#記事タイトル:岩井コスモホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、岩井コスモホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第82期、自 2020年4月1日 至 2021年3月31日、2021年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 岩井コスモホールディングスってどんな会社?
同社は、1915年創業の老舗証券会社を源流とし、合併や持株会社化を経て関西地盤の証券グループとして発展しました。
■(1) 会社概要
1915年に大阪で岩井商店として創業し、1944年に岩井証券を設立しました。2006年に東証一部および大証一部へ上場を果たします。2010年にはコスモ証券を完全子会社化し、持株会社体制へ移行して現社名に変更しました。2012年には傘下の岩井証券とコスモ証券が合併し、中核事業会社の岩井コスモ証券が発足しています。
現在のグループ従業員数は825名(連結)です。なお、持株会社単体には従業員はいません。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は大手都市銀行の関連銀行、第3位はエンジニアリング会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 6.22% |
| 株式会社りそな銀行 | 4.29% |
| トーターエンジニアリング株式会社 | 4.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役会長 CEOは沖津嘉昭氏、代表取締役社長 COOは笹川貴生氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 沖津 嘉昭 | 取締役会長 CEO(代表取締役) | 1984年岩井証券入社。社長を経て、岩井コスモ証券会長等を歴任。2016年より現職。 |
| 笹川 貴生 | 取締役社長 COO(代表取締役) | 2004年岩井証券入社。取締役業務本部長、岩井コスモ証券社長等を経て、2016年より現職。 |
| 松浦 康弘 | 取締役 | 1988年コスモ証券入社。岩井コスモ証券常務、営業本部長等を経て、2017年より現職。 |
社外取締役は、佐伯照道(北浜法律事務所・外国法共同事業ファウンダー・パートナー)、更家悠介(サラヤ社長)、井垣貴子(健康都市デザイン研究所社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「岩井コスモ証券株式会社」、「岩井コスモホールディングス株式会社」および「その他」事業を展開しています。
■岩井コスモ証券株式会社
同グループの中核事業であり、金融商品取引業を行っています。個人投資家などを顧客とし、対面営業やインターネットを通じた証券サービスを提供しています。
収益は、顧客からの株式等の委託手数料、トレーディング損益、投資信託の販売手数料や信託報酬などが主な柱です。運営は岩井コスモ証券が行っています。
■岩井コスモホールディングス株式会社
グループ全体の経営戦略の策定および推進、グループ会社の管理・監督を行っています。純粋持株会社としての機能を担います。
収益源は、グループ子会社からの受取配当金や経営指導料などです。運営は岩井コスモホールディングスが行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、証券等バックオフィス事業を展開しています。グループ内の事務処理などを効率化する役割を担います。
収益は、グループ会社からの業務受託に伴う手数料などが中心です。運営は岩井コスモビジネスサービスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2017年3月期から2021年3月期までの5期間を見ると、市場環境の影響を受けつつも底堅い業績で推移しています。特に2021年3月期は、コロナ禍における金融緩和や株高を追い風に、営業収益および利益面で大きく伸長しました。経常利益率は30%を超え、高い収益性を実現しています。
| 項目 | 2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 161億円 | 211億円 | 212億円 | 189億円 | 234億円 |
| 経常利益 | 19億円 | 55億円 | 59億円 | 42億円 | 75億円 |
| 利益率(%) | 11.9% | 25.9% | 27.9% | 22.4% | 32.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 33億円 | 47億円 | 41億円 | 27億円 | 54億円 |
■(2) 損益計算書
2020年3月期と2021年3月期を比較すると、営業収益、各利益段階ともに大幅な増加となりました。営業収益は前期の189億円から234億円へ増加し、営業利益も38億円から72億円へと倍近くに拡大しています。利益率も大幅に改善しており、好調な市況を捉えたビジネス展開が奏功しました。
| 項目 | 2020年3月期 | 2021年3月期 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 189億円 | 234億円 |
| 営業利益 | 38億円 | 72億円 |
| 営業利益率(%) | 20.1% | 30.7% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が86億円(構成比54%)、事務費が23億円(同14%)、取引関係費が22億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の岩井コスモ証券株式会社セグメントが、営業収益および利益の大半を稼ぎ出しています。2021年3月期は同セグメントの増収増益が連結業績を牽引しました。岩井コスモホールディングス株式会社セグメントは配当収入等が主であるため収益は安定的です。
