※本記事は、株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーション の有価証券報告書(第37期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヴィレッジヴァンガードコーポレーションってどんな会社?
書籍、雑貨、CD等を融合させた「遊べる本屋」をキーワードに、独創的な店舗を展開する小売企業です。
■(1) 会社概要
1986年に現会長の菊地敬一氏が創業し、1988年に有限会社を設立しました。1998年に株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーションを設立し、2003年に店頭登録(後のJASDAQ)を果たしました。2010年には大阪証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場し、2012年には海外子会社を設立するなど事業を拡大しました。2016年に子会社チチカカを売却、2019年には小売事業を新設子会社へ承継する体制変更を行っています。
2025年5月31日現在、連結従業員数は356名、単体従業員数は82名です。筆頭株主は創業者の菊地敬一氏で、第2位はその親族、第3位は金融機関となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 菊地 敬一 | 21.66% |
| 菊地 真紀子 | 5.51% |
| JPモルガン証券株式会社 | 1.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は白川篤典氏です。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菊地 敬一 | 代表取締役会長 | 1973年日本実業出版社入社。1986年同社創業、1988年有限会社ヴィレッジバンガード設立。1998年同社設立に伴い代表取締役就任。2010年より現職。 |
| 白川 篤典 | 代表取締役社長 | 1990年国際証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。2003年同社入社、取締役経営企画室長などを経て2010年より現職。 |
| 佐々木 敏夫 | 常務取締役 | 1978年オリエンタル中村百貨店(現名古屋三越)入社。名古屋三越社長を経て2016年同社入社。2020年より現職。 |
| 加藤 祐貴 | 取締役 | 2001年同社入社。マーケティング本部長、営業本部長などを経て、2019年より子会社ヴィレッジヴァンガード代表取締役。2020年より現職。 |
社外取締役は、立岡登與次(元日本アジア投資社長)、丸山雅史(エステールホールディングス社長)、齋藤理英(齋藤綜合法律事務所代表)、須原伸太郎(ファイントゥデイ副社長CFO)、畠山奨二(ALH社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売事業」および「その他」事業を展開しています。
同社グループは、「遊べる本屋」をキーワードに、書籍、SPICE(雑貨類)、ニューメディア(CD・DVD類)、アパレル、食品等を融合的に陳列・販売しています。店舗ごとに独創的な空間を創出し、POPUPショップやオンライン販売も展開しています。顧客は一般消費者が中心です。
収益は、店舗およびオンラインでの商品販売による売上が中心です。運営は、親会社であるヴィレッジヴァンガードコーポレーションおよび連結子会社の株式会社ヴィレッジヴァンガードが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2022年5月期から2025年5月期にかけて、売上高は250億円前後で横ばいに推移していますが、利益面では苦戦が続いています。2023年5月期は黒字でしたが、2024年5月期以降は営業赤字および経常赤字に転落しました。特に直近の2025年5月期は、赤字幅が拡大し、当期純損失も42億円と大きく悪化しています。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 268億円 | 253億円 | 248億円 | 250億円 |
| 経常利益 | 4.2億円 | 1.5億円 | -9.3億円 | -10.0億円 |
| 利益率(%) | 1.6% | 0.6% | -3.8% | -4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -13.3億円 | 0.2億円 | -11.5億円 | -42.5億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高は微増したものの、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。販売費及び一般管理費は削減を進めましたが、売上総利益の減少をカバーできず、営業損失は前期と同水準で推移しています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 248億円 | 250億円 |
| 売上総利益 | 97億円 | 94億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.0% | 37.5% |
| 営業利益 | -9.2億円 | -9.4億円 |
| 営業利益率(%) | -3.7% | -3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が42億円(構成比41%)、賃借料が23億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、商品区分別の売上高を見ると、SPICE(雑貨類)が主力を占め増加傾向にあります。書籍やニューメディア(CD・DVD類)も微増していますが、全体としては雑貨類の販売動向が業績に大きく影響しています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) |
|---|---|---|
| 書籍 | 19億円 | 19億円 |
| ニューメディア | 10億円 | 11億円 |
| SPICE | 64億円 | 70億円 |
| 本部仕入 | 155億円 | 148億円 |
| その他 | 0.9億円 | 0.8億円 |
| 連結(合計) | 248億円 | 250億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -9.4億円 | 4.9億円 |
| 投資CF | -4.1億円 | -2.7億円 |
| 財務CF | -3.4億円 | -4.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-105.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は10.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は創業以来、「遊べる本屋」をキーワードに、書籍、雑貨、CD等を融合的に陳列・販売する小売業を展開しています。企業理念として、これまでに世の中になかった独創的な空間を顧客に提供し続けること、そしてその「ワン・アンド・オンリー」の空間を進化させ続けることを掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、店長からアルバイトに至るまで、企業理念である「独創的な空間の提供」という目標に対し、強い参画意識を持つよう人材育成に重点を置いています。スタッフ一人一人の個性を融合し、顧客の知的好奇心に寄り添う、同社らしい売場や企画を展開することを重視する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、総資産に占める棚卸資産の割合が高く、資産増加の管理が重要であるため、経営指標としてROA(総資産経常利益率)10.0%を目標としています。また、これに加え、ROE 15.0%および売上高経常利益率 10.0%も目標として掲げています。
* ROA:10.0%
* ROE:15.0%
* 売上高経常利益率:10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、店舗・POPUP・オンラインの3事業を柱に企業価値向上を目指しています。今後は、商品原価や在庫管理の徹底による事業基盤の強化、コンテンツ連携やイベント実施による新たな来店動機の創出に取り組みます。また、業務標準化や効率的なトレーニングによる人材育成、オンライン事業を含む新規事業の拡大にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様性を尊重し、幅広い人材が個性と能力を発揮できる社内環境の整備を進めています。特に、同社の思想を体現・伝播できる人材の育成を重視しており、管理系システムの整備や業務標準化によるコンパクトな本部構築、効率的なトレーニングを通じて、専門性と多様性のある人材の活躍を促進し、持続的な成長を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 41.5歳 | 10.9年 | 3,941,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.9% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 84.5% |
※男性労働者の育児休業取得率は、対象者2名中取得者が0名のため「-」と表記されています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(71.6%)、店舗女性店長比率(43.6%)、平均残業時間(7.5H/月・人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 財政状態に係るリスク
同社グループは、多額の純損失計上により、金融機関との借入契約における財務制限条項に抵触しています。金融機関からは権利行使をしない旨の同意を得ていますが、業績回復が遅れた場合、資金繰りや継続企業の前提に重要な影響を及ぼす可能性があります。借入金依存度が高く、金利変動の影響も受けやすい財務構造です。
■(2) 業績の季節変動
同社グループの業績は、クリスマスやお正月商戦を含む下半期(12月~5月)に偏重する傾向があります。主軸事業において来店客数が増加するこの時期の売上が通期業績に大きく寄与するため、天候不順や消費マインドの低下などにより下半期の商戦が不振だった場合、通期の経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 出店戦略と競合
同社は商業施設へのインショップ出店を多く展開していますが、施設のリニューアルやテナント入替等により、希望条件での営業継続が困難になるリスクがあります。また、業種・業態を超えた販売競争の激化や、人手不足による人件費高騰、原材料高などの厳しい経営環境が続いており、競合との差別化が課題となっています。



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