INCLUSIVE Holdings 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

INCLUSIVE Holdings 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

INCLUSIVEは東証グロース市場に上場し、メディア運営支援や広告企画、食関連事業を展開しています。当期はM&Aにより売上高が大幅に拡大し増収となりましたが、のれん償却費や減損損失の計上により各利益段階で損失を計上しました。事業ポートフォリオの多角化と地域創生事業を推進しています。



※本記事は、INCLUSIVE株式会社 の有価証券報告書(第16期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

なお、同社は現在、INCLUSIVE Holdings株式会社に商号変更しています。

1. INCLUSIVEってどんな会社?


INCLUSIVEは、DXと企画力を強みに、メディア企業や事業会社のデジタル事業支援、食関連事業などを展開する「コミュニケーション領域の総合商社」です。

(1) 会社概要


同社は2007年にターゲッティングとして設立され、インターネットサービスの運営・収益化事業を開始しました。2016年に現社名へ変更し、2019年に東証マザーズ(現グロース)へ上場を果たしています。その後、地域メディア運営のmorondoやメールマガジン事業のNewsletter Asiaを子会社化するなど事業を拡大。2022年には企画・プロデュースのオレンジ等を子会社化し、食関連事業へも参入しました。また、同年には宇宙関連事業を行うINCLUSIVE SPACE CONSULTINGを設立するなど、多角化を進めています。

同グループは連結従業員数267名、単体57名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業社長の藤田誠氏で、発行済株式の約43%を保有しています。第2位株主は実業家の堀江貴文氏で、同社グループは同氏が創業したインターステラテクノロジズ(第3位株主)とも宇宙関連事業で連携するなど、主要株主との事業上の関わりも深くなっています。

氏名 持株比率
藤田 誠 43.10%
堀江 貴文 5.47%
インターステラテクノロジズ 4.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は藤田誠氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
藤田 誠 代表取締役社長 中央宣興、ライブドア等を経て2007年に同社を設立し代表取締役社長に就任。グループ各社の代表も兼務し、宇宙関連事業などの新規事業開発も主導する。
軽部 政治 取締役 ワーナー・ディベロップメント等を経てオレンジ・アンド・パートナーズ(現オレンジ)を設立。下鴨茶寮の代表取締役副社長や大学教授も務め、2022年より現職。


社外取締役は、柳澤大輔(カヤック代表取締役)、塩野誠(経営共創基盤共同経営者)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディア&コンテンツ事業」「企画&プロデュース事業」「食関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) メディア&コンテンツ事業


メディア、漫画、ニュースレターなど多岐にわたるフォーマットを通じた情報発信を行い、インターネット上でユーザーを集客する事業です。メディア運営支援、個人課金サービス、ゴルフテックサービス、クリエイターエージェンシーサービス(漫画展開)などを含みます。

収益は、法人クライアントからの広告料や、個人ユーザーに対するコンテンツ・サービス販売による課金収入等から構成されます。運営は主にINCLUSIVE、株式会社ナンバーナイン、株式会社OGSなどが行っています。

(2) 企画&プロデュース事業


法人を主なクライアントとし、事業戦略のコンサルティングからブランディング企画、プロモーション、空間デザイン、ウェブシステム開発支援までを提供しています。広告運用やPRサービスに加え、地域創生関連のエンジニアリングサービスも含まれます。

収益は、クライアント企業からのコンサルティングフィー、企画制作費、プロモーション実施料などが主な源泉です。運営は主にINCLUSIVE、株式会社オレンジ、株式会社ジョージクリエイティブカンパニーなどが行っています。

(3) 食関連事業


1856年創業の「下鴨茶寮」ブランドを基盤とし、料亭運営や食に関連する各種サービスを提供しています。料亭での高付加価値サービスの提供に加え、百貨店やEC、ふるさと納税などオムニチャネルでの商品展開を行っています。

収益は、料亭や店舗での飲食代金、ECや百貨店等での商品販売代金、ブランド提供によるライセンス収入などから成ります。運営は株式会社下鴨茶寮が行っています。

(4) その他事業


上記セグメントに含まれない新規事業として、宇宙関連事業などを展開しています。北海道大樹町や釧路市における衛星データ利活用などの実証実験に取り組み、農業・防災分野等での事業化を推進しています。

この事業は将来的な収益化を目指す段階にあり、運営は主に戦略子会社のINCLUSIVE SPACE CONSULTING株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高はM&A等の効果により大きく拡大し、特に直近の当期は前期比で約2.7倍の48億円規模に達しています。一方、利益面では、投資フェーズにあることやのれん償却費の負担、減損損失の計上などが響き、経常損益および当期損益は赤字傾向が続いています。

