※本記事は、岩井コスモホールディングス株式会社の有価証券報告書(第87期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 岩井コスモホールディングスってどんな会社?
同社グループは、主に有価証券の売買や引受けなどの金融商品取引業を展開する独立系証券グループです。
■(1) 会社概要
1915年に株式現物業として岩井商店を創業し、1944年に岩井証券を設立しました。2006年の東京証券取引所市場第一部上場を経て、2010年にコスモ証券を完全子会社化し、持株会社体制へ移行して現在の社名に変更しました。2012年には子会社2社が合併して岩井コスモ証券が誕生しています。
従業員数は連結で848名です。筆頭株主は資産管理業務などを行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位はりそな銀行、第3位はトーターエンジニアリングです。創業から続く独立系の強みを活かしながら、持続的な企業価値の向上と顧客基盤の強化に向けた取り組みを推進しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.11% |
| りそな銀行 | 4.29% |
| トーターエンジニアリング | 4.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役会長 CEOを沖津嘉昭氏、代表取締役社長 COOを笹川貴生氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 沖津嘉昭 | 取締役会長 CEO(代表取締役) | 1984年岩井証券(現同社)入社。同社常務、専務を経て、1995年代表取締役社長に就任。2016年より現職。 |
| 笹川貴生 | 取締役社長 COO(代表取締役) | 2004年岩井証券(現同社)入社。同社取締役、岩井コスモ証券専務等を経て、2016年より現職。 |
| 松浦康弘 | 取締役 | 1988年コスモ証券(現岩井コスモ証券)入社。同社取締役、常務を経て、2017年より現職。 |
| 菅野欣也 | 取締役 | 1987年コスモ証券(現岩井コスモ証券)入社。同社取締役、常務を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、更家悠介氏(サラヤ代表取締役社長)、井垣貴子氏(健康都市デザイン研究所代表取締役社長)、武智順子氏(弁護士法人御堂筋法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「岩井コスモホールディングス」「岩井コスモ証券」および「その他」事業を展開しています。
岩井コスモホールディングス
同社グループの純粋持株会社として、グループ全体の経営戦略の策定や業務執行の監督を行っています。各グループ会社の経営状況を把握し、適正な経営資源の配分を行うことで、持続的な企業価値の向上を推進しています。
主にグループ会社からの経営指導料や配当金などを収益源としています。事業運営は岩井コスモホールディングスが担い、グループ全体のガバナンス強化やリスク管理体制の構築、資本効率を意識した経営を牽引しています。
岩井コスモ証券
個人および法人顧客に対し、株式や債券、投資信託などの金融商品の売買、委託の媒介、有価証券の引受けなど、幅広い金融サービスを提供しています。対面取引に加え、インターネット取引(コスモ・ネットレ)も展開しています。
顧客からの委託手数料、有価証券の引受け・売出し等の手数料、投資信託の販売手数料および信託報酬などを主な収益源としています。中核事業として岩井コスモ証券が運営を担い、資産運用ニーズに応えています。
その他
金融商品取引業を補完する事業として、証券等バックオフィス事業を展開しています。グループ内の間接業務を集約し、業務の効率化と専門性の向上を図ることで、証券ビジネスの円滑な運営を後方から支援しています。
グループ内の各企業から受領する事務委託費やサービス提供料などを収益源としています。事業運営は岩井コスモビジネスサービスが担い、グループ全体の生産性向上とコスト競争力の強化に貢献しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、経常利益および当期利益は変動を伴いながらも着実な成長を遂げています。特に直近の2026年3月期は、株式市場の活況を背景に手数料収入やトレーディング損益が大幅に増加し、経常利益が136億円、当期利益が54億円と過去最高益を記録して飛躍的な伸びを示しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 58億円 | 52億円 | 80億円 | 92億円 | 136億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 28億円 | 20億円 | 20億円 | 30億円 | 54億円 |
■(2) 損益計算書
営業利益は前期の86億円から当期は130億円へと大きく拡大しました。国内外の株価上昇に伴い、米国株式を中心とする提案営業が好調に推移し、委託手数料やトレーディング収益が大幅に増加したことが利益の押し上げに寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 86億円 | 130億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
■(3) セグメント収益
主力の岩井コスモ証券は、米国株式の提案営業や投資信託の販売に注力し、委託手数料が順調に増加して大幅な増収となりました。岩井コスモホールディングスも配当金収入等の増加により増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 岩井コスモホールディングス | - | 0.1億円 |
| 岩井コスモ証券 | 257億円 | 322億円 |
| その他 | 0.1億円 | 0.2億円 |
| 連結(合計) | 258億円 | 323億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 23億円 |
| 投資CF | -7億円 | -7億円 |
| 財務CF | -28億円 | -44億円 |
営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスであることから、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型と言えます。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.9%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客様にご満足いただける金融サービスの提供を通じて、国民経済の発展に貢献する」という経営理念を掲げています。すべてのステークホルダーから信頼され、発展し続ける企業を目指すとともに、持続可能な社会の実現に寄与する企業グループとなることを使命としています。
■(2) 企業文化
お客様の最善の利益を最優先とする「顧客第一主義」を基本方針としています。また、経営陣、管理職、一般社員が三位一体となった「全員参加型経営」を実践し、個々の取引志向やリスク許容度に応じた最適な商品・サービスの提供を通じて、お客様との強固な信頼関係の構築を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期を起点とする第6次中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)において、競争力強化に向けた各重点施策と数値目標を策定しています。
* 株主資本の有効活用により業界上位のROEを維持
* 総還元性向50%以上
* 固定費カバー率50%以上(最終年度)
* 預り資産3兆円(最終年度)
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な企業価値の向上を実現するため、顧客本位の業務運営を基盤とし、ITを活用した顧客基盤の強化を推進しています。生成AIなどを備えたグループウェアの導入や、タブレット端末へのAI機能実装による営業活動の効率化など、DX推進による生産性向上とサービス高度化に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
最も重要な経営資源を「人」と捉え、多様化するニーズに的確に応える金融のプロフェッショナル人材の育成に注力しています。職階に応じた階層別研修や若手向けの教育支援制度を導入し、自律型人材の輩出と次世代リーダーの育成を加速させるとともに、柔軟な働き方の推進による多様な人材の活躍を支援しています。
■(2) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.8% |
| 男性育児休業取得率 | 43.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 78.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 82.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 株式や金利等の市況変動リスク
同社の主たる事業である金融商品取引業は、国内外の経済情勢の影響を受けやすく、株式、金利、為替市況などの動向によっては、収益が減少し、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 金融商品取引業における法的規制の対応
金融商品取引法等の法令や、自主規制機関の諸規則による規制を受けています。自己資本規制比率の適正維持(120%以上)が要求されており、基準を満たせない場合は業務停止などの行政処分を受ける可能性があります。
(3) 資金調達に係る流動性リスク
同社グループの財務内容の悪化などにより、資金調達が困難となるほか、高い金利での資金調達を余儀なくされる場合、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 取引先の債務不履行による信用リスク
取引先が決済を含む債務不履行に陥った場合や、保有する有価証券の発行体の信用状況が著しく悪化した場合には、元本の毀損や利払いの遅延などにより損失を被る可能性があります。



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