早稲田学習研究会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

早稲田学習研究会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する早稲田学習研究会は、関東を中心に小中高生対象の集団指導塾「W早稲田ゼミ」や個別指導塾を展開する教育企業です。当期は決算期変更に伴う14か月の変則決算ですが、新規出店等により売上高79億円、営業利益13億円を計上し、安定した収益基盤を築いています。


※本記事は、株式会社早稲田学習研究会の有価証券報告書(第34期、自 2025年4月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 早稲田学習研究会ってどんな会社?


小中高生向けの学習塾を運営し、正社員教師による質の高い授業と面倒見の良さを強みとする企業です。

(1) 会社概要


同社は1987年に群馬県太田市で早稲田家庭教師センターとして創業し、1993年に会社設立されました。小中学生向けの集団指導塾を皮切りに、高校生向けや個別指導塾へと事業を拡大し、2019年には東京都へ進出しました。2023年には東京証券取引所スタンダード市場への上場を果たし、着実な成長を続けています。

同社の従業員数は単体で401名です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長である吉原俊夫氏の資産管理会社であるYMMで、第2位は吉原俊夫氏個人、第3位も個人株主の三木正浩氏となっています。

氏名 持株比率
YMM 44.93%
吉原俊夫 17.38%
三木正浩 1.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は佐藤誉氏が務めています。社外取締役は5名で、比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
吉原俊夫 代表取締役会長 1987年早稲田家庭教師センター創業。1993年早稲田学習研究会を設立し社長に就任。2023年より現職。
佐藤誉 代表取締役社長 2000年同社入社。太田校塾長、取締役、常務取締役などを経て、2025年1月より現職。
松尾有希 取締役 2016年弁護士登録。森・濱田松本法律事務所、LABOT取締役等を経て、2019年より現職。
山崎晴也 取締役 あおぞら銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、サードプラネット等を経て2020年入社。2022年より現職。
木村貴之 取締役 2001年同社入社。太田校塾長、運営教務部長、人材開発部兼教務部長を経て、2025年6月より現職。
植田伸広 取締役 SUMIグループを経て2012年入社。桶川北本校塾長、運営企画部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、川島渉(川島公認会計士事務所代表)、藤井智(元群馬県警察本部総務統括官)、鎌川拓哉(鎌川税理士事務所開業)、吉村祐一(大総合法律事務所代表)、尾中直也(ONK総合会計コンサルティング代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、学習塾事業の単一セグメントであり、指導対象や形態に応じた3つの部門を展開しています。

(1) ゼミ部門


小中学生を対象とした集団指導塾「W早稲田ゼミ」を運営しています。小学生には学力向上や中学受験対策、中学生には高校受験対策を提供し、学力別クラス編成やオリジナル教材を活用した指導を行っています。

生徒や保護者から受け取る授業料や教材費、講習会費が主な収益源です。正社員を中心とした優秀な教師による質の高い授業と、無料補習やオンライン授業などのきめ細やかなサポート体制を強みとしており、運営は同社が行っています。

(2) ハイ部門


高校生を対象とした集団指導塾「W早稲田ゼミハイスクール」を運営しています。大学受験対策を中心に、担任制による学習・進路指導や高校に準拠した定期テスト対策などを通じて、きめ細やかなサービスを提供しています。

高校生の生徒や保護者から受け取る授業料や講習会費が主な収益源です。ゼミ部門の卒塾生向けに高校準備講座を実施するなど、継続的な通塾を促すサービスを展開しており、運営は同社が行っています。

(3) ファースト個別部門


小中高校生を対象とした個別指導塾「ファースト個別」を運営しています。1対1の質の高い授業を基本とし、生徒一人ひとりのニーズや学習の悩みに合わせたオーダーメイドの指導内容を提供しています。

個別指導を受講する生徒や保護者から受け取る授業料が主な収益源です。講師、教室長、受験指導教師、アシスタント教師の4名体制による手厚いサポートで他社との差別化を図っており、運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は右肩上がりで拡大を続けています。経常利益は12億円台から15億円台へと順調な成長を見せていましたが、当期は14か月の変則決算における季節的要因や先行投資などの影響により13億円となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年5月期
売上高 59億円 61億円 65億円 70億円 80億円
経常利益 12億円 12億円 14億円 15億円 13億円
利益率(%) 20.6% 20.4% 22.2% 21.6% 16.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 8億円 11億円 10億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しています。当期は新規出店やWeb広告の強化など、将来の事業拡大に向けた投資を先行させたことで、営業利益率は低下しました。

