※本記事は、東洋電機製造株式会社の有価証券報告書(第165期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
記事タイトル:東洋電機製造転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
東証スタンダード上場の東洋電機製造は、交通・産業・ICT向け電気機械器具の製造販売と付帯工事を主力事業とする企業です。鉄道事業者向けや海外の需要を確実に取り込み、直近の業績は売上高が横ばいながらも経常利益は大幅な増益を達成しました。収益力の強化と新事業の創出による更なる企業価値向上が期待されます。
1. 東洋電機製造ってどんな会社?
交通・産業・ICT向けの電機品やインフラシステムを開発・製造する電気機器メーカーです。
■(1) 会社概要
1918年、英国企業との技術提携により鉄道車両用電気機器の国産化を目的に設立されました。1949年に東京証券取引所へ上場し、以降は交通システムや産業用システムの製造拠点拡充を進めています。近年は中国、タイ、米国などに現地法人を設立し、グローバルな視点での事業展開を推進しています。
現在の従業員数は連結で1,195名、単体で834名です。筆頭株主は事業会社で主要取引先でもある東日本旅客鉄道で、第2位は東洋電機従業員持株会、第3位は東洋電機協力工場持株会です。事業会社や関係者との強固なネットワーク基盤を持ち、安定した事業運営を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東日本旅客鉄道 | 10.64% |
| 東洋電機従業員持株会 | 5.53% |
| 東洋電機協力工場持株会 | 4.06% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は渡部朗氏です。社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡部朗 | 代表取締役社長 | 同社生産本部横浜製作所交通工場制御設計グループマネージャー、研究センター副センター長、執行役員経営企画部長等を経て、2020年8月より現職。 |
| 寺島憲造 | 取締役会長 | 同社交通システム事業部海外営業部長、取締役営業本部長、代表取締役専務、代表取締役副社長、代表取締役社長等を経て、2022年8月より現職。 |
| 谷本憲治 | 取締役専務執行役員 | 日本生命保険にて財務関連の要職を歴任後、同社に入社。執行役員財務部長、上席執行役員大阪支社長等を経て、2022年8月より現職。 |
| 貫名純 | 取締役専務執行役員 | 三菱UFJ銀行にて営業関連の要職を歴任後、同社に入社。財務部長、常務執行役員経営企画部長等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、間狩泰三(元帝人常務執行役員)、町田悠生子(弁護士・法律事務所パートナー)、杉﨑康昭(元大阪チタニウムテクノロジーズ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、交通事業、産業事業、ICTソリューション事業およびその他事業を展開しています。
■(1) 交通事業
鉄道車両用、新交通システム車両用、特殊車両用の電機品や、鉄道用電力貯蔵装置の製造・販売および付帯工事を提供しています。国内外の鉄道事業者を主な顧客としており、安定したインフラを支えています。
収益源は、鉄道事業者等に対する製品の販売や保守部品の提供による代金です。運営は同社を中心に、東洋工機や泰平電機などの国内子会社、および中国や米国の現地法人がそれぞれの地域や部品製造を分担して行っています。
■(2) 産業事業
生産・加工設備駆動システムや自動車用試験システム、発電・インフラシステム等の製造・販売および付帯工事を提供しています。製造業や自動車メーカー、官公庁、金融機関などを主な顧客としています。
収益源は、各企業や官公庁に対する設備の販売やシステム納入による代金です。運営は同社のほか、東洋産業やティーディー・ドライブなどの国内子会社、およびタイの現地法人が連携して事業を展開しています。
■(3) ICTソリューション事業
駅務機器システムや、移動体および施設の監視・制御に向けたIoTソリューション(クラウド型遠隔監視制御システム)等の開発・製造・販売および付帯工事を提供しています。
収益源は、鉄道・バス事業者等に対するキャッシュレス対応システムや遠隔監視システムの販売・納入による代金です。同事業の運営は同社が単独で行っています。
■(4) その他
労働者派遣に関連する業務や、福利厚生施設の管理などの事業を展開しています。同社グループ内の円滑な業務遂行をサポートする役割を担っています。
収益源は、人材派遣や施設管理を通じたサービス提供による手数料や利用料です。運営は主に国内子会社である東洋商事が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な成長を経て、直近は横ばい水準で推移しています。利益面では採算性の向上等により継続的な増益を果たしており、特に経常利益と当期利益は直近3期間で大きく拡大し、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 321億円 | 405億円 | 405億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 26億円 | 35億円 |
| 利益率(%) | 4.6% | 6.4% | 8.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 17億円 | 27億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期とほぼ同水準を維持する一方で、売上総利益が増加し、売上総利益率は改善しています。それに伴い営業利益も拡大し、本業の収益力が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 405億円 | 405億円 |
| 売上総利益 | 106億円 | 118億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.1% | 29.1% |
