※本記事は、日本国土開発株式会社の有価証券報告書(第97期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本国土開発ってどんな会社?
日本国土開発は、土木・建築事業を主力とし、不動産開発や再生可能エネルギー事業も手掛ける総合建設企業です。
■(1) 会社概要
1951年に設立され、建設機械の賃貸から土木工事の請負、総合建設業へと事業を拡大してきました。1999年に会社更生手続の開始決定を受けましたが、2003年に終結し、2019年には東京証券取引所第一部に再上場を果たしました(現在はプライム市場)。近年は不動産・エネルギー事業なども強化し、2024年にはSBTネットゼロ認定を取得するなど、環境対応や社会課題解決に向けた取り組みを推進しています。
従業員数は連結で1,104名、単体で835名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位には事業会社、第3位にも信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.36% |
| ザイマックスグループ | 7.28% |
| みずほ信託銀行(一般財団法人日本国土開発未来研究財団口) | 4.97% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。
代表取締役社長社長執行役員CEO兼COOは林伊佐雄氏です。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 林伊佐雄 | 代表取締役社長社長執行役員CEO兼COO | 1982年同社入社。土木本部長や国土開発工業代表取締役社長等を歴任し、2023年8月より現職。 |
| 菊池泰 | 取締役執行役員新規事業・地域共創事業推進室長 兼 安全衛生管理室管掌 | 1989年同社入社。土木事業本部副本部長兼営業統括部長等を歴任し、2025年6月より現職。 |
| 守屋乾司 | 取締役兼コクドビルエース代表取締役社長 | 1986年同社入社。建築事業本部副本部長兼東京支店長等を歴任し、2025年8月より現職。 |
| 曽根一郎 | 取締役(常勤監査等委員) | 1982年同社入社。関連事業本部長、副社長執行役員COO兼CFO等を歴任し、2025年8月より現職。 |
社外取締役は、高津浩明(元東光高岳代表取締役会長)、松石秀隆(元リコー専務執行役員CFO)、唐下雪絵(公認会計士唐下雪絵事務所所長)、鴨志田文彦(元日本長期信用銀行国際営業室長)、渡邊賢作(東啓綜合法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「土木事業」「建築事業」「不動産事業」「エネルギー事業」および「その他」事業を展開しています。
■土木事業
社会基盤整備や災害関連復興工事から太陽光発電所建設工事まで幅広い施工管理を提供しています。国や地方自治体、民間企業を顧客とし、独自の地盤改良技術やICT建機を活用した生産性の高い施工を強みとしています。
収益は、発注者から受け取る工事請負代金が主な柱となります。事業の運営は同社のほか、土木工事や建設用機械の製造等を担う国土開発工業、地盤改良工事を行う海洋工業などが連携して推進しています。
■建築事業
公共施設や超高層ビル、物流施設、食品工場など多岐にわたる建造物の施工管理を提供しています。設計・施工の一貫体制を活かし、顧客ニーズに応じた価値再生や免震エンジニアリングなどのソリューションを展開しています。
収益源は、発注者との契約に基づく工事請負代金から構成されています。事業の運営は主に同社が担うほか、リニューアル工事を主体とするコクドビルエースが連携して施工等を行っています。
■不動産事業
不動産開発から投資、賃貸、販売、管理までを一貫して提供しています。建設事業との連携による付加価値の高い開発を強みとしており、国内外においてオフィス投資や区画整理事業などを展開しています。
収益は、保有する開発物件の売却益や、賃貸用不動産から得られる賃貸収入によって構成されています。事業の運営は主に同社が主体となって推進しています。
■エネルギー事業
太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの開発および運営を行っています。自社開発のほか、蓄電設備を活用した夜間連系太陽光発電所やオフサイトPPAなどの新たな事業モデルの構築にも取り組んでいます。
収益は、開発した発電設備の売却代金や、電力受給契約に基づく継続的な売電収入から得ています。事業の運営は、同社および地域共生発電所等の多数の連結子会社が担っています。
■その他
建設事業に付随する材料・製品の製造販売や、地域社会の課題解決に貢献する地域共創事業を展開しています。環境に配慮したリサイクル素材や塩害対策用の機能性材料などを提供しています。
収益は、製品の販売代金から構成されています。運営は、石炭灰混合材料を製造販売する福島エコクリートや、機能性吸着材を扱うANIONなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は大型案件の状況により変動が見られますが、直近の2026年5月期は1,352億円と増収に転じています。利益面では過去に不採算案件の影響で赤字を計上した時期もありましたが、採算性を重視した受注方針と原価管理の徹底が奏功し、現在は大幅な黒字回復を果たしています。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,268億円 | 1,542億円 | 1,357億円 | 1,233億円 | 1,352億円 |
| 経常利益 | 84億円 | 46億円 | -93億円 | 19億円 | 66億円 |
| 利益率(%) | 6.6% | 3.0% | -6.9% | 1.6% | 4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 78億円 | 32億円 | -83億円 | 22億円 | 50億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に加え、建築事業における好採算案件の進捗や土木事業の黒字化により、売上総利益率が9.9%から12.1%へと改善しています。この結果、営業利益も前年比で大きく伸び、収益性が大幅に高まっています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,233億円 | 1,352億円 |
