※本記事は、株式会社KYORITSUの有価証券報告書(第45期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. KYORITSUってどんな会社?
情報デジタル、プリントメディア、環境、BPOの4事業を展開する総合印刷・販促ソリューション企業です。
■(1) 会社概要
同社は1981年に設立されました。2022年10月に共立印刷と株式交換を実施して持株会社体制へ移行し、同時に東京証券取引所スタンダード市場へ上場しました。その後、2023年に山陰クリエート、2024年にバッハベルクや東京アドを連結子会社化するなど、環境事業や情報デジタル事業において積極的なM&Aを行い、事業領域の拡大を推進しています。
現在の従業員数はグループ全体で626名、単体で3名です。筆頭株主は個人の野田勝憲氏で、第2位は共栄会、第3位は金融商品取引業者のINTERACTIVE BROKERS LLCとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 野田 勝憲 | 8.26% |
| 共栄会 | 6.59% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 5.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は景山豊氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 景山 豊 | 代表取締役社長 | 1988年ダイオーミウラ入社。2004年共立印刷入社後、営業統括本部長等を経て、2021年同社代表取締役社長。2022年より現職。 |
| 田坂 優英 | 専務取締役 | 1998年共立印刷入社。管理本部長等を経て、2021年同社取締役管理統括。2022年同社取締役を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、藤本三千夫(元米山紙商事取締役本店長)、後藤博之(大創産業常勤監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報デジタル事業」「プリントメディア事業」「環境事業」「BPO事業」を展開しています。
■情報デジタル事業
顧客からの発注に基づく広告・販売促進に関するサービスの提供や、デジタルコンテンツの作成と配信によるデジタルコミックスの販売を行っています。
媒体への広告出稿や制作物の納品、デジタルコンテンツの販売代金などを収益源としています。運営は主に共立印刷、暁NEXT、西川印刷などが担当しています。
■プリントメディア事業
顧客からの発注に基づき、チラシやカタログ、書籍、雑誌などの商業印刷、出版印刷、製本および加工業務を提供しています。
印刷物や製本などの製品を顧客に納品した際の製品販売代金を収益として受け取っています。運営は主に共立印刷、暁印刷、西川印刷などが担当しています。
■環境事業
生分解性プラスチックフィルムの製造および販売や、プラスチックのリサイクルによるRPF燃料の製造、一般・産業廃棄物処理事業を行っています。
製造した環境関連商材を納品した際の製品販売代金や廃棄物の処理代金から収益を得ています。運営は主に今野、山陰クリエート、インターメディア・コミュニケーションズなどが担当しています。
■BPO事業
顧客との契約に基づき、多種多様な販促資材や消耗品の発送、保管、管理を行うロジスティック事業および商業流通事業を提供しています。
発送業務の完了時や、役務の提供に応じた月次の保管・管理料から収益を得ています。運営は主に共立印刷、暁印刷が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近4期間の業績は、売上高が400億円前後で安定して推移しており、直近の2026年3月期には429億円へと拡大しています。経常利益も11億〜15億円の範囲で堅調に推移しており、安定した収益基盤を維持しつつ、積極的なM&Aや事業領域の拡大による成長を続けています。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 403億円 | 400億円 | 404億円 | 429億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 15億円 | 11億円 | 13億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 3.8% | 2.8% | 3.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 1億円 | 1億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益および営業利益も拡大しています。各事業セグメントにおける内製化の推進や、グループ会社間の相乗効果の発揮により、収益性が着実に改善する傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 404億円 | 429億円 |
| 売上総利益 | 45億円 | 52億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.2% | 12.1% |
| 営業利益 | 12億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 3.3% |
■(3) セグメント収益
主力であるプリントメディア事業は、印刷市場の縮小傾向により売上が横ばいで推移しています。一方で、成長事業と位置づける情報デジタル事業はM&Aの効果もあり大きく拡大しました。また、環境事業やBPO事業も順調に売上を伸ばしており、事業の多角化が進んでいます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 情報デジタル事業 | 89億円 | 108億円 |
| プリントメディア事業 | 294億円 | 292億円 |
| 環境事業 | 16億円 | 20億円 |
| BPO事業 | 5億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 404億円 | 429億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金を元に、投資や借入金の返済を賄う「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も43.3%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 23億円 |
| 投資CF | -33億円 | -20億円 |
| 財務CF | -13億円 | -13億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「お客様やお取引先様、また全てのステータスの方と共に立つ」という創業理念を掲げています。ホールディングス体制のもと、多様な従業員とともに利益を追求するだけでなく、企業としての責任を果たすべく、感謝の心を忘れずに社会貢献に努めることを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
従業員を単なる労働力ではなく重要な「人材」として捉え、多様性を受け入れる企業文化を有しています。性別や国籍に関係なくすべての人権を尊重し、従業員一人ひとりの能力やアイデアを大切にする風土です。また、親会社至上主義を排し、各事業の特性に合った人材の最適配置や双方向の人事異動を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、厳しい市場環境に屈することなくサービスの改善と事業領域の拡大を図り、中長期的な収益力目標として以下の経営指標を掲げています。
* 売上高:500億円以上
* 売上高営業利益率:4.0%以上
* 自己資本比率:40%以上
* 配当性向:30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
従来の印刷・製本事業を基盤としつつ、データを活用したデジタルマーケティングや幅広い販促ソリューション、環境事業などへ事業領域を拡大するポートフォリオ経営を推進しています。M&Aや設備投資を機動的に行いながら、グループ各社の特性を活かした相乗効果を最大限に発揮し、筋肉質で発展性のある企業体質の構築を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員を重要な人材として捉え、グループ一体となって人材育成・活用を推進しています。従業員自らが専門性を高め活躍の場を広げるための多角的な教育プログラムを設け、リーダーや技術者の育成、キャリア形成をサポートしています。また、従業員のタレント性を受容し、公平・公正な評価に基づいた適材適所の人材配置を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 52.1歳 | 1.8年 | 5,854,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 69.0% |
※女性管理職比率については有価証券報告書に記載がありません。また、提出会社の法定指標は該当事項がないため、上記は連結子会社である共立印刷の数値となります。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 売上高の減少が業績に与える影響
同社グループは印刷事業をはじめとする装置産業であり、有形固定資産の割合が高くなっています。そのため、急激な売上高の減少により工場の操業度が低下した場合、労務費や減価償却費などの固定費負担が増大し、グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 印刷市場における価格競争の激化
主力であるプリントメディア事業においては、印刷会社間の価格競争や顧客からの価格引き下げ要求などにより、受注価格のなだらかな低下が続いています。コスト削減や生産性向上で対応していますが、さらなる価格競争の激化は収益を圧迫するリスクとなります。
■(3) 有利子負債依存と金利変動リスク
積極的な設備投資や事業拡大のための資金を主に借入金等で調達しているため、有利子負債への依存度が高くなっています。売上減少による返済原資の不足や、今後の金利上昇に伴う調達コストの増加が発生した場合、財務状態や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 特定の取引先への依存リスク
同社グループは顧客第一主義を掲げ、特定の大手顧客との間で長年の取引関係を構築しています。上位5社の売上高合計が連結売上高全体の約25%を占めており、これら主要顧客の業績や取引方針の変更が生じた場合、同社の業績に重要な影響を与える可能性があります。



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