西松建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

西松建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合建設会社。ダム・トンネル等の土木事業や建築事業を主力とし、不動産開発事業も展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高3,668億円と前期比で減収となりましたが、経常利益は202億円と増益を確保しました。


#記事タイトル:西松建設転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社西松建設 の有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 西松建設ってどんな会社?


建設事業(土木・建築・国際)を柱に、不動産開発や環境ソリューション事業も展開する総合建設業者(ゼネコン)です。

(1) 会社概要


1874年に創業し、1937年に西松組として設立されました。1948年に現社名へ改称し、1963年には東京証券取引所第一部に上場しています。1960年代には香港やタイへ進出するなど海外展開を早期から進めました。2010年には不動産事業を行う西松地所を設立し、事業領域を拡大しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は3,065名、単体では2,622名体制です。筆頭株主は資本業務提携を結ぶ総合商社で、第2位、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
伊藤忠商事 19.42%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.36%
日本カストディ銀行(信託口) 6.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員社長は細川雅一氏です。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
細川 雅一 代表取締役社長執行役員社長 1987年入社。経営企画部長、西日本支社中国支店長、執行役員新規事業統括部長等を歴任。地域環境ソリューション事業本部長を経て、2024年6月より現職。
一色 眞人 代表取締役執行役員副社長コーポレート部門担当 1984年入社。専務執行役員土木事業本部長等を経て、2018年代表取締役執行役員副社長。安全環境本部長等を兼務し、2025年4月より現職。
河埜 祐一 代表取締役 1980年入社。監査室長、総務部長、常務執行役員管理本部長等を経て、2021年代表取締役執行役員副社長。2025年4月より現職。
髙瀨 伸利 取締役 1980年入社。建築施工本部長、関東建築支社長等を経て、2018年代表取締役社長執行役員社長に就任。2024年取締役会長を経て、2025年4月より現職。
澤井 良之 取締役 1980年富士銀行入行。みずほ銀行執行役員を経て、2010年同社取締役。開発・不動産事業本部長、アセットバリューアッド事業本部長等を歴任し、2025年4月より現職。
濵田 一豊 取締役専務執行役員建築事業本部長 1987年入社。建築事業企画部長、建築部長等を経て、2020年取締役常務執行役員建築事業本部長。2024年4月より現職。
川野 秀之 取締役(常勤監査等委員) 1987年入社。法務部法務課長、人事部長、管理本部副本部長、監査等委員会事務局部長等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、松坂英孝(元大阪瓦斯代表取締役副社長)、鈴木乃里子(公認会計士)、久保俊裕(元クボタ代表取締役副社長)、伊藤弥生(日本郵政社外取締役)、大下元(元JFEエンジニアリング代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木事業」「建築事業」「国際事業」「アセットバリューアッド事業」「地域環境ソリューション事業」の5つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 土木事業


国内におけるダム、トンネル、鉄道、道路、上下水道等の土木工事全般の請負及びこれに関連する事業を行っています。官公庁などの公共機関や民間企業が主な顧客です。

工事請負契約に基づき、発注者から工事代金を受け取ることで収益を得ています。運営は主に西松建設が行っています。

(2) 建築事業


国内におけるオフィスビル、工場、マンション、教育施設、医療・福祉施設等の建築工事全般の請負及びこれに関連する事業を行っています。民間企業や官公庁、学校法人等が主な顧客です。

