令和アカウンティング・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

令和アカウンティング・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場する経理業務の専門企業です。上場企業などの大企業向けに、会計・経理のコンサルティングや実務支援を主力事業として展開しています。直近の決算では、既存顧客との取引拡大や新規開拓により、売上収益・利益ともに大きく伸長し、増収増益を達成しています。


※本記事は、令和アカウンティング・ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第21期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 令和アカウンティング・ホールディングスってどんな会社?


大企業向けに特化した会計・経理コンサルティングを提供し、専門性の高い実務支援を行う企業です。

(1) 会社概要


同社の源流は、2004年に設立された前身企業に遡ります。2007年にHSKコンサルティングへ商号変更し、会計コンサルティング事業を開始しました。2019年に現在の商号となり、2021年には税理士法人からの事業承継に伴い人員を受け入れ、体制を強化しました。2024年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たし、2025年4月にはシステム開発を担う子会社としてミラクル経理を設立しています。

現在の従業員数は連結で333名、単体で255名です。筆頭株主は創業者で元代表取締役の須貝信氏であり、第2位株主は資産管理会社のmysky、第3位は創業者の親族である須貝舞氏となっています。

氏名 持株比率
須貝 信 25.88%
mysky 5.26%
須貝 舞 5.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性3名、女性2名の計5名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役社長執行役員は繁野径子氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
繁野 径子 代表取締役社長執行役員 公認会計士事務所等を経て、2022年に入社し事業戦略本部本部長に就任。同年6月に取締役となり、同年7月より現職。
中村 樹 取締役専務執行役員管理統括本部統括本部長 税理士法人平成会計社等を経て、2021年に入社。事業本部本部長などを歴任し、2025年6月より現職。
佐々木 明日美 取締役(監査等委員) 令和ヒューマン・ファースト代表取締役等を務め、2021年に入社。管理本部本部長、業務推進本部本部長を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、石田和男(元北興化学工業専務執行役員)、鴛海量明(税理士法人おしうみ総合会計事務所代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンサルティング事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) コンサルティング事業


上場企業やREIT、SPC、医療機関などの大組織に対し、経理業務全般の支援やアドバイザリーサービスを提供しています。継続的な業務支援(Long)と、M&AやIPO支援などの単発的な専門業務(Short)を行っており、戦略的な経理実務支援を強みとしています。

主な収益源は、クライアント企業からの業務委託報酬です。運営は主に令和アカウンティング・ホールディングスが行っていますが、ベトナムでの現地進出企業支援などは子会社のHSK VIETNAM AUDIT COMPANY LIMITEDが担当しています。

(2) その他


経理実務に特化した「経理部プロフェッショナル・スクール」の運営や企業研修、および経理人材に特化した人材派遣・紹介事業を展開しています。実務的な教育プログラムを通じて、企業内外の経理人材育成を支援しています。

収益源は、スクール受講料、研修費、および人材派遣・紹介に伴う手数料です。運営は主に子会社の令和ヒューマン・ファーストが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2022年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けています。特に利益面の伸びが著しく、経常利益、当期純利益ともに大きく増加傾向にあります。利益率も高い水準で推移しており、収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 39億円 44億円 50億円
経常利益 8億円 8億円 15億円
利益率(%) 19.8% 18.6% 29.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 5億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率は大幅に改善しており、収益性が高まっています。販管費の抑制効果も出ており、効率的な経営が行われていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 44億円 50億円
売上総利益 22億円 27億円
売上総利益率(%) 48.7% 53.6%
営業利益 8億円 15億円
営業利益率(%) 18.6% 30.0%


販売費及び一般管理費のうち、賃借料が5億円(構成比38%)、給与及び賞与が3億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


コンサルティング事業が全体の売上の大半を占めており、既存顧客の業務範囲拡大や新規獲得により増収となりました。その他の事業も教育・派遣事業の拡大により売上を伸ばしています。なお、同社はコンサルティング事業を報告セグメントとしており、利益情報の開示は省略されています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
コンサルティング事業 44億円 50億円
その他 0.2億円 0.3億円
連結(合計) 44億円 50億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6億円 10億円
投資CF -0.4億円 -0.2億円
財務CF -2億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は37.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「High Quality」と「Workers First」を経営理念に掲げています。お客様に最高品質のサービスを提供し社会に貢献するとともに、従業員や取引先を含むすべての「Workers」が精神的・経済的に安心して活躍できる場を提供することを目指しています。経理業務を重要な社会インフラと捉え、業界の活性化やイメージアップを目標としています。

(2) 企業文化


同社は「人間力の育成」を重視する文化を持っています。AIやソフトウェアなどのツールが進化したとしても、それらを使いこなすのは人であるという考えのもと、高いコミュニケーション能力や常識に対する懐疑心を持った人材の育成に注力しています。経理の仕事を明るく楽しいものとし、社会を支える重要な仕事であることを広めることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中長期的な持続的成長目標として、売上高の年率成長率および営業利益率の向上を掲げています。これらの目標を達成するための具体的な指標として、以下の項目を定期的にモニタリングしています。

* 契約継続率
* 従業員数

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、大企業向け会計コンサルティング市場での地位確立を目指し、専門性の高いサービスの提供と組織的な対応力を強化しています。人材不足や法改正に伴うニーズの拡大を捉え、既存顧客内での業務範囲拡大や新規顧客の開拓を進めています。

* 新卒採用の拡大と社内育成の強化
* リファラル・アルムナイ採用の推進
* システム開発子会社の設立による業務効率化と新サービス展開

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


高度な専門性と人間力を兼ね備えた人材の確保と育成を最重要課題としています。新卒採用やリファラル採用を強化するとともに、スクール事業を通じて経理に興味を持つ人材を広く募り、採用につなげる循環の構築を目指しています。また、従業員が安心して長期的に働けるよう、就業環境と待遇の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 31.5歳 2.8年 6,647,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 38.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材確保に関するリスク


同社の事業は高度な専門性とソフトスキルを持つ人材に依存しています。必要な人材を適時に確保できない場合や、重要なプロフェッショナルが流出した場合、事業拡大に影響が生じる可能性があります。人材獲得競争の激化や育成の遅れがリスク要因となります。

(2) 情報セキュリティリスク


クライアントの機密情報や個人情報を多数取り扱っているため、情報漏洩や不正アクセスが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求などにより、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。サイバー攻撃や内部管理体制の不備が懸念されます。

(3) コンプライアンスリスク


役職員による法令違反や不正行為が発生した場合、社会的信用の毀損や法的制裁を受ける可能性があります。特に会計・経理業務という性質上、高い倫理観と法令遵守が求められます。管理体制の強化を進めていますが、違反発生時の影響は甚大です。

(4) システム・ソフトウェア開発に係るリスク


業務効率化や新サービス展開のためにAIを活用したソフトウェアの自社開発を進めていますが、開発期間中の市場環境の変化や技術的な課題により、開発の中止や遅延、コスト増加が発生する可能性があります。計画通りの成果が得られない場合、投資回収が困難になるおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。