HEROZ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

HEROZ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するHEROZは、AIを活用した将棋ゲーム等のBtoCサービスやAIアシスタントSaaS等のBtoBサービスに加え、インターネットセキュリティ事業を展開しています。直近の業績はAIエージェント等の成長により売上高64億円で増収、経常利益は4億円で増益と好調に推移しています。


※本記事は、HEROZ株式会社の有価証券報告書(第18期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. HEROZってどんな会社?


AI技術を活用したBtoC向け将棋ゲームや、BtoB向けのAIアシスタントSaaS等を提供するAI企業です。

(1) 会社概要


2009年にインターネットサービスの企画等を目的に設立されました。2012年にスマートフォン向け将棋ゲームアプリ「将棋ウォーズ」をリリースして人気を集め、2018年には東京証券取引所マザーズに上場を果たしました。近年はBtoB領域を強化しており、2024年に生成AIを活用した「HEROZ ASK」をリリースし、2026年にはバリオセキュアを完全子会社化しています。

現在の従業員数は連結で259名、単体で105名体制となっています。大株主については、筆頭株主ならびに第2位株主として創業者の林隆弘氏および高橋知裕氏が同率で並んでおり、第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
林 隆弘 28.55%
高橋 知裕 28.55%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 3.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役CEOの林隆弘氏と代表取締役CROの高橋知裕氏が経営を牽引しており、社外取締役比率は42.9%となっています。

氏名 役職 主な経歴
林 隆弘 代表取締役CEO 1999年日本電気(NEC)入社。2009年同社を設立し代表取締役CEOに就任。バリオセキュア等のグループ会社の取締役を経て2023年より現職。
高橋 知裕 代表取締役CRO 1999年日本電気(NEC)入社。2009年同社設立に伴い代表取締役COOに就任。バリオセキュアの代表取締役等も兼務し、2023年より現職。
井口 圭一 取締役CTO 2003年日本電気(NEC)入社。Donuts等の開発部長を経て2013年同社に入社。開発部長を務めたのち2020年より現職。
森 博也 取締役CFO 1996年センチュリー監査法人入所。インテリジェンス等を経て2021年同社に入社し執行役員CFOに就任。2023年より現職。


社外取締役は、井上智宏(ベンチャーインク会計事務所代表)、上山亨(カケルパートナーズ代表社員)、金丸祐子(外苑法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AIX事業」および「AI Security事業」を展開しています。

AIX事業


AI技術・ノウハウを活用し、各企業・業界のAIX推進を支援するソリューションを提供しています。BtoCサービスでは将棋アプリ「将棋ウォーズ」やAI解析プラットフォームを個人向けに展開し、BtoBサービスでは生成AIアシスタントSaaS「HEROZ ASK」等の各種AIエージェントを提供しています。

BtoCサービスではアプリ等の有料課金が主な収益源です。BtoBサービスではAIシステムの初期設定フィーや継続利用による月額利用料を受け取ります。運営は同社に加え、コンタクトセンター向けサービスを提供するエーアイスクエア、「AIさくらさん」を提供するティファナ・ドットコム等が担っています。

AI Security事業


AI技術を利用して高度なインターネットセキュリティの実現を目指す事業です。中堅・中小企業を主な顧客とし、ネットワークセキュリティの導入から運用・保守までをワンストップで提供するマネージドセキュリティサービスや、インテグレーションサービスを展開しています。

セキュリティ機器の提供および監視・運用サービスの対価として、顧客から初期費用と定額の月額費用を徴収する積み上げ型(リカーリング)の収益モデルを基本としています。この事業は、同社の連結子会社であるバリオセキュアが主体となって運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去4期間の業績を見ると、M&Aによるグループ会社の拡大などもあり、売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益も一時的な変動はあるものの堅調に推移しており、直近では増収増益を達成しました。また、過去に計上した減損損失等の影響で当期利益が赤字となる期がありましたが、当期は黒字へ転換しています。

項目 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期 2026年4月期
売上高 30億円 48億円 59億円 64億円
経常利益 2.2億円 3.7億円 2.3億円 4.1億円
利益率(%) 7.3% 7.6% 3.8% 6.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.8億円 -18億円 -3.0億円 3.5億円

