北越コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北越コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北越コーポレーションは東京証券取引所プライム市場に上場し、紙パルプ事業やパッケージング・紙加工事業を展開する企業です。当期は世界的なパルプ市況の軟化や国内洋紙の内需減退などの影響を受け、売上高は前期比で減収となり、営業利益や当期純利益も減益となる厳しい業績トレンドとなりました。


※本記事は、北越コーポレーション株式会社の有価証券報告書(第188期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 北越コーポレーションってどんな会社?


同社は、紙・パルプ製品の製造販売やパッケージング・紙加工事業を幅広く展開しています。

(1) 会社概要


1907年に北越製紙として創業し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。2009年に紀州製紙を完全子会社化して北越紀州製紙へ商号変更し、2018年には現在の北越コーポレーションへと社名を改めました。2024年には大王製紙と戦略的業務提携基本契約を締結し、協業による競争力強化を図っています。

現在の従業員数はグループ全体で3,728名、単体で1,479名です。筆頭株主は戦略的業務提携を締結している事業会社の大王製紙で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には地方銀行が名を連ねており、事業パートナーや金融機関による安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
大王製紙 17.51%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.60%
第四北越銀行 5.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役会長 グループCEOは岸本晢夫、代表取締役社長 COO兼生産技術本部長は若本茂が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
岸本晢夫 代表取締役会長グループCEO 三菱商事入社後、同社製紙原料部長などを経て同社へ入社。代表取締役社長CEOなどを経て現職。
若本茂 代表取締役社長COO兼生産技術本部長 同社入社後、洋紙事業本部紀州工場長や取締役生産技術本部長などを経て現職。
立花滋春 専務取締役代表取締役会長付特命事項担当 同社入社後、白板紙事業本部長や専務取締役洋紙営業本部長兼プロフィットマネジメント室などを経て現職。
柳澤誠 取締役CFO、法務C・広報担当兼プロフィットマネジメント室長兼経営企画部長 日本興業銀行(現みずほ銀行)入行後、同社へ入社。執行役員グループ統制管理室長などを経て現職。
石塚豊 取締役代表取締役会長付特命事項担当 同社入社後、紀州工場長や取締役新潟工場長などを経て現職。
飯田智之 取締役資源・原料本部長兼チップ・パルプ部長兼プロフィットマネジメント室 丸紅入社後、同社へ入社。執行役員資源・パルプ事業本部長などを経て現職。


社外取締役は、岩田満泰(元関西電力代表取締役副社長)、中瀬一夫(元三菱王子紙販売代表取締役社長執行役員)、倉本博光(元郵船ロジスティクス代表取締役社長執行役員)、二瓶ひろ子(ヒルフォード法律事務所マネージング・パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「紙パルプ事業」および「パッケージング・紙加工事業」と「その他」事業を展開しています。

(1) 紙パルプ事業


パルプや洋紙、白板紙などの紙製品を製造し、自社の代理店等を通じて国内外の顧客へ幅広く販売しています。製品の仕上げや包装工程、製造作業の請負、さらには製造に必要な電力および蒸気の供給なども自社グループ内で手がけ、一貫した生産・供給体制を築いています。

収益源は、製造したパルプや各種紙製品の販売代金です。事業の運営は同社を中心に、北越紙販売などの国内関連会社のほか、カナダのAlberta-Pacific Forest Industries Inc.やフランスのBernard Dumas S.A.S.などの海外子会社も担い、グローバルな展開を行っています。

(2) パッケージング・紙加工事業


紙器や液体容器などのパッケージ製品のほか、多様な紙加工品の製造、加工、および販売を行っています。食品一次容器や成長分野向け製品の展開に注力し、紙パルプ事業で製造された加工用原紙を活用することで、グループ内の素材を最終製品へと付加価値化して顧客へ届けています。

収益源は、製造・加工したパッケージ製品や紙加工品の販売代金です。事業の運営は主に北越パッケージや東拓(上海)電材有限公司などの子会社が担い、同社から原紙を購入して加工を行っています。また、ニッカンなどの持分法適用会社へも紙加工の一部を委託しています。

(3) その他


主力事業を支える周辺事業として、バイオマスボイラー向けの燃料チップを集荷・販売する木材事業や、工場設備の製作・保守を担う建設・機械事業を展開しています。さらに、製品や原材料の保管と一般貨物運送を行う運送・倉庫業、パレット製造や古紙卸業なども幅広く手がけています。

