パシフィックネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パシフィックネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(スタンダード市場)に上場。IT機器のサブスクリプションと使用済み機器の適正処理(ITAD)を主力事業としています。直近の決算では、Windows 10サポート終了に向けたPC更新需要などを背景に、全セグメントで好調に推移し、売上高・各利益ともに過去最高を更新する増収増益となりました。


※本記事は、株式会社パシフィックネット の有価証券報告書(第37期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. パシフィックネットってどんな会社?


法人向けPC等のIT機器サブスクリプションサービスと、使用済みIT機器のデータ消去・適正処理を行うITAD事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1988年、パソコン及び周辺機器の販売・レンタルを目的に株式会社パシフィックレンタルとして設立されました。1997年に現社名へ変更し、2006年に東京証券取引所マザーズへ上場を果たしました。その後、2016年に市場第二部へ市場変更を行い、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。2017年にはイヤホンガイド事業を行う株式会社ケンネットを完全子会社化するなど、事業領域を拡大しています。

現在の連結従業員数は232名(単体224名)です。筆頭株主は代表取締役会長の上田満弘氏の資産管理会社である株式会社リッチモンドで、第2位は創業者の上田満弘氏、第3位は代表取締役社長の上田雄太氏となっており、経営陣とその関係先が高い持株比率を有しています。

氏名 持株比率
リッチモンド 39.91%
上田満弘 8.86%
上田雄太 5.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は上田雄太氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
上田 雄太 代表取締役社長 ルネサスイーストンを経て2014年入社。子会社2Bやケンネットの代表取締役社長などを歴任し、2023年8月より現職。
上田 満弘 代表取締役会長 1988年7月同社代表取締役社長に就任。長年にわたり経営を牽引し、2023年8月より現職。
金田 智行 取締役副社長 本田技研工業等を経て2003年入社。LCM本部長、ITサブスクリプション事業部長等を歴任し、2022年4月より現職。
杉 研也 取締役 1999年入社。ITソリューション本部長、ITAD事業部長、大阪支店長などを歴任し、2024年1月より未来戦略部担当。
老川 賢 取締役 1995年入社。新規事業推進室長、子会社2B代表取締役、リマーケティング本部長等を歴任し、2025年1月より現職。


社外取締役は、神谷宗之介(弁護士)、松本次夫(公認会計士・税理士)、井堂明子(CREA代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ITサブスクリプション事業」、「ITAD事業」および「コミュニケーション・デバイス事業」を展開しています。

(1) ITサブスクリプション事業


法人・官公庁を対象に、業務で使用するパソコン、サーバー、タブレットといったIT機器のサブスクリプション(レンタル)に加え、IT環境の運用保守・クラウド等のITサービスを提供しています。

収益は主に、顧客企業から受け取るサブスクリプション(レンタル)料やサービス利用料等で構成されています。運営はパシフィックネットおよび連結子会社の株式会社テクノアライアンスが行っています。

(2) ITAD事業


使用済みIT機器のセキュアな回収、データ消去、適正処理サービスを提供しています。高価値品は製品化してリユース品として販売し、再利用困難な機器は分解・素材化してリサイクル業者へ販売することで、廃棄物削減と適正処理を推進しています。

収益は、適正処理サービスの対価や、リユース品および素材の販売代金等から得ています。運営はパシフィックネットが行っています。

(3) コミュニケーション・デバイス事業


観光業界を中心に、「イヤホンガイド」の製造販売・保守サービスを展開しています。観光地ガイドのほか、国際会議での通訳や工場見学、美術館等でのガイド用途でも利用されており、国内旅行関連市場で高いシェアを有しています。

