※本記事は、株式会社ファインシンター の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
ファインシンターは、自動車焼結製品、鉄道焼結製品、油圧機器製品の製造販売を主な事業とする企業です。同社グループは製造子会社6社で構成され、関連当事者であるトヨタ自動車へ自動車焼結製品を継続的に販売しています。
単体従業員数は725名、連結従業員数は1,958名です。セグメントは自動車焼結事業、鉄道焼結事業、油圧機器製品事業、全社共通の4つです。
同社グループは、中長期的な事業戦略として国内外の生産拠点再編による基盤収益力の底上げと事業ポートフォリオ変革を進めています。2024年8月には国内自動車部品製造拠点の再編を決定し、2026年4月には米国子会社の事業停止を決定しました。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
株式会社ファインシンターは、粉末冶金技術を基盤とする専門製造業として、従業員のエンゲージメント向上と組織変革を通じた持続的成長を目指しています。同社グループは、人的資本を事業競争力を支える基盤であり、経営成果の創出に直結する重要な要素と位置付けています。
従業員の主体性と創造性を最大化し、高付加価値製品の提供やイノベーション創出を通じて、企業価値の向上を図る方針です。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
ファインシンターの単体従業員の平均勤続年数は長く、平均年齢も比較的高めであることから、人材が定着しやすい環境であることがうかがえます。経験豊富な従業員が多数在籍し、安定した組織基盤を形成している傾向が見られます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,170,000円 |
| 平均勤続年数 | 19.3年 |
| 平均年齢 | 45.2歳 |
| 単体従業員数 | 725人 |
| 連結従業員数 | 1,958人 |
| 単体のグループ内比率 | 37.0% |
同社および一部の連結子会社では、退職給付制度として確定給付型の企業年金制度(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出年金制度(会社が拠出した資金を従業員が運用する)を設けています。これらの制度は国内および海外のグループ会社に適用されています。
退職一時金制度も存在しますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。なお、確定給付型の退職給付債務は48.2億円、年金資産は23.7億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
ファインシンターは、粉末冶金技術を基盤とする高度専門製造業として、人的資本を事業競争力を支える基盤であると同時に、経営成果の創出に直結する重要な要素と位置付けています。特に、モノづくり改革や事業ポートフォリオ変革を推進する上で、専門性の高い人材の確保・育成および組織力の強化が不可欠であると考えています。
同社グループは、人的資本への投資を起点として従業員のエンゲージメント向上を図り、組織能力の向上を通じて生産性および付加価値の向上につなげる考え方に基づいています。これにより、資本効率を高め、持続的な成長の実現を目指しています。
重点施策として、「フロー(Flow)が生まれる働き方支援」により従業員の主体性と創造性の最大化を図り、離職の抑制と生産性の向上を目指します。また、「技能・スキル向上支援」では、技能伝承の体系化や管理職・リーダー層の計画的な育成、顧客課題解決型人材の育成強化を進めています。さらに、「組織力強化(マネジメント改革)」としてサクセッションマネジメントによる経営人材の継続的な確保や意思決定の質・スピード向上に取り組んでいます。
「人材多様化」をイノベーション創出の機会と捉え、新製品開発力および変革力の向上につなげ、「職場環境改善(働き方改革と生産性向上)」ではDX・AI活用による業務効率化や高付加価値業務へのシフトを進めています。加えて、「ウェルネス経営(人的資本の持続性確保)」により、心身の健康維持と人材の長期的な活躍を支えることで、人的資本投資による成果の安定的な創出を目指しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 5.8% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 57.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 75.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 83.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 83.0% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
▼ ファインシンター東北株式会社
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 0.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 0.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 63.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 59.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 107.6% |
▼ ファインシンター三信株式会社
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 6.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 79.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 78.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | - |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
株式会社ファインシンターは、自動車、鉄道、油圧機器の分野で焼結製品の製造・販売を手掛ける企業グループです。金属粉末を加工する独自の技術を活かし、高強度・高精度な部品を国内外の顧客に提供しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、主に「自動車焼結事業」「鉄道焼結事業」「油圧機器製品事業」の3つの報告セグメントを展開しています。これらの事業を通じて、顧客のニーズに応じた焼結部品や小型油圧機器を提供し、収益を上げています。関連当事者であるトヨタ自動車へは、継続的に自動車焼結製品を販売しています。
