※本記事は、ファーマライズホールディングス株式会社の有価証券報告書(第40期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ファーマライズホールディングスってどんな会社?
調剤薬局事業を主力とし、ドラッグストア等の物販事業や医学資料保管・管理事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
昭和62年に東京都文京区で調剤薬局の営業を開始しました。平成19年にジャスダック証券取引所へ上場し、平成21年に持株会社体制へ移行して現社名に変更しました。その後、積極的なM&Aにより規模を拡大し、令和6年にGOOD AID、令和8年に三幸メディカルを買収して医薬品卸売事業等も取得しています。
従業員数は連結で2,031名、単体で71名です。筆頭株主はビックフィールドで、第2位は事業提携先であるスズケン、第3位は大野小夜子氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ビックフィールド | 26.20% |
| スズケン | 20.10% |
| 大野小夜子 | 4.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は秋山昌之氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 秋山 昌之 | 代表取締役社長 | 協和静岡代表取締役社長、ファーマライズ医薬情報研究所所長などを経て、平成30年8月より現職。 |
| 松浦 惠子 | 専務取締役 | 医療機関等を経て平成12年同社入社。みなみ薬局代表取締役社長などを歴任し、平成30年8月より現職。 |
| 大野 利美知 | 取締役会長 | マルタケ入社後、昭和59年に同社設立と同時に代表取締役社長就任。平成28年8月より現職。 |
| 大野 小夜子 | 取締役副会長 | マルタケ入社後、平成元年に同社取締役就任。管理本部長や常務取締役を歴任し、令和2年8月より現職。 |
| 沼田 豊 | 取締役 | 山一証券、富士証券を経て平成24年同社入社。経営戦略本部長などを歴任し、平成30年8月より現職。 |
| 菅野 洋 | 取締役 | エンゼル調剤を経て合併により同社転籍。統括本部長や人事部長などを歴任し、令和2年8月より現職。 |
社外取締役は、多田宏(タスマン代表取締役社長)、相澤愛(相澤法律事務所所長弁護士)、園部経夫(タカゾノ代表取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「調剤薬局事業」「物販事業」「医学資料保管・管理事業」「医療モール経営事業」および「その他」事業を展開しています。
■調剤薬局事業
医療機関の発行する処方せんに基づき、一般患者に対して医薬品の調剤を行う事業です。かかりつけ薬局としての機能強化や、在宅・施設調剤など地域医療への貢献に注力しています。
患者や健康保険組合等から調剤技術料や薬剤料を受け取ります。運営は主にファーマライズ、北海道ファーマライズ、ヘルシーワーク、GOOD AID、next PHなどの各子会社が行っています。
■物販事業
ドラッグストアやコンビニエンスストア等を通じて、一般用医薬品、化粧品、衛生材料、日用雑貨などの医療用以外の物品を販売する事業です。
一般消費者からの商品購入代金を収益源としています。運営は主にファーマライズが行っています。
■医学資料保管・管理事業
調剤薬局事業の周辺業務として、医療機関が患者を診察した際に記録する紙カルテやレントゲンフィルム等の医学資料を、倉庫で安全に保管・管理する事業です。
医療機関と管理委託契約を締結し、契約期間にわたり資料の保管・管理サービスを提供する対価として月額の保管料収入を得ています。運営は寿データバンクが行っています。
■医療モール経営事業
JR札幌駅内の「JRタワーオフィスプラザさっぽろ」において、医療モールを運営・管理する事業です。立地優位性を活かし、複数の医療機関を集積させています。
医療モールのテナントである各医療機関に対して、共用部の保守・管理等のサービスを提供した対価として収入を得ています。運営はファーマライズが行っています。
■その他
製薬企業等向けのシステムインテグレーション事業、医療関連ITソリューション事業、人材派遣事業、有料職業紹介事業、デイサービス・訪問看護事業、医薬品卸売事業等を展開しています。
各サービスの利用者や企業から手数料や利用料等を受け取ります。運営はミュートス、メディカルフロント、レイケアセンター、ウィーク、三幸メディカルなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、M&A等による規模拡大に伴い売上高は一貫して増加傾向にあります。一方で利益面は、薬価改定や店舗の統廃合、M&A関連費用の影響等で一時的に落ち込みが見られましたが、直近では本部業務の効率化や不採算店舗の整理が進み、利益率の改善と最終黒字への転換を実現しています。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 516億円 | 520億円 | 545億円 | 635億円 | 695億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 14億円 | 8億円 | 1億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 2.9% | 2.8% | 1.5% | 0.2% | 1.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 1億円 | 10億円 | -2億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、増収となっています。利益面では、調剤薬局事業における収益性改善や本部業務の効率化による販売費及び一般管理費の抑制効果などが寄与し、売上総利益と営業利益がともに大きく改善しています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 635億円 | 695億円 |
