※本記事は、東建コーポレーション株式会社 の有価証券報告書(第49期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東建コーポレーションってどんな会社?
建設請負による「土地活用」の提案と、賃貸管理・仲介をワンストップで提供する建設・不動産企業です。
■(1) 会社概要
1976年に東名商事を設立しリース建築事業を開始、1992年に現在の東建コーポレーションへ商号変更しました。2002年に東京・名古屋証券取引所市場第二部に上場し、翌2003年には同市場第一部銘柄に指定されました。2004年には現在地に本社を移転し、2005年にナスステンレス(現・ナスラック)を子会社化して住宅設備機器事業を強化しています。
連結従業員数は5,877名(単体5,355名)です。筆頭株主は創業者である左右田稔氏が代表取締役を務める資産管理会社の東名商事で、第2位は創業者の左右田稔氏、第3位はUH Partners 2となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東名商事 | 34.20% |
| 左右田 稔 | 7.70% |
| UH Partners 2 | 7.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長兼CEOは左右田 善猛氏が務めています。取締役3名のうち1名が社外取締役であり、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 左右田 善猛 | 代表取締役社長兼CEO営業本部長兼建築本部長 | 2000年同社入社。営業本部長、仲介管理局長などを歴任。2014年東建ビル管理代表取締役。2021年取締役副社長営業本部長兼建築本部長を経て、2023年12月より現職。 |
| 住 野 隆 典 | 取締役営業担当役員 | 2000年同社入社。東中国事業ブロック長、営業管理局長(現、営業開発部長)、中日本事業ブロック長などを歴任。2022年7月より現職。 |
社外取締役は、志田行弘(元三重テレビ放送代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建設事業
土地所有者に対して、「土地の有効活用」を目的としたアパート、賃貸マンション、貸店舗等の企画提案を行い、建築請負契約を締結して設計・施工を行っています。また、ナスラックが建設資材や住設機器の製造・供給を行い、東建リースファンドが施主への建設資金の一部融資を行っています。
収益は、施主からの建築請負代金、およびグループ内・外部への建設資材販売から得ています。運営は、建築請負を同社が担当し、資材製造をナスラック、金融・保険代理業を東建リースファンドが行っています。
■(2) 不動産賃貸事業
同社が建設した賃貸建物等に対し、入居者の仲介斡旋や建物管理を行っています。独自の「5メディア仲介システム」による入居者募集や、全国不動産会社情報ネットワークを活用した仲介体制を構築しています。また、オーナーに代わって家賃回収や建物管理を行う「サブリース経営代行システム」を提供しています。
収益は、入居者からの仲介手数料、オーナーからの管理料、およびサブリース物件の家賃収入等から得ています。運営は、不動産賃貸・管理業務を東建ビル管理が行い、同社が「サブリース経営代行システム」により再委託を受けて管理業務等を担当しています。
■(3) その他
同社グループの広告宣伝、各種イベントや会議の企画、ゴルフ場およびホテルの運営を行っています。
収益は、広告制作料、旅行商品の販売、ゴルフ場・ホテル施設の利用料等から得ています。運営は、広告事業を東通エィジェンシー、旅行事業を東通トラベル、ゴルフ場・ホテル運営を東建多度カントリーおよび東建リゾート・ジャパンが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりで推移しており、特に直近の2025年4月期は過去最高を更新しています。利益面では、2023年4月期に一時的な落ち込みが見られましたが、その後V字回復し、直近では経常利益・当期利益ともに大幅な増益を達成し、高い利益率を記録しています。
| 項目 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,098億円 | 3,116億円 | 3,168億円 | 3,408億円 | 3,666億円 |
| 経常利益 | 165億円 | 154億円 | 101億円 | 134億円 | 228億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 4.9% | 3.2% | 3.9% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 76億円 | 70億円 | 29億円 | 57億円 | 125億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に加え、売上総利益率が大きく改善したことで、各段階利益が大幅に伸長しています。特に営業利益率は前年から大幅に上昇しました。コストコントロールと利益率の高い案件の積み上げにより、収益性が高まっていることが確認できます。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,408億円 | 3,666億円 |
| 売上総利益 | 336億円 | 473億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.9% | 12.9% |
| 営業利益 | 130億円 | 223億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が213億円(構成比51.6%)、その他経費が183億円(同44.4%)を占めています。売上原価については、兼業事業(不動産賃貸等)売上原価が1,993億円(構成比65.7%)、完成工事原価が1,039億円(同34.3%)となっています。
