早稲田学習研究会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

早稲田学習研究会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、北関東・埼玉を中心に学習塾「W早稲田ゼミ」等を運営する企業です。直近の業績は、新規拠点の開設や生徒数の順調な増加により増収となりましたが、税負担の増加等により最終利益は減益となりました。地域密着型の「大型の郊外型校舎」展開を強みとしています。


※本記事は、株式会社早稲田学習研究会 の有価証券報告書(第33期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 早稲田学習研究会ってどんな会社?


群馬県・栃木県・埼玉県を中心に、小中高生向けの学習塾運営を行う企業です。「生徒第一主義」を掲げ、正社員教師による質の高い授業を特徴としています。

(1) 会社概要


同社は1987年に群馬県太田市で早稲田家庭教師センターとして創業しました。翌1988年に「W早稲田ゼミ」を開業してゼミ部門を開始し、1991年には高校生向けの「W早稲田ゼミハイスクール」を開始しました。1993年に法人化され、2023年12月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしました。

2025年3月31日現在、同社(単体)の従業員数は387名です。筆頭株主は創業者の吉原俊夫氏が代表を務める資産管理会社の株式会社YMMで、第2位は同社代表取締役会長の吉原俊夫氏、第3位は個人株主となっています。

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長は吉原俊夫氏、代表取締役社長は佐藤誉氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
吉原俊夫 代表取締役会長 1987年早稲田家庭教師センター創業。2002年同社代表取締役会長兼社長。2023年6月より現職。
佐藤誉 代表取締役社長 2000年同社入社。2020年太田校塾長、2023年常務取締役を経て、2025年1月より現職。
柳澤武志 取締役 2005年同社入社。2019年専務取締役、2023年代表取締役社長を経て、2025年1月より現職。
松尾有希 取締役 2016年弁護士登録。森・濱田松本法律事務所を経て、2019年3月より現職。
山崎晴也 取締役 日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)等を経て、2022年4月より現職。


社外取締役は、川島渉(公認会計士・税理士)、尾中直也(公認会計士・税理士)、藤井智(元群馬県警察幹部)、鎌川拓哉(税理士)、吉村祐一(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ゼミ部門」「ハイ部門」「ファースト個別部門」事業を展開しています。

(1) ゼミ部門


小学生・中学生を対象とした集団指導塾「W早稲田ゼミ」を運営しています。補習の無料提供や、正社員教師とアシスタントによるフォロー体制、保護者会による連携など、きめ細やかなサポートを行っています。

生徒からの授業料や講習会費等が主な収益源です。運営は同社が行っています。

(2) ハイ部門


高校生を対象とした集団指導塾「W早稲田ゼミハイスクール」を運営しています。大学受験対策を中心に、正社員教師による質の高い授業に加え、学習進路指導や定期テスト対策などのサポートを提供しています。

生徒からの授業料や講習会費等が主な収益源です。運営は同社が行っています。

(3) ファースト個別部門


小学生・中学生・高校生を対象とした個別指導塾「ファースト個別」を運営しています。教師による1対1の授業を中心に、生徒一人ひとりのニーズに合わせた柔軟な指導を行っています。

生徒からの授業料や講習会費等が主な収益源です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。経常利益も安定的に推移しており、20%を超える高い利益率を維持しています。当期利益については、直近で若干の減少が見られますが、高い水準を保っています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 55億円 59億円 61億円 65億円 70億円
経常利益 12億円 12億円 12億円 14億円 15億円
利益率 22.5% 20.6% 20.4% 22.2% 21.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 8億円 8億円 11億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しました。一方で、販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益率はわずかに低下しましたが、依然として高い収益性を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 65億円 70億円
売上総利益 26億円 28億円
売上総利益率(%) 40.8% 40.8%
営業利益 15億円 15億円
営業利益率(%) 22.5% 21.4%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が3.1億円(構成比22.6%)、給料手当が2.7億円(同19.8%)を占めています。売上原価においては、人件費が29億円(構成比69.6%)、経費が11億円(同27.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


各部門とも増収となりました。特にゼミ部門は新規校舎の開校や既存校での生徒数増加により売上が拡大しました。ファースト個別部門も新規開校や生徒数増加により堅調に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ゼミ部門 48億円 53億円
ハイ部門 11億円 11億円
ファースト個別部門 5億円 6億円
連結(合計) 65億円 70億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金で借入返済を行い、投資も手元資金の範囲内で賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 10億円 13億円
投資CF -6億円 -11億円
財務CF -1億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「生徒第一主義」を掲げ、質の高い授業と面倒見の良さを子供たちに提供することを重視しています。また、「生徒の成績を上げる指導を通じて社会に貢献します。」という経営理念を実現するために、日々サービスの改良改善を続けています。

(2) 企業文化


同社は、「最も生徒の面倒見がよく成績の上がる塾」を標榜し、生徒の学習をサポートするために様々な取り組みを行っています。生徒一人ひとりのやる気を引き出し、夢を叶えるために導くことを重視しており、質の高い授業だけでなく、生徒への手厚いサポート体制を整える文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業価値を継続的に拡大することが重要であると考え、売上高と営業利益を経営上の重要な指標としています。また、収益性の観点からは売上高営業利益率を重視しており、18.0%の水準を経営目標の目安としています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、高い集客力を背景とした「大型の郊外型校舎」の展開を基本戦略としています。今後は、埼玉県を中心とした新規出店によるエリア拡大、小学生低学年指導や新たな講座の開発、部門間シナジーの強化などを推進していく方針です。また、教師の指導品質向上や、生徒への面倒見の更なる充実にも継続的に取り組んでいきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「生徒第一主義」を実現するため、優秀な教師による高品質な指導を重視しています。そのために、好待遇での採用や充実した研修制度、働きやすい職場環境の整備に注力する「社員第二主義」を掲げています。また、新卒採用の強化や、評価に基づく改善指導を通じて、長期的な視点での人材育成を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.0歳 7.4年 6,320,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.4%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 35.1%
男女賃金差異(正規雇用) 56.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 68.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化など業界の動向


国内の教育サービスを提供しており、景気変動や少子化、教育制度改革の影響を受けます。特に少子化は中長期的なターゲット総数の減少につながる可能性がありますが、同社は質の高い授業と面倒見の良さでニーズに対応していく方針です。

(2) 人材の確保について


質の高い教育サービス提供のためには、優秀な教師やスタッフの確保と育成が不可欠です。計画通りに人材を確保・育成できない場合、サービス品質の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新卒・中途採用の強化や研修制度の充実に取り組んでいます。

(3) 個人情報について


生徒や保護者の個人情報を多数保有しており、情報漏洩が発生した場合は損害賠償や社会的信用の失墜により業績に影響が出る可能性があります。同社は個人情報保護規程の制定やシステム権限管理、従業員教育などを通じて対策を講じています。

(4) 競合について


教育業界は多くの集団塾や個別指導塾が競合しており、同社の出店地域にも他社が存在します。競争激化により市場シェアが停滞した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は正社員教師による指導や郊外型立地戦略等で差別化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。