※本記事は、TONE株式会社 の有価証券報告書(第90期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. TONEってどんな会社?
作業工具の総合メーカーとして、ボルト締結に関連する製品を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1938年に前田金属工業を設立し、1963年に大阪証券取引所市場第二部へ上場しました。2013年には東京証券取引所市場第二部へ上場し、現在のTONEへ商号変更を行っています。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。
連結従業員数は160名、単体では111名です。筆頭株主はスパイラルキャピタルパートナーズ、第2位は自動車用品等の開発・販売を行う中央自動車工業、第3位は日本生命保険となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| スパイラルキャピタルパートナーズ | 13.52% |
| 中央自動車工業 | 8.71% |
| 日本生命保険 | 4.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員最高経営責任者は矢野大司郎氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 矢野 大司郎 | (代表取締役)取締役社長執行役員最高経営責任者 | 1981年同社入社。常務取締役等を経て2021年代表取締役社長就任。2024年より現職。 |
| 平尾 元宏 | 取締役常務執行役員開発部長品質保証部長 | 1991年同社入社。開発部長、常務取締役等を経て、2024年TONE ALPHA代表取締役および同社取締役常務執行役員に就任し現職。 |
| 平尾 昌彦 | 取締役上席執行役員営業本部長 | 2001年同社入社。開発部長、河内長野工場長、製造部長、取締役を経て、2024年より現職。 |
| 井上 昌良 | 取締役(常勤監査等委員) | 1989年同社入社。管理部長、執行役員管理部長等を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、粕井隆(東邦ビジネスコンサルタント代表取締役社長)、松井大輔(松井公認会計士事務所所長)、雨宮沙耶花(弁護士法人淀屋橋・山上合同弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内」および「海外」事業を展開しています。
■(1) 国内事業
日本国内において、作業工具類(ハンドツール)や機器類(電動工具、トルク管理機器等)の製造および販売を行っています。ホームセンターや機械工具商を通じてプロの整備士や産業界へ製品を供給しています。
収益は主に国内の販売代理店や卸売業者からの製品販売代金によって得ています。運営は主にTONEが担い、連結子会社のTONE ALPHAが販売機能の一部を担っています。
■(2) 海外事業
海外市場において、ボルト締結機器やトルク管理機器、作業工具類の販売を行っています。特に欧州、北米、アジア地域において、インフラ建設や産業用ニーズに応える製品を展開しています。
収益は海外の販売代理店や現地顧客からの製品販売代金となります。運営はTONEに加え、ベトナムの製造拠点であるTONE VIETNAM、米国販売子会社のTONE AMERICASなどが連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は61億円から76億円へと拡大傾向にありますが、直近は横ばいで推移しています。経常利益は11億円から13億円前後で安定的に推移していましたが、当期は原材料価格の高騰や円安の影響等により減益となりました。利益率は14%以上を維持しており、高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 61億円 | 64億円 | 68億円 | 76億円 | 76億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 11億円 | 13億円 | 13億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | 19.5% | 16.9% | 18.6% | 16.6% | 14.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 7億円 | 8億円 | 9億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高は微増しましたが、売上原価の増加により売上総利益および営業利益は減少しました。営業利益率は依然として13.2%と高い水準を維持していますが、コスト上昇の吸収が課題となっています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 76億円 | 76億円 |
| 売上総利益 | 31億円 | 30億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.4% | 39.0% |
| 営業利益 | 11億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 14.8% | 13.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当賞与が5.2億円(構成比26%)、包装荷造・運送費が2.5億円(同13%)を占めています。売上原価は46億円で、売上高に対する構成比は61%となっています。
■(3) セグメント収益
国内セグメントは、作業工具類が堅調でしたが機器類の販売が伸び悩み、減益となりました。一方、海外セグメントは北米での大型案件獲得などにより増収増益を達成しました。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内 | 61億円 | 61億円 | 7億円 | 5億円 | 8.8% |
| 海外 | 15億円 | 15億円 | 5億円 | 5億円 | 30.8% |
| 連結(合計) | 76億円 | 76億円 | 11億円 | 10億円 | 13.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -8億円 | 6億円 |
| 投資CF | -5億円 | -4億円 |
| 財務CF | 17億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均(スタンダード市場7.2%)と同じ水準です。また、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.8%で市場平均(スタンダード製造業57.5%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「ボルティング・ソリューション・カンパニー」としてボルト締結に係るすべての課題を解決し、社会の発展に貢献するとともに、地球上に無くてはならない企業を目指しています。顧客の要望を的確に捉え、信頼、安心、満足を与える製品供給を使命としています。
■(2) 企業文化
「4つの約束」を行動指針として掲げています。具体的には、「社員の幸せの実現(雇用の保証等)」、「社会への貢献(健全経営の継続等)」、「顧客との約束(品質提供、納期厳守等)」、「株主との約束(利益責任の完遂等)」を重視し、誠実な事業活動を行う文化があります。
■(3) 経営計画・目標
売上高および売上高営業利益率を重要経営指標として掲げています。具体的な数値目標については今回の有価証券報告書には記載がありませんが、売上規模の拡大と本業における適正利益の確保を通じて企業体質の強化を図り、ステークホルダーへの利益還元を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
ボルト締結分野における新製品投入や、4P(製品・価格・流通・販売)の強化による新規顧客獲得を推進しています。特に海外市場においては、欧州や中南米、アジア等の新規市場開拓を積極的に進めています。
* 生産および品質力の強化による原価低減
* モータースポーツ等を通じたブランド力強化
* トルク管理機器等の開発強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業は人なり」を原点に、新卒・キャリア採用を含めた優秀な人材の確保と育成を最重要課題としています。スキルアップ応援制度による自主的な能力開発支援や、階層別研修の実施により人材育成を推進しています。また、多様な働き方の支援や安全で働きやすい職場環境づくりにも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 43.1歳 | 18.0年 | 6,721,751円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.4% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※男性育児休業取得率および非正規雇用の男女賃金差異が「-」となっている詳細な理由は有報に記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給取得率(52.3%)、1ヶ月当たり残業時間(5.4時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向による影響
主要市場である国内外において、景気減速による設備投資の減少や個人消費の減退が発生した場合、売上高が減少し経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新市場や新規顧客の開拓、新製品の投入により対応する方針です。
■(2) 品質問題による影響
ISO9001に基づき厳格な品質管理を行っていますが、万が一製品に欠陥が生じ、製造物責任賠償や大規模なクレームが発生した場合、多額のコスト発生やブランド評価の低下により、財政状態や経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
■(3) 債権の貸倒れによる影響
特定の取引先に過度に依存してはいませんが、取引先の倒産や経営悪化により債権回収が困難になった場合、損益に悪影響を及ぼすリスクがあります。与信管理の徹底や前受金制度、ファクタリングの活用によりリスク低減を図っています。
■(4) 模倣品の出現による影響
国内外でブランド価値の向上に努めていますが、模倣品が市場に出回った場合、ブランド価値の毀損や売上減少を招く恐れがあります。これに対しては、国内外での商標出願・登録や特許取得を積極的に進め、知的財産権の保護に努めています。



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