(2) 損益計算書


売上高の伸びに伴って売上総利益も拡大しており、売上総利益率は約45%と安定した水準を維持しています。営業利益についても大幅な増益を記録しており、事業拡大に伴う投資等を行いつつも本業の収益性が高まっていることがうかがえます。

項目 2025年4月期 2026年4月期
売上高 59億円 64億円
売上総利益 27億円 29億円
売上総利益率(%) 45.3% 45.5%
営業利益 3.1億円 5.2億円
営業利益率(%) 5.2% 8.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が8.9億円(構成比37.0%)、支払手数料が3.4億円(同14.1%)、広告宣伝費が1.8億円(同7.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、AIX事業はBtoCサービスでの安定した収益やBtoBサービスでの「HEROZ ASK」の順調な拡大により増収となりました。AI Security事業も主力サービスの拡販が進んだこと等により売上を伸ばしており、両セグメントともに事業を順調に拡大させています。

区分 売上(2025年4月期) 売上(2026年4月期)
AIX事業 33億円 36億円
AI Security事業 27億円 28億円
連結(合計) 59億円 64億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.7%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年4月期 2026年4月期
営業CF 2.2億円 6.5億円
投資CF -4.8億円 -0.2億円
財務CF 6.6億円 -4.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「世界を驚かすサービスを創出する」という理念を掲げています。将棋等の頭脳ゲームAIを開発する過程で培った技術力を活用するとともに、グループ会社で蓄積されたSaaS関連技術やセキュリティ関連技術等もフルに活かしてAI革命を起こし、未来を創っていく集団であり続けることを基本方針として事業を展開しています。

(2) 企業文化


AIを社会に浸透させ、既存の業務プロセスやビジネスモデル等を含めて社会全体に抜本的な変革を起こす「AIトランスフォーメーション(AIX)」を重視しています。AIを単なる業務ツールとして使うのではなく、より根本的な価値創造や「人とAIが当たり前に協創する社会の実現」をテーマとし、新しい価値の提供を目指しています。

(3) 経営計画・目標


有価証券報告書において、具体的な数値による中長期の経営目標に関する記載はありませんが、継続的な事業拡大に向けた方針が示されています。AI市場やセキュリティ市場における技術競争や需要拡大が急激に進む中、AIエージェントの実現・拡充や社会全体へのAIX推進を通じて、グループ全体としての企業価値最大化を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「HEROZ3.0」としてグループ戦略「AI BPaaS」を掲げています。単なるツール提供にとどまらず、AIが業務全体を自律的に遂行・最適化する形で価値を提供し、社会全体にAIXを起こすことを目指しています。今後は「丸投げAIバックオフィス」のスタンダードを目指す領域と、AIとプロが一体となって運用に伴走するセキュリティ領域の2大領域に経営資源を集中し、次世代AIエージェントの実現による成長を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


知的探求心と情熱をもって挑戦と成長を続けるプロフェッショナルな人材が、能力と成果に応じて正当に処遇される仕組みの整備を基本方針としています。評価・報酬制度を連動させ、自立的なキャリア形成と持続的な成長を支援しています。また、在宅勤務の導入や休暇取得の促進など、従業員の意向を踏まえた働きがいのある環境づくりや、社内研修・勉強会の実施による自己研鑽の機会提供にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年4月期 37.7歳 3.6年 7,624,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) AI技術の急激な技術革新


生成AIやAIエージェントをはじめとするAI関連技術は、国内外で活発に研究開発が行われ、急激なスピードで技術革新が進んでいます。同社グループがこうした技術進化やそれに伴う新たなビジネスモデルの出現に適時適切に対応できなかった場合、競争力が低下し、事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 機密情報の漏洩・管理リスク


AIの学習対象となるデータやSaaSの提供過程で利用する情報には、顧客の機密情報やユーザーに関する情報が含まれる場合があります。万一、サイバー攻撃や不正アクセス、過失等により情報の漏洩が生じた場合、損害賠償の発生や同社への信頼性低下による顧客離れを招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) AI・SaaS関連市場における競合激化


AI・SaaS関連事業分野においては、世界中に競合他社が存在し、他業種大手企業から新興企業まで多様な事業者の新規参入が相次いでいます。資金力や技術開発力、ブランド力に優れる競合他社が優位性を発揮した場合、価格競争による利益率の悪化や顧客獲得の難航が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。