岡山製紙 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岡山製紙 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岡山製紙は、スタンダード市場に上場する製紙メーカーです。段ボール用中芯原紙や紙管原紙を主力とする板紙事業と、食品・家電向け等の美粧段ボール事業を展開しています。直近の業績は、売上高が横ばいで推移する一方、エネルギーコスト等の影響で営業利益は前期比38.6%減、経常利益は35.5%減の減益となりました。


※本記事は、株式会社岡山製紙 の有価証券報告書(第184期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 岡山製紙ってどんな会社?


岡山製紙は、板紙(中芯原紙・紙管原紙)および美粧段ボールの製造販売を主力とする製紙メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1907年2月に設立され、板紙の製造販売を開始しました。1973年3月に美粧段ボール事業へ進出しています。2004年12月にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。2009年11月には王子製紙(現王子ホールディングス)が筆頭株主となり、その他の関係会社となりました。2022年4月の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

同社(単体)の従業員数は192名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は同社と販売取引等の関係がある王子ホールディングスで、第2位は証券会社名義、第3位は地方銀行です。

氏名 持株比率
王子ホールディングス 48.90%
INTERACTIVE BROKERS LLC 5.43%
中国銀行 4.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は宮田正樹氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
津川 孝太郎 代表取締役会長 1975年滝沢鉄工所(現TAKISAWA)入社。1988年同社入社。製紙工場長、技術統括部長、代表取締役社長を経て、2023年8月より現職。
宮田 正樹 代表取締役社長 1988年同社入社。製紙工場長、製紙本部長、加工本部長、管理本部管掌を経て、2023年8月より現職。
後藤 直樹 取締役 1993年高崎製紙(現王子マテリア)入社。2021年同社執行役員製紙本部副本部長(営業担当)を経て、2022年8月より現職。
狩山 昌功 取締役 1984年同社入社。製紙本部製造部長、執行役員製紙本部副本部長を経て、2023年8月より現職。
加藤 理夫 取締役 1985年神崎製紙(現王子ホールディングス)入社。王子タック経営管理部長、同社管理本部長等を経て、2024年8月より現職。
岡﨑 泰夫 取締役常勤監査等委員 1980年中国銀行入行。同行総務部長、常勤監査役、取締役監査等委員、中銀事務センター社長等を経て、2023年8月より現職。


社外取締役は、田井廣志(元王子板紙常務取締役)、中野学(元クラレクラリーノ事業部副事業部長)、加来典子(弁護士法人後楽総合法律事務所弁護士)、岡﨑達也(岡山ガス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「板紙事業」および「美粧段ボール事業」を展開しています。

(1) 板紙事業


段ボール製造用原紙の一品種である中芯原紙や、紙・布・フィルム・糸などの巻き芯に使用される紙管原紙の製造販売を行っています。産業活動全般の動向に左右されやすい特性を持ちます。

製品の販売を通じて顧客から対価を得ています。運営は主に岡山製紙が行っています。

(2) 美粧段ボール事業


青果物、食品、家電製品、飲料、医薬品などの個装箱や贈答箱の製造販売を行っています。ユーザーニーズに合致するパッケージの提供や、デジタル印刷を活用した多品種小ロット対応を進めています。

製品の販売を通じて顧客から対価を得ています。運営は主に岡山製紙が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は緩やかな増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。直近の決算では、売上高が横ばいで推移したものの、経常利益および当期純利益は減少しました。自己資本比率は上昇傾向にあります。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 94.0億円 100.8億円 108.7億円 115.1億円 115.2億円
経常利益 8.9億円 7.6億円 6.9億円 17.8億円 11.5億円
利益率(%) 9.5% 7.5% 6.4% 15.5% 10.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 6.2億円 5.9億円 4.9億円 11.6億円 8.0億円