収益源は、グループ内外へ提供する燃料チップやパレットの販売代金、設備工事や保守の請負代金、および物流・倉庫の利用料です。運営は、北越マテリアル、北越エンジニアリング、北越物流などの子会社がそれぞれ専門領域を担い、グループ全体の経営資源の有効活用に貢献しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は3,000億円前後で推移していましたが、直近では世界的なパルプ市況の軟化や洋紙の需要減退により減少に転じました。経常利益も原燃料価格の変動や市況悪化の影響を受け、増減を繰り返しながら直近は減益となっています。一方で、持分法による投資利益の計上等により当期利益は底堅く推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,616億円 3,012億円 2,971億円 3,057億円 2,877億円
経常利益 295億円 115億円 178億円 188億円 113億円
利益率(%) 11.3% 3.8% 6.0% 6.1% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 74億円 74億円 37億円 116億円 141億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しており、これに伴い売上総利益も落ち込んでいます。生産効率の改善などのコストダウン要因はあったものの、販売数量の減少と販売価格の低下による影響が大きく、営業利益率も大幅に低下するなど、本業の収益環境は厳しさを増していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,057億円 2,877億円
売上総利益 688億円 565億円
売上総利益率(%) 22.5% 19.6%
営業利益 197億円 75億円
営業利益率(%) 6.5% 2.6%


販売費及び一般管理費のうち、運送費が255億円(構成比52%)、販売諸費が85億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


売上の大部分を占める紙パルプ事業は、世界的なパルプ市況の軟化や洋紙の国内需要減退、輸出販売の減少などにより減収となり、採算性の悪化から大幅な減益となりました。一方、パッケージング・紙加工事業は、液体容器の価格改定や販売増、加工設備の増強による外注費の減少が奏功し、増収増益を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
紙パルプ事業 2,802億円 2,614億円 183億円 60億円 2.3%
パッケージング・紙加工事業 167億円 174億円 2億円 6億円 3.2%
その他 88億円 89億円 9億円 6億円 7.3%
調整額 - - 4億円 4億円 -
連結(合計) 3,057億円 2,877億円 197億円 75億円 2.6%


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 409億円 102億円
投資CF -188億円 -33億円
財務CF -191億円 -63億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「北越グループ企業理念」として、「私たちは人間本位の企業として、自然との共生のもと技術を高め最高のものづくりによって、世界の人々の豊かな暮らしに貢献します」と掲げています。紙パルプ事業やパッケージング事業を核に、持続可能な社会の実現へ貢献し、すべてのステークホルダーの支持と信頼に基づく企業価値の持続的な向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「人間本位の企業」として、人の多様性を尊重し人を活かすという価値観を重んじています。「北越グループ行動規範」に則り、各国や地域の文化・宗教・慣習等を尊重し、多様な人材がその能力を発揮できる職場環境を構築しています。これにより、事業環境の急激な変化にも対応できるイノベーションを創出し、レジリエントな組織風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


長期経営ビジョン「Vision 2030」の最終ステップとして「中期経営計画 2030」をスタートさせています。環境経営を基軸として持続可能な社会に貢献するとともに、事業ポートフォリオシフトを加速し、安定した需要と市場規模を有する海外への販売を強化しています。

* 洋紙輸出比率:38%(2030年度)

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として、「事業ポートフォリオシフトの加速」「競争力強化による優位性の確立」「サステナビリティ経営による価値創造」の3本柱を推進しています。パッケージング事業の拡張や食品用高機能紙容器「ハロパック」の拡販を進めるとともに、新規事業開発室を通じてM&A案件等の戦略投資を実施します。また、大王製紙との戦略的業務提携を深化させ、企業価値の一層の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成方針のもと、「はじめの一歩を踏み出す」「原理・原則で考え問題を解決する」「周りを巻き込みチームで成果を出す」人物像を求め、自律的な学びとキャリア形成を支援しています。柔軟な勤務制度の導入や育児・介護の両立支援、健康経営の推進により、多様な人材が活躍できる働きやすい職場環境の整備を進め、組織の創造性と競争力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.7歳 22.4年 6,331,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.2%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.5%
男女賃金差異(正規雇用) 64.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 90.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェックの受検率(95%以上)、人権教育研修の受講者数(約2,100名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品需要及び価格の変動


紙パルプ事業およびパッケージング・紙加工事業において、景気後退や需要構造の変化によって販売数量が減少するリスクがあります。また、市況商品の割合が高いため、経済情勢に伴う販売価格の下落が業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、事業基盤の強化と事業ポートフォリオシフトを推進しています。

(2) 原燃料市況の変動


木材チップや古紙、薬品、エネルギー(ガス、重油等)などの原燃料価格や物流費用が高騰するリスクがあります。国際情勢の緊迫化による調達難や価格乱高下が収益を圧迫する可能性があるため、同社はサプライヤーの多様化を図り、有利かつ安定的な調達体制の構築に努めています。

(3) 海外情勢・為替の変動


原燃料の多くを海外から輸入し、海外での事業展開(カナダ、フランス、中国等)を行っているため、現地の政局不安や法規制の変更、為替レートの変動が業績に影響するリスクがあります。これに対し、現地専門家を活用した迅速な対応体制の構築や、為替予約によるリスクヘッジを実施しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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