※本記事は、アゼアス株式会社の有価証券報告書(第85期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アゼアスってどんな会社?
アゼアスは防護服・環境資機材、ヘルスケア製品、ライフマテリアルを主要事業として展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1947年に千代田屋として設立されました。1975年にデュポン製化学防護服の製造販売を開始し、現在の主力事業の基盤を築きました。1998年にニチウラと合併してニチウラ千代田屋に商号変更し、2004年に現在のアゼアスへと社名を変更しました。その後も事業拠点の拡大や関連会社の設立などを進めています。
現在の従業員数は連結で148名、単体で127名体制となっています。筆頭株主は事業会社のAsahichoで、第2位は鈴木貴久子氏、第3位は役員の鈴木一裕氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Asahicho | 7.90% |
| 鈴木貴久子 | 5.49% |
| 鈴木一裕 | 2.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は斉藤文明氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 斉藤文明 | 代表取締役社長 | 1994年ワークマン入社、2003年同社入社。第一事業部セグメント部部長などを経て2019年5月より現職。日本防護服協議会理事長を兼任。 |
| 鈴木一裕 | 取締役執行役員管理本部長 | 2003年フロイント産業入社、2006年同社入社。総務部部長や丸幸代表取締役社長等を経て2025年7月より現職。 |
| 関谷純樹 | 取締役執行役員営業本部長 | 1990年フルサト工業入社、1999年同社入社。防護服・環境資機材事業部の部長等を経て2025年7月より現職。 |
社外取締役は、町田智子(元朝日新聞社上席執行役員)、池田文雄(元日本国土開発常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、防護服・環境資機材、ヘルスケア製品、ライフマテリアルおよびその他事業を展開しています。
■防護服・環境資機材事業
デュポン製化学防護服やアスベスト処理用資機材を中心に販売し、作業環境に応じた適切な防護服や安全保護具を提案しています。感染症対策、放射性粉塵対策、アスベスト対策、ダイオキシン対策など、様々な危険因子から作業者を守る製品を官公庁、病院、企業等に提供しています。
海外製の化学防護服の輸入販売のほか、自社工場で不織布素材製のオリジナル防護服を製造販売しています。製品は主に全国の販売店を通じてエンドユーザーに販売されており、使い切り製品として継続的な販売が見込める収益モデルです。運営は同社が行っています。
■ヘルスケア製品事業
自社工場で不織布マスクを製造するほか、医療機関等で使用されるアイソレーションガウンや医療用サージカルマスクを展開しています。ドラッグストア等の一般消費者向けや、病院、介護施設、製薬メーカー、半導体製造工場等、主に業務用途で使用する企業が主要顧客です。
製品の販売による収益が柱となっています。受託製造したマスクは関連会社であるメディケア・ジャパンを通じて流通業者へ販売し、自社ブランドマスクは同社が直接企業等に向けて販売しています。
■ライフマテリアル事業
アパレル資材分野として裏地や芯地などの繊維副資材の製造販売を行うほか、機能性建材分野として畳関連資材や機能性織物シートなどの販売を行っています。ユニフォーム関連や学生服、カジュアル関連の商材を取り扱っています。
資材の製造・販売を通じた収益が柱です。アパレル資材分野では原反の型カット等の加工を施すことで付加価値を高め、取引先のニーズに対応しています。運営は同社が行っています。
■その他事業
中国やベトナムなどの海外拠点において、日中連携のもとで繊維副資材の製造および販売を行っています。取引先の製造拠点が東南アジアへ拡大していることに対応し、サプライチェーンの多様化を図っています。
現地におけるアパレル資材の調達や供給を通じて収益を獲得しています。運営は、中国子会社の阿茲阿斯(大連)紡織服飾、大連保税区日里貿易、およびベトナム子会社のAZEARTH VIETNAMが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は減少傾向にありましたが直近で増加に転じています。経常利益は変動しつつも近年は2億円台で推移しており、直近の当期利益は特別利益の計上などにより大きく増加しています。
| 項目 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 95.5億円 | 90.8億円 | 82.4億円 | 80.3億円 | 82.9億円 |
| 経常利益 | 4.1億円 | 5.6億円 | 3.1億円 | 2.2億円 | 2.1億円 |
| 利益率(%) | 4.3% | 6.2% | 3.7% | 2.7% | 2.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.3億円 | 3.6億円 | 2.1億円 | 1.3億円 | 6.1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期から増加し80億円台を維持しています。売上総利益も増加しましたが、利益率は微減となりました。営業利益は前期と同水準を保っています。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 80.3億円 | 82.9億円 |
| 売上総利益 | 16.9億円 | 17.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.1% | 20.7% |