| 売上総利益 | 90億円 | 95億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.1% | 13.6% |
| 営業利益 | 3億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 0.5% | 1.4% |
販売費及び一般管理費のうち、租税公課が32億円(構成比38%)、給料手当が9億円(同11%)、のれん償却額が8億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である調剤薬局事業は、M&Aによる店舗数拡大や処方せん枚数の増加により増収となっています。一方、物販事業は不採算店舗の閉店等の影響で減収となり、その他事業も一部サービスの需要減や新製品開発等のコスト先行により減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) |
|---|---|---|
| 調剤薬局事業 | 526億円 | 593億円 |
| 物販事業 | 87億円 | 80億円 |
| 医学資料保管・管理事業 | 6億円 | 6億円 |
| 医療モール経営事業 | 5億円 | 5億円 |
| その他 | 11億円 | 10億円 |
| 連結(合計) | 635億円 | 695億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.3%であり、いずれも市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 13億円 | 33億円 |
| 投資CF | -45億円 | -20億円 |
| 財務CF | 9億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、薬物療法のプロとしての指針である「パーフェクト(完璧)」を社是の基本方針に掲げています。さらに、医療に携わる企業として社会的責任を強く認識する「社会的責任」、SDGsの取り組みを重視する「サステナブルな未来へ」、知識と専門性を生かした「心を込めたホスピタリティー」を経営理念として実践しています。
■(2) 企業文化
同社は、店舗スタッフ一人ひとりが患者に寄り添い、地域の健康・医療の窓口となって薬物のプロとして貢献することを価値観として定めています。「相談できる薬局」を構築し、患者中心の薬局運営を継続するとともに、自社内の学術大会やリーダー人材育成研修等を通じて常に知識と優しさを持った人材の育成を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、「地域の患者に選ばれ信頼される調剤薬局グループ」「高齢者の健康維持・医療・介護ニーズに寄り添う調剤薬局グループ」を長期的なゴールに掲げる中期経営計画「Make a Leap 2027」を推進しています。最終年度である2028年5月期の目標として、以下の数値を掲げています。
* 売上高:700億円
* 営業利益:16億円
* 当期純利益:7億円
* ROIC:4.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、M&Aによりグループインした会社・店舗の統合プロセス(PMI)を早期に完遂させ、利益率や運営効率を引き上げることで、次なる飛躍への足場固めに注力しています。教育プログラムの整備等による「かかりつけ薬剤師」の機能強化、応需処方せん枚数増加に向けた取り組み、そしてデジタルトランスフォーメーション(医療DX)の推進を重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材を持続的な成長と企業価値向上を支える重要な経営資本と位置づけています。「年齢や職種を問わず長く成長できる教育」と「すべての社員が主体的に考え、行動できる自由闊達な組織風土の醸成」を基本方針とし、階層別・部門別研修を通じた専門性の向上や次世代リーダーの育成、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 41.5歳 | 8.6年 | 5,742,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 32.1% |
| 男性育児休業取得率 | 89.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 79.1% |
※上記数値は主要な連結子会社であるファーマライズのものです。提出会社は公表義務の対象ではないため記載を省略しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法規制と医療制度の改定
調剤薬局事業や物販事業の運営には、薬機法等の法令に基づく許可や指定が必要です。法令違反による営業停止・取消処分や、診療報酬等の医療制度改定が行われた場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 薬価基準の改定と医薬分業の動向
調剤売上における薬剤収入は公定価格である薬価基準に依存しており、毎年の薬価改定による実質的な引き下げが業績に影響する可能性があります。また、医薬分業率の伸び率が鈍化・低下した場合も、収益に悪影響を与える懸念があります。
■(3) 薬剤師など専門人材の確保
調剤薬局や一般用医薬品の販売店舗において、法令に基づき薬剤師や登録販売者を一定数配置する義務があります。専門人材の確保は業界共通の課題であり、必要時に人材を確保できない場合、新規出店や店舗運営に支障をきたすリスクがあります。
■(4) M&Aの実施とのれんの減損処理
同社グループは規模拡大のために積極的なM&Aを推進しています。買収後に予期せぬ問題が生じた場合や、事業環境の変化等により買収先企業の業績が計画通りに進展しない場合、のれんの減損処理が発生し、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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