※本記事は、HEROZ株式会社 の有価証券報告書(第17期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. HEROZってどんな会社?
AI(人工知能)技術を活用し、将棋アプリ等のBtoCサービスや、産業向けAIソリューション等のBtoBサービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2009年に設立され、2012年にAIを活用したスマートフォン向けアプリ「将棋ウォーズ」をリリースしました。2018年に東京証券取引所マザーズへ上場し、AI関連企業との資本業務提携を推進。2022年に株式会社ストラテジット、バリオセキュア株式会社を連結子会社化し、2024年には株式会社ティファナ・ドットコム、VOIQ株式会社をグループに迎え、AI・SaaS領域での事業基盤を強化しています。
2025年4月30日時点で、連結従業員数は294名、単体では97名です。筆頭株主は代表取締役CEOの林隆弘氏と代表取締役CROの高橋知裕氏で、それぞれ同率の株式を保有しています。第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 林 隆弘 | 28.58% |
| 高橋知裕 | 28.58% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 4.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役CEOは林 隆弘氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 林 隆弘 | 代表取締役CEO | 1999年日本電気(NEC)入社。2009年同社設立、代表取締役CEO。2021年代表取締役Co-CEOを経て、2023年7月より現職。 |
| 高橋 知裕 | 代表取締役CRO | 1999年日本電気(NEC)入社。2009年同社設立、代表取締役COO。2021年代表取締役Co-CEOを経て、2023年7月より現職。 |
| 井口 圭一 | 取締役CTO | 2003年日本電気(NEC)入社。Donuts開発部長、Ginger取締役を経て、2013年同社入社。2020年7月より現職。 |
| 森 博也 | 取締役CFO | 1996年センチュリー監査法人入社。インテリジェンス、パーソルホールディングスを経て2021年同社入社。2023年7月より現職。 |
社外取締役は、井上 智宏(公認会計士・税理士)、上山 亨(カケルパートナーズ代表)、金丸 祐子(弁護士・アキュリスファーマ社外監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「AI/DX事業」および「AI Security事業」を展開しています。
■(1) AI/DX事業
AI技術やSaaS関連のノウハウを活用し、将棋アプリ「将棋ウォーズ」などの個人向けサービス(BtoC)や、企業向けのAI導入支援、SaaS間連携開発、コンタクトセンター向けソリューション、営業支援などの法人向けサービス(BtoB)を提供しています。
BtoCではアプリ利用者からの課金収入を得ており、BtoBではシステムの初期設定料や月額継続料等を受け取る収益モデルです。運営はHEROZに加え、株式会社ストラテジット、株式会社エーアイスクエア、株式会社ティファナ・ドットコム、VOIQ株式会社が行っています。
■(2) AI Security事業
企業のネットワークセキュリティを守るための機器の調達、導入、監視、運用までをワンストップで提供するマネージドセキュリティサービスや、ネットワーク機器の構築等を行うインテグレーションサービスを展開しています。
顧客から初期費用および月額のサービス利用料を受け取るリカーリング(継続課金)型の収益モデルが中心です。また、機器販売による収益も得ています。本事業の運営は、バリオセキュア株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績を見ると、売上高は継続的な成長傾向にあります。一方で利益面については、M&Aや先行投資等の影響により変動が見られ、直近では損失を計上しています。売上規模の拡大と収益性の改善が今後の課題となっている状況が見て取れます。
| 項目 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 30億円 | 48億円 | 59億円 |
| 経常利益 | 2.2億円 | 3.7億円 | 2.3億円 |
| 利益率(%) | 7.3% | 7.6% | 3.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.8億円 | -18.2億円 | -3.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加していますが、売上総利益率は低下傾向にあります。販管費などのコスト負担もあり、営業利益率は低下しています。事業拡大に伴うコスト構造の変化が利益率に影響を与えている状況です。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 48億円 | 59億円 |
| 売上総利益 | 24億円 | 27億円 |
| 売上総利益率(%) | 49.4% | 45.3% |
| 営業利益 | 4.5億円 | 3.1億円 |
| 営業利益率(%) | 9.3% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9.2億円(構成比39%)、広告宣伝費が2.4億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
