SHINKO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SHINKO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SHINKOは、スタンダード市場に上場し、IT機器や医療機器の保守サービス、ソリューション、人材サービスの3事業を展開しています。2026年3月期は、官公庁のデジタル化推進に伴うネットワーク工事や教育・医療分野でのIT投資拡大を取り込み、全事業で増収を達成し、過去最高の売上と増収増益を記録しました。


**※本記事は、株式会社SHINKO の有価証券報告書(第12期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**

1. SHINKOってどんな会社?


IT機器や医療機器の保守、ソリューション、エンジニア派遣を通じて社会の情報基盤を支える企業です。

(1) 会社概要


1953年に新興製作所のテレプリンター保守会社として創業しました。その後、レセプトコンピュータやビジネスパソコンの保守を受託して事業を拡大し、2005年に人材サービス、2007年にソリューション事業を開始しました。2回のMBOを経て経営の独立性を確保し、2020年に現社名へ変更、2023年に東京証券取引所スタンダード市場へ上場しました。

同社の従業員数は単体で895名です。大株主の構成をみると、筆頭株主は資産管理等を行うヒューマンサービスで、第2位は従業員の持株会、第3位は創業時からの経営陣の一人である代表取締役の福留泰蔵氏となっています。

氏名 持株比率
ヒューマンサービス 17.28%
SHINKO従業員持株会 8.54%
福留泰蔵 6.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役会長執行役員を福留泰蔵氏、代表取締役社長執行役員を村上芳仁氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
福留泰蔵 代表取締役会長執行役員 本田技術研究所、衆議院議員等を経て、新興製作所営業本部長等を歴任。2009年に同社代表取締役社長執行役員に就任し、2026年より現職。
村上芳仁 代表取締役社長執行役員 1986年に同社入社。水戸、名古屋、札幌の各支店長や経営企画室長を歴任。取締役執行役員を経て、2026年より現職。
石田英章 常務取締役執行役員広域ビジネス事業本部担当兼ヒューマンリソース事業本部担当 1990年に同社入社。医療福祉推進本部長や保守サービス統括ユニット長等を歴任。専務取締役を経て、2026年より現職。
星野達也 取締役執行役員技術本部担当兼ソリューション事業本部担当 1989年に同社入社。東ブロック営業部ゼネラルマネージャーやソリューション統括ユニット長等を歴任。2026年より現職。


社外取締役は、漆原良夫(弁護士・元衆議院議員)、根本紀行(公認会計士)、伊藤憲太郎(元大和証券常勤監査役)、ホーマン由佳(立正大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、保守サービス事業、ソリューション事業、人材サービス事業を展開しています。

保守サービス事業


全国の病院やクリニック、調剤薬局等に導入されている電子カルテシステムやレセプトコンピュータ、IT機器の保守サービス、コールセンター業務を提供しています。メーカーに属さない独立系の強みを活かし、医療機器からIT機器まで多種多様な機器に対し、全国で24時間365日のオンサイト対応を行っています。

収益は主に、顧客や各種機器メーカーと締結した保守契約に基づく継続的な保守料金として受け取っており、安定したストック型ビジネスモデルとなっています。本事業の運営は同社が直接行っています。

ソリューション事業


医療機関、一般企業、官公庁向けに、システムの設計やネットワーク構築、機器の設置工事、展開管理等のICTサービスを提供しています。また、顧客の要望に合わせた機器の提案や販売も実施しており、IT機器の調達から廃棄までをワンストップでサポートするLCM(ライフサイクルマネジメント)サービスも展開しています。

収益は、機器の販売代金やネットワーク設定、設置工事等の各種サービス提供に対する対価として顧客から受け取ります。案件の獲得から保守サービス事業への引き継ぎまでを一貫して提供できる点が強みであり、運営は同社が行っています。

人材サービス事業


IT機器の保守や点検を行うカスタマエンジニアや、ネットワークの設計・構築を支援するシステムエンジニアを取引先に派遣しています。KDDIグループやNECフィールディング等の大手企業をはじめ、空港や複数の企業に対して質の高い技術人材を提供し、準委任契約や請負契約に基づく業務支援も行っています。

