INCLUSIVE Holdings 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

INCLUSIVE Holdings 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

INCLUSIVE Holdingsは東京証券取引所グロース市場に上場し、ブランドコンサルティング、食関連、宇宙関連等の事業を展開しています。2026年3月期は、食関連事業や宇宙関連事業が伸長したものの、メディア事業の低迷等により前期比で減収となり、営業損失が拡大する結果となりました。


※本記事は、INCLUSIVE Holdings株式会社の有価証券報告書(第19期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. INCLUSIVE Holdingsってどんな会社?


同社はブランドコンサルティングや食関連、宇宙関連等、地域創生を基軸とした事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


2007年4月にインターネットサービスの運営・収益化事業を目的に設立。2019年12月に上場しました。その後、メディア事業の拡大に加え、2022年4月にオレンジや下鴨茶寮などを子会社化し、食関連や宇宙関連等の新規領域へ進出。2025年10月には持株会社体制へ移行し、現在の社名となりました。

従業員数は連結で161名、単体で19名です。筆頭株主は創業者の藤田誠氏で、第2位は実業家の堀江貴文氏、第3位は宇宙関連事業等を行うインターステラテクノロジズとなっています。

氏名 持株比率
藤田誠 41.28%
堀江貴文 5.43%
インターステラテクノロジズ 3.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役会長は藤田誠氏、代表取締役社長は木村美樹氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
藤田誠 代表取締役会長 1997年に中央宣興へ入社し、ライブドア等を経て2007年に同社を設立し代表取締役社長に就任。その後、グループ各社の代表や衆議院議員を務め、2026年2月より現職。
木村美樹 代表取締役社長 1997年に日本出版販売へ入社。毎日新聞社やライブドアを経て、楽天(現楽天グループ)で執行役員等を歴任。2025年に同社副社長に就任し、2026年2月より現職。
正田聡 取締役 2007年にオプトへ入社し、アパレルウェブやマネーフォワード等で管理部門の要職を歴任。2023年7月に同社へ入社して経営企画部長や管理本部長を務め、2024年3月より現職。
萩尾友樹 取締役 1998年に富士通サポートアンドサービスへ入社し、レッドライスメディウム取締役等を経て2007年にオレンジ・アンド・パートナーズへ入社。2025年6月より現職。
野口拓勇 取締役 1995年にヒロセへ入社し、国際協力事業団等を経て2012年にオレンジへ入社。下鴨茶寮の取締役や代表取締役社長を務め、2025年6月より現職。


社外取締役は、塩野誠(元経営共創基盤共同経営者)、永谷亜矢子(元東京ガールズコレクションプロデューサー)、鈴木美穂(元日本テレビ放送網)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ブランドコンサルティング事業」「食関連事業」「宇宙関連事業」「投資事業」を展開しています。

ブランドコンサルティング事業


事業会社や自治体などの団体向けに、ブランディング支援やデジタルマーケティング、空間デザイン、メディアのマネタイズ支援等を提供しています。地域観光拠点のリブランディングや各種イベントの空間プロデュースなど、地域創生の文脈での取り組みを推進しています。

顧客からのコンサルティング報酬やプロデュース企画料、広告関連サービスの収益が主な収入源となります。運営は主に、持株会社であるINCLUSIVE Holdingsの傘下にあるオレンジ・アンド・パートナーズ等のグループ各社が行っています。

食関連事業


安政三年(1856年)創業の「下鴨茶寮」ブランドを基盤とし、料亭の運営や百貨店での店舗展開、EC事業など食に関する各種サービスを提供しています。インバウンド需要を満たす高付加価値な体験や、AI技術を活用した需要予測によるEC展開を特徴としています。

店舗での飲食・販売代金やECでの商品販売収入が主な収益源です。料亭の運営や自社製造体制を活かした商品の展開は、子会社である下鴨茶寮が担っており、確かなブランド価値と拡張体験を提供することで事業機会の拡大を図っています。

宇宙関連事業


地方自治体向けに、農業や林業、防災分野などにおける衛星データコンサルティング事業を提供しています。主力サービスの「圃場DX」は、農業行政での現地調査支援を通じて人的負担の軽減や業務効率化を実現し、多くの自治体に導入されています。

自治体等からのシステム導入やコンサルティング等に伴う利用料が主な収益源です。本事業は子会社のLAND INSIGHTが運営しており、今後も自治体との協業体制を構築することで、行政の自働化や防災分野などへのサービス展開を推進しています。

投資事業


市場動向を精査しながら、同社が保有する営業投資有価証券の管理・運用を行っています。将来の成長が見込まれるベンチャー企業等への新規投資や、投資先企業の企業価値向上に向けた支援活動を通じたポートフォリオの入れ替えを推進しています。

