サンクゼール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンクゼール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グロース市場に上場する同社は、「久世福商店」や「サンクゼール」ブランドで食品の製造から販売までを手掛けるSPA(製造小売)企業です。第43期の連結業績は、売上高が前期比増収となる一方で、原材料価格の高騰や物流費の上昇、為替の影響などにより経常利益、当期純利益ともに減益となりました。


#サンクゼール転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社サンクゼール の有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンクゼールってどんな会社?


長野県を拠点に「久世福商店」や「サンクゼール」など独自ブランドの食品を製造・販売する食のSPA企業です。

(1) 会社概要


1982年に株式会社斑尾高原農場として設立され、ペンション経営からジャム製造を開始しました。1990年に「サンクゼール」ブランド、2013年に「久世福商店」ブランドを立ち上げ、全国のショッピングモール等へ出店を加速させました。2017年には米国子会社を設立し海外展開を本格化させ、2022年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

同社の連結従業員数は285名(単体260名)です。筆頭株主は、資産管理会社である株式会社Joseph’s Arrows Trustで、第2位は創業者の久世良三氏、第3位は代表取締役社長の久世良太氏となっており、創業家が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
Joseph’s Arrows Trust 14.46%
久世良三 13.00%
久世良太 9.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は久世良太氏です。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
久世良三 取締役会長 1972年ダイエー入社を経て1975年ペンションKUZE開業。1982年同社設立とともに社長就任。2023年6月より現職。
久世良太 代表取締役社長 2002年セイコーエプソン入社。2005年同社入社。経営サポート部長、専務取締役等を経て2018年6月より現職。
久世直樹 代表取締役副社長 2004年同社入社。販売本部長、常務取締役、St.Cousair, Inc.社長等を経て2023年6月より現職。
櫻井貴史 取締役常勤監査等委員 1993年富士通長野システムエンジニアリング入社。2001年同社入社。内部監査室長、SCM部長等を経て2025年6月より現職。


社外取締役は、今村英明(元ボストン・コンサルティング・グループ日本法人代表)、山本義博(元ハインツ日本社長)、山岡美奈子(元ファンケル取締役専務執行役員)、阿久津正志(弁護士)、杉田昌則(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品製造販売事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 店舗事業(直営・FC)


「サンクゼール」「久世福商店」のブランドで、全国の商業施設等に店舗を展開しています。「サンクゼール」は洋食材、「久世福商店」は和食材を主力とし、自社開発商品や全国の生産者と共同開発した商品を販売しています。また、米国でも子会社を通じて事業を展開しています。

収益源は、直営店における一般消費者への商品販売による売上および、フランチャイズ(FC)加盟企業からのロイヤリティ収入や商品卸売による売上です。運営は主にサンクゼールが行い、米国事業は子会社のSt.Cousair,Inc.が担っています。

(2) EC事業


自社公式オンラインショップや楽天市場などのモールを通じて、消費者へ直接商品を販売しています。また、全国の生産者と消費者を結ぶ産直型オンラインモール「旅する久世福e商店」も運営しており、ギフト需要への対応やアプリを通じた店舗との連携を強化しています。

収益源は、一般消費者への商品販売による売上および、「旅する久世福e商店」における生産者からの販売手数料です。運営は主にサンクゼールが行っています。

(3) ホールセール事業


食品卸企業や小売企業に対し、自社ブランド商品を販売するほか、他社ブランド(PB)商品のOEM供給を行っています。開発・製造・販売の各チームが連携し、顧客ニーズを迅速に反映した商品を提案・提供しています。

収益源は、卸売企業や小売企業への商品販売による売上です。運営は主にサンクゼールが行っています。

(4) グローバル事業


米国オレゴン州の子会社St.Cousair,Inc.を拠点に、現地工場で製造した商品や日本から輸出した商品を販売しています。「KUZE FUKU & SONS」や買収した「Portlandia Foods」などのブランドを展開し、米国内の小売店等へ商品を供給しています。

