令和アカウンティング・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

令和アカウンティング・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場する令和アカウンティング・ホールディングスは、大企業等を対象とした経理コンサルティング事業や経理DXシステム開発、教育・人材事業を展開しています。直近の業績は売上高が約57億円、経常利益が約20億円と、大企業向けの継続契約拡大等により増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、令和アカウンティング・ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月11日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 令和アカウンティング・ホールディングスってどんな会社?


経理のコンサルティング業務を主軸とし、システム開発や人材教育・派遣も展開する企業です。

(1) 会社概要


2004年に設立され、2007年に現体制の基盤となる会計コンサルティング事業を開始しました。2019年に現社名へ変更し、同年より税理士法人からの事業承継を通じて継続的な経理コンサルティング業務を拡大しています。2024年12月には東証グロース市場へ上場し、2025年4月にシステム開発子会社を設立しました。

従業員数は連結で326名、単体で244名です。筆頭株主は創業者である須貝信氏で、第2位は事業会社のmysky、第3位は須貝舞氏となっています。

氏名 持株比率
須貝 信 24.77%
mysky 5.35%
須貝 舞 5.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性3名、女性2名の計5名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役社長執行役員は繁野径子氏が務めており、社外取締役の割合は40%となっています。

氏名 役職 主な経歴
繁野 径子 代表取締役社長執行役員 監査法人代表社員や事業会社の社外役員を経て、税理士法人令和会計社の代表社員に就任。2022年より現職。
中村 樹 取締役専務執行役員事業本部本部長 税理士法人の本部長や社員を経験。2021年に同社に入社し、事業本部長等を歴任。2026年4月より現職。
佐々木 明日美 取締役(監査等委員) 税理士法人の管理本部長等を経て2021年に同社入社。管理本部長や業務推進本部本部長を歴任。2025年6月より現職。


社外取締役は、石田和男(元りそな銀行常務執行役員)、鴛海量明(元太陽有限責任監査法人社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンサルティング事業」および「その他の事業」を展開しています。

コンサルティング事業


上場企業やREIT、医療機関などの大規模組織に対し、高度な専門知識を要する経理コンサルティングサービスを提供しています。日常の仕訳から決算書の作成支援に至るまでの継続的な業務を中心に、IPOやM&A支援などのプロジェクト型業務にも対応しています。

顧客企業と業務委託契約等を結び、提供した役務の対価としてコンサルティング報酬を受け取る収益モデルです。運営は主に令和アカウンティング・ホールディングスが行い、ベトナムの子会社も日系企業向けに同様のサービスを提供しています。

システム開発事業


経理実務の知見を活かし、企業の経理デジタルトランスフォーメーションを推進するための会計ソフトウェアの開発および販売を行っています。AIを活用した資産判定ソリューションなどを提供し、経理業務の生産性向上を支援します。

開発したシステムやソフトウェアを顧客企業に提供し、その利用料等を収益源としています。事業の運営は、システムの開発および販売を事業目的として設立された子会社のミラクル経理が行っています。

その他の事業(教育・派遣・紹介事業)


経理実務に関する教育と人材の派遣・紹介を行っています。経理スクールの運営や企業研修を通じて、実務に即した経理担当者を育成し、人材不足に悩む企業への派遣や紹介を通じて経理業界全体に貢献しています。

スクールや研修の受講生・企業から受講料を受け取るほか、企業への人材派遣料や紹介手数料を収益としています。運営は主に子会社の令和ヒューマン・ファーストが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間にわたり、売上高および経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に大企業グループからの継続的な業務受注や業務範囲の拡大が奏功し、直近では利益率も30%台半ばまで大きく上昇しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 31億円 39億円 44億円 50億円 57億円
経常利益 4億円 8億円 8億円 15億円 20億円
利益率(%) 12.4% 19.8% 18.6% 29.7% 35.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 3億円 5億円 10億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。業務の効率化や提供サービスの付加価値向上により、売上総利益率は50%台後半、営業利益率は30%台半ばへと高水準で推移しており、収益力の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 50億円 57億円
売上総利益 27億円 33億円
売上総利益率(%) 53.6% 58.2%
営業利益 15億円 20億円
営業利益率(%) 30.0% 34.8%


販売費及び一般管理費のうち、賃借料が5億円(構成比34%)、給与及び賞与が3億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


売上の大部分を主力であるコンサルティング事業が占めており、既存顧客での契約拡大や新規顧客の獲得により売上が増加しています。また、その他の事業も規模は小さいものの、順調な伸びを示しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
コンサルティング事業 50億円 57億円
その他の事業 0.3億円 0.5億円
連結(合計) 50億円 57億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金を元に、投資や株主還元を自己資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 10億円 13億円
投資CF -0.2億円 -0.8億円
財務CF -2.7億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は49.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「High Quality」と「Workers First」という経営理念を掲げ、顧客に対して最高品質のサービス提供を行うとともに、社会への貢献を目指しています。個人が幸福になるために会社は存在するという考えのもと、従業員やクライアントなどすべての関係者が精神的・経済的に安心して活躍できる場の提供を重視しています。

(2) 企業文化


経理業務を事業活動に不可欠な企業情報の重要な社会インフラ(ソフトインフラ)と位置づけ、その重要性を広く訴求しています。経理という仕事のネガティブなイメージを払拭し、明るく楽しい仕事として有能な人材に興味を持ってもらうことを目指し、教育等を通じた高いコミュニケーション能力の育成に注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な持続的成長目標として、売上高年率成長率と営業利益率の向上を掲げています。また、これらの目標を達成するための重要な先行指標として、クライアントとの契約継続率と自社の従業員数を設定し、毎月取締役会などの各種会議体において客観的にモニタリングする体制を整えています。

(4) 成長戦略と重点施策


人材不足と業務複雑化を背景に、大企業向けの専門性の高いコンサルティングニーズに対応し、業務範囲の拡大を図ります。また、システム開発事業ではAI搭載の基幹システム等を活用して生産性を高めます。教育・派遣事業を強化し、優秀な経理人材の採用と育成の好循環を構築することで持続的な成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


提供する知的集約サービスの基盤として、優秀な人材の採用と育成を最重要課題と位置づけています。新卒採用やリファラル・アルムナイ採用を強化し、教育事業とも連携して資質の高い人材を獲得する循環を構築します。また、従業員がモチベーションを保ち長期的に働けるよう、就業環境と待遇の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 31.8歳 3.7年 6,854,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 41.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 195.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性育児休業取得率(105.88%)、平均勤続年数(33.0%増加)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 専門人材の確保と流出防止


同社の事業は高度な専門性と人間力を兼ね備えた人材が資本です。必要とする人材を十分かつ適時に確保できない場合や、重要なプロフェッショナルが大量に流出した場合、事業拡大や将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。人材獲得や教育、流出防止を経営上の重要課題として組織力強化に取り組んでいます。

(2) 機密情報等のセキュリティ管理


コンサルティング事業において、クライアントの機密情報や個人情報の管理は極めて重要です。アクセス制限や外部侵入防止などのセキュリティシステム構築を進めていますが、不測の事態により情報流出が発生した場合、社会的信用の失墜を招き、財政状態や経営成績に影響を及ぼす恐れがあります。

(3) 新規システム開発に伴う投資回収リスク


経理DX推進のため、子会社を通じて新たな会計ソフトウェアやシステムの開発を進めています。中長期にわたり人的・財務的資源を投資しますが、市場環境の変化等により開発中止や利益計画の変更が生じた場合、投資資金の回収が困難となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。