北越コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北越コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、紙パルプ事業やパッケージング事業を展開する製紙メーカーです。2025年3月期は、輸出販売の数量増やパルプ販売価格の上昇が寄与し、売上高は過去最高を更新、営業利益も大幅な増益を達成するなど、全体として増収増益の好業績となりました。


※本記事は、北越コーポレーション株式会社 の有価証券報告書(第187期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 北越コーポレーションってどんな会社?


紙パルプ製品の製造販売を主力とし、パッケージング事業やグローバル展開も推進する製紙業界の大手企業です。

(1) 会社概要


1907年に北越製紙として創業し、1949年に株式上場しました。2009年に紀州製紙を完全子会社化し、2011年に同社を吸収合併しました。2015年にはカナダのパルプ会社を完全子会社化するなどグローバル展開を加速させ、2018年に現在の北越コーポレーションへと商号を変更しました。

連結従業員数は3,711名、単体では1,472名です。筆頭株主は海運・倉庫業等を営む美須賀海運で、第2位は製紙原料等の輸送を行う大王海運です。第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
美須賀海運 11.14%
大王海運 9.97%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長CEOは岸本晢夫氏です。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
岸本 晢夫 代表取締役社長CEO 三菱商事入社後、製紙原料部長などを経て同社入社。取締役物資本部長などを歴任し、2008年4月より現職。
若本 茂 専務取締役新潟工場長 同社入社後、執行役員洋紙事業本部紀州工場長、取締役技術開発本部長などを経て、2025年4月より現職。
立花 滋春 専務取締役洋紙営業本部長兼プロフィットマネジメント室 同社入社後、取締役白板紙事業本部長、常務取締役洋紙・白板紙事業本部長などを経て、2025年4月より現職。
柳澤 誠 取締役CFO、法務C・広報担当兼プロフィットマネジメント室長 日本興業銀行(現みずほ銀行)入行後、同社内部統制監査室長、執行役員などを経て、2025年4月より現職。
石塚 豊 取締役生産技術本部長兼サステナビリティ推進本部副本部長兼プロフィットマネジメント室 同社入社後、執行役員洋紙事業本部紀州工場長、北越ペーパーテック新潟社長などを経て、2025年4月より現職。
飯田 智之 取締役資源・原料本部長兼チップ・パルプ部長兼プロフィットマネジメント室 丸紅入社後、同社執行役員資源・パルプ事業本部長などを経て、2025年5月より現職。


社外取締役は、岩田満泰(元大阪中小企業投資育成社長)、中瀬一夫(元三菱製紙販売社長)、倉本博光(元日本郵船会長)、二瓶ひろ子(カウンセル弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「紙パルプ事業」「パッケージング・紙加工事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 紙パルプ事業


洋紙、板紙、特殊紙、パルプ等の製造および販売を行っています。また、製品の仕上げ・包装工程の受託や、紙製造に関する作業の請負、電力および蒸気の供給なども含まれます。

収益は、顧客への製品販売による対価が主な源泉です。運営は、同社およびカナダのAlberta-Pacific Forest Industries Inc.、フランスのBernard Dumas S.A.S.などの連結子会社が行っています。販売は同社、北越紙販売などが担っています。

(2) パッケージング・紙加工事業


紙器、液体容器等の製造販売や、紙加工品の製造、加工および販売を行っています。また、加工原紙の一部は同社から供給されています。

収益は、紙器や液体容器等の製品販売による対価です。運営は、主に北越パッケージおよび中国の東拓(上海)電材有限公司が行っています。また、同社はニッカンに紙の加工の一部を委託しています。

(3) その他


木材事業、建設業、運送・倉庫業、古紙卸業などを展開しています。具体的には、燃料チップの集荷販売、設備の製作・保守、製品・原材料の保管・運送、パレットや古紙の販売などです。

収益は、各サービスの提供や製品販売による対価です。運営は、北越マテリアル(木材)、北越エンジニアリング(建設・機械)、北越物流および北越水運(運送・倉庫)、北越パレット(その他)などの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね増加傾向にあり、特に当期は過去最高を記録しました。利益面では変動が見られますが、当期は経常利益、当期純利益ともに前期から増加し、利益率も改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,225億円 2,616億円 3,012億円 2,971億円 3,057億円
経常利益 98億円 295億円 115億円 178億円 188億円
利益率(%) 4.4% 11.3% 3.8% 6.0% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 120億円 74億円 74億円 37億円 116億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、営業利益も大きく伸長しました。営業利益率は前期から改善しています。コスト管理と増収効果により、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,971億円 3,057億円
売上総利益 601億円 688億円
売上総利益率(%) 20.2% 22.5%
営業利益 153億円 197億円
営業利益率(%) 5.1% 6.5%


