※本記事は、MIC株式会社 の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. MICってどんな会社?
リテール販促領域において、コンサルティングから製造・物流までを「360°フルサービス」で一貫提供するビジネス改善カンパニーです。
■(1) 会社概要
1953年に有限会社水上印刷所として設立され、2011年に現在の主力である「360°フルサービス」の提供を開始しました。2021年には事業領域の拡大に伴いMICへ社名変更し、2022年にドラッグストア向け販促物共同配送サービス「Co.HUB」を開始しています。2024年12月に東京証券取引所スタンダード市場への上場を果たしました。
同社(単体)の従業員数は354名です。筆頭株主は代表取締役会長の資産管理会社であるエムツーで、第2位は創業家出身で代表取締役会長の水上光啓氏、第3位は代表取締役社長の河合克也氏となっており、経営陣による安定的な保有構造となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エムツー | 46.46% |
| 水上光啓 | 16.98% |
| 河合克也 | 5.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長社長執行役員は河合克也氏が務めています。社外取締役の比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河合克也 | 代表取締役社長社長執行役員 | 2002年キーエンス入社。2007年水上印刷(現MIC)入社。取締役管理部長等を経て2014年代表取締役社長に就任。2023年4月より現職。 |
| 水上光啓 | 代表取締役会長 | 1975年水上印刷(現MIC)入社。1979年取締役、1988年代表取締役社長を経て、2014年11月より現職。エムツー代表取締役も兼任。 |
| 谷口大輔 | 取締役常務執行役員事業本部長 | 2001年水上印刷(現MIC)入社。2018年第四事業部長、2021年取締役事業本部長を経て、2023年4月より現職。 |
社外取締役は、腰塚國博(元コニカミノルタ常務執行役員)、中沢道久(山田コンサルティンググループ執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「リテール販促360°フルサービス事業」を展開しています。
■(1) リテール販促360°フルサービス事業
主にリテール業界において、販促活動の非効率を解消するためのサービスを一気通貫で提供しています。具体的には、業務改善コンサルティング、システム開発、BPO、クリエイティブデザイン、ものづくり(印刷製造)、フルフィルメント(在庫保管・配送)、フィールドサポート(ラウンダー派遣等)を組み合わせ、顧客の販促業務全体を最適化しています。
収益は、顧客であるIT・サービス企業、リテール企業、メーカー企業から受領する各サービスの対価によって構成されています。特にドラッグストア向けの販促物共同配送サービス「Co.HUB」や、販促DXクラウドサービス「PromOS」の利用料などが含まれます。運営は主にMICが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に拡大傾向にあります。特に直近では売上高が120億円を超え、経常利益も10億円を突破するなど、収益性が向上しています。利益率も改善傾向にあり、事業規模の拡大とともに効率的な経営が行われていることが読み取れます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 67億円 | 84億円 | 103億円 | 101億円 | 123億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 9億円 | 6億円 | 6億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 17.7% | 10.8% | 6.2% | 5.7% | 8.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 7億円 | 4億円 | 4億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。特に営業利益率は前期間の5.2%から8.1%へと改善しており、増収効果に加えてコストコントロールが機能していることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 101億円 | 123億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 35億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.3% | 28.5% |
| 営業利益 | 5億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 8.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比41%)、役員報酬が2億円(同8%)を占めています。売上原価においては、経費が57億円(構成比65%)、労務費が22億円(同25%)を占めており、外注費や運賃が含まれる経費の比率が高くなっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、顧客属性別の売上高を見ると、IT・サービス向け、リテール向け、メーカー向けがいずれも増加しており、全方位での事業拡大が進んでいます。特にIT・サービス向けの伸び率が高くなっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| リテール販促360°フルサービス事業 | 101億円 | 123億円 |
| 連結(合計) | 101億円 | 123億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラスを維持しつつ、上場に伴う株式発行により財務CFが大きくプラスとなっており、得られた資金を今後の成長投資に充てる「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | 8億円 |
| 投資CF | -2億円 | -1億円 |
| 財務CF | -2億円 | 8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.4%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「デジタル×フィジカルで“企業の未来にイノベーションを起こす”」というビジョンを掲げ、企業の非効率を解消し、挑戦に向き合う時間を創造することを目指しています。また、ミッションとして「可視化、つなげる、実現。」を掲げ、あらゆる分断を360°フルサービスでつなぎ、企業の可能性を最大限に引き出すことを経営方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「非効率は可能性だ。」というスローガンのもと、顧客の課題に対して徹底した「現地現物」に基づく改善提案を行う文化があります。また、「日本一勉強する会社」を目指し、就業時間の約10%を教育、研修、自己研鑽に充てるなど、社員の成長とチームワークの発揮を重視する企業風土を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標として、販促DXクラウドサービス「PromOS」の導入アカウント数と、顧客先常駐人数を重視しています。また、売上高営業利益率を経営上の重要な指標として採用しており、作業の効率化や自動化を通じて収益率の向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長戦略として、既存顧客への「360°フルサービス」の深耕と、「Co.HUB」を通じて獲得した新規顧客へのクロスセルによる取引額最大化を掲げています。特にドラッグストア向け共同配送サービスを成長戦略の柱と位置付け、他業界への水平展開や、PromOS導入による販促業務のインフラ化を推進し、継続的な売上拡大を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は会社経営において最も重要な要素を「ひと」と考え、「人に投資する会社」をテーマに掲げています。優秀な人材確保のため採用選考基準を明確化し、多様なバックグラウンドを持つ人材を採用するとともに、社員への教育体制を整備しています。また、健康経営の推進や女性正社員増加、管理職比率向上など、働きやすい環境整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 33.0歳 | 6.7年 | 5,462,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.7% |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 94.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(43%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先への依存
売上高の顧客別比率において、楽天グループ各社およびファミリーマートへの依存度が高くなっています。これらの大口取引先との関係悪化や、先方の営業施策の変更、業界環境の変化などにより受注が大幅に減少した場合、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 多額の設備投資
同社は生産能力増強のため、「るのパレット2期工事」をはじめとする多額の設備投資を計画しています。市場動向や需要予測に基づき投資判断を行っていますが、想定通りに需要が拡大しなかった場合、減価償却費の負担増により収益性が低下する可能性があります。
■(3) 原料調達に関するリスク
事業維持には原材料の安定的調達が不可欠ですが、市況変動による価格高騰や災害等による調達遅延のリスクがあります。価格転嫁等の対策を進めていますが、原材料価格の大幅な高騰を吸収または転嫁しきれない場合、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 人材確保と育成
同社の成長には優秀な人材の確保と育成が不可欠です。人件費高騰の中で必要な人材を十分に採用・育成できない場合、適切な人員配置が困難となり事業拡大の制約要因となるほか、長時間労働の発生などにより労働環境が悪化する可能性があります。



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