※本記事は、東建コーポレーションの有価証券報告書(第50期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東建コーポレーションってどんな会社?
同社は土地の有効活用を提案する建築請負と、全国展開する不動産賃貸事業を主力とする総合建設企業です。
■(1) 会社概要
1976年に愛知県刈谷市にて東名商事を設立し、土地所有者向けのリース建築事業を開始したのが同社の始まりです。1992年に東建コーポレーションへ商号を変更し、1993年には賃貸仲介専門店「ホームメイト」の1号店を開設しました。2002年に株式上場を果たし、2024年には名古屋刀剣博物館を開館しています。
同社グループの従業員数は連結6,231名、単体5,718名体制です。大株主の筆頭は関連会社の東名商事で、第2位は創業者の左右田稔氏、第3位は投資事業を手がけるファンドとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東名商事 | 20.30% |
| 左右田稔 | 9.40% |
| UH Partners 2投資事業有限責任組合 | 9.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長兼CEOは左右田善猛氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 左右田善猛 | 代表取締役社長兼CEO営業本部長兼建築本部長 | 2000年同社入社。常務取締役営業本部長などを経て、2021年取締役副社長、2023年より現職。 |
| 住野隆典 | 取締役営業担当役員 | 2000年同社入社。営業管理局長などを経て、2021年執行役員、2022年より現職。 |
| 浮田和秀 | 取締役 | 2006年同社入社。コーポレート本部財務戦略部長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、榊原啓氏(スタディーズ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」および「不動産賃貸事業」「その他」事業を展開しています。
■建設事業
土地の有効活用を目的としたアパートや賃貸マンション、シニアマンションなどの企画提案を行い、建築請負契約を締結して設計および施工を行っています。また、建設に要する資材や住設機器の国内外からの調達や、自社工場での製造・加工による内部供給および外部販売も手がけています。
収益は施主からの建築請負代金や資材の販売代金として受け取り、同社が中心となって展開しています。資材の調達や製造はナスラックが担い、東建リースファンドが施主への建築資金の一部融資を行うことで事業をサポートしています。
■不動産賃貸事業
オーナーとマスターリース契約を、入居者とサブリース契約をそれぞれ締結する不動産賃貸のほか、賃貸住宅の仲介斡旋を行っています。また、オーナーに代わって家賃回収や建物管理等を行う一括借り上げ制度を活用した経営代行システムも提供しています。
収益は入居者からの家賃や仲介手数料、オーナーからの管理料として受け取ります。東建ビル管理が不動産賃貸や建物管理を受託し、同社が経営代行システムに基づく管理業務を行っています。また、東通エステートも不動産賃貸事業の一翼を担っています。
■その他
総合広告代理店業務や旅行代理店業務に加え、ゴルフ場施設やホテルなどのリゾート施設の運営を展開しています。各種イベントの企画提案から効果的なPR戦略の実施まで、グループの事業展開を多角的に支援しています。
収益は施設の利用者からのサービス利用料や各種手数料として受け取ります。東通エィジェンシーが広告宣伝を一手に担い、東通トラベルが旅行代理店業務を行っています。施設運営は東建多度カントリーおよび東建リゾート・ジャパンが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が順調に拡大傾向にあります。利益面は建設資材価格の高騰などの影響を受けて一時的な落ち込みが見られたものの、直近2期間は完成工事高の増加などにより回復し、過去最高水準の売上高および経常利益を記録して安定した推移を示しています。
| 項目 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,116億円 | 3,168億円 | 3,408億円 | 3,666億円 | 3,865億円 |
| 経常利益 | 154億円 | 101億円 | 134億円 | 228億円 | 234億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 3.2% | 3.9% | 6.2% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 70億円 | 29億円 | 57億円 | 125億円 | 134億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増収となっており、それに伴い売上総利益も拡大しています。営業利益についても増加傾向を維持し、安定した利益水準と利益率を確保しています。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,666億円 | 3,865億円 |
| 売上総利益 | 473億円 | 506億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.9% | 13.1% |
| 営業利益 | 223億円 | 224億円 |
| 営業利益率(%) | 6.1% | 5.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が233億円(構成比53%)、その他が194億円(同44%)を占めています。一方、売上原価では兼業事業売上原価が2063億円(構成比64%)、完成工事原価が1135億円(同36%)となっています。
■(3) セグメント収益
建設事業は前期間からの受注増を背景に完成工事高が増加し、増収を牽引しました。また、不動産賃貸事業も管理物件数の増加による家賃収入などが堅調に推移し、全体の売上高拡大に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年4月期) | 売上(2026年4月期) |
|---|---|---|
| 建設事業 | 1,511億円 | 1,641億円 |
| 不動産賃貸事業 | 2,133億円 | 2,202億円 |
| その他 | 22億円 | 22億円 |
| 連結(合計) | 3,666億円 | 3,865億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行いながら投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 227億円 | 196億円 |
| 投資CF | -37億円 | -39億円 |
| 財務CF | -34億円 | -337億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も54.0%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る優良な水準を維持しています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、リース建設事業を起点として、お客様(土地所有者や入居者等)、地域社会、そして同社を取り巻く取引先の発展および繁栄に貢献することを事業目的としています。この事業を通じて、住環境の充実と向上を目指し、社会的利益の増進を図っています。
■(2) 企業文化
多様な価値観を理解し包括するマネジメントを重視する文化があります。人種・性別・年齢を問わず、誰もが意欲と能力を持って多様な働き方や生き方に挑戦できる職場環境づくりを推進しており、全社員の意識改革を通じて風土改革を進める姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は経営基盤の強化に向け、中長期的な組織目標を定めて経営を推進しています。特に人的資本関連では明確な数値目標を掲げており、社員の定着率向上や多様性の確保を目指しています。
* 2028年4月期までに女性社員の平均勤続年数を6ヵ月延伸
* 2028年4月期までに女性社員割合を30%に引き上げ
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、優秀な人材の確保・増強や新商品の開発・受注、経営データの多角的な分析による効率的な戦略実行に注力しています。特に首都圏をはじめとする有力市場への積極的な先行投資を進め、店舗イメージの一新や市場規模に応じた人員配備を推進することで経営基盤の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な企業価値向上を実現するため、性別や国籍、社歴にかかわらず実力主義と適材適所による人材登用を行い、多様性を確保する方針です。人材育成においては、責任者の社内公募や抜擢、ジョブローテーション、経営幹部との交流を通じ、高い意欲を持って自己成長できる人材の育成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月期 | 39.7歳 | 6.8年 | 6,220,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.7% |
| 男性育児休業取得率 | 28.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 73.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 44.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員割合(21.0%)、女性社員の平均勤続年数(5.3年)、グループ会社のナスラックにおける女性社員割合(27.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設・不動産業界の法的規制対応
同社グループは建設業法や宅地建物取引業法などの許認可を受けて事業を展開しており、適正な業務執行に努めています。しかし、これらの業法改正がなされた場合や対応次第では行政指導を受ける可能性があり、グループの経営成績や事業計画などに影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 建築請負の受注キャンセル
顧客との建物建築請負契約の締結をもって受注を計上していますが、受注から着工までに期間を要します。その間、金融機関の融資姿勢や土地担保評価、金利動向などの情勢変化により受注取消が発生し、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 建設資材・労務費の高騰による原価変動
工事請負契約締結後に、原材料や資材価格、労務費が高騰し完成工事原価が増加するリスクがあります。増加分を請負代金に反映することが困難な場合は利益が減少するほか、サブリース契約における入居率低下による家賃収入の減少も原価率上昇に繋がる可能性があります。



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