※本記事は、ファーマライズホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第39期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ファーマライズホールディングスってどんな会社?
調剤薬局事業を中核に、物販や医療データ管理など医療関連事業を幅広く展開する持株会社です。
■(1) 会社概要
1984年に東京物産として設立され、1987年に調剤薬局の営業を開始しました。その後、積極的なM&Aにより静岡、北海道、関西など全国へ店舗網を拡大し、2009年に持株会社体制へ移行して現社名となりました。近年では、2024年にGOOD AIDグループを買収するなど、グループ規模の拡大を続けています。
連結従業員数は2,039名、単体では66名です。筆頭株主は株式会社ビックフィールドで、第2位は医薬品卸売業の株式会社スズケン、第3位は大野小夜子氏(同社取締役副会長)です。調剤薬局事業を中心に、地域医療への貢献と事業基盤の拡大を推進しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ビックフィールド | 26.50% |
| スズケン | 20.30% |
| 大野 小夜子 | 4.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は秋山 昌之氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 秋山 昌之 | 代表取締役社長 | 協和静岡代表取締役社長、ファーマライズ代表取締役社長等を経て、2018年同社代表取締役社長・COO。2024年8月より現職。 |
| 大 野 利 美 知 | 取締役会長 | マルタケ入社。同社設立と同時に代表取締役社長。ファーマライズ代表取締役等を経て、2016年同社代表取締役会長(CEO)。2024年8月より現職。 |
| 大 野 小 夜 子 | 取締役副会長 | マルタケ入社。同社取締役、常務取締役、管理本部長、ファーマライズ取締役、同社顧問、常務取締役等を経て、2020年8月より現職。 |
| 松 浦 惠 子 | 専務取締役 | 医療法人安仁会水沢病院等を経て同社入社。事業推進本部薬局統括部長、ファーマライズ代表取締役等を歴任。2018年8月より現職。 |
| 沼 田 豊 | 取締役 | 山一証券、富士証券を経て同社入社。経営企画部長、執行役員経営戦略本部長、ミュートス取締役、メディカルフロント取締役等を歴任。2018年8月より現職。 |
| 菅 野 洋 | 取締役 | エンゼル調剤入社。同社取締役統括本部長、ファーマライズ代表取締役、同社取締役執行役員等を歴任。アットアロマ取締役を兼務。2020年8月より現職。 |
| 園 部 経 夫 | 取締役 | タカゾノ入社。同社代表取締役社長、タカゾノテクノロジー代表取締役社長、TAKAZONO VIETNAM会長等を歴任。同社監査役を経て、2024年8月より現職。 |
| 多 田 宏 | 取締役 | 実践商業高等学校教諭、キャニヨン入社。同社専務取締役、韓国キャニヨン代表取締役社長等を経て、1978年キャニヨン通商(現タスマン)代表取締役社長に就任。2016年8月より現職。 |
| 相 澤 愛 | 取締役 | 弁護士登録。濱田法律事務所入所、相澤法律事務所開設。練馬区行政評価委員、内閣府再就職等監察官(非常勤)等を歴任。2024年1月より現職。 |
社外取締役は、多田宏(タスマン代表取締役社長)、相澤愛(弁護士)、園部経夫(元タカゾノ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「調剤薬局事業」「物販事業」「医学資料保管・管理事業」「医療モール経営事業」および「その他」事業を展開しています。
■調剤薬局事業
医療機関が発行する処方せんに基づき、一般患者に対して医薬品の調剤を行う保険薬局を運営しています。北海道から沖縄まで広範な地域で展開しており、かかりつけ薬局としての機能強化や地域医療への貢献を目指しています。
収益は主に、国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬支払基金、および患者から受け取る調剤報酬や薬剤料等から構成されます。運営は、ファーマライズ株式会社、株式会社ケミスト、株式会社ヘルシーワーク、北海道ファーマライズ株式会社、GOOD AID株式会社、next PH株式会社などが担っています。
■物販事業
調剤薬局に併設された店舗や単独店舗において、一般用医薬品、化粧品、日用雑貨品などを販売するドラッグストアおよびコンビニエンスストアを運営しています。地域住民の利便性向上と健康維持に寄与する商品提供を行っています。
収益は、一般消費者への商品販売代金です。運営は主にファーマライズ株式会社が行っており、コンビニエンスストアやドラッグストアの形態で展開しています。
■医学資料保管・管理事業
医療機関で発生する紙カルテやレントゲンフィルム等の医学資料を、専用倉庫で保管・管理するサービスを提供しています。病院の建替や移転、スペース効率化のニーズに対応し、機密性の高い情報の安全な管理を行っています。
収益は、医療機関等の顧客から受け取る保管料や管理料です。運営は株式会社寿データバンクが行っています。
■医療モール経営事業
複数の医療機関が集まる医療モールの運営・管理を行っています。具体的には、JR札幌駅内の「JRタワーオフィスプラザさっぽろ」における医療モールの運営を手掛けています。
収益は、テナントとして入居する医療機関等から受け取る賃貸料や管理費等です。運営はファーマライズ株式会社が行っています。
■その他
製薬企業向けのシステム開発、医療関連ITソリューション、人材派遣、職業紹介、介護事業(デイサービス・訪問看護・有料老人ホーム)などを展開しています。調剤薬局事業とのシナジーを追求し、多角的なサービスを提供しています。
収益は、システム開発受託料、人材派遣料、介護サービス利用料など多岐にわたります。運営は、株式会社ミュートス、株式会社メディカルフロント、株式会社レイケアセンター、株式会社ウィーク、GOOD AID株式会社などがそれぞれ行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高はM&Aの推進により増加傾向にあり、特に直近では600億円台に達しています。一方、利益面では経常利益が減少傾向にあり、利益率は低下しています。積極的な規模拡大に伴うコスト増や調剤報酬改定の影響が見受けられます。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 523億円 | 516億円 | 520億円 | 545億円 | 635億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 15億円 | 14億円 | 8億円 | 1億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | 2.9% | 2.8% | 1.5% | 0.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 1億円 | 1億円 | 10億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は16.6%増加していますが、売上総利益率は若干低下しています。営業利益は減益となっており、売上拡大に対する販管費や原価の増加ペースが上回っている状況です。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 545億円 | 635億円 |
