ファインシンター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファインシンター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場、名古屋証券取引所メイン市場に上場する粉末冶金製品メーカー。自動車、鉄道、油圧機器向けの焼結製品製造を主力とします。当期は販売価格の適正化や原価改善が進み、売上高は微増ながら営業利益、経常利益ともに大幅な増益(増収増益)となりました。


※本記事は、株式会社ファインシンター の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ファインシンターってどんな会社?


粉末冶金技術を核に、自動車・鉄道・産業機械向け部品を製造するメーカーです。トヨタ自動車の関連会社です。

(1) 会社概要


1950年に粉末冶金製品の製造を目的に設立され、1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2002年には日本粉末合金と合併し、現在の社名に変更しています。2022年の市場区分見直しを経て、現在は東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所メイン市場に上場しています。2024年には革新的なモノづくり技術「未来ファクトリー」を稼働させるなど、技術革新を続けています。

連結従業員数は2,043名、単体では779名です。筆頭株主は事業提携先である自動車メーカーのトヨタ自動車で、第2位は従業員持株会、第3位は油圧機器等で取引のある事業会社のカヤバです。トヨタ自動車は同社の議決権の21.48%を保有するその他の関係会社であり、主要な販売先でもあります。

氏名 持株比率
トヨタ自動車 21.48%
ファインシンター従業員持株会 8.63%
カヤバ 5.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は山口登士也氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
山 口 登 士 也 代表取締役社長 トヨタ自動車入社後、技術開発センター室長、生技開発部長、モノづくり開発統括部主査などを経て、2024年より現職。
田 中 義 人 取締役副社長 トヨタ自動車入社後、駆動・HVユニット生技部室長などを経て同社へ。生産技術部長、生産本部長などを歴任し、2024年より現職。
伊 藤 雅 之 専務取締役 同社入社後、インドネシア現地法人副社長、営業部長、PHA部長などを歴任。営業本部長を経て2024年より現職。
小 林 努 常務取締役 トヨタ自動車入社後、米国製造子会社財務統括責任者などを経て同社へ。経理部長、調達部長、コーポレート本部長を経て2024年より現職。


社外取締役は、鈴木康也(公認会計士・税理士)、山内尚子(日進工業所代表取締役)、加藤豊(トヨタ自動車製造部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車焼結事業」、「鉄道焼結事業」、「油圧機器製品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 自動車焼結事業


自動車のエンジンやショックアブソーバーなどに使用される焼結部品を製造・販売しています。主な顧客はトヨタ自動車やデンソーなどの自動車および自動車部品メーカーです。

製品の販売対価を収益としています。運営は同社(親会社)に加え、ファインシンター東北、タイファインシンター、アメリカンファインシンター、精密焼結合金(無錫)、ファインシンター三信、ファインシンターインドネシアの各連結子会社が行っています。

(2) 鉄道焼結事業


新幹線等の鉄道車両に使用されるブレーキライニングやパンタグラフ用すり板などの焼結製品を製造・販売しています。顧客は鉄道事業者や車両メーカー等が中心です。

製品の販売対価を収益としています。運営は主に同社(親会社)が行っています。

(3) 油圧機器製品事業


高精度・高強度の焼結ギアをポンプ駆動部に組み込んだ小型油圧機器製品を製造・販売しています。主な用途は医療機器や産業機械などです。

製品の販売対価を収益としています。運営は主に同社(親会社)が行っています。

(4) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、発電および売電事業、食品に関する事業などを展開しています。

製品の販売や電力の供給対価を収益としています。運営は同社グループが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。特に第74期は大幅な赤字を計上しましたが、第75期以降は黒字回復しています。当期は売上高が過去最高水準となり、経常利益も前期比で増加しました。一方で、構造改革に伴う費用等の計上により、親会社株主に帰属する当期純損益は損失となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 346億円 390億円 397億円 424億円 427億円
経常利益 0.7億円 6億円 -11億円 4億円 5億円
利益率 0.2% 1.6% -2.6% 0.9% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 -13億円 -17億円 6億円 -12億円

