建設技術研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

建設技術研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

建設技術研究所は東京証券取引所プライム市場に上場し、河川や道路等の公共・民間事業における社会資本整備の建設コンサルタント業を主力とする企業です。国内及び海外で総合コンサルティングを展開しています。直近の業績は、防災・減災関連の受注が堅調で増収となった一方、海外事業の稼働率低下等の影響を受け減益となりました。


※本記事は、株式会社建設技術研究所の有価証券報告書(第63期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年4月7日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 建設技術研究所ってどんな会社?


同社は河川や道路等のインフラ整備に関わる建設コンサルタント業を国内外で展開する専門技術者集団です。

(1) 会社概要


1945年に財団法人として創立され、1963年に株式会社化して建設コンサルタント業を開始しました。1996年に東証二部へ上場し、1999年に一部へ指定替えを果たしています。1999年に海外部門を分離して子会社を設立し、2017年には英国企業を完全子会社化するなどグローバル展開を加速しています。

現在の従業員数は連結で4,087名、単体で2,263名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は有限会社光パワー、第3位には自社の従業員持株会が名を連ねており、機関投資家や従業員等の多様な主体が安定的な株主基盤を構成しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.30%
有限会社光パワー 10.10%
建設技術研究所従業員持株会 7.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長執行役員は西村達也氏が務めており、社外取締役比率は26.7%(15名中4名)です。

氏名 役職 主な経歴
中村 哲己 代表取締役会長 1979年に同社へ入社。東京本社河川部長、東北支社長、九州支社長等を歴任し、2013年に取締役に就任。常務、専務、代表取締役社長執行役員を経て、2024年より現職。建設コンサルタンツ協会会長も務める。
西村 達也 代表取締役社長執行役員 1985年に同社へ入社。東京本社河川部長、東北支社長等を歴任。2015年に執行役員となり、2019年に取締役専務執行役員に就任。企画・営業本部長等を経て、2024年より現職。
鈴木 直人 取締役専務執行役員 企画・営業本部長 1991年に同社へ入社。大阪本社営業部長などを経て、2017年に執行役員兼人事部長に就任。2020年に取締役管理本部長となり、2024年より現職。
藤原 直樹 取締役常務執行役員 1989年に同社へ入社。国際部長等を経て、2017年に英国Waterman Group Plc取締役に就任。2021年に常務執行役員、2023年に取締役に就任。建設技研インターナショナル代表取締役社長。
松岡 利一 取締役常務執行役員 管理本部長 1999年に同社へ入社。中国支社長、大阪本社次長等を経て、2019年に管理本部副本部長兼総務部長に就任。2022年に常務執行役員となり、2024年より現職。
江守 昌弘 取締役常務執行役員 東京本社長 1988年に同社へ入社。東京本社交通システム部長等を経て、2021年に常務執行役員に就任。中部支社長、大阪本社長を歴任し、2025年より現職。
天野 光歩 取締役常務執行役員 技術本部長 1991年に同社へ入社。東京本社河川部長等を経て、2019年に執行役員に就任。2021年に常務執行役員となり、東北支社長、東京本社長を歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、小棹ふみ子(小棹ふみ子税理士事務所)、園部芳久(帝人元代表取締役)、小笠原敦子(毎日新聞社元大阪本社副代表)、桑野徹(TIS取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内建設コンサルティング事業」および「海外建設コンサルティング事業」を展開しています。

国内建設コンサルティング事業


河川、道路、環境、情報などの公共事業及び民間事業の社会資本整備に関する企画、調査、計画、設計、発注者支援、施工管理などの総合コンサルティング業務を提供しています。国土強靱化推進に伴う防災・減災対策やインフラ老朽化対策のニーズに応え、国や地方自治体等を主な顧客としています。

顧客との契約に基づく業務の進行度合いに応じたコンサルティング料や役務提供の対価が主な収益源です。運営は主に同社および子会社である広建コンサルタンツ、日本都市技術、地圏総合コンサルタント、日総建、環境総合リサーチなどがそれぞれの専門領域を分担して行っています。

海外建設コンサルティング事業


海外におけるプロジェクトの発掘からマスタープランの策定、調査、設計、施工管理など、建設プロジェクト全般にわたる総合コンサルティング事業を展開しています。また、構造・設備設計を含むビルディング関連事業や技術者派遣事業も手がけ、各国の公的機関や民間企業を顧客としています。

