※本記事は、株式会社日本国土開発 の有価証券報告書(第96期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本国土開発ってどんな会社?
土木・建築工事を柱とする独立系の総合建設会社です。独自の機械施工技術や再生可能エネルギー事業も展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1951年に土木工事の機械施工普及を目的に設立されました。1964年には東証一部へ上場しましたが、バブル崩壊後の経営悪化により1999年に会社更生法の適用を申請しました。その後、2003年に更生手続を終結させ、2019年に東証一部への再上場を果たしました。現在は東証プライム市場に上場しています。
連結従業員数は1,020名、単体では793名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は不動産総合マネジメントを行うザイマックスグループ、第3位は従業員の持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 9.37% |
| 株式会社ザイマックスグループ | 7.29% |
| 日本国土開発持株会 | 5.21% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長CEO兼COOは林 伊佐雄氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 林 伊佐雄 | 代表取締役社長CEO兼COO | 1982年同社入社。土木本部長、常務執行役員などを経て、国土開発工業社長を歴任。2023年8月より現職。 |
| 菊池 泰 | 取締役執行役員新規事業・地域共創事業推進室長 兼 安全衛生管理室管掌 | 1989年同社入社。東北支店長、営業統括などを経て、2025年6月より現職。 |
| 曽根 一郎 | 取締役 | 1982年同社入社。関連事業本部長、管理本部長などを経て、代表取締役副社長執行役員を歴任。2023年8月より現職。 |
| 増成 公男 | 取締役(常勤監査等委員) | 1981年同社入社。経営企画室長、管理本部長などを歴任。2019年8月より現職。 |
社外取締役は、高津 浩明(元東光高岳会長)、松石 秀隆(元リコー取締役)、唐下 雪絵(公認会計士)、鴨志田 文彦(元中外製薬常務)、渡邊 賢作(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「土木事業」、「建築事業」および「関連事業」を展開しています。
■(1) 土木事業
日本国内および東南アジアを拠点に、ダム、トンネル、造成工事等の社会基盤整備や震災復興工事、太陽光発電所建設などを行っています。独自の「ツイスター工法」やICTを活用した施工技術に強みを持ちます。
工事請負契約に基づき、発注者から工事代金を受け取る収益モデルです。運営は主に日本国土開発が行い、子会社の国土開発工業が土木工事施工や建設機械の製造・販売等を、海洋工業が地盤改良工事等を担当しています。
■(2) 建築事業
公共施設、オフィスビル、マンション、物流施設など多岐にわたる建造物の建設を行っています。設計・施工に加え、リニューアルや免震エンジニアリング、食品工場エンジニアリングなどのソリューション提案も手掛けています。
工事請負契約に基づき、発注者から工事代金を受け取る収益モデルです。運営は主に日本国土開発が行い、子会社のコクドビルエースがリニューアル工事等を担当しています。
■(3) 関連事業
不動産開発・投資・賃貸事業や、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業を展開しています。不動産事業では優良収益不動産の取得や開発を行い、エネルギー事業では自社発電所の運営を行っています。
不動産販売収入や賃料収入、売電収入を得るモデルです。運営は日本国土開発のほか、JDCグリーンエナジー合同会社などの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年5月期に大幅な赤字を計上しましたが、当期(2025年5月期)は黒字回復を果たしました。売上高は減少傾向にありますが、利益面では改善が見られます。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,178億円 | 1,268億円 | 1,542億円 | 1,357億円 | 1,233億円 |
| 経常利益 | 106億円 | 84億円 | 46億円 | -93億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 9.0% | 6.6% | 3.0% | -6.9% | 1.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 68億円 | 78億円 | 32億円 | -83億円 | 22億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益、営業利益ともに黒字転換しました。原価管理の強化や採算性の改善が進んだことが伺えます。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,357億円 | 1,233億円 |
| 売上総利益 | -34億円 | 53億円 |
| 売上総利益率(%) | -2.5% | 4.3% |
| 営業利益 | -94億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | -6.9% | 1.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が32億円(構成比32%)、貸倒引当金繰入額が12億円(同12%)を占めています。売上原価においては、完成工事原価等が大部分を占めています。
■(3) セグメント収益
土木事業と建築事業は減収となりましたが、関連事業は不動産売却等により大幅な増収となりました。建築事業と関連事業が利益に貢献し、全社の黒字化を牽引しました。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) |
|---|---|---|
| 土木事業 | 406億円 | 360億円 |
| 建築事業 | 881億円 | 746億円 |
| 関連事業 | 70億円 | 127億円 |
| 連結(合計) | 1,357億円 | 1,233億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の儲けを示す営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -13億円 | 38億円 |
| 投資CF | 15億円 | -39億円 |
| 財務CF | -21億円 | -38億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは経営理念として「わが社はもっと豊かな社会づくりに貢献する」を掲げています。これは1991年の創立40周年時に策定されたもので、社会問題の解決とより良い社会の構築、快適環境の創造を通じてゆとりある社会づくりを目指すという想いが込められています。
■(2) 企業文化
同社は「技術提案型の企業」としての側面を持ち、独自技術の開発やICTの活用に積極的です。また、「健康経営」を推進し、経済的価値と社会的価値の相互作用により企業価値向上を図るサステナビリティ経営を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2028年5月期を最終年度とする「中期経営計画2027」を策定しています。ミッションとして「持続的に利益を生み出す経営基盤を再構築し、『成長軌道への回帰』を実現する」を掲げています。
* ROE(自己資本利益率):8.0%
* 営業利益:90億円
■(4) 成長戦略と重点施策
土木事業では適正利益確保と施工管理強化による「持続的な安定事業への回帰」を、建築事業では品質管理徹底による「安定事業から成長事業への脱皮」を目指します。関連事業では不動産・エネルギー分野への投資で収益拡大を図ります。
* 投資計画:3カ年で総額740億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働き方改革」と「働きがい改革」を両輪とし、従業員エンゲージメントの向上を図っています。多様な人財が誇りを持って活躍できる職場づくりを目指し、「採用」「定着」「育成」を3本柱とした施策を実行しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 40.9歳 | 13.4年 | 7,535,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.1% |
| 男性育児休業取得率 | 127.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 41.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設市場の動向
景気後退や公共投資削減による市場縮小、競争激化による受注価格下落が業績に影響する可能性があります。これに対し、ICT施工やDXによる省力化、関連事業や新規事業の強化で収益基盤の変革を進めています。
■(2) 人材確保の課題
建設技術者や技能労働者の高齢化が進む中、人材確保が困難になれば受注機会の喪失や納期遅延が生じる恐れがあります。採用・育成・定着の強化、DXや機械化による省人化、働きがい改革や健康経営の推進で対応しています。
■(3) 資材・労務費の高騰
契約期間中に想定外の資材価格や労務単価の高騰が生じ、請負金額に反映できない場合、業績に影響を与える可能性があります。市場価格調査や先行調達、契約条項へのスライド条項の盛り込み等で対応を図っています。



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