SHINKO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SHINKO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SHINKOは、東証スタンダード市場に上場し、IT機器の保守、システム導入支援、エンジニア派遣の3事業を展開する企業です。2025年3月期は、医療DXやWindows更新需要などを取り込み、売上高169億円、営業利益6.9億円と増収増益を達成しました。全国拠点のネットワークを強みに安定成長を続けています。


記事タイトル:SHINKO転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社SHINKO の有価証券報告書(第11期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SHINKOってどんな会社?


SHINKOは、医療機関や企業向けIT機器の保守サービスを祖業とし、システム構築や人材派遣まで事業領域を広げてきた独立系の総合ITソリューション企業です。

(1) 会社概要


同社は1953年、テレプリンターの保守を目的に設立されました。その後、レセプトコンピュータ等の保守を開始し全国展開を進めます。2014年および2017年の二度のMBO(経営陣による買収)を経て経営の独立性を高め、2020年に現在の商号へ変更しました。2023年には東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしています。

現在の従業員数は860名(単体)です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社であり、第2位は従業員持株会、第3位は代表取締役社長個人となっています。経営陣と従業員が株式を保有し、経営へのコミットメントが高い資本構成となっています。

氏名 持株比率
株式会社ヒューマンサービス 17.27%
SHINKO従業員持株会 8.24%
福留泰蔵 6.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長執行役員は福留泰蔵氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
福留 泰蔵 代表取締役社長執行役員 日本金属、本田技術研究所を経て衆議院議員に当選。その後、新興製作所等を経て2009年より現職。
石田 英章 常務取締役執行役員 1990年入社。医療福祉推進本部本部長、保守サービス統括ユニット長などを歴任し、現在はヘルスケアビジネス統括等を担当。
佐藤 秀樹 取締役執行役員 2002年入社。ICTソリューション推進本部本部長などを経て、現在はヒューマンリソース統括ユニットを担当。
村上 芳仁 取締役執行役員 1986年入社。水戸・名古屋・札幌支店長、経営企画室長を歴任。現在は経営企画室およびコーポレートスタッフ統括を担当。
星野 達也 取締役執行役員 1989年入社。ソリューション営業部長、パートナー事業本部長などを経て、現在はソリューションおよびカスタマセールス統括を担当。


社外取締役は、漆原良夫(弁護士、元衆議院議員)、根本紀行(公認会計士)、伊藤憲太郎(元大和証券常勤監査役)、ホーマン由佳(立正大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「保守サービス事業」、「ソリューション事業」、「人材サービス事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

**(1) 保守サービス事業**
全国の病院・クリニック向けの電子カルテやレセプトコンピュータ、調剤薬局向けのシステム等の保守サービスを提供しています。また、コールセンターやヘルプデスク業務も行っています。独立系保守会社として、メーカーを問わず24時間365日のオンサイトサービスを提供できる点が特徴です。
収益は、顧客または機器メーカーと締結した保守契約に基づく継続的な保守料(ストック型ビジネス)が中心です。運営は主にSHINKOが行っています。

**(2) ソリューション事業**
医療機関、官公庁、一般企業向けに、システムの設計・構築、機器の設置展開、ネットワーク工事などを提供しています。特に医療DXやGIGAスクール構想などの需要に対応し、機器販売とセットでの導入支援を行っています。
収益は、機器の販売代金や設計・構築・設置工事などの対価を顧客から受け取ります。運営は主にSHINKOが行っています。