| 売上総利益 | 84億円 | 90億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.5% | 14.1% |
| 営業利益 | 9億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 1.7% | 0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、租税公課が30億円(構成比35.2%)、給料手当が12億円(同13.5%)、のれん償却額が8億円(同8.8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
調剤薬局事業はM&Aにより大幅な増収となりましたが、利益は減益となりました。物販事業は増収となり赤字幅が縮小しました。その他の事業では、介護事業等の拡大により増収となりましたが、コスト先行等により損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 調剤薬局事業 | 442億円 | 526億円 | 11億円 | 6億円 | 1.1% |
| 物販事業 | 83億円 | 87億円 | -0億円 | -0億円 | -0.5% |
| 医学資料保管・管理事業 | 7億円 | 6億円 | 1億円 | 1億円 | 8.4% |
| 医療モール経営事業 | 5億円 | 5億円 | 1億円 | 1億円 | 20.2% |
| その他 | 8億円 | 11億円 | -0億円 | -1億円 | -4.9% |
| 調整額 | - | - | -3億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 545億円 | 635億円 | 9億円 | 3億円 | 0.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ファーマライズホールディングスは、事業拡大のための投資を積極的に行っています。
営業活動では、主に店舗展開に伴う棚卸資産の増加や税金支払いにより資金が減少しましたが、仕入債務の増加などがそれを一部補いました。投資活動では、新規薬局の開設や事業譲受により多額の資金を使用しました。財務活動では、借入による資金調達を行ったものの、借入金の返済や配当金の支払いにより、資金は増加しました。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 27億円 | 13億円 |
| 投資CF | -31億円 | -45億円 |
| 財務CF | 28億円 | 9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「パーフェクト(完璧)」を社是とし、薬物療法のプロとしての指針としています。この基本方針のもと、「社会的責任」「サステナブルな未来へ」「心を込めたホスピタリティー」を経営理念として掲げ、医療に携わる企業としての責任を果たし、持続可能な社会の実現と信頼されるサービスの提供を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、知識、専門性、経験とノウハウを生かした「心を込めたホスピタリティー」を重視しています。また、SDGsへの取り組みを重要視し、ステークホルダーとの対話を深めながらサステナブルな未来を目指す姿勢を持っています。店舗スタッフが患者に寄り添い、地域の健康・医療の窓口として貢献することを大切にする文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「Make a Leap 2027」において、「地域の患者に選ばれ信頼される調剤薬局グループ」「特に高齢者の健康維持・医療・介護ニーズにきちんと寄り添う調剤薬局グループ」を長期的なゴールに掲げています。既存基盤の成長により、最終年度の2028年5月期には以下の数値目標の達成を目指しています。
* 売上高:700億円
* 営業利益:16億円
* 当期純利益:7億円
* ROIC:4.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
新中期経営計画期間においては、これまでにM&Aでグループ入りした会社・店舗の統合プロセス(PMI)の早期完遂と、利益率や運営効率の向上による足場固めを最優先課題としています。調剤薬局事業では、教育プログラム整備によるかかりつけ機能の強化、患者中心の薬局運営の継続、医療機関や介護施設へのアプローチ強化等を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「年齢や職種を問わず長く成長できる教育」と「すべての社員が主体的に考え、行動できる自由闊達な雰囲気の醸成」を重視しています。階層別・部門別研修に加え、次世代リーダー研修を実施し、グループを担う人材を育成しています。また、社員のエンゲージメント向上を目指し、1on1面談の推進や社内公募制度、ストレスチェック等を実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 42.8歳 | 9.3年 | 5,717,055円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.0% |
| 男性育児休業取得率 | 72.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 126.3% |
※上記指標は、主要な連結子会社であるファーマライズ株式会社の実績です。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、かかりつけ薬剤師数(全店舗1人以上配置)、薬局店舗のバリアフリー化率(100%)、ハッキングによる情報漏洩件数(0件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 調剤薬局事業・物販事業の法規制について
調剤薬局や物販店舗の運営には、医薬品医療機器等法や健康保険法などに基づく許可や指定が必要です。同社グループは必要な許認可を取得して営業していますが、法令違反等により営業停止や許可取消等の処分を受けた場合、グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 医療制度・薬価基準の改定について
調剤薬局業界は、隔年で実施される診療報酬改定や毎年の薬価改定の影響を受けます。今後も医療費抑制策による実質的な引き下げ方向での改定が予想されており、技術料や薬価の変更内容によっては、グループの収益性や業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 人材(薬剤師)の確保について
調剤薬局等の運営には、法令により一定数以上の薬剤師等の配置が義務付けられています。薬剤師の確保は業界共通の課題であり、出店や退職者の補充など必要な人員を確保できない場合、新規出店計画や店舗運営に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 借入金の影響について
同社グループは、出店等の設備投資資金の多くを金融機関からの借入金で調達しており、総資産に占める有利子負債の比率は44.7%となっています。金利動向による影響を受けるほか、一部の借入契約には財務制限条項が付されており、これに抵触した場合は融資継続に支障が生じる可能性があります。



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