収益は、労働者派遣契約や請負契約に基づく継続的な役務提供に対する対価として、派遣先や委託元企業から得ており、保守サービス事業と同様にストック型のビジネスとなっています。本事業の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、企業のIT投資拡大や官公庁のデジタル化推進を背景に、売上高が持続的に拡大しています。利益面も堅調に推移し、直近の事業年度では全ての利益指標で過去最高を更新するなど、収益力の向上が顕著に表れています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 139億円 159億円 161億円 169億円 194億円
経常利益 6億円 8億円 6億円 7億円 9億円
利益率(%) 4.4% 4.8% 3.9% 4.1% 4.8%
当期利益 4億円 5億円 4億円 5億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高の力強い成長に伴い、売上総利益と営業利益がともに増加しています。価格転嫁の交渉や業務の効率化などの取り組みが奏功し、営業利益率も着実に改善傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 169億円 194億円
売上総利益 40億円 45億円
売上総利益率(%) 23.8% 23.2%
営業利益 7億円 9億円
営業利益率(%) 4.1% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が8億円(構成比21%)、不動産賃借料が5億円(同15%)を占めています。売上原価では、商品売上原価が53億円(構成比35%)、労務費が49億円(同33%)、外注費が44億円(同29%)となっています。

(3) セグメント収益


全ての事業セグメントで増収増益を達成しています。特にソリューション事業は、教育機関や官公庁向けの大規模なネットワーク工事案件が牽引し、大きく伸長しました。保守サービス事業も、既存顧客の契約方式移行や新規獲得が寄与して安定した利益を生み出しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
保守サービス事業 49億円 51億円 9億円 10億円 19.8%
ソリューション事業 98億円 120億円 8億円 9億円 7.8%
人材サービス事業 22億円 23億円 3億円 3億円 13.9%
調整額 - - -13億円 -14億円 -
連結(合計) 169億円 194億円 7億円 9億円 4.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続する勝負型の状態となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9億円 -4億円
投資CF -2億円 -1億円
財務CF -7億円 5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は33.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「わたしたちはお客様を念(おも)い、仲間を想(おも)い、社会を憶(おも)い、高度情報通信ネットワーク社会のラストワンマイルである人と人との接点に新たな価値を創造していきます。」を企業理念として掲げています。IT機器を利用する現場での対話や技術的支援を通じ、人と人との接点で求められる使命を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業理念に加え6項目の行動基準・行動指針を掲げています。顧客第一、プロフェッショナルとしてのスキルの研鑽、前向きなチャレンジ精神、ルールを厳守するコンプライアンス意識、互いの個性と価値観を尊重するチームワーク、そして社会貢献を喜びとする姿勢を重視し、継続的な企業成長を追求しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、総合ITソリューション企業を目指す新中期経営計画(2027年3月期まで)を推進しています。最終年度に向けて「成長と収益力向上」を最重要テーマに掲げ、DX改革の一翼を担いながら以下の数値目標の達成を目指しています。

・営業利益10億円の突破

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、IT市場のDX推進を背景に、各事業間のシナジー効果による収益拡大を図っています。保守分野ではLCM案件の拡大、ソリューション分野ではガバメントクラウド等の公共投資への対応や医療・介護分野への積極的な参入を推進します。あわせて、社内工事部門の新設による外注費のコントロールや、基幹システムの最適化を通じた業務効率化に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業の維持と拡大に不可欠な「人」を最も重要な経営資源と位置付けています。IT人材の不足が深刻化する中、採用活動を強化し、入社後は基礎教育から公的資格取得までの一貫した育成プログラムを提供しています。また、全国拠点を活かしたジョブローテーションにより、従業員のライフスタイルに合わせた長期的な就労環境の整備とエンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.8歳 12.8年 5,420,533円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.5%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 64.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ESアンケートにおける肯定率(41.6%)、平均年間有給取得日数(11.1日)、女性管理職人数(6人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新と市場環境の変化


IT業界における激しい技術革新や市場の変化に対応できず、市場に適応した新サービスを提供できない場合、競争力が低下するリスクがあります。また、クラウド移行の進展により機器のセンドバック保守が主流となり、オンサイトサービスの需要が減少した場合、同社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の主要取引先への依存


同社の保守サービスは特定の医療機器メーカー製品に大きく依存しています。また、人材サービス事業でも少数の大手企業にエンジニアを集中して派遣しています。これらの主要取引先と関係が悪化したり、取引先の経営方針の変更により契約が縮小されたりした場合には、同社の収益基盤に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 高度なIT人材の確保と育成


同社の事業は人的サービスが中核であり、顧客の要求を満たす高い技術力を持ったエンジニアの確保が成長の鍵を握っています。激しい獲得競争の中で優秀な人材を十分に採用・育成できなかったり、従業員の流出が想定以上に進んだりした場合には、サービスの品質低下や事業拡大の制約となるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。