収益源は、現地の小売店や卸売企業への商品販売による売上です。運営は主に米国子会社のSt.Cousair,Inc.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にありますが、利益面では第43期において原材料価格の高騰や為替の影響、販管費の増加などにより、経常利益および当期純利益が減少しました。売上規模の拡大を図りつつ、コストコントロールが課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 109億円 142億円 179億円 192億円 195億円
経常利益 5.8億円 13億円 16億円 14億円 8.5億円
利益率(%) 5.3% 9.3% 9.1% 7.3% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.7億円 9.4億円 11億円 8.2億円 3.5億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価の増加率が売上高の伸びを上回ったため、売上総利益率は低下しました。また、販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益率は前期より低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 192億円 195億円
売上総利益 71億円 68億円
売上総利益率(%) 36.8% 34.8%
営業利益 13億円 8.4億円
営業利益率(%) 6.7% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が13億円(構成比21%)、給料及び手当が10億円(同18%)を占めています。売上原価には商品評価損12百万円が含まれています。

(3) セグメント収益


同社は「食品製造販売事業」の単一セグメントですが、販売チャネルごとの売上高が開示されています。直営店およびホールセール(卸売)は前期を下回りましたが、FC(フランチャイズ)、EC、グローバル事業は増収となりました。特にグローバル事業はM&Aの効果もあり大きく伸長しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
直営 65億円 62億円
FC 70億円 73億円
EC 11億円 12億円
ホールセール 32億円 26億円
グローバル 14億円 21億円
連結(合計) 192億円 195億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであり、本業で稼いだ現金を投資や借入返済、配当支払いに充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6.8億円 2.5億円
投資CF -7.8億円 -7.6億円
財務CF -6.1億円 -2.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均(グロース市場 2.9%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.6%で市場平均(製造業 63.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「愛と喜びのある食卓をいつまでも」をコーポレート・スローガンに掲げています。企業目的として、正しい経営活動による信頼される企業を目指すこと、違いを認め合う豊かな文化の創造、そして世界中の人々に美味しく健康で高品質な食を提案し、豊かな食卓と暮らしを楽しむ時間を提供することを定めています。

(2) 企業文化


同社は「誠実であること」「黄金律(自分にしてもらいたいことをまず相手にする心)を大切にすること」を価値観として重視しています。また、素直さと謙虚さを持って成長し続けること、互いに感謝しチームワークを重視すること、そして常に世界一を目指して創意工夫と挑戦を続ける姿勢を大切にする文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、顧客の支持の大きさが企業価値向上につながると考え、その指標として営業利益および売上高営業利益率を重要指標としています。具体的な数値目標としては、各部門が計画達成に向けて具体的な数値目標を定めることとしていますが、全社的な中期経営計画の数値目標は明記されていません。

(4) 成長戦略と重点施策


国内事業では、顧客ロイヤルティの向上、生産・供給能力の拡大、M&Aによる「食のSPA」強化を掲げています。具体的には、商品付加価値の向上やマーケティング分析の強化、新工場取得による製造能力拡大を進めます。グローバル事業では、米国でのブランドポートフォリオ強化や販路拡大、アジア・欧州への展開を推進し、プレミアム日本食ブランドとしての地位確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最も重要な資産と捉え、経営戦略と連動した人的資本への投資を拡充する方針です。多様な人材が互いに尊重し合い、生き生きと働ける環境整備を進めるとともに、新卒・キャリア採用の複合的な実施による人材獲得、教育研修の機会拡充、働き方改革(短時間勤務、リモートワーク等)や女性活躍推進に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.3歳 8.1年 4,765,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 47.6%
男女賃金差異(正規雇用) 73.5%
男女賃金差異(非正規) 83.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サステナビリティに関するリスク


気候変動による原材料調達難や消費者嗜好の変化、食品ロスの増加などが事業に影響を与える可能性があります。同社は重要課題を設定し、容器リサイクルや脱プラスチック、温室効果ガス排出量削減などの取り組みを進めています。

(2) 経済状況の変化に関するリスク


国内の景気変動や政治情勢の変化が業績に影響する可能性があります。これに対応するため、同社は国内で複数ブランド・複数チャネルを展開するとともに、海外を成長領域と位置づけ、グローバルでの売上伸長に向けた投資を継続しています。

(3) 食の安全性に関するリスク


製品の安全性や品質に問題が生じた場合、損害賠償やブランドイメージの低下により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は品質保証部門を中心とした管理体制を構築し、外注先工場の定期訪問や研修実施など、品質確保に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。