ハルメクホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハルメクホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するハルメクホールディングスは、シニア女性向けの雑誌出版と商品の通信販売を展開しています。直近の業績では、雑誌の購読料改定や通信販売のカタログ配布基準の見直しなどにより、売上収益は微減となったものの、収益性の改善が大きく進み大幅な増益を達成しています。


※本記事は、株式会社ハルメクホールディングスの有価証券報告書(第7期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ハルメクホールディングスってどんな会社?


シニア女性向け出版と通販事業を展開し、豊かなライフスタイルを支援する企業です。

(1) 会社概要


同社は1989年に設立されたユーリーグを前身とし、1996年にシニア女性向け雑誌を発刊しました。2009年の民事再生手続を経て新たに設立された法人が事業を譲受し、2016年に社名をハルメクへと変更しました。その後、2018年に持株会社化を行い、2020年のMBOを経て、2023年に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。

同社グループの従業員数は連結で417名、単体で74名となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主と第3位株主は安定株主として同社を支援するエンジェル投資家であり、第2位株主は同社の代表取締役社長である宮澤孝夫氏となっています。

氏名 持株比率
松島陽介 17.20%
宮澤孝夫 14.66%
山元雄太 13.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は宮澤孝夫氏が務めており、社外取締役比率は55.6%となっています。

氏名 役職 主な経歴
宮澤孝夫 代表取締役社長 野村総合研究所やボストンコンサルティンググループ等を経て、旧いきいき(現ハルメク)代表取締役に就任。2020年より現職。
石井文範 取締役CFO 東海銀行やミスミ等を経て、ミクリード取締役に就任。2021年より現職。
土屋淳一 取締役 SMBC日興証券等を経て、旧いきいき(現ハルメク)最高財務責任者に就任。2020年より現職。
山岡朝子 取締役 主婦と生活社を経てハルメクに入社し、ハルメク編集長に就任。2021年より現職。


社外取締役は、髙橋伸治(元ワールド企画社長)、林南平(元MKSパートナーズ社長)、中村大(DNパートナーズ社長)、大村由紀子(弁護士)、青野雅朗(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ハルメク事業」および「ことせ事業」の報告セグメントを展開しています。

(1) ハルメク事業


同事業は、50代以上のアクティブなシニア女性を対象に、販売部数トップクラスの雑誌「ハルメク」やウェブメディアを通じた情報提供を行っています。また、読者の声をもとに開発したオリジナル商品等のカタログ・EC販売や、イベント・講座といったコミュニティサービスも提供しています。

主な収益源は、顧客からの雑誌の定期購読料や商品の販売代金、各種イベントの参加費などです。事業の運営は主にハルメクが担っており、受注や物流などのフルフィルメント業務はハルメク・ビジネスソリューションズが行っています。

(2) ことせ事業


同事業は、新聞広告などで集客した60代以上のシニア女性を主なターゲットとし、通販カタログ「ことせ」を用いた通信販売を展開しています。顧客ごとに担当者を配置し、電話で親身に寄り添いながら商品を提案・販売する外商営業的な独自スタイルが特徴です。

主な収益源は、低価格帯を中心としたアパレル商品などの販売代金です。事業の運営は主にハルメク・アルファが担っており、通信販売における保険取扱代理店事業はジャパンホーム保険サービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上収益は顧客基盤の拡大により安定した水準を維持しています。一方、利益面では通信販売におけるカタログ配布基準の厳格化や広告効率の改善などの施策が奏功し、直近の期において利益率が大きく向上し、増益へと転じています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 252億円 287億円 314億円 339億円 338億円
税引前利益 12億円 19億円 7億円 10億円 17億円
利益率(%) 4.6% 6.5% 2.2% 3.0% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 12億円 5億円 6億円 11億円

