倉元製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

倉元製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

倉元製作所は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、フラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板加工や半導体加工、業務用支援ロボット事業を展開する企業です。直近の業績トレンドは、業務用支援ロボット事業の成長などで増収となったものの、新規事業への先行投資やのれん償却などにより減益となっています。


※本記事は、株式会社倉元製作所の有価証券報告書(第51期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 倉元製作所ってどんな会社?


同社はFPD用ガラス基板加工を中心に、近年は業務用支援ロボット事業やペロブスカイト太陽電池などの新規分野へ展開する企業です。

(1) 会社概要


1975年に宮城県で倉元製作所として設立され、液晶ガラス基板の加工を開始しました。1995年に日本証券業協会に株式を上場し、その後ジャスダックを経て現在はスタンダード市場に上場しています。2024年にはアイウイズロボティクスを株式交換により取得し、業務用支援ロボット事業に本格参入しました。

従業員数は連結で74名、単体で56名です。筆頭株主は有価証券の取得等を行うニューセンチュリー有限責任事業組合で、第2位は個人投資家のWANG CHI氏、第3位は役員が代表を務める関連会社の那須マテリアルです。外部との提携や新たな経営陣を迎え、事業ポートフォリオの転換を図る体制となっています。

氏名 持株比率
ニューセンチュリー有限責任事業組合 13.41%
WANG CHI 13.34%
那須マテリアル 6.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。
代表取締役CEOは星彰治氏、代表取締役社長兼CFOは小峰衛氏が務めています。取締役6名のうち社外取締役は1名で、社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
星彰治 取締役CEO(代表取締役) 那須マテリアル代表取締役等を経て、2021年3月に同社取締役へ就任。AKIMATE holdings取締役、日商代表取締役などを歴任し、2026年3月より現職。
小峰衛 取締役社長兼CFO(代表取締役) 矢野経済研究所やディー・ブレイン代表取締役等を経て、2020年4月に同社取締役へ就任。エイケイ・コンサルティング代表取締役などを務め、2026年3月より現職。
渡邉敏行 取締役 武田製薬工業を経て、2003年5月にベビーピュアを設立し代表取締役に就任。2024年3月に同社代表取締役社長を務めた後、2026年3月より現職。
王馳 取締役 中国比亜迪股份有限公司などを経て、2021年6月に小达人智能科技代表取締役に就任。2023年4月にアイウイズロボティクス代表取締役に就任し、2025年3月より現職。
江幡誠 取締役 フィットネス・コミュニケーションズやスポーツアカデミーの代表取締役、日本M&Aセンターなどを経て、2026年3月より現職。


社外取締役は、本郷邦夫(元DG Technologies取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、基板事業、半導体加工事業、不動産賃貸事業、業務用支援ロボット事業およびその他の事業を展開しています。

基板事業

フラットパネルディスプレイ(FPD)向けの液晶ガラス基板や成膜ガラス基板などの加工販売を行っています。主な顧客はガラス素材メーカーや最終ユーザーなどであり、営業と技術の両面から顧客ニーズを的確に捉えた付加価値の高い基板製品を供給しています。

顧客であるガラスメーカー等への製品出荷に伴い、製品の販売代金を収益として受け取ります。同事業の運営は主に倉元製作所が行っており、コストダウンと生産性向上による価格競争力の強化を図りながら、継続的な受注確保に努めています。

半導体加工事業

半導体製造装置関連の部品を中心に加工および販売を展開しています。主に石英やSiC(炭化ケイ素)といった特殊な素材を用いた部品加工を手掛けており、半導体関連の顧客ニーズに適合する精密な加工技術を活かした製品を提供しています。

顧客に対する半導体関連製品の出荷時に販売代金を受け取る収益モデルです。同事業の運営は倉元製作所が行っており、既存の切断や研磨技術を活用した精密加工事業の新規市場への参入など、経営資源を活用した新規案件の収益化を目指しています。

不動産賃貸事業

自社で保有している土地や建物を外部の顧客へ賃貸するサービスを提供しています。主に宮城県の若柳工場などの不動産の一部を有効活用し、安定的な収益基盤の一つとして事業を展開しています。

賃貸借契約に基づき、外部顧客から毎月一定の不動産使用料等を収益として受け取ります。同事業の運営は倉元製作所が行っており、遊休資産の有効活用と収益の多角化に貢献しています。

業務用支援ロボット事業

AIを活用した全自動の業務用お掃除ロボットなどの販売およびサービス提供を行っています。労働力不足などの社会課題に対応するソリューションとして、各種施設や事業者向けに先端技術を搭載したロボット製品を幅広く展開しています。

顧客に対するロボット製品の販売代金を収益として受け取ります。同事業の運営は主に2024年に子会社化したアイウイズロボティクスが行っており、新たな市場開拓を通じて受注の安定および拡大に大きく寄与する成長分野として注力しています。

その他

報告セグメントに含まれない事業として、人材派遣事業などを展開しています。多様化する働き方のニーズに応えるとともに、同社グループ内の経営資源やノウハウを柔軟に活用した事業活動を行っています。