投資先企業の株式価値向上に伴う営業投資有価証券の売却益などが主な収益源となります。本事業の運営は主に親会社であるINCLUSIVE Holdingsが主体となって行っており、機動的な運用を通じて中長期的なグループの企業価値向上を目指しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、M&Aなどによる事業領域の拡大に伴い事業規模は急拡大したものの、先行投資や既存事業の低迷などにより赤字となる期が多くなっています。特に2025年3月期以降はメディア関連領域の収益悪化や不採算事業からの撤退が響き、減収傾向が続いており、安定的な収益基盤の確立が急務となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 17億円 48億円 54億円 49億円 46億円
経常利益 -0.3億円 -3.5億円 -1.0億円 -3.5億円 -4.3億円
利益率(%) -1.9% -7.2% -1.9% -7.2% -9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.2億円 -7.5億円 4.7億円 -13.7億円 -2.9億円

(2) 損益計算書


近年の損益状況をみると、売上高の減少に伴って売上総利益も縮小傾向にあります。食関連事業や宇宙関連事業での成長が見られる一方で、メディア事業における不採算案件の整理や、新規事業立ち上げ等の先行投資が重なり、営業赤字が継続している状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 49億円 46億円
売上総利益 19億円 17億円
売上総利益率(%) 38.6% 37.3%
営業利益 -3.7億円 -4.2億円
営業利益率(%) -7.5% -9.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比32%)、役員報酬が3億円(同13%)、支払手数料が2億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、祖業であるメディア事業等を含むブランドコンサルティング事業が不採算案件の整理等により減収となっています。一方で、AIを活用したデータ分析が奏功した食関連事業や、自治体向けサービスが拡大した宇宙関連事業は順調に成長を遂げており、事業ポートフォリオの転換が進んでいます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ブランドコンサルティング事業 28億円 22億円
食関連事業 21億円 22億円
宇宙関連事業 - 0.3億円
投資事業 - 1.1億円
連結(合計) 49億円 46億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -1.0億円 -2.1億円
投資CF 0.8億円 1.0億円
財務CF -0.2億円 -1.7億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ヒトを変え、事業を変え、そして社会を変える。」という企業ビジョンを掲げています。地域創生を事業の基軸とし、メディアマーケティングやブランドコンサルティング、食、宇宙といった複数領域において、クリエイティビティを通じてすべての人々が豊かになる社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


「Creation of New Value」をミッションに掲げ、多様なバックグラウンドを持つ人材が心理的安全性を保ちながら挑戦できるインクルーシブな組織文化の醸成を重視しています。また、バリューとして「①すべては感情移入から始まる、②シゴトをもっと面白くする、③真摯で誠実なヒトになる」を定めています。

(3) 経営計画・目標


同社は持続的な収益規模の拡大と効果的なリソース配分の両立を担保するため、売上高および営業利益を重要な指標と位置づけています。また、今後の成長に向けた新規サービス等への開発投資が不可欠との認識から、経常的な事業収益力を測る指標として「調整後EBITDA」の改善にも注力しています。

(4) 成長戦略と重点施策


持株会社体制のもと、グループ各社への権限委譲を通じた迅速な事業展開と、地域創生を基軸とした事業ポートフォリオの最適化を進めています。短期的には不採算案件の整理やコスト構造の適正化により収益性の改善を図りつつ、中長期的にはEC事業のAI活用や宇宙関連サービスの自治体展開など、成長領域への投資を加速させる方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業構造を「地域創生投資」へと変革するなか、食・宇宙・ブランドコンサルティングなどの成長領域に対して専門人材を重点的に配置しています。また、不足する専門領域ではキャリア採用を積極的に行うとともに、全社員を対象としたAI(生成AI等の先端技術)の活用スキル習得を推進し、業務効率化と付加価値の創造を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.4歳 3.9年 6,062,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -

※同社および連結子会社は常時雇用する労働者の数が300人以下等であり公表義務の対象ではないため、有報には男女の賃金の差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合環境の激化


広告代理店やAIを活用したベンダー等との競争激化が懸念されます。クライアント企業の意向に合わせた個別最適化や空間プロデュースの一気通貫体制、食関連領域での高付加価値な商品開発などによる差別化を図っていますが、これらが想定通りに進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定クライアントの離反


収益の多くは、コンサルティングやメディア運営支援を提供するクライアント企業との業務委託契約から発生しています。現状で特定企業への依存度は高くないものの、特定のクライアントに対する依存度が高まった状況下において当該企業の業績悪化や契約打ち切りが生じた場合、事業運営に支障をきたす恐れがあります。

(3) 法的規制等への抵触


広告主による広告内容が景品表示法や薬機法等の各種法令に抵触しないよう社内管理体制を構築しています。また、食関連領域では食品衛生法に準拠した衛生管理を実施しています。万が一法令違反や食中毒事故等が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償負担により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。