ラクーンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラクーンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラクーンホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、BtoB向けのECサイト「スーパーデリバリー」や、決済代行・売掛保証のフィナンシャル事業を展開しています。直近の業績は売上高65.7億円で前期比増収、営業利益は13.2億円で増益となる一方、投資等の影響で経常利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社ラクーンホールディングスの有価証券報告書(第30期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ラクーンホールディングスってどんな会社?


同社は企業間取引を効率化するBtoB向けEC事業とフィナンシャル事業を展開しています。

(1) 会社概要


1993年9月に個人事業として創業し、1995年に有限会社ラクーントレイドサービスを設立、1996年にラクーンへ組織変更しました。2002年にBtoBサイト「スーパーデリバリー」を開設し、2006年に東証マザーズへ上場しています。2011年に「Paid」、2016年に「URIHO」の提供を開始し、2018年に会社分割を実施して現在の持株会社体制へ移行しました。

従業員数は連結で243名、単体で105名です。筆頭株主は創業者の小方功氏で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
小方 功 14.92%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.89%
日本カストディ銀行(信託E口) 5.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は小方功氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
小方 功 代表取締役社長 1988年パシフィックコンサルタンツ入社。1993年ラクーントレイドサービス創業。1995年設立し取締役社長。1996年組織変更し代表取締役社長。2018年より現職。
今野 智 取締役財務担当副社長兼経営管理本部長 1994年朝日監査法人入所。1998年公認会計士登録。2000年入社。2003年取締役副社長兼財務経理部長等を経て、2018年より現職。
田邨 知浩 取締役技術担当副社長 2000年システムハウス.アイエヌジー入社。2008年入社。2013年技術戦略部長。2018年取締役。2023年より現職。
大久保 柳華 取締役 2007年バスコス入社。2009年入社し社長室。2012年社長室広報チーム等を経て、2021年取締役。2026年より現職。
林 藤吉郎 取締役(監査等委員) 1996年ジャパンスリーブ入社。2005年入社。2006年セールスマネージメント部チームリーダー。2017年監査役。2018年より現職。


社外取締役は、中垣徹二郎(Theta Times Partners代表取締役)、小宮山澄枝(小宮山澄枝法律事務所所長)、福田素裕(福田素裕公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「EC事業」「フィナンシャル事業」および「その他」事業を展開しています。

EC事業


アパレル・雑貨を取り扱う企業間取引(BtoB)サイト「スーパーデリバリー」を運営しています。中小規模の小売店や国内に受取拠点を持つ海外事業者などに対し、メーカーからの直接仕入れを安心かつ効率的に行えるプラットフォームを提供しています。

会員小売店からは利用プランに応じた月会費を、出展企業からは流通額に応じたシステム利用料を徴収する収益モデルです。運営はラクーンコマースが行っています。

フィナンシャル事業


BtoB後払い決済サービス「Paid(ペイド)」およびオンライン完結型の売掛保証サービス「URIHO(ウリホ)」を提供しています。企業間取引における与信管理から代金回収までの代行や、未回収時の支払いを保証することで、安心して取引を拡大できる環境を構築しています。

Paidは加盟企業から取扱高に応じた保証料を、URIHOは販売側企業から定額の月会費を徴収する収益モデルです。運営はラクーンフィナンシャルが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、順調に事業を拡大しています。経常利益率は年度によって変動があり、直近では18.9%となりました。当期利益についても年度ごとのばらつきが見られますが、安定的に黒字を確保しています。

項目 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期 2026年4月期
売上高 48億円 53億円 58億円 61億円 66億円
経常利益 11億円 12億円 5億円 14億円 12億円
利益率(%) 23.7% 23.0% 9.2% 22.9% 18.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 10億円 3億円 2億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に伸びており、80%台の高い売上総利益率を維持しています。営業利益も前年から増加しており、安定した本業の稼ぐ力を示しています。

項目 2025年4月期 2026年4月期
売上高 61億円 66億円
売上総利益 49億円 55億円
売上総利益率(%) 80.9% 83.2%
営業利益 13億円 13億円
営業利益率(%) 20.6% 20.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が12億円(構成比28%)、広告宣伝費が8億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


EC事業は戦略的な広告投資による新規会員登録数の増加や、ポイント付与施策による購入単価の向上により増収となりました。フィナンシャル事業も、Paidの取扱高成長やURIHOの保証残高増加により増収を果たしています。

区分 売上(2025年4月期) 売上(2026年4月期)
EC事業 36億円 39億円
フィナンシャル事業 25億円 27億円
連結(合計) 61億円 66億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状況です。

項目 2025年4月期 2026年4月期
営業CF 10億円 7億円
投資CF -3億円 -3億円
財務CF -10億円 5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は21.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「企業活動を効率化し便利にする」という経営理念を掲げ、長く続いてきた古い商習慣により非効率となっていた中小企業間の取引に対し、新しい価値を創出し進化させたサービスを提供することで企業価値を向上させていくことを方針としています。

(2) 企業文化


「一人ひとりの個性に着目し、多様な個性を活かし合う」組織こそが変化に強く、持続的な成長に重要であると考えており、多様なバックグラウンドを持つ従業員が違いを認め合い、お互いの意見を尊重しながらともに働く文化があります。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2027年4月期~2029年4月期)において、最終年度である2029年4月期に以下の目標を掲げています。

- 売上高 103億円
- 営業利益 20億円
- 営業利益率 19.4%
- ROE 25.0%

(4) 成長戦略と重点施策


長期ビジョンとして「ラクーンBtoBネットワーク」構想を掲げています。各サービスの顧客をグループ共通顧客と捉え直し、サービス間の連携強化や与信の付与、クロスセルを誘発することで顧客単価とLTVの最大化を図ります。既存サービスの成長加速やM&A等を通じたインオーガニックな成長にも取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本を最も重要な資本と捉え、マテリアリティとして「多様な個の能力が最大限発揮できる場の提供」を掲げています。開発人員の増強やITリテラシー・AI活用スキルの向上を図るほか、階層別研修や資格取得支援を通じて自律的な成長を支援し、リモートワークやフレックス制度の導入など働きやすい環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年4月期 34.4歳 7.6年 6,700,009円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 87.1%
男女賃金差異(正規雇用) 89.6%
男女賃金差異(パート・有期) 74.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) フィナンシャル事業における与信リスク


売掛保証事業において、景気動向の悪化により想定を超える保証履行が発生した場合、保証履行関連費用が増加し、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 新たな法的規制や解釈変更のリスク


EC事業でのブランド品・医薬部外品等の取扱いや、フィナンシャル事業における業法等の法規制が強化された場合、事業遂行に支障をきたす可能性があります。

(3) 優秀なエンジニアの獲得・育成


顧客ニーズに応じたシステムを提供するため優秀なエンジニアの確保が重要ですが、人材獲得競争の激化により確保が困難になった場合、システム開発の遅延を招く可能性があります。

(4) システム障害と情報漏洩リスク


事業の多くが通信ネットワークに依存しており、システム障害やサイバー攻撃、また個人情報などの取引先情報が流出した場合、事業の継続や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。