**(3) 人材サービス事業**
IT機器の保守・修理を行うカスタマエンジニア(CE)や、システム設計・構築を行うシステムエンジニア(SE)を派遣しています。主要取引先はNECフィールディングやKDDIグループなどです。
収益は、派遣契約に基づく対価を派遣先企業から受け取ります。ストック型のビジネスモデルであり、IT人材不足を背景に需要が増加しています。運営は主にSHINKOが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は127億円から169億円へと着実に右肩上がりで推移しています。経常利益も5億円前後から7億円近くまで増加傾向にあり、利益率も4%前後で安定しています。特にここ数年はDX需要の高まりを背景に事業規模を拡大させています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 127億円 139億円 159億円 161億円 169億円
経常利益 5億円 6億円 8億円 6億円 7億円
利益率(%) 3.8% 4.4% 4.8% 3.9% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 4億円 5億円 4億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加しており、売上総利益率は23%台で安定しています。営業利益率は4%前後を維持しています。コストコントロールと価格転嫁の取り組みが進んでおり、増収効果が利益に反映される構造となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 161億円 169億円
売上総利益 37億円 40億円
売上総利益率(%) 23.1% 23.8%
営業利益 6億円 7億円
営業利益率(%) 3.9% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が約7億円(構成比約21%)、不動産賃借料が約5億円(同約16%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。「ソリューション事業」は売上の約6割を占める最大事業であり、医療DX等の需要により順調に成長しています。「保守サービス事業」は売上の約3割ですが、利益率が約18%と高く、全社利益を牽引しています。「人材サービス事業」も派遣単価の上昇により堅調です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
保守サービス事業 48億円 49億円 8億円 9億円 17.7%
ソリューション事業 92億円 98億円 7億円 8億円 8.0%
人材サービス事業 21億円 22億円 3億円 3億円 14.0%
調整額 - - -12億円 -13億円 -
連結(合計) 161億円 169億円 6億円 7億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラスで、投資CFと財務CFがマイナスであることから、本業で稼いだ現金を設備投資や借入返済・配当に回している「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。安定した営業キャッシュ・フローを基盤に、システム投資や株主還元を行っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 11億円 9億円
投資CF -1億円 -2億円
財務CF -4億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は28.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様を念(おも)い、仲間を想(おも)い、社会を憶(おも)い、高度情報通信ネットワーク社会のラストワンマイルである人と人との接点に新たな価値を創造していきます。」を企業理念として掲げています。現場における顧客や仲間、社会への思いを大切にし、ITの現場作業を通じて価値を提供することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「お客様第一」「プロフェッショナル」「チャレンジ精神」「コンプライアンス意識」「チームワーク」「社会貢献」の6つを行動基準・指針として掲げています。期待を超えるサービスの提供、スキル習得への研鑽、前向きな挑戦、仲間の尊重などを重視し、法令を遵守した安定的成長を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は2024年7月に新中期経営計画を発表し、DX改革の一翼を担う総合ITソリューション企業を目指しています。売上高、セグメント利益、営業利益率を客観的な指標として設定し、企業規模の拡大と企業価値の向上を図っています。

* 売上高:169億円(2025年3月期実績)
* 営業利益:6.9億円(同上)
* 営業利益率:4.1%(同上)

(4) 成長戦略と重点施策


「成長と収益力向上」をテーマに、医療DXや教育DXなどの市場需要を捉え、事業基盤の拡大を図っています。特にソリューション事業を成長ドライバーと位置づけ、営業力強化やパートナー連携を推進しています。また、保守サービスでは遠隔作業支援システム(スマートグラス)の導入やテクニカルセンターの機能拡充により、業務効率化と高付加価値化を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を経営資源と位置づけ、事業の維持・拡大の基盤としています。採用活動の強化に加え、社内研修による資格取得推進やジョブローテーションにより、マルチに対応可能なエンジニアへのスキルアップを図っています。また、従業員エンゲージメントの向上を全社的課題とし、ES向上委員会の設置や処遇改善(賞与増額等)に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.0歳 13.1年 5,088,542円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 20.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.5%
男女賃金差異(正規) 79.0%
男女賃金差異(非正規) 63.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社有車におけるエコカーの割合(22.6%)、平均年間有給取得日数(11.4日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定取引先への依存について

人材サービス事業の売上の大半はNECフィールディングとKDDIの2社が占めています。また、保守サービス事業でもウィーメックス製品の取扱い割合が高くなっています。これらの取引先の方針変更や関係悪化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保・育成について

同社の事業は人的サービスが中心であり、IT人材不足が深刻化する中、顧客ニーズに対応する高スキルなエンジニアを十分に確保・育成できない場合、機会損失やサービス品質の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 価格転嫁と外注費コントロール

物価上昇や円安による調達コスト増加に対し、適切な価格転嫁が課題となっています。また、自社で対応できない工事案件の増加に伴い外注費が増加しており、適切なコントロールができない場合、利益率が低下する可能性があります。

(4) コンプライアンスと情報セキュリティ

顧客情報や機密情報を多数取り扱うため、情報漏洩やサイバー攻撃によるシステム障害が発生した場合、損害賠償や信用失墜につながるリスクがあります。また、法令違反等のコンプライアンス問題も事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。