東洋電機製造 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東洋電機製造 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する東洋電機製造は、鉄道車両用電機品を中心とした交通事業や産業事業、ICTソリューション事業を展開しています。2025年5月期は、交通事業での大型案件の進捗や民鉄向け製品の増加等により、売上高405億円、純利益21億円の大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、東洋電機製造株式会社 の有価証券報告書(第164期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東洋電機製造ってどんな会社?


鉄道車両用電機品を主力に、産業用設備やICTシステム等の社会インフラを支える製品を提供する重電メーカーです。

(1) 会社概要


1918年、鉄道車両用電気機器の国産化を目的に英国ディッカー社と技術提携し設立されました。1949年に東京証券取引所に上場し、2000年には東洋工機を吸収合併しました。2018年には滋賀竜王製作所を開設し、生産体制を強化しています。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。

2025年5月31日現在の連結従業員数は1,146名、単体では784名です。筆頭株主は交通事業で取引関係のある東日本旅客鉄道で、第2位は東洋電機従業員持株会、第3位は東洋電機協力工場持株会となっており、事業パートナーや従業員・取引先が主要な株主となっています。

氏名 持株比率
東日本旅客鉄道 10.56%
東洋電機従業員持株会 5.53%
東洋電機協力工場持株会 4.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は渡部朗氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
渡部 朗 代表取締役社長 1982年同社入社。研究センター副センター長、事業開発部長、経営企画部長、交通事業部長等を歴任。2020年8月より現職。
寺島 憲造 取締役会長 1972年同社入社。取締役営業本部長、交通事業部長、代表取締役社長等を歴任。2022年8月より現職。
谷本 憲治 取締役専務執行役員 1981年日本生命保険相互会社入社。同社財務第一部長を経て2012年同社入社。財務部長、大阪支社長等を歴任。2022年8月より現職。
貫名 純 取締役専務執行役員 1988年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2017年同社入社。財務部長、経営企画部長等を歴任。2025年6月より現職。


社外取締役は、水元公二(元日新製鋼代表取締役副社長)、間狩泰三(元帝人グループ常務執行役員)、町田悠生子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「交通事業」、「産業事業」、「ICTソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 交通事業


鉄道車両用電機品、新交通システム車両用電機品、特殊車両用電機品、鉄道用電力貯蔵装置等の製造・販売および付帯工事を行っています。主な顧客は国内外の鉄道事業者や車両メーカーです。

収益は、鉄道事業者等に対する製品の販売や保守サービス等から得ています。運営は、同社のほか、東洋工機、泰平電機、洋電貿易(北京)有限公司などの連結子会社が行っています。

(2) 産業事業


産業用生産・加工設備用システム、自動車試験システム、発電・電源システム、上下水道設備システム、車載用電機品等の製造・販売および付帯工事を行っています。一般産業分野の多様な顧客に対し、インフラや生産設備向け製品を提供しています。

収益は、各種産業用システムや機器の販売、メンテナンス等から得ています。運営は、同社のほか、東洋産業、ティーディー・ドライブなどの連結子会社が行っています。

(3) ICTソリューション事業


駅務機器システムや、IoTソリューション(クラウド型遠隔監視制御システム)等の製造・販売および付帯工事を行っています。鉄道利用者の利便性向上や設備の効率的な監視・制御に貢献するシステムを提供しています。

収益は、駅務機器やシステムソリューションの提供対価として得ています。運営は主に同社が行っています。

(4) その他


労働者派遣、福利厚生施設の管理および関連業務、建物の一部の賃貸等を行っています。

収益は、人材派遣料や施設管理料、賃貸料等から得ています。運営は主に東洋商事が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、特に直近の2025年5月期は大幅な増収となりました。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに大きく伸長しており、利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 331億円 302億円 310億円 321億円 405億円
経常利益 8億円 8億円 10億円 15億円 26億円
利益率(%) 2.3% 2.5% 3.2% 4.6% 6.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 -11億円 6億円 7億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益が増加しました。販売費及び一般管理費も増加しましたが、増収効果が大きく、営業利益は前年比で大幅に増加し、利益率も向上しています。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 321億円 405億円
売上総利益 82億円 106億円
売上総利益率(%) 25.4% 26.2%
営業利益 9億円 24億円
営業利益率(%) 2.9% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料諸手当が20億円(構成比24%)、研究開発費が11億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


