※本記事は、株式会社パシフィックネットの有価証券報告書(第38期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. パシフィックネットってどんな会社?
IT機器の導入から処分までを一貫して支援し、持続可能な循環型社会に貢献するITサービス企業です。
■(1) 会社概要
1988年7月にパソコン等の販売・レンタルを目的として設立され、1997年に現在のパシフィックネットへ社名を変更しました。2006年2月に東京証券取引所マザーズへ上場し、2017年12月にはケンネットを完全子会社化してコミュニケーション・デバイス事業を本格展開するなど、継続的に業容を拡大しています。
連結従業員数は259名、単体では252名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社であるリッチモンドで、第2位および第3位には創業者の上田満弘氏ならびに上田雄太氏が名を連ねており、創業者およびその一族が上位の大部分の株式を保有する構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| リッチモンド | 39.88% |
| 上田満弘 | 5.89% |
| 上田雄太 | 5.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は上田雄太氏が務めています。社外取締役比率は27.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 上田雄太 | 代表取締役社長 | 2008年ルネサスイーストン入社。2014年同社入社。子会社ケンネット代表取締役社長などを経て、2023年8月より現職。 |
| 上田満弘 | 代表取締役会長 | 1975年殖産住宅相互入社。1988年同社代表取締役社長に就任。子会社取締役などを歴任し、2023年8月より現職。 |
| 金田智行 | 取締役副社長LCM本部本部長 | 1987年本田技研工業入社。2003年同社入社。アセット営業部長などを経て、2022年4月より現職。 |
| 杉研也 | 取締役未来戦略部担当 | 1995年スタンバイ入社。1999年同社入社。東京営業部長などを歴任し、2024年1月より現職。 |
| 老川賢 | 取締役LCM本部副本部長 | 1995年同社入社。新規事業推進室長などを経て、2024年9月より現職。 |
社外取締役は、神谷宗之介(神谷法律事務所開設)、松本次夫(ふじみ監査法人代表社員)、井堂明子(CREA代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ITサブスクリプション事業」「ITAD事業」「コミュニケーション・デバイス事業」を展開しています。
■(1) ITサブスクリプション事業
法人や官公庁向けに、業務で使用するパソコン、サーバー、タブレットといったIT機器をレンタルで提供するとともに、IT環境の運用保守やクラウドなどのサービスを包括的に支援しています。企業のIT部門が抱える人材不足や運用負荷の軽減に貢献しています。
主に機器のサブスクリプション(レンタル)料金や運用保守のサービス料を顧客企業から継続的に受け取るストック型の収益モデルです。この事業の運営は主にパシフィックネットが行っており、グループの安定的かつ継続的な収益基盤となっています。
■(2) ITAD事業
企業から排出される使用済みIT機器をセキュアに回収し、データ消去や適正処理を行うサービスです。情報セキュリティ対策やITガバナンス強化、環境問題への取り組みを支援し、再利用困難な機器については素材化してリサイクル業者へ販売しています。
機器の回収・データ消去に伴うサービス料のほか、高価値な機器はテクニカルセンターで製品化してリユース品として再販することで収益を得ています。この事業の運営も主にパシフィックネットが担っており、中古PC市場の相場を捉えて高収益を確保しています。
■(3) コミュニケーション・デバイス事業
観光業界を中心とした顧客に対し、手のひらサイズの音声ガイド用機器「イヤホンガイド」の製造販売および保守サービスを提供しています。観光地でのガイド用途のほか、国際会議の通訳や工場見学、美術館など幅広いシーンで利用されています。
機器の販売代金やレンタル料、および導入後の保守サービス料を収益源としています。国内旅行関連市場で高いシェアを持つガイドレシーバーの展開を含め、この事業は子会社であるケンネットが主力となって運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の推移をみると、売上高は55.1億円から104.6億円へと右肩上がりで拡大しています。経常利益も3.3億円から12.9億円へと大幅に増加し、利益率も6.1%から12.4%へ改善するなど、高成長と収益性の向上を同時に実現する増収増益基調が明確です。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 55.1億円 | 64.0億円 | 69.2億円 | 81.0億円 | 104.6億円 |
| 経常利益 | 3.3億円 | 5.2億円 | 6.4億円 | 7.7億円 | 12.9億円 |
| 利益率(%) | 6.1% | 8.1% | 9.2% | 9.6% | 12.4% |
| 当期利益 | 2.1億円 | 3.4億円 | 4.3億円 | 5.3億円 | 8.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が23.6億円増加したことに伴い、売上総利益も大幅に拡大しています。売上総利益率は約40%の水準を安定して維持しており、原価のコントロールが機能していることが窺えます。営業利益率も10.4%から13.3%へと上昇し、本業の稼ぐ力が着実に強化されています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 81.0億円 | 104.6億円 |
| 売上総利益 | 32.3億円 | 42.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.8% | 40.3% |
| 営業利益 | 8.4億円 | 13.9億円 |
