GSI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

GSI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

GSIは札幌証券取引所に上場し、常駐開発支援や受託開発を中心としたシステム開発事業を展開しています。また、ITスキルに特化した就労支援事業も手掛けています。直近の業績は、企業の旺盛なIT投資需要を背景に、売上高が約46億円、経常利益が約5億円と増収増益のトレンドで推移し、過去最高益を更新しています。


※本記事は、株式会社GSIの有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. GSIってどんな会社?


企業向けシステム開発やエンジニア派遣を主力とし、IT人材不足の解消を支援する企業です。

(1) 会社概要


同社は2004年に札幌市でシステム開発業務を目的として設立され、2006年に現在のGSIへ商号変更しました。2023年に札幌証券取引所へ上場を果たしています。同年には国内子会社および海外子会社を設立し、2024年よりITスキルに特化した就労支援事業も開始するなど事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で548名、単体で516名です。筆頭株主は創業者である工藤雅之会長の資産管理会社であるKam Internationalで、第2位株主は社長の小沢隆徳氏となっており、経営陣を中心とした安定的な資本構成となっています。

氏名 持株比率
Kam International 78.00%
小沢隆徳 2.18%
泉直樹 2.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長は工藤雅之氏、代表取締役社長は小沢隆徳氏が務めています。取締役6名のうち、社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
工藤雅之 代表取締役会長 2004年にGLUE SYSTEMS(現GSI)を設立し社長に就任。Kam International代表取締役を経て、2022年より現職。
小沢隆徳 代表取締役社長 2007年に同社へ入社。2014年に取締役、2016年に取締役副社長を経て、2022年より現職。
佐藤公則 取締役副社長 2007年に同社へ入社。札幌本社や金融公共システム部門の要職、上席執行役員等を経て、2025年より現職。
原田裕 常務取締役 2005年に同社へ入社。管理部経理総務課長、取締役業務管理事業部長を経て、2025年より現職。


社外取締役は、大西登代子(ボイスオブサッポロ代表取締役)、大西將博(ゼロエンターテインメント代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システム開発事業」および「就労支援事業」を展開しています。

(1) システム開発事業


幅広い業種の顧客企業に対し、システムやソフトウェアの開発、運用保守、および受託開発サービスを提供しています。IT人材不足に悩む企業へ労働力と技術力を提供し、業務効率化やデータ活用に向けたIT環境の最適化を支援しています。

収益源は、ITエンジニアを顧客先に常駐させる派遣・準委任契約に基づく技術提供料や、請負契約による受託開発の対価です。また、パッケージソフトの販売・導入も行います。運営は同社のほか、海外子会社のBe UNIQUEが担っています。

(2) 就労支援事業


一般企業等での就労が困難な方々に対し、クリエイティブやITスキルに特化した就労継続支援B型事業所を運営しています。パソコンの基礎からウェブデザイン、プログラミングまで、個人の目標に合わせた訓練や生産活動の機会を提供しています。

収益源は、障害者総合支援法に基づく国や自治体からの訓練等給付費などの就労支援サービス提供に対する対価です。運営は国内子会社のCareer Waysが行っており、複数の事業所を通じて地域社会への貢献と安定した収益創出を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期の業績は、企業の旺盛なIT投資需要を背景に売上高が順調に拡大しており、増収基調を維持しています。経常利益も一時的な踊り場を経て直近では大幅な増益となり、利益率も11%台に回復するなど収益性の向上が見られます。積極的な人材投資が早期に収益貢献し、過去最高益を更新する好調な推移を示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 40億円 42億円 46億円
経常利益 4億円 4億円 5億円
利益率(%) 10.9% 9.8% 11.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 3億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調な伸びを示しています。エンジニアの稼働率維持と高単価プロジェクトへの戦略的な人員配置転換が功を奏し、売上総利益率および営業利益率が揃って改善しています。積極的な採用・教育投資を行いながらも、それを吸収して本業の収益力を一段と高めています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 42億円 46億円
売上総利益 10億円 12億円
売上総利益率(%) 24.6% 25.6%
営業利益 4億円 5億円
営業利益率(%) 9.5% 10.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2億円(構成比33%)、採用教育費が0.9億円(同13%)を占めています。また、主力のシステム開発事業の売上原価では労務費が25億円(同72%)、外注費などの経費が9億円(同28%)となっており、人的資本への投資がコスト構造の中心となっています。

