると、主力の「Backlog」が堅調に成長し、全売上の大半を占めています。「Nulab Pass」も高い成長率を示しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| Backlog | 34億円 | 38億円 |
| Cacoo | 1.2億円 | 1.2億円 |
| Typetalk | 0.2億円 | 0.2億円 |
| Nulab Pass | 0.9億円 | 1.5億円 |
| 連結(合計) | 37億円 | 41億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**パターン:健全型**
営業活動で得たキャッシュで借入金の返済や投資を賄っており、財務的に安定した状態と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.1億円 | 7.5億円 |
| 投資CF | -1.1億円 | -1.3億円 |
| 財務CF | 0.2億円 | -0.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は34.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「Null(無)」と「Lab(研究所)」を合わせた社名のもと、「To make creating simple and enjoyable-創造を易しく楽しくする-」というミッションを掲げています。無の状態から有を創り出す研究所のような会社を目指し、企業や個人の生産性を向上させるクラウドサービス事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社は、「“このチームで一緒に仕事できてよかった”を世界中に生み出していく。」をブランドメッセージとして掲げています。多様性とインクルージョンを重視し、「ダイバーシティとインクルージョンのポリシー」を策定しています。また、オープンソースソフトウェア(OSS)コミュニティへの支援などを通じ、技術者文化やコミュニティ活動を大切にする文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、提供サービスがサブスクリプションモデルであることから、継続的な収益獲得を重視しています。経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標として、以下の3点を掲げています。
* ARR(Annual Recurring Revenue)
* 有料契約数
* 解約率
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的にはビジネスに必要なサービスをフルラインナップで提供し、企業価値の増大を目指しています。製品主導での成長(PLG)に加え、AI技術への投資やセールス体制の強化を進める方針です。特に、新規事業創出プログラム「Nu Source」を通じた新プロダクト開発や、高額プランの効率的な受注に向けた体制強化に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、チームのコラボレーションを促進するため、ダイバーシティとインクルージョンを人材戦略の核としています。採用ポリシー「Nulab Hiring Policy」の公表や勤務地要件の原則廃止など、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。また、優秀な技術者やセールス体制強化のための人材確保と育成を重要な経営課題と位置付けています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.8歳 | 4.1年 | 7,511,475円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 86.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | -% |
| 男女賃金差異(非正規) | -% |
※正規雇用労働者、パート・有期労働者の内訳については、HTML原文に記載がありませんでした。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、子育て支援休暇取得率(95.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定サービスへの依存
同社グループの売上の9割以上が主力サービス「Backlog」に依存しています。外部環境の変化等によりBacklogの売上が著しく減少した場合、グループ全体の業績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。同社は新プロダクト開発等により依存度の低減を図っています。
■(2) システム障害リスク
提供サービスはインターネット通信網やAWS(Amazon Web Services)等の外部クラウド基盤に依存しています。自然災害や予期せぬアクセス増加、AWSの障害等によりサービス提供が停止した場合、事業運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 情報セキュリティ
サービス提供において顧客の機密情報や個人情報を扱っています。ISMS認証取得などの対策を講じていますが、万が一情報の紛失や漏洩が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜により、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。



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