AI/DX事業はBtoC領域でのコラボ企画や新サービス、BtoB領域でのグループ会社追加等により大幅な増収となりましたが、のれん償却費等の計上もありセグメント利益率は相対的に低くなっています。AI Security事業は安定した収益を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年4月期) | 売上(2025年4月期) | 利益(2024年4月期) | 利益(2025年4月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| AI/DX事業 | 22億円 | 33億円 | 6.8億円 | 7.8億円 | 23.8% |
| AI Security事業 | 26億円 | 27億円 | 7.9億円 | 7.9億円 | 29.6% |
| 調整額 | -0.1億円 | -0.1億円 | -10.1億円 | -12.6億円 | - |
| 連結(合計) | 48億円 | 59億円 | 4.5億円 | 3.1億円 | 5.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動を通じて生み出される資金を示しており、投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却等による資金の増減を表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払い等による資金の変動を示しています。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.6億円 | 2.2億円 |
| 投資CF | -12.2億円 | -4.8億円 |
| 財務CF | -3.0億円 | 6.6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界を驚かすサービスを創出する」という理念を掲げています。将棋等の頭脳ゲームAI開発で培った技術力と、グループ会社で蓄積されたSaaS・セキュリティ関連技術を活かし、AI革命を起こして未来を創っていく集団であり続けることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「驚きを心に」をコンセプトとしています。これは、人々の生活が便利に楽しくなるようなサービスを提供することを目指す姿勢を表しています。AIを単なる業務ツールとしてではなく、根本的な価値創造や人とAIの共創を実現するための手段として捉えています。
■(3) 経営計画・目標
有価証券報告書において、具体的な数値目標(売上高、営業利益等の必達目標値)としての経営計画は記載されていません。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社グループは「HEROZ3.0」として「AI BPaaS」戦略を掲げています。これは単なるSaaSツールの提供にとどまらず、生成AIやAIエージェントをフル活用し、業務全体を自律的に遂行・最適化する「Agentic Work」という形で価値提供を行うものです。
具体的には、次世代の自律型AIエージェント「AI Agent2.0」の実現を目指し、課題分解から実行までを完全自律的に行う「Meta Agent」の開発を進めています。また、M&Aやグループ各社のシナジー創出を通じて、社会全体のAIトランスフォーメーション(AIX)を推進していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
最先端の技術を有する人材の確保・育成を重要課題としています。技術力の高さによる市場プレゼンスの向上、採用領域でのAIエージェント活用、広報・マーケティング強化等により魅力を訴求する方針です。また、社内研修の強化や人事制度の整備、エンゲージメントサーベイの実施等により、従業員の定着率向上と育成に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月期 | 37.1歳 | 3.2年 | 7,764,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) AI・SaaS関連市場について
同社グループが注力するAI・SaaS関連市場は、生成AIをはじめとする技術革新や投資拡大により急速に変化しています。この環境は機会となる一方、法規制や景気動向等の影響で市場成長が鈍化した場合や、同社グループが市場拡大のペースに合わせて成長できない場合には、事業および業績に影響を与える可能性があります。
■(2) ネットワークセキュリティ市場の動向について
グループ会社のバリオセキュアが展開するネットワークセキュリティ市場は、技術革新が速く、顧客ニーズの多様化や新サービスの頻繁な登場が特徴です。将来のニーズ予測や新商品開発が的確に行われない場合や、市場の変化に対応できない場合には、同社およびグループの業績に影響を与える可能性があります。
■(3) AI・SaaS関連の技術革新等について
AI・SaaS関連技術は国内外で活発に研究開発が行われており、特に生成AIやAIエージェント分野での競争が激化しています。同社グループが技術革新のスピードや新たなビジネスモデルの出現に適時適切に対応できない場合、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) セキュリティ関連の技術革新等について
バリオセキュアの主戦場であるネットワークセキュリティ市場は技術革新が著しく、競争力維持には継続的な研究開発が不可欠です。市場の技術革新への対応遅れや研究開発体制の維持困難が生じた場合、既存製品の陳腐化や開発コストの増大を招き、業績に影響を与える可能性があります。



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