| 営業利益 | 1.9億円 | 1.9億円 |
| 営業利益率(%) | 2.4% | 2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5.7億円(構成比37%)、支払手数料が1.9億円(同12%)、荷造運賃が1.2億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力の防護服・環境資機材およびライフマテリアルが堅調に推移し、ヘルスケア製品は大幅な増収となりました。一方でその他事業の売上は減少しています。
| 区分 | 売上(2025年4月期) | 売上(2026年4月期) |
|---|---|---|
| 防護服・環境資機材 | 46.3億円 | 48.0億円 |
| ヘルスケア製品 | 2.7億円 | 3.9億円 |
| ライフマテリアル | 28.1億円 | 28.7億円 |
| その他 | 3.1億円 | 2.3億円 |
| 連結(合計) | 80.3億円 | 82.9億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはマイナス、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなっており、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な末期型の状態です。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.7億円 | -0.3億円 |
| 投資CF | -1.7億円 | -2.7億円 |
| 財務CF | -2.5億円 | -2.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「安全・防護システムで人と環境を守る」を社会的ミッションとして掲げています。また、個人防護と環境保全のトータルソリューションサプライヤーとしての取り組みを通じて、「地球の環境と安全に貢献できる、存在感のある企業グループ」を目指すことを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、コーポレートスローガン「地球のこと総て、その環境と安全に挑戦する。The Challenge for the Earth:“Environment & Safety”」を掲げています。社会的課題の解決につながる商品の展開や社会的責任を果たす取り組みを通じ、SDGsを意識した経営を推進する価値観を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、新たな中期経営計画「Next Stage 実行計画2026」(2026年5月~2029年4月)を策定しています。資産効率の向上や株主資本の有効利用がすべてのステークホルダーの利益に合致すると考え、「総資産経常利益率(ROA)」および「株主資本利益率(ROE)」を重要な経営指標として位置付け、経営管理を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「人と環境を守る」事業を強化し、化学防護服市場の知見を活かして事業領域の拡大を図ります。個人用保護具と環境設備機器を組み合わせたソリューションビジネスの強化や産学連携による製品開発に注力します。また、自社ブランドの強化とDXの推進により顧客の課題解決力を高めるとともに、人的資本の最大化に向けた投資や環境整備を進めていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、メーカー機能の強化と収益構造改革を実現するため、人材投資を不可欠と位置付けています。若手社員の早期戦力化に向けた新人事制度の導入や、成果と職責が反映される報酬制度への改正、ベテラン社員による後進の育成促進を目的とした定年再雇用制度の見直しなど、人的資本経営の継続的な高度化に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月期 | 48.3歳 | 14.5年 | 5,101,363円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 71.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 47.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、指名研修における対象者受講率(100.0%)、通信教育・eラーニング受講率(50.0%)、一般定期健康診断受診率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特需による業績変動リスク
環境や安全に関わる問題(新型コロナウイルス感染症、豚熱や鳥インフルエンザなどの衛生問題、アスベスト問題等)の発生や関心の高まりにより、特定の事業年度において防護服等の売上および利益が急増し、翌年度にはその反動が生じる可能性があります。
■(2) 中国のカントリーリスク
各事業で中国に仕入先を有しており、特に防護服・環境資機材事業では外注加工委託先が重要な位置付けにあります。中国の情勢変化や政情不安、ロックダウン等の不測の事態が発生した場合、仕入価格の上昇や子会社の運営など、事業体制に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 製品及び商品に対する賠償責任
同社は製品の欠陥による製造物責任訴訟に備えて保険に加入していますが、賠償負担を無制限に担保するものではありません。製造物責任に関わる多額の負担金の支払いなどが発生した場合、同社の財政状態および経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。



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