顧客へのサービス提供に伴う対価を収益として受け取るモデルです。同事業の運営は倉元製作所などのグループ企業が行っており、主力事業を補完する形で事業ポートフォリオの一部を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績は、業務用支援ロボット事業を子会社化した影響などにより、売上高は増加傾向にあります。一方で、新規事業への研究開発費の計上や子会社取得に伴うのれんの一括償却、減損損失の計上などにより、利益面では経常損失および親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、収益構造の改善が急務となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 15.7億円 20.1億円
経常利益 0.3億円 -14.8億円
利益率(%) 1.9% -73.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.3億円 -30.8億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は安定して推移しています。しかし、研究開発費や支払手数料などの大幅な増加により販売費及び一般管理費が急増し、営業利益は黒字から大幅な赤字へと転落しており、コスト管理の徹底が求められる状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 15.7億円 20.1億円
売上総利益 4.2億円 5.7億円
売上総利益率(%) 27.1% 28.5%
営業利益 1.0億円 -14.2億円
営業利益率(%) 6.1% -70.8%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が9.3億円(構成比47%)、支払手数料が1.8億円(同9%)を占めています。売上原価については、労務費や経費などの固定費負担に加えて、商品仕入高の増加が売上原価の上昇要因となっています。

(3) セグメント収益


セグメントごとの収益状況を見ると、基板事業および半導体加工事業は受注減により減収減益となっています。一方で、業務用支援ロボット事業は子会社化の通期寄与により大幅な増収を達成したものの、先行投資やのれん償却費の負担によってセグメント損失を計上し、全体の営業赤字の主要因となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
基板事業 7.3億円 6.1億円 3.1億円 0.6億円 9.5%
半導体加工事業 3.4億円 2.3億円 0.2億円 -0.2億円 -6.8%
不動産賃貸事業 1.0億円 0.9億円 0.7億円 0.7億円 77.4%
業務用支援ロボット事業 3.9億円 10.2億円 0.6億円 -0.2億円 -2.4%
その他 - 0.6億円 - 0.2億円 39.9%
調整額 - - -3.7億円 -15.4億円 -
連結(合計) 15.7億円 20.1億円 1.0億円 -14.2億円 -70.8%


営業CFはマイナス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスの「勝負型」となっています。本業の営業活動によるキャッシュ・フローは赤字が続いているものの、株式の発行や借入などの資金調達によって手元資金を確保し、新規事業であるペロブスカイト太陽電池事業などの将来成長に向けた設備投資を継続している局面です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -3.7億円 -2.3億円
投資CF -4.3億円 -4.5億円
財務CF 14.0億円 1.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-139.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も39.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社会に対する責任と貢献を企業の行動原理とする」ことを社是のひとつとして掲げています。開かれた企業として透明性と公平性を確保し、株主や投資家への適切かつ迅速な情報開示を行うことで、企業価値の最大化と健全かつ継続的な成長を実現し、社会への貢献とステークホルダーへの責任を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、コーポレート・ガバナンスを経営上最も重要な課題のひとつと位置付け、コンプライアンス(法令・規則の遵守)の徹底を重視しています。リスク管理委員会を通じた情報収集や評価、顧問弁護士等の専門家と連携した体制整備により、潜在するリスクに適切に対応するとともに、反社会的勢力との関係を遮断する姿勢を組織全体で共有しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業拡大を通じて社会的価値を創造し、その成果を株主・役職員・社会・会社で分かち合うことにより、各ステークホルダーとの関係を強め、企業価値の持続的な向上を目指す方針を掲げています。具体的な経営目標として、以下の数値を設定しています。

・目標配当性向:20%

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、価格競争力の向上による採算性の維持と売上拡大を推進しています。基板事業では、ガラス基板加工のコストダウンや生産性向上を図りつつ、顧客との連携強化による受注拡大や非FPD事業などの新規分野の開拓に注力しています。また、新規事業としてペロブスカイト太陽電池事業の立ち上げに向けた設備投資を進めており、再生フェーズから再成長フェーズへの転換を図るための経営資源の活用を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、性別や国籍などを理由とした形式的な登用は行わず、各人の業務内容や適性に基づき公正かつ適切に評価する方針を採用しています。人材の多様性の確保を含む人材育成方針については、同社グループの実情を踏まえ、現実的かつ実効性のある計画のとりまとめや作成を検討しており、人事システムの運用見直しを通じた従業員のモチベーション向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 50.9歳 23.1年 3,318,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

同社および連結子会社は関連法令による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) レアメタル等の材料調達リスク

同社の事業において使用する材料(研磨剤等)は、レアメタルやレアアースに分類される特殊な部材です。これらの輸出制限や国際紛争、国際市況における価格高騰、生産状況の大幅変動などによって必要な数量を確保できなかった場合、生産活動に支障をきたし、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新規事業における資金不足リスク

同社は新規事業としてペロブスカイト太陽電池事業を推進し、設備投資などに必要な資金調達を行っています。しかし、想定以上の設備投資額の増加や資材調達の遅れ、建築コストの上昇、為替相場の変動などにより追加の資金調達が必要となる場合があり、資金不足によって事業開始が遅れるリスクを抱えています。

(3) 量産ラインの工事遅延リスク

ペロブスカイト太陽電池事業に関して、国内外のメーカーに発注した生産設備が工場へ搬入・設置されつつあります。しかし、追加設備の調達遅れや工事の遅延、資金不足などにより量産ラインの工事が遅れた場合、事業の開始が計画より遅れる可能性があり、その場合は海外からのOEM調達も検討するとしています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。