(2) 損益計算書


売上収益は横ばいで推移していますが、売上総利益率は安定して高い水準を保っています。販売費及び一般管理費における広告投資の適正化が進んだことで、営業利益が大幅に増加し、収益性の改善が明確に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 339億円 338億円
売上総利益 191億円 190億円
売上総利益率(%) 56.3% 56.3%
営業利益 11億円 18億円
営業利益率(%) 3.1% 5.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付が49億円(構成比28.4%)、広告宣伝費及び販売促進費が46億円(同26.8%)、荷造運賃が29億円(同17.0%)を占めています。また、売上原価の多くは商品原価(構成比88.3%)となっています。

(3) セグメント収益


ハルメク事業は、雑誌の購読料改定や物販の好調により増収増益となりました。ことせ事業は、収益改善を目的とした広告投資の抑制により減収となったものの、採算性を重視した事業運営によって黒字転換を果たしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ハルメク事業 268億円 275億円 13億円 17億円 6.1%
ことせ事業 76億円 66億円 -0.4億円 - -
連結(合計) 339億円 338億円 13億円 18億円 5.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のパターンです。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 24億円 17億円
投資CF -3億円 -4億円
財務CF -6億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「50代からの女性がよりよく生きることを応援します」という経営理念を掲げています。シニア女性が「これからのために生きてきた」と感じられるよう、必要なコンテンツを厳選して提供するとともに、安心・信頼できるコミュニティを創出し、人生の後半を元気に前向きに楽しく暮らせるよう支援することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「思い込みを捨てる」「わかった気にならない」というポリシーのもと、顧客エンゲージメントを重視した企業文化を持っています。シニアに対するステレオタイプな思い込みを排除し、ハガキやアンケート、グループインタビューなどから直接収集した顧客の生の声を事業の起点として、期待を超える商品やサービスの提供に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、シニア女性が信頼し頼りにするシニア向けビジネスのナンバーワン企業を目指しており、重視する経営指標として「読者数(雑誌『ハルメク』の購読者数)」と「顧客数(同社グループのサービスを1年間で1回以上利用したことのある人数)」を掲げています。顧客の継続的な利用を促し、ロイヤリティの高いファンを増やすことで持続的な成長を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存領域である「情報コンテンツ」「物販」「コミュニティ」の3事業の相乗効果を一層強化します。特に物販では、総合通販型から専門物販型へと移行し競争力の高い商品展開を強化するとともに、上質な高価格品やサービスの拡充を進めます。また、デジタルシフトに対応した「HALMEK up」などの新規事業を先行投資として育成し、将来の収益化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営理念と誠実で真摯な組織風土に共感し、理念に則って判断・行動できる人材の採用と育成を重視しています。新卒社員の早期定着を支えるメンター制度や中途採用者向けの1on1体制を構築するほか、フルフレックスタイムやリモート勤務を導入し、従業員が安心して挑戦し成長できる職場環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.2歳 6.9年 8,388,000円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 50.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 49.1%
男女賃金差異(正規雇用) 78.3%
男女賃金差異(パート・有期) 103.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況・競合環境に関するリスク


同社がターゲットとするシニア市場は成長市場であるものの、法規制の変化やIT技術の進化、画期的な情報媒体やサービスを持つ競合他社の参入があった場合、同社の優位性が低下し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社は市場や法規制の最新動向の把握に努め、適時に対応できる体制を構築しています。

(2) システム・セキュリティに関するリスク


同社の事業運営はコンピュータネットワークに依存しており、サイバー攻撃や不正アクセスによるシステム障害や情報漏洩が発生した場合、業務の停止等を招くおそれがあります。同社は外部機関のアセスメントを受けるなど、システムのセキュリティ強化とデータバックアップ体制の維持に努めています。

(3) 商品の品質と法的規制に関するリスク


同社は通信販売等において景品表示法や薬機法等の法的規制を受けており、法規制の強化や商品品質に関する重大な問題が発生した場合、企業イメージの低下や売上の減少につながる可能性があります。同社は「シニア世代の信頼を裏切らない」ことを最重要判断基準とし、品質管理とコンプライアンス遵守を徹底しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。