工事請負契約に基づき、発注者から工事代金を受け取ることで収益を得ています。運営は主に西松建設が行っています。

(3) 国際事業


海外におけるトンネル、地下鉄、道路等の土木工事および工場、ビル等の建築工事の請負を行っています。東南アジアや南西アジア等が主な展開地域です。

工事請負契約に基づき、発注者から工事代金を受け取ることで収益を得ています。運営は西松建設および泰国西松建設などの海外現地法人が行っています。

(4) アセットバリューアッド事業


国内外における不動産の販売、賃貸、管理および収益不動産への投資事業を行っています。オフィスビル、商業施設、ホテル、学生寮などの開発・運営を手掛けています。

不動産の売却収入やテナントからの賃貸料収入、管理料収入などを収益源としています。運営は西松建設、西松地所などのグループ会社が行っています。

(5) 地域環境ソリューション事業


再生可能エネルギー事業(地熱、バイオマス等)やまちづくり事業(PPP/PFI等)を展開しています。地域社会の課題解決に資する事業を行っています。

売電収入やPFI事業におけるサービス対価などを収益源としています。運営は山陽小野田グリーンエナジーなどのグループ会社が行っています。

(6) その他


上記セグメントに含まれない事業として、植物工場事業などを行っています。

農産物の販売収入などを収益源としています。運営はサイテックファームなどのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は3,000億円台から4,000億円台で推移しています。2024年3月期に売上高が4,000億円を超えましたが、直近の2025年3月期は減収となりました。利益面では、2023年3月期に経常利益率が一時低下しましたが、その後は回復傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,362億円 3,238億円 3,398億円 4,016億円 3,668億円
経常利益 216億円 235億円 132億円 196億円 202億円
利益率 6.4% 7.3% 3.9% 4.9% 5.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 181億円 150億円 94億円 122億円 175億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は減少しましたが、売上総利益および営業利益は増加しており、収益性が改善しています。特に売上総利益率は7.2%から9.1%へ、営業利益率は4.7%から5.8%へと上昇しており、利益率の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,016億円 3,668億円
売上総利益 289億円 334億円
売上総利益率(%) 7.2% 9.1%
営業利益 188億円 211億円
営業利益率(%) 4.7% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が109億円(構成比48%)と最も大きな割合を占めています。売上原価においては、完成工事原価が3,029億円(売上原価合計の94%)を占めています。

(3) セグメント収益


土木事業は売上が微増しましたが、利益は減少しました。建築事業は大型工事の竣工反動等で減収となりましたが、利益率は大きく改善しました。国際事業は増収となったものの損失が拡大しています。アセットバリューアッド事業は販売事業の減少により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
土木事業 1,070億円 1,080億円 111億円 88億円 8.2%
建築事業 2,352億円 1,932億円 3億円 64億円 3.3%
国際事業 309億円 383億円 -6億円 -8億円 -2.1%
アセットバリューアッド事業 284億円 268億円 89億円 75億円 27.9%
地域環境ソリューション事業 2億円 5億円 -8億円 -7億円 -137.2%
調整額 - - -1億円 -1億円 -
連結(合計) 4,016億円 3,668億円 188億円 211億円 5.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、コマーシャル・ペーパーの発行等により財務活動によるキャッシュ・フローを増加させています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益はあったものの、仕入債務の減少や売上債権の増加等により資金が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や投資有価証券の取得等により資金が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いにより資金が減少しましたが、コマーシャル・ペーパーの発行等により資金が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 320億円 59億円
投資CF -418億円 -363億円
財務CF 111億円 161億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「価値ある建造物とサービスで安心して暮らせる持続可能な社会をつくる」を企業理念として掲げています。この理念を実践するため、人、まち、自然を大切につなぎ、人々が活き活きできる場を創ることで「みんなが輝く社会」の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社はサステナビリティスローガンとして「みんなでつくる みんなが輝く」を策定しています。この基本方針のもと、現場力やパートナーシップを重視し、多様な人財がワクワクし活躍できる仕組みづくりや、コンプライアンスの遵守に取り組む文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2025」において、2025年度の数値目標を設定しています。また、資本効率の向上と財務健全性の維持を重視し、株主還元についても具体的な指標を掲げています。

* 連結売上高:4,200億円
* 連結営業利益:250億円
* ROE:10%
* 自己資本比率:30%程度

(4) 成長戦略と重点施策


同社は長期ビジョン「西松-Vision 2030」を掲げ、従来の「社会基盤整備」に加え、エネルギーや環境保全などの社会課題を解決する「社会機能の再構築」に取り組んでいます。アセットバリューアッド事業では「循環型再投資モデル」への進化を目指し、地域環境ソリューション事業では再生可能エネルギー事業の開発を推進しています。また、成長投資として脱炭素や価値を生み出すアセットへ積極的な投資を行う方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「中期経営計画2025」において「意識・行動変革」「組織能力強化」「成長資源創出」を変革プログラムとして掲げています。多様な人財の確保のため、リクルーター制度の導入やキャリア採用の拡大、アルムナイ採用などを進めています。また、タレントマネジメントシステムの構築による人財情報の見える化や、エンゲージメント調査の実施、社長と社員の対話などを通じ、挑戦・連携意識の高い風土醸成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.0歳 19.2年 9,752,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.7%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 55.2%
男女賃金差異(正規) 65.4%
男女賃金差異(非正規) 68.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用率(総合職)(16.1%)、キャリア採用数(50名)、在宅勤務制度利用率(32.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 資材価格及び労務費等の上昇リスク


長期にわたる工事期間中に資材価格や調達状況が変動し、建設コストが増加するリスクがあります。増加分を請負金額に反映できない場合、工事損益が悪化し業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、契約時の適正価格・工期の確保に向けた協議や、主要資材の早期調達等により対策を講じています。

(2) 施工品質リスク


工事目的物に重大な欠陥が発生した場合、信頼の失墜や損害賠償金の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。社内基準書に準拠した施工、品質パトロール、施工管理検討の実施、不具合事例の水平展開、各種研修等を通じて品質管理に努めています。

(3) 長時間労働に関するリスク


長時間労働は従業員の健康リスクや生産性低下、離職増加、社会的信用の失墜を招き、事業遂行に影響を及ぼす可能性があります。フレックスタイム制や在宅勤務の導入、業務見直し、36協定時間の低減に加え、時間外労働の見える化システムによる管理と、高リスク現場への支援強化を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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