| 区分 | 売上(2020年3月期) | 売上(2021年3月期) | 利益(2020年3月期) | 利益(2021年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 岩井コスモホールディングス株式会社 | 18億円 | 18億円 | 19億円 | 18億円 | 105.1% |
| 岩井コスモ証券株式会社 | 189億円 | 234億円 | 40億円 | 74億円 | 31.6% |
| その他 | 2億円 | 2億円 | 0億円 | -0.2億円 | -11.6% |
| 調整額 | -20億円 | -20億円 | -17億円 | -17億円 | - |
| 連結(合計) | 189億円 | 234億円 | 42億円 | 75億円 | 32.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
岩井コスモホールディングスでは、営業活動によるキャッシュ・フローは、顧客分別金信託や信用取引資産の増減が主な要因となり増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が主な要因となり減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いが主な要因となり減少しました。
| 項目 | 2020年3月期 | 2021年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 50億円 | 40億円 |
| 投資CF | -5億円 | -10億円 |
| 財務CF | -19億円 | -25億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、投資家の利便性を最優先とする「顧客第一主義」を基本方針として掲げています。個々の取引志向やリスク許容度に応じた最適な商品・サービスの提供を通じて、顧客との強固な信頼関係を構築することを目指しています。また、関西発の巨大証券の誕生を実現することを目標としています。
■(2) 企業文化
経営陣・管理職・一般社員が三位一体となった「全員参加型経営」の実践を重視しています。また、IT技術を活用しつつも顧客との接点を大切にする「進化した対面営業」を推進しており、リモート面談やWebセミナーの導入など、進取の精神を持って変化に対応する姿勢を持っています。法令遵守や倫理観の醸成にも注力しています。
■(3) 経営計画・目標
第4次中期経営計画では、顧客本位の業務運営を基盤とし、市場動向に左右されない強固な収益基盤の構築や生産性向上を目指しています。また、企業価値向上の一環として、自己資本に対する利益率を高めることを重要視しており、以下の数値目標を掲げています。
* 業界平均(主要証券16社平均値)を上回るROEと上位ランクの維持
* 固定費カバー率50%(安定収益の拡大)
* 海外金融商品(株式・債券・投信)の残高積み上げ(2022年3月末:4,000億円台)
* 総還元性向50%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
投資環境の変化に即した金融サービスの提供と強固な収益基盤の構築を重点施策としています。特に、ITリテラシーの高い人材の採用・育成やWeb会議システムの活用による「進化した対面営業」を推進しています。また、米国株式などの海外金融商品の提供強化や、投資信託残高の増大によるストック収入の獲得に注力しています。
* IT技術を活用した「進化した対面営業」の推進
* 海外金融商品(米国株等)の情報提供強化
* 投資信託残高の拡大による安定収益確保
* AIを活用したコンプライアンスチェックの導入
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、Web会議システムなどを活用した「進化した対面営業」を推進するため、ITリテラシーの高い人材の採用・育成を図っています。また、コンプライアンスの強化を重視し、継続的な研修やAIを活用した通話記録の解析データを用いた教育を行い、顧客本位の倫理観を持った従業員の育成に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社は純粋持株会社であり、従業員は在籍していないため(業務は子会社に委託)、平均年間給与等のデータはありません。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2021年3月期 | -歳 | -年 | - |
※同社は純粋持株会社であり、従業員はおりません。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 証券市場の変動リスク
主たる事業である金融商品取引業は経済状況の影響を受けやすく、株式市場における株価、出来高、売買代金等の動向によって収益が変動します。市場環境の悪化は、同社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制および自己資本規制
金融商品取引法等の法令や自主規制機関の諸規制を受けています。また、自己資本規制比率の適正維持(120%以上)が要求されており、この水準を維持できない場合は業務停止や登録取消し等の処分を受ける可能性があり、事業継続に影響を与えるリスクがあります。
■(3) システム障害および情報セキュリティ
火災、地震、プログラム障害等によるシステム停止や、サイバー攻撃、不正アクセスによる情報漏洩のリスクがあります。これらが発生した場合、顧客サービスの停止や損害賠償責任の発生、社会的信用の失墜を招き、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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