KYORITSU 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KYORITSU 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する同社は、カタログ等の商業印刷を行うプリントメディア事業や情報デジタル事業等を展開する持株会社です。当連結会計年度の業績は、M&A効果等により売上高は404億円と前期比で微増収となりましたが、営業利益は12億円で減益となりました。


※本記事は、株式会社KYORITSU の有価証券報告書(第44期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. KYORITSUってどんな会社?


同社グループは、商業印刷や出版印刷を行うプリントメディア事業を中核に、情報デジタル事業や環境事業等を展開しています。

(1) 会社概要


1981年5月に設立されました。2022年10月、共立印刷との株式交換を実施し持株会社体制へ移行するとともに、東京証券取引所スタンダード市場へ上場しました。その後もグループ再編を進め、2024年3月には子会社が株式会社SICを吸収合併しました。さらに事業領域拡大のため、2024年7月に株式会社バッハベルク、同年10月に株式会社東京アドを連結子会社化するなど、積極的なM&Aを展開しています。

2025年3月31日現在の連結従業員数は628名、単体従業員数は3名です。筆頭株主は元代表取締役会長の野田勝憲氏で、第2位は共栄会、第3位は取引関係のある東京インキとなっています。

氏名 持株比率
野田 勝憲 7.94%
共栄会 6.37%
東京インキ 5.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名(監査役含む)の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は景山豊氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
景山 豊 代表取締役社長 1988年4月末広印刷(現ダイオーミウラ)入社。2004年4月共立印刷入社。同社営業統括本部長等を経て、2021年4月同社代表取締役社長に就任。2022年10月より現職。
田坂 優英 取締役 1998年3月共立印刷入社。同社管理本部経理部長、管理本部長、執行役員等を経て、2021年6月同社取締役管理統括に就任。2022年10月より現職。


社外取締役は、藤本三千夫(株式会社シロキ顧問)、亀井雅彦(一般社団法人PODi設立代表理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報デジタル事業」「プリントメディア事業」「環境事業」「BPO事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 情報デジタル事業


電子書籍事業、総合広告代理業、映像制作、DMサービス等を行っています。各種通販会社をターゲットに、デジタル印刷を活用したダイレクトメールや、テレビ通販制作、WEB広告などを展開しています。

収益は、顧客からの制作費や広告掲載料、電子書籍の販売収益等から得ています。運営は、共立印刷、株式会社暁NEXT、株式会社西川印刷、株式会社バッハベルク、株式会社東京アドなどが行っています。

(2) プリントメディア事業


カタログ、チラシ、パンフレットなどの商業印刷や、書籍、雑誌などの出版印刷を行っています。折込チラシやカタログ類の市場規模が縮小傾向にある中、内製化率の向上や新規取引先の獲得に取り組んでいます。

収益は、顧客への印刷製品の販売対価として得ています。運営は、主に共立印刷、株式会社暁印刷、株式会社西川印刷が行っています。

(3) 環境事業


生分解性プラスチック製造事業、プラスチック類再生事業、RPF燃料製造事業、一般・産業廃棄物処理事業を行っています。自然に還る素材とリサイクル素材の両面から環境問題に取り組んでいます。

収益は、環境配慮型製品の販売や廃棄物処理の受託により得ています。運営は、株式会社今野、株式会社山陰クリエート、株式会社インターメディア・コミュニケーションズなどが行っています。

(4) BPO事業


ロジスティック事業や商業流通事業を行っています。店舗消耗品の在庫保管発送業務などを手掛けており、既存倉庫とグループの販売ネットワークを活かした営業活動に注力しています。

収益は、顧客からの物流業務受託や保管料等から得ています。運営は、共立印刷、株式会社暁印刷が行っています。

(5) その他


上記の報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸業等を行っています。

収益は、賃貸料収入等から得ています。運営は、グループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績を見ると、売上高は400億円前後で横ばいに推移しています。一方、利益面では原材料価格の高騰や市場環境の変化等の影響を受け、経常利益、当期純利益ともに減少傾向にあります。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 403億円 400億円 404億円
経常利益 12億円 15億円 11億円
利益率(%) 3.0% 3.8% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 9億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微増しましたが、売上原価の増加等により売上総利益および営業利益は減少しました。営業利益率は低下しており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 400億円 404億円
売上総利益 47億円 45億円
売上総利益率(%) 11.9% 11.2%
営業利益 16億円 12億円
営業利益率(%) 4.1% 3.1%


