Aiロボティクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Aiロボティクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するAiロボティクスは、独自開発のAIシステムを活用し、女性向けスキンケアや美容家電等を展開するD2Cブランド事業を主力としています。自社AIによる商品開発や広告運用の自動化により事業を効率的に拡大しており、直近の業績においても大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、Aiロボティクス株式会社の有価証券報告書(第10期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Aiロボティクスってどんな会社?


女性向け動画メディアから出発し、現在はAIを活用した自社ブランド事業へと業態を転換して急成長する企業です。

(1) 会社概要


2016年4月に女性向け動画配信・広告配信事業として設立されました。その後、2018年に自社開発AIシステム「SELL」を開発してAIマーケティング事業を開始し、2020年にAiロボティクスへと商号変更しました。2022年にD2Cブランド事業を開始して主力事業に据え、2024年9月に東京証券取引所グロース市場への株式上場を果たしています。

同社単体の従業員数は36名です。筆頭株主は同社創業者の龍川誠氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社執行役員の桑山友美氏となっています。

氏名 持株比率
龍川誠 18.38%
日本カストディ銀行(信託口) 6.39%
桑山友美 3.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は龍川誠氏が務めており、社外取締役の比率は50%を超えています。

氏名 役職 主な経歴
龍川誠 代表取締役社長 ロケットベンチャー(現4MEEE)設立等を経て、2016年4月に同社を設立し現職。
山本幸央 専務取締役 サイバー・エージェントやNEW STANDARD等を経て2020年に同社入社。2023年5月より現職。
坂元優太 取締役管理本部長 エイベックスや有限責任あずさ監査法人等を経て2022年に同社入社。2023年6月より現職。


社外取締役は、川名麻耶(Spiber代表取締役CEO)、岡田雅史(GMOグローバルサイン・ホールディングス取締役)、杉本佳英(あんしんパートナーズ法律事務所設立)、須田将啓(エニグモ代表取締役最高経営責任者)です。

2. 事業内容


同社グループは、「D2Cブランド事業」を展開しています。

(1) D2Cブランド事業


女性向けのライフスタイルに関する事業から発展し、現在は自社開発AIシステム「SELL」を活用したD2Cブランド事業を単独で展開しています。スキンケアブランド「Yunth」、美容家電「Brighte」、ヘアケア「Straine」等の企画・開発を行い、一般消費者に向けて提供しています。

収益は、自社運営のECサイトでの定期購入や単品販売、ECモールでの直接販売、ドラッグストアや家電量販店等の代理店を通じた店頭卸販売から得ています。同社が企画・開発から販売までを一貫して主体的に運営し、商品の製造工程は外部のOEM企業へ委託しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の売上高は右肩上がりで急成長しており、直近では前期から倍増するなど規模が大きく拡大しています。経常利益も売上拡大に伴って力強く増加しており、安定した利益率を維持しながら大幅な増益を達成しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 16億円 36億円 71億円 142億円 294億円
経常利益 -1億円 3億円 12億円 24億円 38億円
利益率(%) -4.9% 7.8% 17.5% 17.1% 12.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -4億円 -3億円 8億円 17億円 27億円

(2) 損益計算書


売上高の急拡大に伴い、売上総利益・営業利益ともに大きく増加しています。一定水準の高い利益率を確保しつつ、積極的な事業展開による収益基盤の強化が進んでいることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 142億円 294億円
売上総利益 111億円 215億円
売上総利益率(%) 78.4% 73.4%
営業利益 25億円 38億円
営業利益率(%) 17.5% 12.9%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が73億円(構成比41%)、販売促進費が41億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は「D2Cブランド事業」の単一セグメントですが、既存ブランドの認知拡大や商品ラインナップの拡充、新規ブランドの立ち上げが奏功し、売上高は前期比で2倍以上に成長しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
D2Cブランド事業 142億円 294億円
連結(合計) 142億円 294億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で資金流出が起きていますが、金融機関からの長期借入など積極的な資金調達によって手元資金を厚くし、今後の事業成長に向けた投資を支えている局面です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 13億円 -59億円
投資CF -2億円 -5億円
財務CF -1億円 64億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は56.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「新しい自由を創造する会社」となることをミッションに掲げ、世界中の人々に「今までにない選択肢」をもたらすことに価値を見出しています。「自由」とは「選択肢」であり、選択肢が多いことは幸せに繋がるという考えのもと、より良い未来の実現を目指してジャンルに捉われない商品やサービスを提供しています。

(2) 企業文化


同社は共通価値観として3つのバリュー(行動基準)を掲げています。また、「組織力」と「人財力」の両方を高めるために「対面によるコミュニケーション」を重視しており、原則出社の方針をとることで、組織の階層や部署間の相互理解を深め、シナジーを最大限に発揮できる職場環境の構築を図っています。

(3) 経営計画・目標


これまで「Yunth」の定期会員数を重要業績指標としていましたが、ブランドポートフォリオの多角化に伴い、今後はブランド別売上高および売上総利益を重要業績指標として設定しています。特定の指標だけでなく、多ブランド化した事業を的確に管理・推進していく方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


既存ブランドの継続的な認知拡大と商品ラインナップの拡充を進めると同時に、新たなブランドの開発にも積極的に取り組みます。また、独自AIシステム「SELL」を活用して需要予測やマーケティングを高度化させるほか、持続的な成長に向けたM&Aの推進や、製造拠点の分散化などサプライチェーンの拡充を重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「組織力」と「人財力」の強化を中核に据え、人財への積極的な投資を行っています。AIを活用した事業の成長やM&Aを牽引する専門スキルの向上を図るため、即戦力の中途採用やインターン制を導入した新卒採用を推進し、年齢や国籍に捉われない人材の登用と育成に取り組む方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 33.2歳 2.9年 16,020,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金並びに社宅負担金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 化粧品市場における競合激化

同社が属する化粧品市場は国内外問わず競合が存在し、OEM等の普及により新規参入も容易な環境です。大手企業の参入や類似品の販売、同業他社の不祥事等による業界イメージの悪化が起きた場合、顧客の流出やコスト増加によって業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 海外からの仕入れに伴う為替リスク

同社は仕入れの約40%を輸入取引に依存しています。製造拠点の分散化など効率化施策を推進してリスク低減を図っていますが、急激な為替相場の変動による輸入関連コストの上昇や、原油価格高騰に伴う原材料・物流費の上昇が生じた場合、収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 自社開発AIシステムへの依存リスク

事業運営において自社開発AIシステム「SELL」を活用し、新商品開発や需要予測、広告運用等を効率化しています。市場環境の著しい悪化や想定外の価格高騰などにより、AIの分析結果に重要な誤りが生じ、それを検知できないまま業務を進めた場合、期待した成果が得られず業績に影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。