自動車焼結事業
自動車向けの焼結製品の製造・販売を行っています。収益は、主要顧客のグローバルな生産・販売が好調に推移したことや、タイ子会社第2拠点での駆動系部品販売、国内でのハイブリッド車用インバーター部品の受注が堅調であることなどから得ています。運営は、ファインシンター東北、ファインシンター三信、タイファインシンター、アメリカンファインシンター、精密焼結合金(無錫)、ファインシンターインドネシアなどが製造・販売を担っています。
鉄道焼結事業
新幹線用ブレーキライニングやすり板などの鉄道焼結製品の製造・販売を行っています。収益は、新幹線用ブレーキライニング及びすり板の受注から得ています。
油圧機器製品事業
高精度・高強度の焼結ギアを組み込んだ小型油圧機器の製造・販売を行っています。収益は、デンタルチェア用製品の北米顧客向け売上増加や新規案件の獲得から得ています。
その他の事業セグメント
発電及び売電、食品に関する事業を展開しています。
同社グループは、日本だけでなくアジアや北米地域でも売上を計上しており、グローバルに事業を展開しています。特に自動車焼結事業は同社グループの売上を大きく牽引しており、当連結会計年度においては過去最高の売上高を達成しました。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車焼結事業 | 385億円 | 419億円 |
| 鉄道焼結事業 | 23.9億円 | 23.8億円 |
| 油圧機器製品事業 | 18.7億円 | 19.2億円 |
| その他の事業セグメント | 5百万円 | 9百万円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの売上高は、この5年間で増加傾向にあります。当連結会計年度においては、売上高、営業利益、経常利益ともに前期から増加しました。一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は当連結会計年度に大きな損失を計上しています。これは、グローバルな生産拠点再編に伴う固定資産減損損失の計上が主な要因となっています。営業活動によるキャッシュ・フローは大幅に増加しており、本業でのキャッシュ創出力は改善している状況です。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 390億円 | 397億円 | 424億円 | 427億円 | 462億円 |
| 経常利益 | 6.4億円 | △10.5億円 | 3.7億円 | 4.7億円 | 7.5億円 |
| 経常利益率 | 1.6% | △2.6% | 0.9% | 1.1% | 1.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | △5.2億円 | △27.3億円 | △5.9億円 | △2.1億円 | △24.1億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | △118.22 | △621.01 | △135.62 | △48.37 | △564.13 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高(連結)は、前期から増加しています。また、従業員1人あたり営業利益(連結)も前期から増加する結果となりました。これらの指標は、同社グループ全体の生産性が向上している傾向を示しています。ただし、当期は固定資産減損損失を計上しており、一時的な要因が利益に影響を与えている点も考慮されます。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 20.9百万円 | 23.6百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 0.3百万円 | 0.6百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
ファインシンターグループの財務状況を見ると、本業で安定的に資金を生み出し、将来に向けた投資も行っていることがわかります。手元資金も確保されており、事業運営の基盤が整っている状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
ファインシンターグループの財務基盤は、自己資本比率がプライム市場の製造業平均を下回る水準にあり、ROE(自己資本利益率)もマイナスとなっています。しかし、手元資金は増加傾向にあり、事業活動に必要な流動性を確保している状況です。これらの財務状況は、今後の事業展開や雇用・給与の安定性を検討する上で重要な要素となります。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 170億円 | 151億円 |
| 自己資本比率 | 29.5% | 30.9% |
| ROE(自己資本利益率) | △1.4% | △17.0% |
| 現金及び預金 | 44.2億円 | 58.5億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
ファインシンターグループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失であるものの、非資金項目である減価償却費や減損損失を計上したことにより、収入が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出が前年度と同程度であった一方で、投資有価証券の売却による収入が減少したため、支出が増加しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、新規の長期借入金による資金調達があったものの、短期借入金の返済や中国の連結子会社の持分取得による支出により、支出となりました。
これらのキャッシュ・フローの状況は、本業で安定的に資金を生み出しつつ、将来の成長に向けた投資も行っていることを示しています。手元資金も増加しており、事業運営の安定性につながる傾向が見られます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.1億円 | 47.6億円 |
| 投資CF | △5.4億円 | △23.4億円 |
| 財務CF | 8百万円 | △12.5億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 2.7億円 | 24.2億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループの製品は主に自動車用部品であり、自動車産業の構造変革や市場縮小が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、連結売上高に占める特定顧客への売上の割合が高い状況です。