(2) 損益計算書


売上高は微増ながら、営業利益は前期比で大きく改善しています。売上総利益率が向上しており、収益性が高まっています。営業利益率は前期の1.0%から1.6%へと上昇しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 424億円 427億円
売上総利益 54億円 58億円
売上総利益率(%) 12.7% 13.5%
営業利益 4億円 7億円
営業利益率(%) 1.0% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比15%)、研究開発費が5億円(同10%)、運賃及び荷造費が5億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


自動車焼結事業は売上が横ばいですが、利益は増加しました。鉄道焼結事業と油圧機器製品事業はともに増収増益となり、特に油圧機器製品事業は大幅な利益増を達成しました。全体として、主力の自動車事業の収益改善と非自動車事業の成長が寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
自動車焼結事業 384億円 385億円 20億円 22億円 5.8%
鉄道焼結事業 23億円 24億円 5億円 5億円 21.7%
油圧機器製品事業 17億円 19億円 3億円 4億円 22.5%
その他 0.1億円 0.1億円 0.0億円 -0.0億円 -26.1%
調整額 - - -24億円 -25億円 -
連結(合計) 424億円 427億円 4億円 7億円 1.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


パターン:積極型(営業CF+、投資CF-、財務CF+)

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 47億円 8億円
投資CF -52億円 -5億円
財務CF -2億円 0.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-1.4%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する」を基本理念として掲げています。この理念はサステナビリティ方針としても位置付けられており、21世紀に勝ち残る企業基盤の確立、地域に信頼される社風づくり、働きがいのある職場の実現を目指しています。

(2) 企業文化


「品質第一に徹し、魅力ある商品・技術の実現」を長期方針の一つとして掲げ、ものづくり企業としての姿勢を重視しています。また、コンプライアンス意識の向上と風土改革、仕組みの維持・強化を軸に、明るく働きがいのある職場を築くことを目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


2030年を見据えた「FINE SINTER VISION 2030」を掲げ、モビリティの脱炭素化やサステナブルな社会への貢献を目指しています。2025年度の経営目標として以下の数値を設定し、次期中期経営計画の策定も進めています。

* 売上高:400億円
* 営業利益率:8%
* ROE:10%

(4) 成長戦略と重点施策


収益構造の抜本的改革と事業ポートフォリオ変革を推進しています。収益構造改革では、不採算製品の価格適正化や国内拠点の再編(6拠点から4拠点へ)、革新的モノづくり技術「未来ファクトリー」の展開による生産性向上に取り組みます。事業ポートフォリオ変革では、電動化に対応した磁性材製品の拡大、鉄道・油圧事業の強化、および昆虫食などの新規事業開拓に注力し、企業価値向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ウェルネス経営」と「ダイバーシティ」向上を中心に人的資本投資を強化しています。従業員のエンゲージメント向上を重視し、働きがいのある職場づくりを推進しています。また、全従業員活躍企業を目指し、成果に応じた人事制度への改革や、60歳以降の再雇用制度の見直し、多様な人材の確保・育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.5歳 19.7年 6,834,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.4%
男性育児休業取得率 73.3%
男女賃金差異(全労働者) 74.7%
男女賃金差異(正規) 83.3%
男女賃金差異(非正規) 101.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性育児休業取得率(100.0%)、従業員エンゲージメント(EXスコア)(62.4)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外進出に内在するリスク


海外での製品生産と販売を行っているため、各地域の政治・経済状況の変化等の予期せぬ事象が業績に影響を及ぼす可能性があります。現地拠点の情報網を活用し、動向を適時適切に把握して対応に努めています。

(2) 業界内外の競争に伴うリスク


国内外の競合他社との競争が激しく、競争に打ち勝てない場合は業績に影響が出る可能性があります。デジタル設計から量産までを担う専任組織や「テクニカルセンター」を設置し、開発力の強化と量産化の加速を進めています。

(3) 原材料の仕入に係る仕入価格の変動及び人権に関わるリスク


鉄粉等の金属粉を原材料としており、価格高騰や供給元の事故、人権問題等による供給不足が業績や企業イメージに影響する可能性があります。歩留り向上による使用量低減や、コバルトフリー材料の開発、責任ある鉱物調達を推進してリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。