※本記事は、株式会社コスモス薬品 の有価証券報告書(第43期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. コスモス薬品ってどんな会社?
九州発祥のドラッグストアチェーンで、小商圏への大型店集中出店という独自戦略により、西日本を中心に店舗網を拡大し続けている成長企業です。
■(1) 会社概要
1973年に宇野回天堂薬局として創業し、1983年に有限会社コスモス薬品を設立しました。1993年に本格的なドラッグストアの多店舗展開を開始し、2004年に東証マザーズへ上場、2006年には東証一部へ上場しました。その後もエリアを拡大し、2019年には関東地区へ初出店を果たしています。
現在の従業員数は連結で5,709名、単体で5,702名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社である有限会社萬緑で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)です。創業家が一定の影響力を有する安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社萬緑 | 38.65% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.68% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性2名(うち社外取締役2名)の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は横山英昭氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 横山 英昭 | 代表取締役社長 | 2003年同社入社。店舗運営部エリア長、店舗運営部長、営業本部長などを歴任し、2018年6月より現職。 |
| 柴田 太 | 取締役経営企画部長 | 1998年同社入社。人事総務部広報課長、経営企画部長を経て、2017年に代表取締役社長就任。2018年6月より現職。 |
| 宇野 史泰 | 取締役商品部長 | 2004年同社入社。店舗運営部エリア長、商品部商品一課長、商品部副部長、商品部長を経て、2025年8月より現職。 |
社外取締役は、渡部有紀(弁護士)、原田知代子(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ドラッグストア事業」および「その他」事業を展開しています。
**ドラッグストア事業**
医薬品・化粧品・雑貨・一般食品などの日常生活に必要な消耗品を販売しています。一般消費者を顧客とし、商圏人口1万人をターゲットとした「小商圏型メガドラッグストア」を展開しています。店舗網は九州から関東まで広がり、医薬品や化粧品の専門知識を持つスタッフによる接客販売も行っています。
主な収益源は、一般消費者への商品販売による代金です。また、調剤薬局事業も展開しており、処方箋に基づく調剤報酬も収益の一部となります。運営は主にコスモス薬品が担い、連結子会社のグリーンフラッシュが店舗の総合維持管理業務や特例子会社としての業務を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、堅調な成長を続けています。積極的な新規出店を継続しながらも、経常利益や当期純利益も概ね増加基調を維持しており、規模の拡大と利益確保を両立させています。特に直近では売上高が1兆円を突破しました。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,264億円 | 7,554億円 | 8,277億円 | 9,650億円 | 10,114億円 |
| 経常利益 | 358億円 | 329億円 | 331億円 | 343億円 | 432億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 4.4% | 4.0% | 3.6% | 4.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 271億円 | 232億円 | 238億円 | 244億円 | 310億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は20%前後で推移しており、ローコストオペレーションによって営業利益率を確保しています。販売費及び一般管理費は増加していますが、増収効果がこれを上回り、営業利益は大幅な増益となりました。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,650億円 | 10,114億円 |
| 売上総利益 | 1,883億円 | 2,133億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.5% | 21.1% |
| 営業利益 | 315億円 | 404億円 |
| 営業利益率(%) | 3.3% | 4.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が799億円(構成比46%)、地代家賃が248億円(同14%)、減価償却費が204億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、直近の売上高は前期比で増加しています。積極的な新規出店と、食品を中心とした生活必需品の販売好調が寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) |
|---|---|---|
| ドラッグストア事業 | 9,650億円 | 10,114億円 |
| 連結(合計) | 9,650億円 | 10,114億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスである一方、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスであり、本業で得た資金を新規出店などの設備投資に積極的に回しています。財務活動によるキャッシュ・フローはプラスとなっており、借入等による資金調達も併用して成長投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態と言えます。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 552億円 | 525億円 |
| 投資CF | -573億円 | -554億円 |
| 財務CF | 85億円 | 77億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「コスモス薬品の店があることで、その地域の日常の暮らしが豊かになることを目指します」を経営理念としています。地域の生活者である顧客の満足を追求し、日常生活で必要となる消耗品を満載したドラッグストアを展開することで、地域の生活を便利で豊かなものにすることを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「まじめで一生懸命な人材」の採用に力を入れ、社是に「純情」を掲げています。人を大切にする企業文化を誇りとし、ハラスメントには厳しく対処することで、従業員が安心して働ける環境作りを重視しています。また、時間の節約こそが最大の消費者ニーズであると考え、温かくきめ細やかなサービスの提供に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的に総資産経常利益率を維持または向上させることを目標としています。具体的な数値目標としては、少ない投資で最大限の利益を確保できる体制を構築しつつ、積極的な新規出店を継続することを目指しています。また、CO2排出量削減として、1店舗あたりのCO2排出量を2030年度に2013年度比で50%削減することを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、商圏人口1万人をターゲットとした小商圏型メガドラッグストアを展開し、自社競合を厭わずに商圏を分割してドミナント化を進める戦略をとっています。「インクが染み出すように」徐々に出店エリアを拡大し、物流効率と認知度を高めています。また、調剤事業のシェア拡大や、ローコストオペレーションの徹底による価格競争力の強化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、学歴や年齢、性別に関係なく、本人のやる気を重視した責任あるポストへの登用を進めています。人材教育、マニュアルの整備、コンピュータシステムの充実を重要課題とし、店舗運営のマネジメントレベル向上に取り組んでいます。また、仕事と家庭の両立支援やハラスメント防止など、安心して働ける職場環境の整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 31.7歳 | 7.1年 | 4,887,462円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.7% |
| 男性育児休業取得率 | 35.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 48.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 115.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制について
医薬品等を販売するためには、医薬品医療機器等法に基づき各都道府県の許可等が必要です。また、売場面積1,000㎡超の店舗を出店する際は大規模小売店舗立地法の規制を受けます。これらの法的規制の改正や、出店審査の進捗状況によっては、出店計画の変更や遅延が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の確保・育成について
積極的な店舗展開を進めるには、店舗運営スタッフや薬剤師・医薬品登録販売者といった有資格者の確保が不可欠です。店舗数の拡大ペースに対応した十分な人材の確保や育成ができない場合、出店ペースの減速やサービスレベルの低下を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 敷金及び保証金並びに建設協力金について
店舗物件の契約時に差し入れる敷金、保証金、建設協力金について、預託先の経済的破綻等により回収不能となるリスクがあります。また、契約期間満了前に中途解約をした場合、契約条件によってはこれらが返還されない可能性があり、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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