※本記事は、株式会社テンポスホールディングス の有価証券報告書(第33期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. テンポスホールディングスってどんな会社?
飲食店向け機器販売を中核に、不動産仲介や内装工事などの経営支援サービス、ステーキ店等の飲食店経営を行う企業グループです。
■(1) 会社概要
1997年に商号をテンポスバスターズに変更し、厨房機器のリサイクル販売を開始しました。2002年に株式を店頭登録し、2011年には「あさくま」を子会社化して飲食事業へ本格進出しました。2017年に持株会社体制へ移行して現商号となり、2023年にはヤマトサカナを子会社化するなど事業を拡大しています。
連結従業員数は964名(単体23名)です。筆頭株主は創業家資産管理会社の有限会社あさしおで、第2位は代表取締役社長の森下篤史氏です。第3位には業務用冷蔵庫メーカーのガリレイが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社あさしお | 17.35% |
| 森下篤史 | 15.38% |
| ガリレイ | 7.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は森下篤史氏です。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森下 篤史 | 代表取締役社長 | 東京電気(現 東芝テック)入社を経て同社設立、取締役に就任。あさくま代表取締役などを歴任し、2017年より現職。 |
| 伊藤 航太 | 取締役人事総務部長兼人材事業部長 | 2007年同社入社。人事総務部長などを経て、2019年ディースパーク取締役社長に就任。同社取締役は2019年より現職。 |
| 森下 和光 | 取締役グループ管理部長 | 1998年同社入社。スタジオテンポス代表取締役などを歴任。キッチンテクノ代表取締役などを兼務し、2015年より現職。 |
| 遠山 貴史 | 取締役営業本部長 | 2006年同社入社。各店店長やエリアマネージャーを歴任し、テンポスバスターズ取締役を経て、2022年より現職。 |
| 中田 千夏 | 取締役広報・販促部広報課長 | 2013年テンポス店舗企画入社。同社営業企画課などを経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、石﨑冬貴(法律事務所フードロイヤーズ代表弁護士)、西川心二(アシスト代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「物販事業」、「情報・サービス事業」、「飲食事業」を展開しています。
■(1) 物販事業
全国各地に店舗を構え、飲食店を経営する顧客向けに新品およびリサイクル品の調理道具、食器、イス・テーブル、厨房機器等を販売しています。また、中堅・大手飲食企業に対しては、営業社員による厨房の設計・施工・管理等のサービスも提供しています。
収益源は、飲食店等の顧客からの商品購入代金や設計・施工サービスの対価です。運営は主に株式会社テンポスバスターズ、キッチンテクノ株式会社、株式会社テンポスドットコムなどが行っています。
■(2) 情報・サービス事業
飲食店経営のための情報とサービスを提供しています。具体的には、居抜を中心とした不動産物件の紹介・仲介、内装工事の請負、リース・クレジット等のファイナンス取扱、オーダーエントリーシステムの販売、販促コンサルティング、人材派遣、M&A紹介などを行っています。
収益源は、飲食店等からの仲介手数料、工事請負代金、サービス利用料などです。運営は主に株式会社テンポスフィナンシャルトラスト、株式会社テンポス情報館、株式会社ディースパークなどが行っています。
■(3) 飲食事業
飲食店の経営およびフランチャイズ(FC)加盟店の開発を行っています。「ステーキのあさくま」などが主力ブランドであり、海鮮業態なども展開しています。
収益源は、来店客からの飲食代金やFC加盟店からのロイヤリティ収入などです。運営は主に株式会社あさくま、ヤマトサカナ株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近では大幅な増収を達成しています。一方、経常利益は増減が見られ、利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 270億円 | 290億円 | 313億円 | 371億円 | 471億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 29億円 | 23億円 | 31億円 | 29億円 |
| 利益率 | 5.4% | 10.1% | 7.4% | 8.3% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2.1億円 | 2.1億円 | 4.1億円 | 6.6億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加しましたが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少しました。営業利益率は低下しています。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 371億円 | 471億円 |
| 売上総利益 | 143億円 | 177億円 |
| 売上総利益率 | 38.7% | 37.7% |
| 営業利益 | 28億円 | 27億円 |
| 営業利益率 | 7.6% | 5.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び諸手当が72億円(構成比47.6%)、地代家賃が22億円(同14.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
物販事業と飲食事業が売上を牽引していますが、飲食事業の収益性が大幅に改善した一方、物販事業や情報・サービス事業は減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年4月期) | 売上(2025年4月期) |
|---|---|---|
| 物販事業 | 240億円 | 272億円 |
| 情報・サービス事業 | 36億円 | 39億円 |
| 飲食事業 | 95億円 | 160億円 |
| 連結(合計) | 371億円 | 471億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 26億円 | 12億円 |
| 投資CF | -13億円 | -14億円 |
| 財務CF | -11億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.0%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も60.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「飲食店の5年後の生存率を9割にする」を経営方針に掲げています。中小零細の飲食企業を利益追求と顧客満足の両面から経営サポートする「Dr.(ドクター)テンポス」に取り組んでいます。また、ビジネス上の発明発見やノウハウを世の中に役立てる「ビジネスサイエンティスト」を目指す姿としています。
■(2) 企業文化
テンポスが見つけたビジネス上の発明発見やノウハウが世の中に役立つように広めていくことを同グループの役目であると考えています。
■(3) 経営計画・目標
同グループは中長期的な目標として、売上高2,000億円、時価総額2,000億円企業を目指しています。
- 売上高:2,000億円
- 時価総額:2,000億円
■(4) 成長戦略と重点施策
業務用中古厨房機器での圧倒的地位の確立、WEB事業への注力、情報・サービス事業のプロ化、およびM&Aや資本業務提携の積極活用を戦略として掲げています。特に地方都市への出店拡大や、M&Aによるサービス産業での成長、新規事業としての「格付診断士」育成や家賃保証事業などに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ビジネスサイエンティスト」としてノウハウを広めるため、定年制を廃止し、性別・国籍・年齢に関係なく経験・能力に基づいた積極的な中途採用を行っています。また、管理職ポストの公募制や、海外からの人材受入れ、M&Aによる多様な人材の融合を通じて、組織の活性化とシナジー創出を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月期 | 52.2歳 | 8.1年 | 5,684,347円 |
※平均年間給与は、基準外賃金と賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 0.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 50.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 59.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 96.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) | 117.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性店長比率(11%)、格付診断士数(300名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コンプライアンス体制について
管理部を中心として内部監査体制の整備を進め、コンプライアンスの徹底を行っています。しかしながら、将来、管理体制上の問題が発生し、社会的信頼性の低下に伴う売上高の減少により、グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。
■(2) 風評被害のリスク
従業員による不適切行為や顧客によるいたずらなどに対し、社員教育や注意喚起を行っていますが、対策が万全とは言いきれません。インターネット等を通じて悪評・誹謗・中傷等の風説が流布された場合、信頼および企業イメージが低下し、経営成績および財務状況に影響を与える可能性があります。
■(3) 食品安全性と仕入価格上昇
飲食事業において生鮮食品の扱いが増加しており、安全な商品の提供に努めていますが、問題が発生した場合には信頼低下や対応コスト発生等の影響を受ける可能性があります。また、ギフト商品等について重大な事故等が発生した場合、商品回収や製造物責任賠償が生じ、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) M&Aに伴う事業リスク
事業拡大の手段としてM&Aを活用していますが、買収後に偶発債務の発生や未認識債務の判明など、事前調査で把握できなかった問題が生じた場合や、事業展開が計画どおりに進まない場合、グループの事業活動、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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