収益は、顧客に対する機器の販売代金や保守サービス料等から得ています。運営は連結子会社の株式会社ケンネットが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、第33期の52億円から第37期には81億円へと大きく成長しています。経常利益も第34期に一時減少しましたが以降は回復・拡大基調にあり、直近では過去最高益を達成しました。利益率も9%台後半で安定的に推移しており、増収増益の好調なトレンドが続いています。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 52億円 55億円 64億円 69億円 81億円
経常利益 8億円 3億円 5億円 6億円 8億円
利益率(%) 14.6% 6.1% 8.1% 9.2% 9.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 2億円 3億円 4億円 5億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約40%の水準を維持しています。販管費も増加していますが、増収効果が上回り、営業利益は前期比で大きく伸長しました。営業利益率も12.2%と高い収益性を確保しています。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 69億円 81億円
売上総利益 29億円 32億円
売上総利益率(%) 42.2% 39.8%
営業利益 7億円 8億円
営業利益率(%) 9.5% 10.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比42%)、地代家賃が3億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて増収増益を達成しています。主力であるITサブスクリプション事業は売上・利益ともに最大規模であり、全体の成長を牽引しています。ITAD事業は利益率が非常に高く、収益性の柱となっています。コミュニケーション・デバイス事業も大幅な増収増益となり、回復・成長傾向を示しています。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
ITサブスクリプション事業 49億円 58億円 6億円 7億円 11.8%
ITAD事業 18億円 21億円 6億円 7億円 35.9%
コミュニケーション・デバイス事業 2億円 3億円 0.4億円 0.7億円 20.4%
調整額 -1億円 -1億円 -6億円 -7億円 -
連結(合計) 69億円 81億円 7億円 8億円 10.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「積極型」です。本業で得たキャッシュに加え、銀行等からの借入れによって資金を調達し、レンタル資産の取得などの成長投資に積極的に充てている状態です。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 25億円 36億円
投資CF -44億円 -47億円
財務CF 21億円 10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「企業のIT支援を通し、『人々』『社会』を幸せにしたい」を経営理念としています。この実現のため、顧客視点に立ち、企業のIT戦略と情報システム部門を誠心誠意支援すること、提供サービスの品質と顧客満足度を向上させること、そして新たな価値創造を追求し続けることを掲げています。

(2) 企業文化


同社は「全従業員総活躍企業」という経営方針を掲げ、人的資本が持続的成長に不可欠であると考えています。この考えのもと、企業理念や行動指針と連動した評価制度を導入し、性別や年齢、経験年数に関わらず能力やスキルに応じて活躍できる環境を整備しています。また、従業員のエンゲージメント向上や、DX推進プロジェクトへの主体的参加を推奨する風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は持続的な企業価値向上と株主還元の強化を図るため、経営上の重要指標として「売上高」「営業利益」「経常利益」「EBITDA」「ROE」の5つを採用しています。これらの指標管理を通じて、収益性管理と資本効率を意識した経営を行い、事業ポートフォリオの管理と財務の健全性の両立を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


ITサブスクリプションを中心としたストック収益の拡大と、ITAD事業による安定収益基盤の確立を最重要課題としています。特に、Windows 10サポート終了に伴うPC更新需要の取り込みや、IT運用業務のBPOサービス需要への対応、両事業のクロスセルによるシナジー最大化を図ります。

* 成長機会に備えたインフラ整備とDX推進(設備投資・AI活用)
* 人的資本経営の推進(人材確保・リスキリング・賃上げ・エンゲージメント向上)
* ストック収益の拡大(サブスクリプション型サービスの拡大)
* LCMサービスの推進
* 資産効率・収益性の向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「全従業員総活躍企業」を掲げ、人的資本への投資を強化しています。人事・給与制度を改正し、役割・意識・スキルに基づく公正な評価を実施することで、多様な人材が活躍できる環境を整えています。また、DX人材の育成やリスキリング、女性の管理職登用の推進、従業員エンゲージメントの向上にも注力し、企業の持続的成長を支える人材基盤の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 38.2歳 7.8年 5,314,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 27.1%
男性労働者の育児休業取得率 75.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 85.6%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 82.8%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 101.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティに関するリスク


ITAD事業等において顧客の機密情報や個人情報を含む使用済みIT機器を取り扱っており、万が一情報漏洩が発生した場合、信用失墜や損害賠償により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。ISMS認証取得や物理的セキュリティ対策、サイバー攻撃への防御策等を講じていますが、未知の脅威等による被害リスクは残ります。

(2) IT技術の急速な革新と進化に関するリスク


IT関連技術の進化は速く、製品・サービスの陳腐化や価格下落が進む可能性があります。同社は独自のサービスモデルやAI等の新技術活用により対応を進めていますが、想定を超える急激な技術革新が発生した場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(3) IT技術人材の確保に関するリスク


事業の持続的成長にはIT技術者の確保と育成が不可欠です。同社は採用や研修を通じて技術力強化に努めていますが、人材の育成や確保が計画通りに進まない場合、競争力の低下や事業拡大の制約要因となり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) サブスクリプション資産の保有リスク


ITサブスクリプション事業では多数の資産を保有しています。資産稼働率の管理強化等を行っていますが、半導体需給による調達難、技術革新による陳腐化、稼働率低下等が生じた場合、減損損失の発生等により業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。