サンクゼール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンクゼール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するサンクゼールは、自社ブランドのサンクゼールや久世福商店を展開し、食品の企画・製造から販売まで一貫して手がける食のSPAモデルを強みとしています。直近の業績は、売上高206億円と増収を達成した一方で、先行投資等により営業利益は8億円の減益となりました。


※本記事は、株式会社サンクゼールの有価証券報告書(第44期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンクゼールってどんな会社?


食品製造販売事業を主軸とし、食のSPAモデルを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1982年に斑尾高原農場として設立されました。1990年にサンクゼールブランドを立ち上げ、2005年に現在のサンクゼールへ商号を変更しています。2013年には久世福商店ブランドを立ち上げて1号店をオープンしました。2017年には米国子会社を設立し、2022年に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしています。

現在の従業員数は連結で307名、単体で281名です。筆頭株主は事業会社のJoseph’s Arrows Trustで、第2位は創業者の久世良三氏、第3位は代表取締役社長の久世良太氏です。

氏名 持株比率
Joseph’s Arrows Trust 14.40%
久世良三 12.98%
久世良太 9.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は久世良太氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
久世良太 代表取締役社長 2002年セイコーエプソン入社。2005年同社入社。経営サポート部長、専務などを経て、2018年より現職。
久世直樹 代表取締役副社長 2004年同社入社。常務取締役、グローバル事業本部長などを経て、2023年より現職。
久世良三 取締役会長 1982年同社設立、代表取締役社長に就任。2018年代表取締役会長を経て、2023年より現職。
櫻井貴史 取締役常勤監査等委員 1993年富士通長野システムエンジニアリング入社。2001年同社入社。内部監査室長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、今村英明(元ボストン・コンサルティング・グループ日本法人代表取締役)、山本義博(元ハインツ日本代表取締役社長)、山岡美奈子(元ファンケル化粧品代表取締役社長)、阿久津正志(阿久津総合法律事務所所長)、杉田昌則(かなで監査法人理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品製造販売」の単一セグメントで事業を展開しています。

同社グループは、自社ブランドであるサンクゼールや久世福商店等を通じ、食品の企画・製造・販売を一気通貫で行う食のSPAモデルを展開しています。直営店やフランチャイズ店のほか、オンラインショップ、卸売、さらに米国やアジア地域に向けたグローバル販売など、多様なチャネルで消費者に独自性のある高品質な食品を提供しています。

収益源は、直営店およびオンラインショップでの消費者からの商品代金、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入や商品卸売代金、スーパー等小売企業からの卸売代金です。運営は主にサンクゼールが行い、米国等のグローバル事業は子会社のSt. Cousair, Inc.等が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は安定して成長を続けており、海外展開やホールセール事業の拡大が寄与しています。利益面では原材料価格高騰や先行投資の影響を受ける局面もありましたが、直近では最終増益を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 142億円 179億円 192億円 195億円 206億円
経常利益 13億円 16億円 14億円 8億円 9億円
利益率(%) 9.3% 9.1% 7.3% 4.3% 4.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 11億円 10億円 5億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高は順調に拡大しており、売上総利益率も改善傾向にあります。一方で成長に向けた人材投資や販売促進費の増加により、営業利益率はやや低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 195億円 206億円
売上総利益 68億円 74億円
売上総利益率(%) 34.8% 35.8%
営業利益 8億円 8億円
営業利益率(%) 4.3% 3.8%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が12億円(構成比18%)、給料及び手当が11億円(同17%)を占めています。売上原価では、材料費が21億円(構成比17%)、当期商品仕入高が90億円(同73%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は食品製造販売事業の単一セグメントであるため、事業全体の売上と利益の推移を記載します。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
連結(合計) 195億円 206億円 8億円 8億円 3.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業の営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型に分類されます。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.8%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2億円 15億円
投資CF -8億円 -8億円
財務CF -2億円 -3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「愛と喜びのある食卓をいつまでも」をコーポレート・スローガンに掲げています。企業目的として、顧客の暮らしに寄り添い新たな価値を創造すること、誠実な企業を目指すこと、居心地のよい楽しい社会の実現に貢献すること、そして世界中の人々に高品質な食を提案し豊かな食卓を提供することを定めています。

(2) 企業文化


同社は「誠実であること」「黄金律を大切にすること(相手を尊重し差別をしない広い心で、自分にしてもらいたいことをまず相手にする心を大切にする)」「素直さと謙虚さをもって成長し続けること」「チームワークを重視すること」「創意工夫を重ね常に世界一を目指すこと」を大切にする価値観としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、将来の企業価値向上につながる重要な指標として、営業利益および売上高営業利益率を掲げています。環境変化に適応しながら事業を展開し、顧客の支持を獲得することで、営業費用を上回る利益を継続的に創出していくことを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


国内では、売り場改革による来店価値の創出やデジタルサプライチェーンの高度化、M&Aによる食のSPAモデルの強化を推進します。グローバルでは、米国においてディストリビューターとのネットワークを活用し、プレミアム日本食ブランドのポジションを確立するほか、アジア地域への展開や戦略的M&Aを通じたポートフォリオ拡充に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を持続的な事業成長を牽引する最重要資本と位置づけ、人的資本経営に取り組んでいます。多様な人材が互いに感謝し合いながら自己実現を図れる環境を目指し、等級・評価・報酬・教育を有機的に連動させた人事制度の導入を進めるほか、教育研修の拡充や多様な働き方が可能な環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.5歳 8.2年 5,028,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 27.1%
男性育児休業取得率 42.9%
男女賃金差異(全労働者) 48.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 82.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サステナビリティに関するリスク


気候変動の進行により原材料や商品の調達が困難になる可能性や、環境負荷の小さい商品を好むといった消費者の趣向変化が事業に影響を及ぼす可能性があります。同社はサステナビリティに関する重要課題を設定し、事業戦略に組み込むことで社会と企業の持続的な成長の両立に取り組んでいます。

(2) 経済状況・世界情勢の変化に関するリスク


日本の景気変動や政治情勢、世界情勢の変化により、同社の食品製造販売事業に影響を与える事象が発生した場合、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。これに対し、国内での複数ブランド展開や販売チャネルの多様化を進めるとともに、グローバル事業の拡大に向けた投資を継続しています。

(3) 食の安全性に関するリスク


食品の品質に対する消費者の要求が高まる中、仕入先や製造委託先を含め品質を低下させる事象が発生した場合、損害賠償やブランドイメージの低下が生じる可能性があります。同社は品質保証部門を中心とした管理体制を構築し、外注先の定期訪問や研修等を通じてリスクマネジメントの強化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。