コンサルティング料や技術者派遣に伴うサービス対価が収益源です。総合コンサルティング事業は同社および建設技研インターナショナル、英国のWaterman Group Plcが担い、ビルディング関連事業はWaterman Group Plc等が、技術者派遣事業はWaterman Aspen Limitedが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が744億円から1,010億円へと継続的に拡大しており、堅調な成長を見せています。一方、経常利益は102億円をピークに直近では94億円となっており、先行投資や海外事業の環境変化等により利益率は9%台で推移しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 744億円 835億円 931億円 977億円 1,010億円
経常利益 71億円 82億円 102億円 95億円 94億円
利益率(%) 9.6% 9.9% 10.9% 9.8% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 39億円 52億円 67億円 65億円 60億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増収を達成し、売上総利益も増加していますが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は微減となりました。売上総利益率は29%台で安定的に推移しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 977億円 1,010億円
売上総利益 284億円 296億円
売上総利益率(%) 29.1% 29.3%
営業利益 94億円 91億円
営業利益率(%) 9.6% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が68億円(構成比33%)、委託費が20億円(同10%)、研究調査費が15億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内建設コンサルティング事業は、国の防災・減災対策予算を背景に受注が堅調で増収となりましたが、一部子会社の計画未達により利益は横ばいとなりました。海外建設コンサルティング事業は増収となったものの、大型案件の契約遅れや英国のインフレ高止まり等の影響で減益となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
国内建設コンサルティング事業 669億円 697億円 86億円 86億円 12.3%
海外建設コンサルティング事業 307億円 313億円 8億円 5億円 1.7%
連結(合計) 977億円 1,010億円 94億円 91億円 9.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金で投資を行い、さらに借入金の返済や株主還元も進める「健全型」の推移を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 24億円 58億円
投資CF -57億円 -6億円
財務CF -21億円 -51億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均をわずかに下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.1%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「世界に誇れる技術と英知で、安全で潤いのある豊かな社会づくりに挑戦する」という経営理念を掲げています。この理念のもと、「未来につづく安全・安心を」というブランドフレーズを掲げ、災害への備えや地球環境問題への対応、持続可能な社会の形成に貢献していくことを使命として事業を展開しています。

(2) 企業文化


「誠実」と「技術」をキーワードとする企業文化の下で、社会的使命を果たすことを重視しています。また、同社の行動原則である「行動憲章」では、「人を大切にする企業活動の推進と企業文化の醸成」を掲げ、多様な人材が活躍でき、全ての人の人権を尊重する姿勢を明記しています。

(3) 経営計画・目標


中長期ビジョン「SPRONG2030」に基づき、「グローバルインフラソリューショングループ」への飛躍を目指しています。中期経営計画2027および長期目標として、以下の数値目標を掲げています。

* 2026年12月期:売上高1,050億円、営業利益105億円
* 2027年12月期:売上高1,100億円、営業利益120億円、ROE12%
* 2030年12月期:売上高1,300億円、営業利益150億円、ROE12%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画2027において、「事業ポートフォリオの変革」と「成長基盤の再構築」の2本柱を基本方針としています。コア事業の競争力強化と成長分野の基盤強化、新規事業領域の探索に加え、海外事業の収益性向上を図ります。また、人材育成の強化やDX・AIの活用による生産性向上、サステナブルチャレンジの推進を通じて、経営基盤の確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「最大の経営資本は「人」である」という認識のもと、人材の確保・育成・活性化を最重要課題としています。「ウェルビーイング基本方針」を定め、心身ともに健康な状態の形成、多様な働き方を受け入れるワークライフバランスの充実を推進しています。また、年功序列から役割・職責を重視する人事制度への転換を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.2歳 12.3年 9,701,719円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 52.4%
男女賃金差異(正規雇用) 56.9%
男女賃金差異(パート・有期) 52.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年間総労働時間(2,105時間)、エンゲージメントスコア(56.3)、社員離職率(4.0%)、研修時間(40.5時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境と技術革新への対応


同社グループの受注は公共事業に大きく依存しているため、政策や予算の動向が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、AI等の技術革新により事業環境が大きく変化するリスクがあり、新技術の開発・導入やDX推進による競争力強化、民間市場への展開など事業領域の拡大に取り組んでいます。

(2) 気候変動・自然災害への対応遅れ


大規模な地震、台風、豪雨等の自然災害や感染症の発生により、正常な事業活動が困難となるリスクや、プロジェクトの中断、発注遅延が生じる可能性があります。事業継続計画(BCP)の策定や定期的な見直しを行うとともに、気候変動対応策に関連する事業展開を通じてリスク低減と機会の創出に努めています。

(3) 人材の確保と育成の遅滞


高度な専門性や公的資格を有する人材が最大の経営資源であり、必要な人材を確保・育成できない場合や、優秀な人材が流出した場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。継続的な採用活動に加え、多様な働き方に対応する制度の充実、社員のキャリアアップに資する各種研修等の教育投資を積極的に行っています。

(4) 品質および安全管理の不備


公益性の高い業務を行っているため、成果品に契約不適合箇所があった場合や安全管理不足による重大事故が生じた場合、社会的信用の失墜や損害賠償等が発生するリスクがあります。「技術リスクガイドライン」の運用による品質管理の徹底や社内照査体制の構築、安全管理教育等によりリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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