| 営業利益率(%) | 10.4% | 13.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11.3億円(構成比40%)、地代家賃が3.0億円(同11%)を占めています。売上原価においては、レンタル原価が42.2億円(構成比69%)、商品売上原価が10.5億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ITサブスクリプション事業が安定的な成長を牽引する中、ITAD事業の売上高が前期比で約1.6倍に急拡大し、利益水準も大幅に向上しました。コミュニケーション・デバイス事業も堅調に推移し、全セグメントにおいて増収増益を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益(2026年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ITサブスクリプション事業 | 57.2億円 | 68.0億円 | 6.9億円 | 7.3億円 | 10.8% |
| ITAD事業 | 20.6億円 | 33.0億円 | 7.4億円 | 13.6億円 | 41.3% |
| コミュニケーション・デバイス事業 | 3.2億円 | 3.6億円 | 0.7億円 | 1.1億円 | 31.0% |
| 連結(合計) | 81.0億円 | 104.6億円 | 8.4億円 | 13.9億円 | 13.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で得た資金に加え、金融機関からの借入等により資金を調達し、将来の成長に向けた事業への投資を積極的に行っている状態を示しています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 35.7億円 | 48.0億円 |
| 投資CF | -47.3億円 | -60.5億円 |
| 財務CF | 9.9億円 | 17.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「企業のIT支援を通し、『人々』『社会』を幸せにしたい」を経営理念として掲げています。常に顧客視点に立ち、企業のIT戦略と情報システム部門を誠心誠意支援し、サービスの品質と顧客満足度の向上を目指しています。新たな価値創造を追求し続けることで、IT支援を通して関わる人々と社会のサステナブルな発展に貢献することを存在意義としています。
■(2) 企業文化
同社は、人的資本を重視し「全従業員総活躍企業」を掲げています。従業員一人ひとりが自律的に学び、挑戦し、能力を最大限に発揮できる環境づくりを重視しており、エンゲージメントの向上や働きがいのある組織風土の醸成に取り組んでいます。また、DXプロジェクトの推進など、主体的に新しい技術や手法を取り入れる積極的な姿勢が文化として根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な企業価値の向上につながる収益性の管理と、積極的な事業投資、財務の健全性の両立を目指しています。また、利益成長に応じた株主還元の強化を図るため、複数の指標を経営上の重要指標として採用し、資本効率を意識した経営を行っています。
* 売上高
* 営業利益
* 経常利益
* EBITDA
* ROE
■(4) 成長戦略と重点施策
中核事業であるLCMサービス全体を強化し、ITサブスクリプションを中心としたストック収益の積み上げにより安定的な収益基盤の構築を進めています。また、使用済みIT機器のデータ消去や適正処理を行うITADサービスを拡大し、企業のセキュリティ対策や環境問題の解決を支援しています。
* ストック収益の拡大(サブスクリプション型サービスの拡大)
* LCMサービスの推進
* 資産効率・収益性の向上
* 人的資本経営の推進(人材確保・リスキリング等)
* 成長機会に備えたインフラの整備とDX推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は事業戦略と人材戦略を一体的に推進し、従業員の成長を事業の成長と社会的価値の創出につなげることを基本方針としています。高度な知識を持つ専門人材の確保・育成や、次世代リーダーの育成に注力するとともに、多様な人材が経験や能力を生かして活躍できる公正な評価・処遇制度を整備し、エンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 37.2歳 | 7.2年 | 5,566,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 27.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 110.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報セキュリティに関するリスク
使用済みIT機器のデータ消去サービスにおいて、機密情報や個人情報の漏洩リスクがあります。同社はISMS認証の取得や物理的セキュリティの強化、不正アクセス防止措置などの対策を講じていますが、万が一情報漏洩が発生した場合は、信用失墜や賠償費用の発生により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) IT技術の急速な革新と進化に関するリスク
IT技術の革新スピードは速く、新製品やサービスの陳腐化による価格下落リスクがあります。同社は独自のサービスモデル構築やAI等の新技術の積極活用によって競争力の向上を図っていますが、想定を超える急激な技術革新が起きた場合、競争力の低下や収益性に悪影響を与える可能性があります。
■(3) IT技術人材の確保に関するリスク
持続的な成長には専門的なIT技術者の確保と育成が不可欠です。同社は積極的な採用活動や新卒社員の技術研修、資格取得奨励制度を通じて技術力の強化に努めていますが、人材の確保や育成が計画通りに進まなかった場合、事業拡大の制約となり業績に影響を及ぼす恐れがあります。
■(4) サブスクリプション資産の保有リスク
ITサブスクリプション事業では、資産を調達して顧客に提供するため、稼働率の低下や陳腐化のリスクが存在します。同社は業務のデジタル化等で高い稼働率を維持する体制を整備していますが、半導体需給による調達の不確実性などで資産の減損損失が発生した場合、財政状態に悪影響を与える可能性があります。



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