神島化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神島化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神島化学工業はスタンダード市場に上場し、建材事業と化成品事業を展開しています。環境に配慮した資源循環型製品の拡販やマグネシウム製品の収益改善により、直近の業績は増収と大幅な増益を達成しており、堅調な成長トレンドにあります。


※本記事は、神島化学工業株式会社の有価証券報告書(第110期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月14日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 神島化学工業ってどんな会社?


窯業系建材やマグネシウム、セラミックス等の無機化学製品を製造・販売するメーカーです。

(1) 会社概要


1917年6月に神島硫酸製造所として創業し、硫酸の製造を開始しました。1946年に現在の神島化学工業を設立し、1972年にけい酸カルシウム板(不燃建材)の製造を開始しています。1996年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2013年の市場統合に伴い東京証券取引所市場第二部に上場後、2022年にスタンダード市場へ移行しました。

従業員数は単体で681名です。筆頭株主は事業会社のDOWAホールディングスで、第2位は神島化学従業員持株会、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
DOWAホールディングス 9.28%
神島化学従業員持株会 8.77%
日本カストディ銀行(信託口) 4.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は布川明氏が務めています。社外取締役の比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
池田和夫 代表取締役会長 1976年日本興業銀行入行。みずほコーポレート銀行福岡営業部部長等を経て2004年同社入社。社長を経て2024年より現職。
布川明 代表取締役社長 1978年同社入社。詫間工場長、生産・技術本部長、セラミックス事業部長等を経て2024年より現職。
相川義昭 常務取締役技術本部及び生産本部管掌兼セラミックス事業部長 1994年同社入社。技術統括部長、技術本部長、生産本部長等を経て2024年より現職。
北野幸治 取締役住宅建材営業部管掌兼建設建材営業部長 1986年同社入社。東京営業所長、建材営業部長、建設建材営業部長等を経て2025年より現職。
美藤敦司 取締役化成品営業部長 1994年日本写真印刷入社。1996年同社入社。生産本部長、技術本部長等を経て2025年より現職。
藤村倫夫 取締役総務部管掌 1981年同社入社。品質保証部課長、品質保証グループ長、常勤監査役、総務部長を経て2026年より現職。
山本裕一 取締役技術本部長兼技術本部技術統括部長 1996年同社入社。生産・技術本部技術統括部部長代理、生産本部長等を経て2026年より現職。


社外取締役は、今岡重貴(今岡公認会計士・税理士事務所代表)、伊藤高之(共立常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建材事業」および「化成品事業」を展開しています。

(1) 建材事業


住宅および非住宅、ビル用不燃建材として、窯業サイディング、軒天、破風板、耐火パネルなどを製造・販売しています。環境に配慮した資源循環型製品や、建物の長寿命化につながる高付加価値製品を中心に提供しています。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。事業の運営は、神島化学工業が主体となって行っています。

(2) 化成品事業


酸化マグネシウム、難燃水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、セラミックス製品などを製造・販売しています。サプリメント用途や工業用途のマグネシウム化合物のほか、核融合発電に不可欠な透明セラミックスなどを扱っています。

収益は、付加価値の高い薬品や素材の販売対価として顧客から受け取ります。事業の運営は、神島化学工業が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2022年4月期から2026年4月期の5期間において、売上高は着実に拡大を続けています。経常利益は2025年4月期に一時的に減少したものの、2026年4月期には価格転嫁や高付加価値製品の拡販効果により大きく回復し、収益性が向上しています。

項目 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期 2026年4月期
売上高 218億円 240億円 260億円 274億円 280億円
経常利益 21億円 21億円 21億円 17億円 26億円
利益率(%) 9.6% 8.9% 8.0% 6.3% 9.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 15億円 16億円 14億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。製造原価の改善や価格転嫁が進んだことで売上総利益率は上昇傾向にあり、営業利益も大幅に改善して高い収益性を確保しています。

項目 2025年4月期 2026年4月期
売上高 274億円 280億円
売上総利益 69億円 81億円
売上総利益率(%) 25.3% 28.9%
営業利益 18億円 27億円
営業利益率(%) 6.5% 9.6%


販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が30億円(構成比56%)、雑費が9億円(同17%)を占めています。売上原価については、当期製品製造原価が179億円(構成比90%)、当期商品仕入高が18億円(同9%)となっています。

(3) セグメント収益


建材事業は高級軒天ボードやサイディングの拡販により増収増益となりました。化成品事業も、サプリメント用途や工業用途の酸化マグネシウムの拡販およびコスト改善が進み、増収と大幅な増益を達成しています。

区分 売上(2025年4月期) 売上(2026年4月期) 利益(2025年4月期) 利益(2026年4月期) 利益率
建材事業 151億円 154億円 9億円 15億円 9.5%
化成品事業 123億円 127億円 17億円 21億円 16.9%
連結(合計) 274億円 280億円 18億円 27億円 9.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスであり、本業で稼いだ資金で積極的な設備投資と借入金の返済を同時に進める健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年4月期 2026年4月期
営業CF 31億円 32億円
投資CF -12億円 -30億円
財務CF -16億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


無機化学の可能性を追求し、「顧客満足を第一に考え、より広くより深く社会に貢献する」ことを経営の基本方針として掲げています。高品質な製品を提供し、あらゆる生産活動の基礎を支えることが使命であると認識しています。

(2) 企業文化


常に時代の流れをとらえ、高水準な技術と卓越した開発力で多様な産業界のニーズに広く深く対応する姿勢を重視しています。蓄積してきた技術を有効に活かし、多角的な製品展開を通じて幅広く社会の要請に応えることを大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2026年4月期から2028年4月期の3ヶ年の中期経営計画を策定し、環境対策などの社会課題へ対応することで持続的成長モデルを構築し、社会貢献と利益拡大の両立を目指しています。また、資本コストや株価を意識した経営の実現にも取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


地球環境の保全や人々の健康を守る製品・サービスを創造し、社会へ提供することを軸とした事業展開を推進しています。世界初となる自社工場の排ガスCO2を利用した資源循環型製品「ZESTA」をはじめ、環境・健康分野での拡販に注力します。

* 2030年ゼロCO2の実現
* セラミックスなどのコア技術を活かしたハイエンド市場の需要創造
* AIを中心としたICT技術などによる生産性向上や省人化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


性別・年齢・国籍・キャリアにとらわれない新規雇用の創出および従業員エンゲージメント向上のための社内環境整備を進めています。専門性や多様な経験を有する人材の雇用を積極的に推進し、外部知見を活用した業務改革および組織活性化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年4月期 41.1歳 14.7年 5,936,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.5%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 10.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職の割合(2.1%)、エキスパート職へ変更した人数(2名)、職制を変更した人数(15名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内住宅産業の動向

主力製品である窯業系建材の用途は住宅向けが中心であり、少子高齢化や人口減少により市場規模が縮小傾向にあります。化成品事業や非住宅分野への拡充を進めていますが、住宅着工戸数が著しく変動した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料・エネルギー価格の変動

製品の製造過程においてLNG、LPG、電力、塗料、苛性ソーダなどを使用しています。中東情勢の影響などにより原油やナフサの市況が高騰し、調達コストが著しく変動した場合は、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製造拠点への自然災害の影響

日本国内に東西2つの製造拠点を有し、地域的なリスク分散を図るとともに定期的な防災点検を行っています。しかしながら、大規模な自然災害に被災して生産活動が中断した場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。