岡山製紙 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岡山製紙 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する岡山製紙は、中芯原紙や紙管原紙を主体とした板紙と美粧段ボールの製造・販売を主力事業として展開しています。直近の業績では、板紙製品の販売数量減少により売上高は前年を下回りましたが、固定費増加などをこなしつつ当期純利益は増加し、減収増益を達成しています。


※本記事は、岡山製紙の有価証券報告書(第185期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 岡山製紙ってどんな会社?


中芯原紙や紙管原紙をはじめとする板紙と、青果物や食品向けの美粧段ボールを製造・販売する製紙企業です。

(1) 会社概要


1907年に板紙の製造を目的に設立された老舗企業です。1973年に加工工場を新設して美粧段ボール事業を開始し、現在の事業基盤を確立しました。2004年に株式を上場したのち、2009年には王子ホールディングスが筆頭株主となり、同社グループと強固な関係を築きながら地域に根ざした事業を展開しています。

現在の従業員数は単体で204名です。筆頭株主は事業会社である王子ホールディングスで、過半数に近い株式を保有するその他の関係会社として製品の販売取引などを行っています。第2位は海外金融機関のINTERACTIVE BROKERS LLC、第3位は主要取引銀行である中国銀行となっています。

氏名 持株比率
王子ホールディングス 48.84%
INTERACTIVE BROKERS LLC 5.07%
中国銀行 4.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は宮田正樹氏が務めています。監査等委員5名中4名が社外取締役であり、取締役全体における社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
宮田 正樹 代表取締役社長 1988年4月同社入社。製紙工場長、執行役員製紙本部長などを経て、2023年8月より現職。
後藤 直樹 取締役 1993年1月高崎製紙入社。同社執行役員製紙本部副本部長などを経て、2026年6月より現職。
狩山 昌功 取締役 1984年4月同社入社。製紙本部製造部長、執行役員製紙本部長などを経て、2023年8月より現職。
加藤 理夫 取締役 1985年4月神崎製紙入社。王子タック経営管理部長、同社執行役員管理本部長などを経て、2024年8月より現職。
岡﨑 泰夫 取締役常勤監査等委員 1980年4月中国銀行入行。同行取締役監査等委員などを経て、2023年8月より現職。


社外取締役は、田井廣志(元王子ホールディングス監査役)、中野学(元クラレ事業部副事業部長)、加来典子(弁護士)、岡﨑達也(岡山ガス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「板紙事業」および「美粧段ボール事業」を展開しています。

板紙事業


段ボール製造用原紙の一品種である中芯原紙および、紙、布、セロファンなどの巻しんに使用される紙管原紙の製造販売を行っています。品質の安定化とコストパフォーマンスを実現するため、自動制御装置を導入し24時間体制で製造しています。

顧客となる包装資材メーカーや関連会社などへの製品販売により収益を得ています。運営は同社が行っており、王子ホールディングスの子会社である森紙販売、佐賀板紙、王子コンテナーなどを通じた販売取引も展開しています。

美粧段ボール事業


青果物、食品、家電製品等の包装箱や贈答箱の製造販売を行っています。日本初導入の6色インクジェットプリンターを活用し、多品種小ロットやバリアブル印刷といった新たなパッケージニーズに対応しています。

電化製品や青果物などを扱う企業への美粧段ボールケースの販売により収益を獲得しています。運営は同社が担っており、製紙工場と加工工場を併設した一貫体制により品質と納期を管理し、トータルコストの面で優位性を発揮しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな増加傾向にあり、100億円台を安定して推移しています。経常利益は原燃料価格の変動などの影響を受け増減がありますが、一定の利益水準を確保しており、環境の変化に対応した経営を継続しています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 101億円 109億円 115億円 115億円 112億円
経常利益 8億円 7億円 18億円 11億円 11億円
利益率(%) 7.5% 6.4% 15.5% 10.0% 9.7%
当期純利益 6億円 5億円 12億円 8億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高は国内板紙需要の伸び悩みにより前年比で減少しました。利益面では製品価格の改定を進めたものの、固定費の増加などが影響し、売上総利益および営業利益ともに微減となっています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 115億円 112億円
売上総利益 29億円 27億円
売上総利益率(%) 24.8% 24.4%
営業利益 10億円 9億円
営業利益率(%) 9.0% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、運搬費が9億円(構成比51%)、従業員給料及び賞与が3億円(同19%)を占めています。売上原価については、当期製品製造原価が83億円(構成比98%)と大部分を占めており、製造工程における材料費や経費が大きなウエイトを占める構造となっています。

(3) セグメント収益


板紙事業は、国内需要が力強さに欠けた影響で販売数量が減少し、減収となりました。一方、美粧段ボール事業は主力の青果物向け製品などで価格改定が進んだことにより、堅調に推移して増収を確保しています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
板紙事業 102億円 98億円
美粧段ボール事業 13億円 14億円
連結(合計) 115億円 112億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF -16億円 17億円
投資CF -4億円 -6億円
財務CF -2億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「すべてのステークホルダーとの調和のもと、共存の精神で200年企業をめざす」を経営理念として掲げています。株主、取引先、地域社会、従業員などすべてのステークホルダーにとって存在価値のある、良き企業市民として評価され、事業活動を続けていくことを目指しています。

(2) 企業文化


秩序ある競争の原理と公正の原則を貫く経営活動を基本姿勢としています。社会環境の変化に対応し顧客から信頼される企業を目指すとともに、企業の社会的責任を自覚し、持続的発展が可能な循環型社会の実現のため環境対策の強化に取り組み、企業価値の向上に努める文化があります。

(3) 経営計画・目標


持続的発展および企業価値向上達成の客観的な指標として、営業利益およびROE(自己資本利益率)を位置付けて経営を行っています。

* 営業利益5億円
* ROE7~10%

(4) 成長戦略と重点施策


従来にも増して需要に見合った生産体制の構築と更なるコスト低減、適正価格の維持と新規取引先の開拓に努めています。デジタル印刷を中心とした提案力の強化による営業基盤の確立や、省エネ・生産効率向上に寄与する投資の積極的な推進を重点施策として展開しています。

* CO2排出量(Scope1,2)を2030年度までに2005年度比で55%削減

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最優先すべき資本のひとつと位置づけ、継続的に投資を行うことで競争力の確保を目指しています。現場のスペシャリストと事業をリードするリーダー層の両輪の獲得・育成を推進し、多様な社員が活躍できる職場環境の整備や健康経営を通じて従業員のエンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 43.1歳 16.0年 5,888,022円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.9%
男女賃金差異(正規雇用) 80.8%
男女賃金差異(非正規雇用) -


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の割合(10.9%)、労働災害度数率(5.4人/100万時間)、死亡・重篤災害数(0件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内需要の減少及び市況価格の下落


板紙事業と美粧段ボール事業はいずれも内需型であり、国内景気の影響を大きく受けます。国内景気の後退による需要の減少や市況価格の下落が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は新規取引先の発掘や適正な販売価格の維持に努めています。

(2) 原燃料購入価格の上昇


主原料の古紙は国内外の需給動向により、主燃料の産業用ガスは国際市況や為替相場によって価格が変動します。これら原燃料の購入価格が上昇した場合、コスト増につながるリスクがあります。複数の仕入先の確保や備蓄量の安定化によりリスク低減を図っています。

(3) 災害による影響


台風、豪雨、地震などの自然災害や不測の事故が発生した場合、生産能力の低下や製造コストの増加をもたらす可能性があります。対策としてリスク管理規程や緊急事態対策規程を策定し、被害を最小限に防ぐ体制を整備しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。