(3) セグメント収益


主力のシステム開発事業は、新規顧客の開拓や既存顧客からの継続受注が堅調に推移し、エンジニアの稼働率上昇と単価改善により順調な増収を果たしました。就労支援事業も、各事業所の登録者数や利用者数が堅調に推移し、効果的な集客施策と運営体制の最適化により、大幅な増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
システム開発事業 42億円 45億円
就労支援事業 0.5億円 0.8億円
調整額 - -
連結(合計) 42億円 46億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2億円 5億円
投資CF -7億円 -3億円
財務CF -3億円 0.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.3%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も67.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ユニークであれ。革新的であれ。」をスローガンとして掲げ、「すべての企業とITを近づけ、社会の推進力を生み出す」ことをミッションとしています。クライアントの課題に最適なUX(顧客体験)を提供し続けることを使命とし、より快適な社会、より幸せな暮らしの実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


事業活動と社会貢献活動の両立を重視し、IT技術で持続可能な社会を実現することを大切にしています。個性豊かな価値を生み出し続けられる人材を育成するため、人的資本への戦略的投資を推進しており、社会貢献と事業としての持続的成長の好循環の確立に積極的に取り組む価値観を持っています。

(3) 経営計画・目標


経営上の目標を達成するための客観的指標として、主軸のシステム開発事業における「人員数(延べ人数)」「稼働率」「1人当たり月平均契約単価」を重視しています。また、新たな経営指標としてパッケージソフトの販売による「ストック型収益の拡大」、就労支援事業における「登録者数・利用者数」「稼働率」を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


次年度に向けた「第2次攻めの投資フェーズ(戦略的投資フェーズ)」へ移行し、中長期的な飛躍を目指します。全開発プロセスへの生成AI実装による劇的な生産性改善と高品質ソリューションの提供を図るほか、自社開発のAIチャットサービス等を中心としたパッケージソフトの販売を強化し、ストック型収益の積み上げと収益構造の多層化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


優秀なIT人材の確保・育成・定着を最優先課題に掲げ、「エンジニアに選ばれる環境整備」を進めています。能動的な採用活動に加え、新卒初任給の引き上げや給与制度の抜本的見直し等により処遇改善を図っています。また、未経験者を最長4ヶ月で育成する手厚い研修体制や、定期面談による適正把握を継続しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 32.0歳 5.22年 4,307,495円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 92.9%
男女賃金差異(全労働者) 88.2%
男女賃金差異(正規雇用) 89.2%
男女賃金差異(パート・有期) 35.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇消化率(87.4%)、テレワーク率(67.8%)、IT関連資格取得率(78.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT投資市場の動向と価格競争


顧客企業のシステムやIT投資への意欲が経済動向や市場環境の悪化によって低下した場合、予想を超える価格競争や受注減が発生し、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 優秀なITエンジニアの確保と流出


システム開発の技術サービスにおいて人材は重要な経営資源であり、優秀なエンジニアの確保と育成が不可欠です。人材の確保が十分に行えない場合や流出が増加した場合、顧客ニーズに対応できず業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) ビジネスパートナーとの連携と外注依存


事業運営において外部協力企業等のビジネスパートナーとの連携は重要であり、製造費用の約24%を外注費が占めています。円滑な連携が取れなくなったり関係に変化が生じたりした場合、サービス提供に支障を来す可能性があります。

(4) 特定の主要顧客への売上依存


上位顧客であるアルディートや伊藤忠テクノソリューションズに対する売上依存度があり、特定の顧客の経営状況の変化や経営方針の変更が業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。