項目 2025年3月期 2026年5月期
売上高 70億円 80億円
売上総利益 28億円 30億円
売上総利益率(%) 40.8% 37.8%
営業利益 15億円 13億円
営業利益率(%) 21.4% 16.6%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が4億円(構成比25%)、給料手当が3億円(同18%)、役員報酬が3億円(同17%)を占めています。売上原価では、給与及び手当などの人件費が34億円と売上原価合計の68%を占めています。

(3) セグメント収益


学習塾事業の単一セグメントであるため、部門別の売上実績を比較します。ゼミ部門での新規開校や、ファースト個別部門での生徒数増加が増収に大きく貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年5月期)
ゼミ部門 - 60億円
ハイ部門 - 13億円
ファースト個別部門 - 7億円
連結(合計) 70億円 80億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 2025年3月期 2026年5月期
営業CF 13億円 9億円
投資CF -11億円 -7億円
財務CF -8億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「生徒第一主義」を掲げ、質の高い授業と面倒見を未来を担う子供たちに提供し、「生徒の成績を上げる指導を通じて社会に貢献します」という経営理念の実現を目指しています。生徒の可能性を広げ、社会のニーズに適合した教育貢献を志向しています。

(2) 企業文化


「生徒第一主義」とともに「社員第二主義」を掲げています。社員を最も重要な経営資源と位置づけ、従業員の生活水準向上ややりがいを持って働ける環境整備を重視しています。実力と成果に応じた公平な評価のもと、年齢にとらわれない抜擢人事を行う風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


企業価値の継続的な拡大を目指し、売上高と営業利益を経営上の重要な指標として位置づけています。また、営業活動の効率性を測る指標として売上高営業利益率を重視しており、18.0%の水準を経営目標の目安として設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


高い集客力を源泉とする「大型の郊外型校舎」の展開を軸に、埼玉県を中心とした出店で事業拡大を図ります。教師力の向上や提供サービスの改善、薄くて達成感を味わえるオリジナル教材の開発に取り組み、企業ブランドの一層の強化と高い成長性の実現を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


指導の質を担保するため「正社員教師」による指導体制を維持し、意欲溢れる優秀な人材を厳選採用しています。入社後の手厚い初期研修や専門教科別の研究会などを通じてプロフェッショナルな教師を育成するとともに、社員が心身ともに健康で長く活躍できる職場環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 36.5歳 7.3年 6,143,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。また、14か月決算を12か月ベースに換算しています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.5%
男性育児休業取得率 76.9%
男女賃金差異(全労働者) 28.5%
男女賃金差異(正規雇用) 49.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 81.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性教師の在籍数(7名)、女性管理職の登用数(1名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化など業界動向への対応


国内の教育サービス市場は少子化や制度改革の影響を受けます。生徒数の減少や多様化するニーズへの対応が遅れた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は質の高い授業と面倒見の良さで、保護者や生徒の選別意識の高まりに対応しています。

(2) 質の高い人材の確保


高品質な教育サービスを提供するため、求める水準の正社員教師やアルバイトの確保・育成が計画通り進まない場合、サービスの質が低下するリスクがあります。採用活動の強化や研修制度の拡充により、安定的な人材確保に努めています。

(3) 生徒・保護者の個人情報管理


多くの生徒や保護者の個人情報を保有しており、情報漏洩が発生した場合は損害賠償責任や社会的信用の失墜を招く恐れがあります。システムへのアクセス権限管理や従業員へのコンプライアンス研修を通じて、個人情報の適切な取り扱いを徹底しています。

(4) 競合他社との競争激化


教育業界は大小の集団塾や個別指導塾が乱立し、顧客獲得競争が激化しています。郊外型の大型校舎展開や正社員教師による指導で差別化を図っていますが、競争激化により市場シェアが停滞した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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