販売費及び一般管理費のうち、その他が15億円(構成比46%)、給料及び手当が9億円(同28%)を占めています。

(3) セグメント収益


情報デジタル事業はM&A効果等により大幅な増収となりましたが、主力のプリントメディア事業は市場縮小の影響で減収減益となりました。環境事業は設備投資の効果により増収増益で推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報デジタル事業 68億円 89億円 7億円 7億円 7.7%
プリントメディア事業 317億円 294億円 10億円 7億円 2.4%
環境事業 13億円 16億円 2億円 2億円 11.5%
BPO事業 2億円 5億円 0.1億円 0億円 0.4%
その他 - - - - -%
調整額 △0.4億円 △0.4億円 △2億円 △3億円 -%
連結(合計) 400億円 404億円 16億円 12億円 3.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCF状態は「健全型」です。本業で得た現金を、将来のための投資と借入金の返済に充てています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 46億円 12億円
投資CF △12億円 △33億円
財務CF △13億円 △13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「本質を見抜き 感謝を忘れず 挑戦し続ける」という理念の下、環境変化への柔軟な対応と基本の徹底に努めています。また、日本一品質の高い製品を提供するという創業の思いを忘れることなく、ステークホルダーに感謝し社会貢献に努める方針を掲げています。

(2) 企業文化


全社・全部門参加型の「品質保証」及び「収益向上」に関するプロジェクトを遂行する文化があります。案件ごとに品質管理や収益分析を行うとともに、各部門の課題解決に関する情報共有を行い、全体最適を実現するための事業戦略を策定しています。また、受注媒体毎に製造品質会議を行うなど、品質へのこだわりが強い風土です。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な収益力目標として以下の指標を掲げています。厳しい市場環境に屈することなく、サービスの改善と事業領域の拡大に努め、企業価値を高めることを目指しています。

* 売上高500億円以上
* 売上高営業利益率5.0%以上
* 自己資本比率40%以上
* 配当性向30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


今後も予想される厳しい市場環境に対抗し、継続的な成長を実現するため、品質保証の取り組み強化、成長事業の拡販、グループシナジーの追求、環境への取り組みに注力します。特に情報デジタル事業等の成長分野ではM&Aも活用しながら事業領域の拡大を図ります。また、ポートフォリオ経営を意識し、各事業の製品やサービスを効果的に管理します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員を単なる労働力ではなく「Human Resources(人材)」と捉え、グループ一体となって採用・育成・活用を行う方針です。性別や国籍に関係なく多様性を受け入れ、従業員一人ひとりの能力を尊重し、長く安心して活躍できる環境を整備しています。また、多角的な教育プログラムによるリーダーや技術者の育成、キャリア形成のサポートを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 56.7歳 1.7年 6,205,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 88.3%
男女賃金差異(正規雇用) 81.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 83.0%


※数値は連結子会社である共立印刷株式会社のデータです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 売上高の減少が業績に与える影響


同社グループの事業は装置産業であり、有形固定資産が総資産に占める割合が高くなっています。そのため、売上高の急激な減少により操業度が低下した場合には、労務費や減価償却費等の固定費負担が増大し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 価格競争について


プリントメディア事業においては、印刷会社間の価格競争や顧客からの値下げ要求により受注価格の低下が続いています。コスト削減等で対応していますが、さらなる競争激化により価格が低下した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 有利子負債依存について


積極的な設備投資資金を借入金等で賄っているため、総資産に対する有利子負債依存度は32.6%となっています。売上高減少等により返済資金が減少し計画通りの返済が困難になった場合や、金利上昇により調達コストが増加した場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定の取引先への依存について


上位5社の売上高合計が連結売上高の24.9%を占めており、特定の取引先への依存度が高くなっています。これらの取引先の経営成績や取引方針の変更等は、同社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。