販売費及び一般管理費のうち、運送費が264億円(構成比53.9%)、販売諸費が80億円(同16.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


紙パルプ事業は輸出販売や海外子会社の好調により増収増益となりました。パッケージング・紙加工事業は増収となったものの、コスト増により減益となりました。その他事業は増収減益でした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
紙パルプ事業 2,730億円 2,802億円 137億円 183億円 6.5%
パッケージング・紙加工事業 157億円 167億円 3億円 2億円 1.4%
その他 84億円 88億円 9億円 9億円 9.7%
調整額 - - 4億円 4億円 -
連結(合計) 2,971億円 3,057億円 153億円 197億円 6.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ利益(営業CFプラス)を使って、借入金の返済(財務CFマイナス)や設備投資(投資CFマイナス)を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 223億円 409億円
投資CF -155億円 -188億円
財務CF -38億円 -191億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「北越グループ企業理念」のもと、「人間本位の企業として、自然との共生のもと技術を高め最高のものづくりによって、世界の人々の豊かな暮らしに貢献します。」を使命としています。紙パルプ事業等を核として、ステークホルダーの支持と信頼に基づいた安定的かつ持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「グループ行動規範」において、各国・地域の文化・宗教・慣習等を尊重し、価値観の多様性を理解したうえで行動することを共有しています。また、「自然との共生」を掲げ、環境への影響を最小限にとどめることで持続可能な社会の実現に貢献するという方針を重視しています。

(3) 経営計画・目標


長期経営ビジョン「Vision 2030」の実現に向けた第2ステップとして、「中期経営計画 2026」を推進しています。2026年3月期の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:3,300億円
* 営業利益:200億円
* 経常利益:240億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:200億円
* ROE:8.0%
* EBITDA:390億円

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画 2026」に基づき、「事業ポートフォリオシフト」、「競争力強化(コスト・環境・安全)」、「サステナビリティ(ESG)活動推進」の3つを基本方針としています。グローバル展開や新規事業の開拓によるポートフォリオの転換、環境問題解決への先行投資による競争優位性の維持、サステナビリティ推進本部の新設によるESG活動の強化などを重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「北越グループダイバーシティ基本方針」等に基づき、人的資本経営を推進しています。性別や国籍に関わらず社員一人ひとりのキャリア形成を支援し、自主性とチャレンジ精神を尊重した人材育成を行うことで、多様な人材が活躍できる働きやすい会社風土の醸成を目指しています。また、経営陣・管理職層における多様性の確保や、従業員への教育訓練投資の増加などを通じ、グループ全体の競争力強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.3歳 22.3年 6,129,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.7%
男性育児休業取得率 28.5%
男女賃金差異(全労働者) 65.0%
男女賃金差異(正規雇用) 65.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 85.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品需要及び価格の変動について


紙パルプ事業等を主力としており、景気後退や需要構造の変化による需要減少の影響を受ける可能性があります。また、市況商品の割合が高いため、経済情勢に伴う製品価格の変動リスクがあります。これらが経営成績等に影響を及ぼす可能性があるため、事業ポートフォリオシフトや競争力強化等の施策により、事業基盤の強化に取り組んでいます。

(2) 原燃料市況の変動について


木材チップ、古紙、薬品、エネルギー等の原燃料を購入しており、国際情勢の変化等による市況変動リスクがあります。物流費用や購入価格の変動が経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。このため、原材料調達基本方針に基づき、サプライヤーの多様化等を通じて有利購買や安定調達に努めています。

(3) 海外の政治、経済情勢の変動について


原燃料の多くを海外から調達し、カナダやフランス等で事業を展開しています。現地の政局や経済情勢の変化、規制、政治不安等が、原燃料確保や価格、経済環境に影響を与え、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。海外子会社では、現地の専門家等の助言に基づき法改正等へ迅速に対応することでリスク軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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