※本記事は、アウンコンサルティング株式会社の有価証券報告書(第28期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アウンコンサルティングってどんな会社?
同社グループは、企業の海外展開や多言語情報発信を支援するグローバルマーケティング事業を主力としています。
■(1) 会社概要
1998年に地域活性化コンサルティングを目的として設立され、翌年にSEOサービスを開始しました。2005年に東証マザーズへ上場し、2008年以降はタイやシンガポール等に海外拠点を展開しています。2025年にはクラサポより損害保険申請サポート「ミエルモ」を譲り受け、新たな事業運営を開始しました。
従業員数は連結21名、単体21名です。筆頭株主は創業者で代表取締役CEOの信太明氏で、第2位は資産管理等を行う外資系金融機関の信託口、第3位は証券会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 信太明 | 31.41% |
| BANK JULIUS BAER AND CO.LTD. SINGAPORE CLIENTS | 16.83% |
| JPモルガン証券 | 2.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOの信太明氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 信太明 | 代表取締役CEO | 1992年リクルート入社。日本ネットワーク研究所等を経て1998年に同社設立、代表取締役。2019年より現職。 |
| 高橋重行 | 取締役 | 2005年リクルートHRマーケティング入社。2009年同社入社、執行役員等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、藤原徹一(藤原投資顧問設立代表取締役)、加藤征一(加藤公認会計士事務所所長)、松村卓朗(ピープルフォーカス・コンサルティング代表取締役)、田中克洋(飯沼総合法律事務所所属)です。
2. 事業内容
同社グループは、マーケティング事業を展開しています。
■グローバルマーケティング
検索エンジンマーケティング(SEM)サービスやインターネット広告の販売、ウェブサイト開発、ソーシャルメディア運用など、企業のマーケティング活動を支援する各種サービスを国内外の企業に提供しています。顧客の事業目的や対象市場に応じた提案を行い、日本語や多言語での情報発信を支援しています。
収益源は、SEOコンサルティング費用やインターネット広告の運用代行費用などです。運営は主にアウンコンサルティングや海外の連結子会社が行っています。
■メディアマーケティング
自社ウェブサイトの構築および運用ノウハウを活かしたメディア運営事業を展開しています。2025年7月からは、新たに損害保険申請サポート「ミエルモ」を譲り受け、運営を開始しました。これまで培ってきたSEOや広告運用の知見を自社事業に活用しています。
収益源は、メディアからの広告収入や損害保険の申請サポートに伴う手数料などです。既存事業とのシナジー創出や企業価値の向上を目的としており、運営はアウンコンサルティングが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は減少傾向が続いています。利益面では第25期以降は経常赤字となっており、既存案件の減少などが影響し、厳しい事業環境が継続していることが伺えます。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5.0億円 | 4.5億円 | 4.4億円 | 2.7億円 | 2.5億円 |
| 経常利益 | 305万円 | -0.8億円 | -0.9億円 | -0.9億円 | -0.5億円 |
| 利益率(%) | 0.6% | -17.2% | -19.3% | -34.2% | -20.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 401万円 | -0.9億円 | -1.4億円 | -1.2億円 | -0.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年比で減少したものの、売上総利益は微増し、売上総利益率も改善しています。営業赤字は継続しているものの、固定費の抑制や業務効率化の推進により、赤字幅は縮小傾向にあります。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2.7億円 | 2.5億円 |
| 売上総利益 | 1.6億円 | 1.7億円 |
| 売上総利益率(%) | 60.6% | 67.8% |
| 営業利益 | -1.1億円 | -0.6億円 |
| 営業利益率(%) | -38.8% | -22.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.0億円(構成比45%)、支払手数料が0.4億円(同18%)を占めています。売上原価のうち、外注費が0.2億円(構成比74%)、労務費が0.1億円(同22%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは事業検討型のパターンを示しています。本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.5億円 | -0.4億円 |
| 投資CF | 185万円 | 0.3億円 |
| 財務CF | -0.2億円 | -0.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は公表されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「私たちは独創的な考え方で課題を解決し、笑顔に溢れた社会づくりに貢献します」という使命(ミッション)を掲げています。日本市場のみならずグローバル市場において、事業を通じて顧客の課題解決に取り組み、社会全体に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業価値観(バリュー)として「汗(自他のため率先して汗をかいているか)」「協(仲間との協力関係を大切にしているか)」「成(毎日の着実な成長を実感できているか)」「誇(家族・友人・社会は私を誇りに思うか)」「楽(わくわくとした人生を楽しんでいるか)」という5つの行動様式を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、継続的な成長に向けた事業基盤の強化を図るとともに、引き続き「業績回復」を最優先課題として位置付けています。既存事業の収益力を強化し、早期の黒字化に向けた収益構造の改善を進めることを中短期的な目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
海外SEOや海外広告等の既存サービスにおいて、提案力を高め安定的な売上基盤の再構築を図ります。また、生成AIの普及に伴い、AI検索に対応したAIO(AI Optimization)関連サービスの開発や提供体制を強化し、新たな収益機会の拡大を目指しています。さらに、損害保険申請サポート等を通じた収益源の多様化にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、人材を最も重要な経営資本の一つと位置付けています。「自律的に成長し続ける人材の育成」「多様な人材が活躍できる組織づくり」「挑戦と成果を尊重する企業文化の醸成」を基本方針とし、デジタルマーケティング領域等における専門性の強化や、多様な人材が能力を最大限発揮できる環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 36.6歳 | 6.1年 | 4,444,030円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 100.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 93.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | - |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、一部項目の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネット広告市場の変化
検索連動型広告事業等は競争が激しく、急激なインターネット広告市場の変化や顧客ニーズの変化等に即座に対応する必要があります。対応に時間を要した場合には、競争力の低下を招き、同社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) インバウンド市場の推移
同社は外国人の訪日旅行者等を対象にしたプロモーション支援を提供しています。人手不足やオーバーツーリズム等の課題、あるいは新たな感染症の拡大に伴う渡航制限等の事象が発生した場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 技術革新への対応
生成AIの普及により、従来の検索エンジンを中心とした情報取得から、AIによる回答を活用する形へ変化しつつあります。生成AIサービスの仕様や規制が急速に変化した場合や、新規サービスの導入が想定通り進まない場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 特定取引先への依存
同社が行う検索連動型広告・コンテンツ連動型広告においては、グーグルと販売代理店契約を締結しており、依存度が高い状態にあります。販売代理店制度の廃止や契約内容の変更等を求められた場合、事業展開に重大な影響を与える可能性があります。



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