※本記事は、アゼアス株式会社 の有価証券報告書(第84期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アゼアスってどんな会社?
防護服・環境資機材、ヘルスケア製品、ライフマテリアルの3事業を柱に、個人防護と環境保全のトータルソリューションを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1947年に株式会社千代田屋として設立され、当初は麻糸・麻織物を取り扱っていました。1975年にデュポン™タイベック®製化学防護服の製造販売を開始し、現在の主力事業の基盤を築きました。2004年にアゼアスへ商号変更し、2010年に大証JASDAQ市場へ上場しました。2016年にはアゼアスデザインセンター秋田を開設して製造機能を強化し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結155名、単体118名です。筆頭株主は創業者一族と推測される鈴木貴久子氏で、第2位は広島県の被服メーカーであるAsahicho、第3位は同社取締役の鈴木一裕氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 鈴木 貴久子 | 5.49% |
| Asahicho | 5.15% |
| 鈴木 一裕 | 2.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は斉藤文明氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 斉藤 文明 | 代表取締役社長 | 1994年ワークマン入社。2003年同社入社。取締役第一事業部長、常務執行役員防護服・環境資機材営業部部長などを経て2019年5月より現職。 |
| 鈴木 一裕 | 取締役執行役員管理本部長 | 2003年フロイント産業入社。2006年同社入社。事業開発部部長、執行役員総務部部長、取締役執行役員品質管理部部長などを経て2025年7月より現職。 |
| 関谷 純樹 | 取締役執行役員営業本部長 | 1990年フルサト工業入社。1999年同社入社。業務部部長、執行役員防護服・環境資機材営業部部長などを経て2025年7月より現職。 |
社外取締役は、町田智子(元朝日新聞社上席執行役員)、池田文雄(元日本国土開発常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「防護服・環境資機材」「ヘルスケア製品」「ライフマテリアル」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 防護服・環境資機材事業
デュポン™タイベック®製化学防護服やアスベスト処理用資機材を中心に、各種安全保護具を提供しています。主な顧客は中央省庁、地方公共団体、病院、電力会社、化学工場、製薬会社など多岐にわたり、感染症対策や有害物質対策、クリーンルーム内作業など幅広い用途で使用されています。
収益は、顧客への製品販売代金やソリューション提案による対価から得ています。米国デュポン社製品の販売に加え、自社オリジナル防護服の製造販売も行っており、運営は主に同社が担当しています。製品は使い切り(リミテッドユース)という特性があり、継続的な販売が見込めるビジネスモデルです。
■(2) ヘルスケア製品事業
自社工場であるアゼアスデザインセンター秋田で製造する不織布マスクや、医療用ガウン、サージカルマスクなどを提供しています。主な顧客は医療機関、一般産業、官公庁、地方自治体などであり、業務用途での利用が中心です。
収益は、製品の販売代金から得ています。自社ブランド製品のほか、受託製造したマスクを関連会社であるメディケア・ジャパンを通じて流通業者へ販売する形態もとっています。運営は主に同社が行っています。
■(3) ライフマテリアル事業
アパレル資材分野では裏地、芯地、繊維副資材などを、機能性建材分野では畳表やポリスチレンフォーム、高機能建材「ReFace®」などを提供しています。アパレル資材の顧客はユニフォームやスポーツ関連企業などであり、機能性建材は畳店や施工業者などが主な顧客です。
収益は、これら資材や建材の販売代金から得ています。アパレル資材では原反の型カット等の加工による付加価値提供も行っています。運営は同社が行っており、連結子会社であった丸幸は2025年5月に同社に吸収合併されました。
■(4) その他
中国の大連を拠点に、日系企業や中国国内企業向けに繊維副資材を提供しています。
収益は、繊維副資材の製造および販売代金から得ています。運営は、中国の現地法人である阿茲阿斯(大連)紡織服飾有限公司および大連保税区日里貿易有限公司が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年4月期の約102億円をピークに減少傾向にあり、直近では約80億円となっています。経常利益も同様に減少傾向が見られますが、当期利益については変動しつつも黒字を維持しており、自己資本比率は上昇傾向にあります。全体として、事業規模の縮小は見られるものの、財務体質の健全性は高まっています。
| 項目 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 102億円 | 95億円 | 91億円 | 82億円 | 80億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 4億円 | 6億円 | 3億円 | 2億円 |
| 利益率(%) | 8.6% | 4.3% | 6.2% | 3.7% | 2.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 3億円 | 4億円 | 2億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は微減となりましたが、売上総利益はほぼ横ばいを維持しています。一方で、販売費及び一般管理費が増加した影響により、営業利益は減少しました。売上総利益率は改善傾向にありますが、営業利益率の低下が課題となっています。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 82億円 | 80億円 |