(2) 損益計算書


売上高は前期とほぼ同水準を維持しましたが、売上原価率の上昇により売上総利益は減少しました。販売費及び一般管理費も増加しており、結果として営業利益率は低下しています。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 115.1億円 115.2億円
売上総利益 33.2億円 28.6億円
売上総利益率(%) 28.8% 24.8%
営業利益 16.8億円 10.3億円
営業利益率(%) 14.6% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、運搬費が9.4億円(構成比51%)、給与手当(従業員給料及び賞与)が3.3億円(同18%)を占めています。売上原価においては、材料費が55%、経費が34%を占めています。

(3) セグメント収益


板紙事業は販売数量が増加したものの銘柄構成の影響で微減収となり、古紙価格や燃料価格の上昇により減益となりました。美粧段ボール事業はデジタル印刷製品等の新規受注により増収となりましたが、配送費や労務費の上昇により損失を計上しています。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
板紙事業 102.4億円 101.9億円 16.9億円 10.8億円 10.6%
美粧段ボール事業 12.7億円 13.3億円 -0.0億円 -0.4億円 -3.4%
調整額 -2.2億円 -2.2億円 -億円 -億円 -%
連結(合計) 115.1億円 115.2億円 16.8億円 10.3億円 9.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 19.2億円 -15.7億円
投資CF -1.9億円 -4.0億円
財務CF -1.1億円 -1.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.0%で市場平均(スタンダード市場製造業平均57.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「すべてのステークホルダーとの調和のもと、共存の精神で200年企業をめざす」を経営理念として掲げています。株主、取引先、地域社会、従業員などすべてのステークホルダーにとって存在価値のある、良き企業市民として評価され、事業活動を続けてゆくことを目指しています。

(2) 企業文化


秩序ある競争の原理と公正の原則を貫く経営活動を基本姿勢としています。社会環境の変化に対応し顧客から信頼される企業を目指すとともに、企業の社会的責任を自覚し、持続的発展が可能な循環型社会の実現のために環境対策を強化し、地域社会との共生を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的発展および企業価値向上の客観的な指標として、営業利益およびROE(自己資本利益率)を重視しています。

* 営業利益:5億円
* ROE:株主資本コスト6~9%を上回る水準

(4) 成長戦略と重点施策


サステナブルな企業経営を実現するため、人的資本への投資と環境負荷低減を中心に以下の課題に取り組んでいます。

* サステナブルな企業経営:人材育成、社内環境整備、ESG配慮への投資。
* 営業力の強化:非価格競争力の強化、適正価格の維持、デジタル印刷による提案力強化。
* 省エネ・生産効率向上と製品開発力:省エネ・省力化投資、ユーザーニーズに合った製品開発。
* 原材料の安定調達とコスト低減:市況動向を注視した計画的調達。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


一世紀以上の歴史を持つ板紙メーカーとして、製造現場のスペシャリストを基盤としつつ、変化に対応できる自律的で広い視野を持ったリーダー層の育成を目指しています。地域に根差した採用活動に加え、中途採用も積極的に行い、多様な人材を確保する方針です。また、高齢者雇用の推進や女性活躍の環境整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 43.3歳 17.5年 5,576,985円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.4%
男女賃金差異(正規) 79.5%
男女賃金差異(非正規) 96.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の割合(9.8%)、労働災害度数率(2.6人/100万時間)、死亡・重篤災害数(0件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内需要の減少及び市況価格の下落


板紙事業および美粧段ボール事業はいずれも内需型であり、国内景気の影響を大きく受けます。景気後退による需要減少や市況価格の下落が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新規取引先の開拓や海外輸出の推進、需要に見合った生産体制で対応しています。

(2) 原燃料購入価格の上昇


主原料である古紙は海外および国内需給により、主燃料である産業用ガスは国際市況や為替により価格が変動します。これらの購入価格が上昇した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。複数の仕入先確保や備蓄量の安定確保によりリスク低減を図っています。

(3) 災害による影響


台風、豪雨、地震などの自然災害や事故が発生した場合、生産能力の低下や製造コストの増加により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。リスク管理規程や緊急事態対策規程を策定し、災害発生時には対策本部を立ち上げ、被害を最小限に抑える体制を整備しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。