※本記事は、株式会社ラクーンホールディングスの有価証券報告書(第29期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ラクーンホールディングスってどんな会社?
同社グループは、「企業活動を効率化し便利にする」を理念に、アパレル・雑貨のBtoB-ECサイト運営や決済・保証サービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1993年に個人事業として創業し、2002年にBtoBサイト「スーパーデリバリー」を開設しました。2006年にマザーズへ上場し、2011年に決済サービス「Paid」、2016年に売掛保証「URIHO」を開始しました。2018年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。
連結従業員数は224名(単体99名)です。筆頭株主は創業者の小方功氏で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。経営陣と機関投資家が主な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小方 功 | 22.30% |
| STATE STREET BANK AND TRUSTCOMPANY 505227 | 8.50% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は小方功氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小方 功 | 代表取締役社長 | 1993年ラクーントレイドサービス創業。1995年有限会社化に伴い社長就任。2015年より現職。 |
| 今野 智 | 取締役財務担当副社長兼経営管理本部長 | 公認会計士。2000年同社入社。管理部門を統括し、2023年より現職。 |
| 田邨 知浩 | 取締役技術担当副社長 | 2008年同社入社。技術戦略部長、デザイン戦略部長を経て、2023年より現職。 |
| 阿部 智樹 | 取締役 | 2001年同社入社。事業企画部長、社長室長等を歴任。グループ会社取締役を経て2025年より現職。 |
| 大久保 柳華 | 取締役 | 2009年同社入社。広報、プロモーションチームを経て2021年より現職。 |
| 林 藤吉郎 | 取締役(監査等委員) | 2005年同社入社。管理部総務人事チーム等を経て2018年より現職。 |
社外取締役は、多喜田二郎(元スタイリングライフ・ホールディングス取締役)、小宮山澄枝(法律事務所所長)、福田素裕(公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「EC事業」、「フィナンシャル事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) EC事業
アパレルおよび雑貨を取り扱う企業間取引(BtoB)サイト「スーパーデリバリー」を運営しています。メーカーと中小規模の小売店・事業者を繋ぐプラットフォームで、国内向けおよび海外向け(SD export)のサービスを提供し、効率的な卸・仕入れを支援しています。
収益は、会員小売店からの月会費および出展企業からのシステム利用料等から構成されています。運営は主に連結子会社の株式会社ラクーンコマースが行っています。
■(2) フィナンシャル事業
企業間取引における決済代行サービス「Paid」および売掛保証サービス「URIHO」を提供しています。「Paid」は請求から回収までの業務を代行し、「URIHO」は取引先の未回収リスクを保証するサブスクリプション型のサービスです。
収益は、「Paid」における加盟企業からの保証料や、「URIHO」における月会費等から構成されています。運営は主に連結子会社の株式会社ラクーンフィナンシャルが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、2024年4月期に一時的な落ち込みが見られましたが、2025年4月期にはV字回復し、高い利益率を確保しています。
| 項目 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 44億円 | 48億円 | 53億円 | 58億円 | 61億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 11億円 | 12億円 | 5億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 27.9% | 23.7% | 23.0% | 9.2% | 22.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 4億円 | 7億円 | 3億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、利益率も改善しています。前期と比較して売上原価率が低下したことや、広告宣伝費の抑制などにより、営業利益および営業利益率が大きく向上しました。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 58億円 | 61億円 |
| 売上総利益 | 46億円 | 49億円 |
| 売上総利益率(%) | 79.4% | 80.9% |
| 営業利益 | 6億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 9.8% | 20.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が11億円(構成比29%)、広告宣伝費が7億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
EC事業は購入客数の増加や海外流通額の伸長により増収となりました。フィナンシャル事業も取扱高や保証残高の積み上げにより増収を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年4月期) | 売上(2025年4月期) |
|---|---|---|
| EC事業 | 33億円 | 36億円 |
| フィナンシャル事業 | 25億円 | 25億円 |
| 連結(合計) | 58億円 | 61億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で得た資金で投資や借入返済を行っている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | 10億円 |
| 投資CF | -5億円 | -3億円 |
| 財務CF | -10億円 | -10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「企業活動を効率化し便利にする」を経営理念に掲げています。長く続いてきた古い商習慣により非効率となっていた中小企業間の取引に対し、新しい価値を創出し進化させたサービスを提供することで、企業価値を向上させていくことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念に基づき、常に事業相互間でのシナジー効果やリソースの共有を意識した事業展開を行うことを基本方針としています。顧客や業界を深く理解した上でITを活用したサービスを提供することを強みとし、変化するビジネス環境において、企業間取引の新しいインフラとなることを志向しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、全ての事業の売上成長とともに、高い限界利益率を背景とした成長投資と営業利益率の向上を目指しています。2025年6月に公表した中期経営計画(2026年4月期~2028年4月期)においては、以下の数値を目標として掲げています。
* 最終年度営業利益率:25.7%
* 最終年度ROE:25.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
「ラクーンBtoBネットワーク」構想を長期ビジョンに掲げ、各サービスの顧客をグループ顧客と捉え直すことで連携を強化し、クロスセル促進やLTV向上を図る方針です。また、システム開発体制への投資によるリソース確保や、AIを活用したパーソナライズ化、海外流通額の拡大などを重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を事業運営における最重要資本と捉え、「多様な個の能力が最大限発揮できる場の提供」を掲げています。エンジニアのスキルアップ支援やITリテラシー向上に取り組むほか、ダイバーシティの推進、リモートワークやフレックス制度の導入など、働きやすい環境整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月期 | 34.9歳 | 7.7年 | 6,703,767円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 84.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 90.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 134.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) フィナンシャル事業の与信リスク
売掛保証サービスにおいて、景気変動等により保証先企業の経営状況が悪化し、想定以上の保証履行が発生した場合、同社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。これに対し、審査基準の随時見直しや再保険契約の活用によりリスクコントロールを行っています。
■(2) 景気動向及び事業環境の変化
同社グループは企業間取引に関連するサービスを提供しているため、国内外の経済情勢や景気動向の影響を受けます。BtoB-EC市場の成長鈍化や、利用企業の経営状況悪化、市場環境の急激な変化が生じた場合、事業成長が阻害される可能性があります。
■(3) 競合との競争激化
同社グループが提供する各サービスと同様のサービスを提供する競合他社が存在します。ユーザビリティの向上や独自の商品構成等で差別化を図っていますが、競争が激化した場合には、事業および業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 法的規制への対応
取扱商品やサービスに関連して、特定商取引法、古物営業法、医薬品医療機器等法などの法的規制を受けます。将来的な規制強化や新たな法律の制定、現行法の解釈変更等があった場合、事業遂行に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。



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