項目 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
売上高 17億円 15億円 14億円 17億円 48億円
経常利益 3.1億円 2.6億円 0.4億円 -0.3億円 -3.5億円
利益率(%) 18.4% 17.2% 3.1% -1.9% -7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.4億円 1.2億円 0.1億円 0.2億円 -7.5億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の約17億円から当期は約48億円へと急増しました。これは新規連結等の影響によるものです。しかし、事業拡大に伴い売上原価および販管費も増加しており、営業損益は赤字幅が拡大しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期
売上高 17億円 48億円
売上総利益 8億円 19億円
売上総利益率(%) 46.8% 39.9%
営業利益 -4億円 -4億円
営業利益率(%) -25.6% -7.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が約7億円(構成比30%)、役員報酬が約3億円(同11%)を占めています。売上原価においても、事業拡大に伴う労務費や外注費等のコストが増加要因となっています。

(3) セグメント収益


当期より報告セグメント区分が変更され、M&Aにより新たに追加された「食関連事業」が売上高の約3分の1を占める規模となりました。「メディア&コンテンツ事業」や「企画&プロデュース事業」も子会社化の影響等により大幅な増収となっています。

区分 売上(2022年3月期) 売上(2023年3月期)
メディア&コンテンツ事業 12億円 18億円
企画&プロデュース事業 5億円 14億円
食関連事業 - 16億円
その他 - -
調整額 - -
連結(合計) 17億円 48億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で現金を稼ぎ出しつつ、それ以上の投資を行い、不足分を財務活動で調達する「積極型」です。

項目 2022年3月期 2023年3月期
営業CF 1.1億円 0.5億円
投資CF -8.4億円 -5.8億円
財務CF 3.2億円 11億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「DXと企画の力で新しい価値を生み出す。」を企業ビジョンとして掲げています。メディア企業や事業会社のデジタルビジネス支援、クリエイターの収益化支援などを通じ、「コミュニケーション領域の総合商社」を目指しています。

(2) 企業文化


テクノロジーとクリエイティビティーを活かして新たな価値を創造するグループになることを目指しています。メディア運営で培った企画力や技術に加え、広告、地域創生、宇宙関連領域においてもクリエイティビティーを発揮し、すべての人がハッピーになる仕組みを作り出し、豊かな社会の実現に貢献するという価値観を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、収益規模の持続的な拡大と効果的なリソース配分を重視し、売上高および営業利益を重要な指標としています。また、今後の成長に向けた開発投資の重要性を鑑み、経常的な事業収益力を測る指標として「調整後EBITDA」も重視して経営を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期戦略として、既存のメディア、企画、食関連事業に加え、地域ブランディング事業の推進と宇宙関連事業の実績作りに注力します。メディア領域ではWEBTOON開発体制の強化やオウンドメディア支援、企画領域ではインバウンド需要への対応や地域プロデュースを推進します。食領域ではEC展開や海外輸出を強化する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大や新規事業展開に伴い、継続した人材確保が必要と考えています。特に、新規事業を立ち上げ成長させるための事業開発力やマネジメント能力を持つ人材、コンテンツ制作スキルを持つ人材の確保に努めています。また、人事・教育体制の整備を進め、人材の定着と能力の底上げを図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2023年3月期 31.6歳 3.8年 5,189,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合環境が激化するリスク


同社の事業領域は参入障壁が低く、キュレーションアプリやSNS等との競合が激化する可能性があります。メディア間競争により広告単価や受注数に影響が出た場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、同社は運営メディアのネットワーク化やデータマーケティングによる優位性確保、サービス領域の拡張などで対応する方針です。

(2) インターネット広告市場について


同社の事業はインターネット広告市場の動向に大きく影響を受けます。市場は拡大傾向にありますが、景気変動による広告予算の縮小や、新たな法的規制の導入、革新的な広告配信技術の出現などにより市場環境が変化した場合、同社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 新規事業、業務提携や買収等について


同社は成長のために新規事業や企業買収を積極的に行っていますが、当初想定した成果が得られない場合、のれんの減損や事業再編に伴う損失が発生し、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。特にM&Aによりのれんが多額に計上されているため、事業計画の未達は減損リスクとなります。

(4) 特定の人物に対する依存について


創業者の藤田誠社長は、同社グループの事業戦略決定等において重要な役割を果たしています。同社は組織的な経営体制の構築に努めていますが、何らかの理由で同氏が業務遂行困難となった場合、事業展開や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。