全ての報告セグメントで増収増益となりました。特に交通事業は海外向け案件等の進捗により大幅な増収増益となり、全社の業績を牽引しました。産業事業、ICTソリューション事業も堅調に推移し、利益率の改善に寄与しています。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
交通事業 207億円 278億円 24億円 36億円 13.0%
産業事業 103億円 109億円 10億円 14億円 13.1%
ICTソリューション事業 11億円 18億円 3億円 5億円 29.9%
その他 0.0億円 0.0億円 -0.0億円 0.0億円 0.0%
調整額 -5億円 -4億円 -28億円 -32億円 -
連結(合計) 321億円 405億円 9億円 24億円 5.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCF状況は「健全型」です。本業で稼いだキャッシュ(営業CF)の範囲内で投資活動と借入金の返済を行っており、財務基盤の安定性がうかがえます。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 18億円 6億円
投資CF -4億円 -3億円
財務CF -10億円 -20億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「倫理を重んじ社会・顧客に貢献する」「進取創造の気風を養い未来に挑戦する」「品質第一に徹し信用を高める」という経営理念を掲げています。これらを実践することで社業を発展させ、株主や関係者の期待に応えるとともに、社員と喜びを分かち合うことを目指しています。

(2) 企業文化


「顧客に対しタイムリーかつスピーディーに応える」「何事にも先見性と創造性をもってチャレンジする」「常に自己啓発に励みスキルの向上に努める」などの行動指針を掲げています。創業から100年以上の歴史の中で、技術を活かした高品質な製品・サービスを提供し続ける姿勢を重視し、技術や品質を磨き続け、ものづくりを通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2026年5月期を最終年度とする「中期経営計画2026」を推進しています。「新しい事業・製品の拡大」と「既存事業の徹底した収益体質の改善」を進め、「資本コストを意識した資産効率の改善」を行うことで、以下の数値目標の達成を目指しています。

* 売上高:400億円
* 営業利益率:5%
* ROE:8%

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2026」の目標達成に向け、交通事業では国内の更新需要や海外案件の継続受注に取り組み、産業事業では自動車の電動化開発に向けた試験機や省エネ設備の受注拡大を目指します。ICTソリューション事業では、キャッシュレス化対応やクラウド型遠隔監視システム等の開発を進め、事業領域の拡大を図ります。また、サステナビリティ経営を推進し、企業価値向上に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「中期経営計画2026」において、多様な人材の確保・定着、育成、適材適所の配置等により、組織と人材の活性化を実現するため、人事制度改革に取り組んでいます。また、ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方や就労環境の整備を推進し、従業員エンゲージメントの向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 43.1歳 17.1年 6,169,416円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 59.9%
男女賃金差異(正規雇用) 63.5%
男女賃金差異(非正規) 66.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(3.54%)、女性従業員比率(管理部門係長クラス)(30.4%)、女性従業員比率(管理部門管理職クラス)(8.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 品質・安定供給に関するリスク


鉄道等の社会インフラにおいて、同社製品起因の人命に関わる事象や大規模障害が発生した場合、経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。また、品質不具合や生産遅延により供給責任を果たせない場合、信用低下や業績悪化につながるリスクがあります。同社は品質マネジメントシステムの運用や保険加入等で対策しています。

(2) 人材に関するリスク


熟練技術者の退職や人材流出、採用難等により必要な人材が確保できない場合、技術継承の停滞や品質低下、新製品開発の遅れを招き、競争力や業績が悪化する可能性があります。同社は技術者育成委員会の設置による技術継承や、人事制度改革によるエンゲージメント向上等に取り組んでいます。

(3) コンプライアンス・人権に関するリスク


法令違反等による社会的信用の失墜、ハラスメントによる人材流出、サプライチェーンにおける人権問題への対応不備等が、事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は倫理規範の周知徹底、内部通報窓口の設置、サプライチェーン調査等により、リスク低減と人権尊重の取り組みを推進しています。

(4) 事業環境の変化に関するリスク


人口減少による鉄道旅客数の減少、自動車業界の変革(CASE)、脱炭素社会への移行など、事業環境の急激な変化への対応が遅れた場合、競争力低下や業績悪化の可能性があります。同社は新事業領域の開拓や新製品開発、M&A検討等を推進し、競争力の維持強化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。