※本記事は、MICの有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. MICってどんな会社?
マーケティング業務の全体最適化を図るフルサービスを展開し、企業の非効率を解消する支援企業です。
■(1) 会社概要
1946年に水上印刷として創業し、2006年に印刷製造周辺のワンストップサービスを開始しました。2021年には現在のMICへ社名変更し、2022年にドラッグストア向けの販促物共同配送サービス「Co.HUB」を立ち上げました。事業領域の拡大と継続的な成長を経て、2024年に東京証券取引所スタンダード市場への上場を果たしています。
現在の同社単体の従業員数は361名です。筆頭株主は代表取締役会長の資産管理会社であるエムツーで、第2位は代表取締役会長の水上光啓氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エムツー | 46.44% |
| 水上 光啓 | 16.98% |
| 日本カストディ銀行 | 5.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長社長執行役員は河合克也氏が務めています。取締役5名のうち、社外取締役の比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河合 克也 | 代表取締役社長社長執行役員 | 元キーエンス。2007年MIC入社。管理部長を経て2014年より代表取締役社長、2023年より現職。 |
| 水上 光啓 | 代表取締役会長 | 1975年MIC入社。1988年より代表取締役社長。全日本印刷工業組合連合会会長を経て2014年より現職。 |
| 谷口 大輔 | 取締役常務執行役員事業本部長 | 2001年MIC入社。第四事業部長、取締役事業本部長を経て2023年より現職。 |
社外取締役は、腰塚國博(元コニカミノルタ常務執行役)、中沢道久(元山田コンサルティンググループ執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「リテール販促360°フルサービス」事業を展開しています。
■リテール販促360°フルサービス事業
リテール企業やメーカー企業の販促担当者を顧客とし、業務改善コンサルティング、システム開発、BPO、クリエイティブデザイン、印刷製造からフルフィルメント、フィールドサポートに至るまで、マーケティングに関するあらゆる業務を一貫して提供しています。多様化するリテール販促業務の非効率を解消し、顧客が本来の業務に集中できる環境を整えています。
主な収益源は、顧客からの各サービス利用料や、ドラッグストア向け販促物共同配送サービス「Co.HUB」、販促DXクラウドサービス「PromOS」のシステム利用料などです。これらのサービスは、通信・金融業界向けの「IT・サービス領域」、小売チェーン向けの「リテール領域」、消費財メーカー向けの「メーカー領域」の3つの顧客群に提供されており、運営は主にMICが単体で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、一時的な足踏みがあったものの、全体として拡大傾向にあります。特に直近2期間は、ドラッグストア向けの共同配送サービスやDXクラウドサービスの導入企業数の増加が牽引し、大幅な売上成長を遂げています。収益性も大きく改善し、利益率は2桁台に回復しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 84億円 | 103億円 | 101億円 | 123億円 | 151億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 6億円 | 6億円 | 10億円 | 17億円 |
| 利益率(%) | 10.8% | 6.2% | 5.7% | 8.3% | 11.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 4億円 | 4億円 | 7億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の順調な拡大に伴い、売上総利益および営業利益ともに大きく伸長しています。利益率も前事業年度から数ポイント改善し、高付加価値なサービスの提供と業務効率化の推進が利益水準の底上げに寄与していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 123億円 | 151億円 |
| 売上総利益 | 35億円 | 45億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.5% | 29.9% |
| 営業利益 | 10億円 | 17億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% | 11.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12億円(構成比41%)、役員報酬と法定福利費がそれぞれ2億円(同8%)を占めています。売上原価の内訳としては、経費が70億円(構成比66%)、労務費が25億円(同24%)、材料費が11億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各顧客領域において売上高が堅調に推移しています。特に「IT・サービス」領域と「リテール」領域が大きく伸長しており、大手チェーン向けの共同配送サービスの導入やDXクラウドサービスのアカウント数増加が全体の売上成長を強力に牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| IT・サービス | 40億円 | 54億円 |
| リテール | 45億円 | 54億円 |
| メーカー | 38億円 | 43億円 |
| 連結(合計) | 123億円 | 151億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 4億円 |
| 投資CF | -0.9億円 | -11億円 |
| 財務CF | 8億円 | 2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.0%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も74.8%でいずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「未来イノベーションCOMPANY」をミッションに掲げ、「より良い未来に向けて、仲間と共にイノベーションを起こす」ことを目指しています。また、ビジョンとして「デジタル×フィジカルで“企業の未来にイノベーションを起こす”」を定めており、企業の非効率を解消し、挑戦に向き合う時間を創造することを存在意義としています。
■(2) 企業文化
人材育成を重視し、「日本で一番勉強する会社」を目指して就業時間の約10%を教育や自己研鑽に充てる文化があります。また、「顧客第一主義」「挑戦」「改善」「学習」「OneMIC」という5つのバリューを掲げ、個人の成長と全社業績の最大化を連動させる仕組みを組織の行動様式として根付かせています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の目標達成状況を判断する指標として「売上高営業利益率」を重視し、作業の効率化や自動化設備の導入による収益性の向上を図っています。また、顧客に対する効率的なクロスセル進捗を示す客観的指標として、「PromOS」の導入アカウント数と顧客先常駐人数を重要KPIに設定し、事業規模の拡大を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存顧客への深耕と、共同配送サービス「Co.HUB」を通じて獲得した新規顧客へのクロスセル推進を成長戦略の柱としています。販促DXクラウドサービス「PromOS」の導入を広げ、顧客のインフラを担うことで取引額を最大化させます。また、長期的には「Co.HUB」を家電業界など他のリテール・リアル店舗業界へ水平展開する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「より少ない時間で最大の価値を生む」「長期にわたり社員が活躍できる会社へ」を人的資本経営の基本方針に掲げています。採用選考基準を明確化して多様な人材を確保するほか、目標設定と評価を連動させ、正社員だけでなく準社員やパートナー社員も共働できる柔軟な労働環境と処遇体系を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 33.2歳 | 6.8年 | 5,877,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 34.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 71.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 87.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 99.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(43%)、産休育休復帰率(100%)、従業員持株会加入率(87%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合及び新規事業者の参入によるリスク
各業務における競合や新規参入により競争環境が厳しくなる可能性があります。同社は一貫したフルサービスの提供により優位性を保っていますが、他社の動向などにより競争優位性が低下した場合には、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制・コンプライアンス等によるリスク
事業に関連する「下請法」や「景品表示法」などの法的規制が存在します。現時点で事業継続を困難にするような規制はありませんが、将来的な法制度の改正によって当社の事業分野に新たな規制が導入された場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 多額の設備投資に関するリスク
同社は生産能力の増強を目的として、物流センターの増設工事などに多額の設備投資を計画しています。経済動向や市場環境の予測困難さにより、需要が想定通りに拡大しなかった場合、減価償却費負担が収益性を圧迫する恐れがあります。
■(4) 原材料の調達と価格変動リスク
事業を維持するための原材料調達において、大幅な市況変動により主要原材料の価格が高騰し、コスト削減や販売価格への転嫁で補えない場合や、災害等により調達の遅延・停止が発生した場合には、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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