海外における製品の生産と販売も行っており、各地域の政治・経済状況の変化が業績に影響を与える可能性もあります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループの従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上の前提条件や年金資産の長期期待収益率に基づいて算出されています。割引率の低下や年金資産の減少など、実際の結果が前提条件と異なる場合は、将来の期間に認識される費用及び計上される債務に大きな影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
ファインシンターは、「ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する」という基本理念を掲げ、社会貢献と持続的成長を目指す企業です。新たな中期経営計画では「変革を遂げる」を基本方針とし、企業価値向上に取り組んでいます。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
ファインシンターは、「ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する」ことを基本理念としています。この理念はSDGsのアジェンダとも重なり、同社グループのサステナビリティ方針として位置づけられています。
長期方針としては、「21世紀に勝ち残る企業基盤の確立」を掲げ、品質第一に徹した魅力ある商品・技術の実現を目指しています。また、「良い社風を築き、地域に信頼される企業」となること、そして「明るく働きがいのある職場」を築くことも重視しています。
同社グループは、中期経営計画(Vision2030)において、「変革を遂げる」を基本方針に掲げ、「構造×人」の両軸から企業価値向上を図ることを目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
ファインシンターは、長期方針として「品質第一に徹し、魅力ある商品・技術の実現」を掲げ、ものづくりへのこだわりを大切にしています。また、「良い社風を築き、地域に信頼される企業」を目指し、社会との調和を重視する姿勢が見られます。
「明るく働きがいのある職場」の実現も重視しており、人的資本への投資を通じて、将来志向の組織・人材への変革を推進しています。
同社グループは、サステナビリティの推進を強化するためESG委員会を設置し、環境活動では「ファインシンター環境方針」と「行動指針」を定め、ISO14001に基づいた環境マネジメントシステムを構築しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
ファインシンターは、電動化の進展や総労働人口の減少といった構造的な転換期にあり、脱炭素対応やサステナビリティ、人的資本経営への高度な対応が求められています。
同社グループは、経営の透明性向上と意思決定の実効性を高めるガバナンスの強化が不可欠であると認識しています。
これらの課題に対し、同社グループは「モノづくり革新・改革」と「人の改革(未来志向へシフト)」を重点実施項目としています。具体的には、ガバナンスの徹底、経営の透明性向上、プロフェッショナル集団への回帰、働き方支援、技能・スキル向上支援、ウェルネス経営、組織力強化、人材多様化、職場環境改善を推進しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
同社は取締役会及び監査役会設置会社であり、株主総会を頂点とする企業統治体制を構築しています。経営の効率性・公正性・透明性を一層向上させるとともに、経営の監督機能の強化や情報の適時開示を促進し、攻めのガバナンスにも主体的に取り組む方針です。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社の筆頭株主はトヨタ自動車であり、事業会社が上位株主として名を連ねています。また、ファインシンター従業員持株会も上位に位置しており、従業員による株式保有も進んでいることがうかがえます。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 21.49% |
| ファインシンター従業員持株会 | 8.65% |
| カヤバ | 5.15% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は9名(男性9名・女性0名)で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山口登士也氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山口 登士也 | 代表取締役社長 | 1990年4月トヨタ自動車入社、2000年1月同社出向技術開発センター材料技術開発室長、2019年1月同社生技開発部長、2024年4月同社代表取締役社長より現職。 |
| 田中 義人 | 取締役副社長 | 1987年4月トヨタ自動車入社、2013年4月同社駆動・HVユニット生技部ドライブライン計画室長、2017年2月同社理事、2024年4月同社取締役副社長より現職。 |
| 伊藤 雅之 | 専務取締役 | 1985年3月同社入社、2013年1月ファインシンターインドネシア副社長、2015年6月同社取締役、2024年4月同社専務取締役より現職。 |
| 小林 努 | 常務取締役 | 1987年4月トヨタ自動車入社、2012年1月トヨタモーターマニュファクチャリングインディアナ財務統括責任者、2018年1月同社経理部長、2024年4月同社常務取締役より現職。 |
社外取締役は、鈴木康也氏(鈴木康也公認会計士事務所代表)、加藤豊氏(トヨタ自動車三好・明知工場第1DL製造部長)です。
同社は監査役会設置会社であり、複数の独立した社外取締役が経営に対する監督機能の強化を担っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の役員報酬は、固定報酬、業績連動報酬、及び退職慰労金で構成されています。業績連動報酬は、各事業年度の業績向上に対する意識を高めることを目的とし、連結営業利益を指標とした現金報酬としています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 4名 | 1.2億円 | 29.4百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 16百万円 | 15.6百万円 |
| 社外役員 | 5名 | 8百万円 | 1.7百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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