■(3) セグメント収益
建設事業は、受注増による完成工事高の増加と利益率の改善により、売上・利益ともに大きく伸長しました。不動産賃貸事業は、管理物件数の増加等により増収となったものの、仲介促進費用の増加等により利益は横ばいとなりました。全社的には建設事業の好調が全体の増益を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年4月期) | 売上(2025年4月期) | 利益(2024年4月期) | 利益(2025年4月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設事業 | 1,315億円 | 1,511億円 | 54億円 | 154億円 | 10.2% |
| 不動産賃貸事業 | 2,072億円 | 2,133億円 | 145億円 | 141億円 | 6.6% |
| その他 | 22億円 | 22億円 | 1億円 | 1億円 | 5.4% |
| 調整額 | - | - | -70億円 | -74億円 | - |
| 連結(合計) | 3,408億円 | 3,666億円 | 130億円 | 223億円 | 6.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で獲得したキャッシュで借入金の返済や投資を行いつつ、手元資金も厚く確保している「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 182億円 | 227億円 |
| 投資CF | -40億円 | -37億円 |
| 財務CF | -34億円 | -34億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.4%でプライム市場平均(9.4%)を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.5%でプライム市場(非製造業平均24.2%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、賃貸建物建設請負事業(リース建設事業)を起点として、土地所有者や入居者などの顧客、地域社会、および取引先の発展と繁栄に貢献することを目的としています。この事業を通じて、住環境の充実と向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「ダイバーシティ推進」を掲げ、人種・性別・年齢・価値観を問わず多様な人材が活躍できる環境づくりを重視しています。「ワーク・ライフ・バランス」の実現や「キャリア形成支援」を通じて、社員一人ひとりが個性やスキルを活かし、能力を最大限に発揮できる組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2026年4月期において、前期からの戦略を継続しつつ、首都圏をはじめとする有力市場への積極的な事業展開を計画しています。厳しい外部環境に柔軟に対応しながら、グループ一丸となって目標達成に向けて邁進する方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
経営基盤の強化に向け、優秀な人材の確保・増強、新商品の開発・受注、営業強化、データ分析による効率化を推進しています。特に首都圏などの有力市場に対しては、店舗イメージを一新した事業所の出店や市場規模に応じた人員配置など、積極的な先行投資を行い、グループのさらなる発展を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
イノベーション創出のため、「ダイバーシティ推進」を軸に、性別や年齢等を問わず多様な人材が活躍できるシステムや環境づくりを目指しています。具体的には、ワーク・ライフ・バランスの実現、女性活躍支援、障がい者雇用の推進、および階層別研修やキャリアパス再構築によるキャリア形成支援に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月期 | 40.3歳 | 7.3年 | 6,297,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 15.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 34.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員割合(27.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制等のリスク
建設業法、宅地建物取引業法、貸金業法などの許認可を受けて事業を行っているため、これらの法改正や行政指導等があった場合、グループの経営成績や財政状態、事業計画等に影響を与える可能性があります。
■(2) 市場のリスク
主力である建設事業は、雇用情勢、地価変動、金利動向、住宅税制などの影響を強く受けます。これらの外部環境の変化により受注状況が悪化した場合、グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 受注キャンセルのリスク
建築請負契約締結から着工までに期間を要するため、その間の金融機関の融資姿勢の変化、土地担保評価額の変動、金利動向などの情勢変化により、受注の取消が発生し、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) 売上高及び利益の季節変動に関するリスク
事業の性質上、売上高に季節的な変動があり、上半期に比べて下半期の売上割合が高くなる傾向があります。これに伴い、利益計上も同様の季節変動の傾向を示す特徴があります。



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