| 営業利益 | 24億円 | 31億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 7.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料諸手当が21億円(構成比25%)、研究開発費が11億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
交通事業は民鉄向けや海外向けの増加により利益が大きく拡大しました。産業事業は自動車用試験機等が牽引し売上・利益ともに堅調です。一方、ICTソリューション事業は前期の大口案件の反動減等により損失となりました。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益(2026年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 交通事業 | 278億円 | 274億円 | 36億円 | 53億円 | 19.4% |
| 産業事業 | 109億円 | 120億円 | 14億円 | 14億円 | 11.6% |
| ICTソリューション事業 | 18億円 | 11億円 | 5億円 | -0.3億円 | -2.8% |
| その他 | 4億円 | 4億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 405億円 | 405億円 | 24億円 | 31億円 | 7.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は本業が赤字(営業CFマイナス)ですが、将来の成長を見据えて借入等で資金を調達(財務CFプラス)し、事業への投資を継続している「勝負型」の局面にあると言えます。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | -8億円 |
| 投資CF | -3億円 | -1億円 |
| 財務CF | -20億円 | 2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「倫理を重んじ社会・顧客に貢献する」「進取創造の気風を養い未来に挑戦する」「品質第一に徹し信用を高める」という経営理念を掲げています。社会・顧客・株主に貢献し、技術を活かした高品質な製品やサービスをグローバルに提供し続けることで、持続可能な社会の実現に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
経営理念を実践するための「行動指針」として、顧客に対してタイムリーかつスピーディーに応えることや、先見性と創造性をもってチャレンジすることを重視しています。また、常に自己啓発に励んでスキルを向上させ、広い視野で互いに影響し合いながら成長する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2030年5月期を最終年度とする中期経営計画「サステナブル2030」を策定し、持続的な企業価値の向上と資本コストを意識した資産効率の改善を目指しています。具体的な数値目標は以下の通りです。
* 売上高:480億円
* 営業利益率:9.0%
* ROE:10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
「マーケットイン」の視点を起点とした新事業・製品の創出や戦略的な海外展開による成長戦略を推進しています。また、量より質を追求した営業強化や徹底したコスト削減による収益体質強化、政策保有株式の縮減等を通じたBSマネジメントの強化、企業風土や行動様式の変革を含む構造改革に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な企業価値の向上を支える最も重要な経営資源は人材であるという考えのもと、多様な人材の活躍を推進しています。女性の積極採用や障がい者雇用の推進を図るほか、技術・技能の次世代への伝承を目的とした階層別研修やOJTを実施し、自己実現し続ける企業グループを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 42.7歳 | 16.4年 | 6,924,050円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 64.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 63.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 52.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(3.2%)、管理部門係長クラス女性従業員比率(34.8%)、管理部門管理職クラス女性従業員比率(10.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 品質・安定供給に対するリスク
鉄道等の社会・公共インフラにおいて、製品に起因する大規模な障害や品質不具合が生じた場合、経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。同社は品質マネジメントシステムを運用し、安定的な供給と品質水準の確保に努めています。
■(2) 人材の確保と育成に関するリスク
熟練技術者の退職や人材流出、採用活動の停滞などにより必要な人材の確保・育成ができない場合、技術継承が滞り競争力が低下する可能性があります。同社は技術者育成委員会を設置し、高度技術の継承や従業員のエンゲージメント向上施策を推進しています。
■(3) コンプライアンス・人権に関するリスク
国内外の法令や規制違反が発生した場合、社会的信用の失墜や取引停止を招く可能性があります。また、サプライチェーンにおける紛争鉱物や強制労働の問題に適切に対応できない場合も事業に影響を及ぼすため、コンプライアンス教育や内部通報窓口の整備によりリスク低減を図っています。



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