| 売上総利益 | 17億円 | 17億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.5% | 21.1% |
| 営業利益 | 3億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | 3.5% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比38%)、支払手数料が2億円(同11%)を占めています。売上原価においては、商品及び製品の仕入高などが主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
防護服・環境資機材事業とヘルスケア製品事業は増収となりましたが、ライフマテリアル事業とその他事業は減収となりました。特にヘルスケア製品事業は大幅な増収を記録しています。一方で、ライフマテリアル事業の減収が全体の売上高減少に影響を与えています。
| 区分 | 売上(2024年4月期) | 売上(2025年4月期) |
|---|---|---|
| 防護服・環境資機材 | 45億円 | 46億円 |
| ヘルスケア製品 | 1億円 | 3億円 |
| ライフマテリアル | 32億円 | 28億円 |
| その他 | 4億円 | 3億円 |
| 調整額 | - | - |
| 連結(合計) | 82億円 | 80億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、運転資金及び投資等の資金需要に対し、自己資金を基本方針として充当し、必要に応じて銀行借入等で調達しています。
営業活動では、売上債権の減少や仕入債務の増加が資金獲得に貢献し、大幅な黒字となりました。投資活動では、定期預金の預入れや固定資産の取得等で資金が支出されました。財務活動では、配当金の支払いと長期借入金の返済により、資金が支出されました。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.1億円 | 5億円 |
| 投資CF | 0.2億円 | -2億円 |
| 財務CF | -2億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「地球のこと総て、その環境と安全に挑戦する。The Challenge for the Earth:“Environment & Safety”」をコーポレートスローガンとして掲げています。個人防護と環境保全のトータルソリューションサプライヤーとして、「地球の環境と安全に貢献できる、存在感のある企業グループ」を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は40年以上前から日本における防護服製造・販売のパイオニアとして、安全衛生の啓発活動を行ってきました。作業者の安全・健康を守るため、防護服の着用を推奨し、事業基盤を拡大してきた歴史があり、安全と環境への貢献を重視する姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2023年5月から中期経営計画「Next Stage 実行計画2023」に取り組んでいます。資産効率の向上と株主資本の有効利用を重視し、「総資産経常利益率(ROA)」および「株主資本利益率(ROE)」を重要な経営指標として位置付けています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「人と環境を守る」事業の強化として、化学防護服市場の知見を他の防護服カテゴリーへ展開し、事業領域を拡大します。安全環境設備分野では、ソリューションビジネスを強化し、海外事業においては中国子会社との連携を深めます。また、商社からメーカーへの転換を図り、アゼアスデザインセンター秋田の技術力を活かした高機能防護服の生産や品質保証の強化を推進し、「アゼアス」ブランドの確立を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の確保と育成を重要課題とし、新人事制度の導入や報酬制度の改正を計画しています。優秀な人材の獲得、次世代経営層や若手社員の育成、早期戦力化を図るとともに、柔軟な働き方の整備や女性活躍支援、健康経営などに取り組み、従業員が能力を発揮できる環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月期 | 47.8歳 | 13.4年 | 4,964,477円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
なお、同社および連結子会社は従業員規模が301人以上ではないため、男女賃金差異の公表義務の対象ではなく、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、指名研修における対象者受講率(100.0%)、一般定期健康診断受診率(100.0%)、社員1人あたり平均有給休暇取得率(61.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 防護服・環境資機材事業について
主力製品であるデュポン™タイベック®製化学防護服は、主要仕入先である旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社との長期納入契約が締結されていません。関係は良好ですが、供給支障や取引条件変更があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、地政学リスク等によるサプライチェーン寸断への備えも課題です。
■(2) 特需による業績変動リスク
防護服・環境資機材事業は、環境や安全に係る問題の発生状況により業績が変動する可能性があります。感染症の流行や家畜伝染病、アスベスト問題などの発生時には売上が一時的に増加する一方、その翌年度には反動減が生じるリスクがあります。
■(3) 製品及び商品に対する賠償責任について
製品の欠陥により製造物責任訴訟を提訴された場合に備えて保険に加入していますが、賠償負担を完全にカバーできるとは限りません。多額の負担金が発生した場合、財政状態や経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。