※本記事は、Aiロボティクス株式会社 の有価証券報告書(第9期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Aiロボティクスってどんな会社?
自社開発のAIシステム「SELL」を駆使し、スキンケアや美容家電領域でヒット商品を生み出すD2C企業です。
■(1) 会社概要
2016年に動画配信サービス運営のHowTwoとして設立され、2018年にAIマーケティング事業を開始しました。2020年に現社名へ変更し、2022年には現在の主力であるD2Cブランド事業を本格的に開始しました。その後、急成長を遂げ、2024年9月に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。
同社の従業員数は連結・単体ともに27名と、少数精鋭の体制をとっています。大株主については、筆頭株主は創業者で社長の龍川誠氏であり、第2位は投資事業を行う企業、第3位は同社の執行役員が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 龍川 誠 | 14.06% |
| SBIインキュベーション株式会社 | 7.08% |
| 桑山 友美 | 5.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は龍川誠氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 龍川 誠 | 代表取締役社長 | 2013年にロケットベンチャー(現4MEEE)を設立し代表取締役に就任。同社株式譲渡後、2016年4月にAiロボティクスを設立し、代表取締役社長に就任。同社グループの経営を牽引し現職。 |
| 山本 幸央 | 専務取締役 | サイバー・エージェント、TABI LABO(現NEW STANDARD)等を経て、2020年に同社入社。2021年に取締役に就任し、2023年5月より専務取締役として現職。 |
| 坂元 優太 | 取締役管理本部長 | エイベックス・グループ・ホールディングス、あずさ監査法人、サイバー・バズを経て、2022年に同社入社。管理部長、執行役員を経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、川名麻耶(株式会社BOLD代表取締役CEO)、岡田雅史(合同会社WIZM代表社員CEO)、杉本佳英(あんしんパートナーズ法律事務所代表弁護士)、須田将啓(株式会社エニグモ代表取締役CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「D2Cブランド事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) D2Cブランド事業
自社開発のAIシステム「SELL(セル)」を活用し、企画・開発した商品を消費者に直接販売しています。主力ブランドとして「使用期限30秒」を謳う生ビタミンC美白美容液がヒットしたスキンケアブランド「Yunth(ユンス)」や、2024年にローンチした美容家電ブランド「Brighte(ブライト)」を展開しています。
収益は主に、自社ECサイトでの定期購入販売、Amazonや楽天市場などのECモール販売、およびドラッグストア等への卸販売による商品売上から得ています。運営は主にAiロボティクスが行っており、AIによる需要予測や広告クリエイティブの自動生成により、効率的なブランド運営を実現しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移です。売上高は第5期の16億円から第9期の142億円へと急激に拡大しています。利益面では第6期、第7期に赤字を計上しましたが、第8期以降は黒字化し、利益率も高い水準で推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 16億円 | 16億円 | 36億円 | 71億円 | 142億円 |
| 経常利益 | 0.9億円 | -0.8億円 | 3億円 | 12億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | 6.0% | -4.9% | 7.8% | 17.5% | 17.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.8億円 | -3.9億円 | -2.6億円 | 8億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに倍増しています。営業利益率は17%台を維持しており、高い収益性を確保しながら事業規模を拡大させています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 71億円 | 142億円 |
| 売上総利益 | 55億円 | 111億円 |
| 売上総利益率(%) | 78.1% | 78.4% |
| 営業利益 | 13億円 | 25億円 |
| 営業利益率(%) | 17.8% | 17.5% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が32億円(構成比37%)、支払手数料が19億円(同22%)を占めています。売上原価については、商品原価が31億円で売上原価の100%を占めています。
■(3) セグメント収益
単一セグメントのため、全社業績と同様に大幅な増収増益となっています。主力ブランド「Yunth」の好調に加え、新ブランド「Brighte」の立ち上げが寄与しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| D2Cブランド事業 | 71億円 | 142億円 |
| 連結(合計) | 71億円 | 142億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9.0億円 | 13.1億円 |
| 投資CF | -0.9億円 | -1.6億円 |
| 財務CF | 9.7億円 | -1.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は76.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「新しい自由を創造する会社」となることをミッションに掲げています。「自由」とは「選択肢」であり、選択肢が多いことが幸せにつながるとの考えのもと、世界中の人々に今までにない選択肢をもたらし、より良い未来を実現することを目指しています。ジャンルに捉われず、今までにない商品やサービスを提供していく方針です。
■(2) 企業文化
同社は、ミッション実現のために3つのバリュー(従業員の行動基準)を掲げています。また、組織の活性化と相互理解を深めるため、「対面によるコミュニケーション」を重視しており、原則出社の方針をとっています。組織が拡大・分化していく中で、役職員間の意思疎通や部署間の協働を維持・強化するための文化形成に注力しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、安定的かつ継続的な企業成長のための重要業績指標として、「定期会員数」を定めています。主力ブランド「Yunth」の売上の多くが定期購入によるものであり、これが継続的な収益基盤となっているためです。新規顧客の獲得と継続率の維持・向上により、定期会員数を高めていくことを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
AI技術を用いたシステム「SELL」を活用し、他社との差別化と市場地位の確立を推進します。具体的には、蓄積されたデータを活用して新ブランドや新商品を開発するとともに、中長期的にはグローバルマーケットへの展開も模索しています。また、積極的なM&Aによる事業拡大も方針として掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業拡大に向けて、優秀な人材の確保を最重要課題と認識しています。即戦力となる中途採用に加え、将来を担う新卒・第二新卒の採用も積極的に行い、インターン制度も導入しています。育成面ではOJTを中心にしつつ、必要に応じた研修を実施し、「組織力」と「人材力」の両面を高める方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 32.1歳 | 2.5年 | 12,448,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場動向の変化と競合の激化
同社が属する化粧品市場は参入障壁が低く、多くの競合が存在します。大規模資本を持つ企業の参入や類似商品の出現、競合他社との競争激化により、顧客流出や対抗コストが増加した場合、同社の経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定ブランドへの依存
主力ブランド「Yunth」の「生VC美白美容液」が売上高の約50%を占めており、特定商品への依存度が高い状態です。品質問題等で同商品のブランド価値が毀損した場合や、次なる柱となる商品の育成が計画通り進まない場合、業績に影響が出る可能性があります。
■(3) 製造委託先への依存
商品の製造は全量を外部に委託しており、特定の製造委託先への依存度が約50%と高くなっています。製造委託先との契約解消や供給遅延、品質問題等が発生した場合、同社の商品供給や販売活動に支障が生じ、業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。



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