| 売上総利益 | 122億円 | 163億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.9% | 12.1% |
| 営業利益 | 23億円 | 72億円 |
| 営業利益率(%) | 1.9% | 5.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が35億円(構成比39%)、法定福利費が7億円(同7%)、地代家賃が5億円(同6%)を占めています。また、売上原価のうち、完成工事原価が1,134億円(構成比95%)、開発事業等売上原価が55億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
土木事業および建築事業が売上の大部分を占めており、特に建築事業は大型工事の順調な進捗により前年から大きく売上を伸ばしています。一方、不動産事業やエネルギー事業は、前年にあった大型物件の売却が当期はなかったため、売上高が減少しています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) |
|---|---|---|
| 土木事業 | 354億円 | 359億円 |
| 建築事業 | 746億円 | 924億円 |
| 不動産事業 | 52億円 | 25億円 |
| エネルギー事業 | 74億円 | 35億円 |
| その他 | 7億円 | 10億円 |
| 連結(合計) | 1,233億円 | 1,352億円 |
営業活動によるキャッシュ・フローがマイナス、投資活動がプラス、財務活動がプラスとなる「救済型」の傾向を示しています。本業赤字を資産売却+借入で補填している状態です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 38億円 | -46億円 |
| 投資CF | -39億円 | 5億円 |
| 財務CF | -38億円 | 53億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念として「わが社はもっと豊かな社会づくりに貢献する」を掲げています。この理念には、社会が直面する課題の解決と、より良い社会の構築、快適な環境の創造を通じて、ゆとりある社会づくりを目指すという想いが込められており、ステークホルダーにとっての豊かな社会づくりを追求しています。
■(2) 企業文化
同社は、持続可能な存続・成長を目指す「サステナビリティ経営」を重視する企業文化を持っています。経済的価値と社会的価値の向上を同時に追求し、気候変動問題や人口減少などの社会課題に対し、長年培ってきたノウハウや先端の環境技術を活かして主体的に取り組む姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2030年に向けた長期ビジョン「社会課題を解決する『先端の建設企業』」を掲げています。また、「中期経営計画2027」において、持続的に利益を生み出す経営基盤の再構築と成長軌道への回帰を目指しており、最終年度の目標として以下の数値を設定しています。
* 営業利益:90億円
■(4) 成長戦略と重点施策
建設事業において、採算性を重視した案件選別や原価管理の徹底により収益力の持続的向上を図ります。また、不動産・エネルギー事業への投資を拡大し、建設需要の変動を補完する安定収益源としてストック収益の積み上げを進めます。さらに、DX推進による生産性向上や新規事業の早期収益化にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働き方改革」と「働きがい改革」を両輪で進め、人的資本の最大化を目指しています。「採用」「定着」「育成」を3本柱とし、個々の社員が個性や能力を十分に発揮でき、誇りと働きがいを持って主体的に業務に取り組める魅力的な職場環境づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 42.8歳 | 14.8年 | 8,304,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.5% |
| 男性育児休業取得率 | 95.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 66.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 39.3% |
また、同社は「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性育児休業取得率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設市場の動向と競争激化
国内外の景気後退や公共投資予算の削減、競合他社との競争激化により受注価格が下落した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、ICT施工やDXによる省力化技術の確立、不動産やエネルギー事業による安定収益の拡大を進めています。
■(2) 人材確保と労働環境の課題
建設業界全体で技術者や技能労働者の高齢化・人手不足が深刻化しており、必要な人員確保が困難になった場合、受注機会の喪失や納期遅延が生じる恐れがあります。同社はキャリアアップシステムの推進やICT施工による省人化、働き方改革を通じた労働環境の改善に取り組んでいます。
■(3) 労務単価および資材価格の高騰
建設工事は長期間に及ぶため、契約期間中に労務単価や工事用資材の価格が想定外に高騰し、請負金額に反映できない場合は収益が圧迫されます。同社は市場価格の常時確認や先行調達、代替工法の提案を行うほか、物価スライド条項の契約への組み込みを推進しています。



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