※本記事は、アウンコンサルティング株式会社 の有価証券報告書(第27期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アウンコンサルティングってどんな会社?
同社はSEOコンサルティングの草分け的存在であり、現在は多言語Webマーケティングを強みとしています。
■(1) 会社概要
1998年に福島県で設立され、翌年にはSEOコンサルティングサービスを開始しました。2002年にPPC(検索連動型広告)を開始し、2005年に東証マザーズへ上場しました。その後、沖縄、タイ、台湾、香港、シンガポール、フィリピン、ベトナムなどに拠点を展開し、アジア地域での事業を拡大してきました。2016年に東証二部へ市場変更し、2022年よりスタンダード市場へ移行しています。
同社グループの従業員数は連結で23名、単体で23名です。筆頭株主は創業者の信太明氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位は個人株主の渡邉昌人氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 信太 明 | 25.16% |
| BANK JULIUS BAER AND CO.LTD. SINGAPORE CLIENTS | 17.00% |
| 渡邉 昌人 | 5.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表者は代表取締役CEOの信太明氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 信太 明 | 代表取締役CEO | リクルート、日本ネットワーク研究所等を経て、1998年同社設立。2019年より現職。 |
| 高橋 重行 | 取締役 | リクルートHRマーケティングを経て、2009年同社入社。AUN PHILIPPINES INC.取締役等を歴任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、藤原徹一(藤原投資顧問代表取締役)、加藤征一(加藤公認会計士事務所所長)、松村卓朗(ピープルフォーカス・コンサルティング代表取締役)、田中克洋(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「マーケティング事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■マーケティング事業
SEO(検索エンジン最適化)サービス、インターネット広告の販売および広告制作、ウェブサイト開発、ソーシャルメディア運用など、企業のマーケティング活動を支援するサービスを提供しています。日本語だけでなく多言語でのサービス提供が可能であり、国内外の企業のグローバルマーケティングを支援しています。
収益は、顧客企業から受け取るコンサルティングフィー、広告運用手数料、制作費などが主な柱となります。運営は主にアウンコンサルティングが行っていますが、海外においてはシンガポールやフィリピンなどの連結子会社も事業を展開しています。なお、ベトナムやタイの子会社については解散および清算手続きが進められています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年5月期から2025年5月期までの業績推移です。売上高は減少傾向にあり、特に直近の2025年5月期は大幅な減収となりました。利益面では、2022年5月期を除き経常損失および当期純損失を計上しており、赤字基調が続いています。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 10.3億円 | 5.0億円 | 4.5億円 | 4.4億円 | 2.7億円 |
| 経常利益 | -1.5億円 | 0.0億円 | -0.8億円 | -0.9億円 | -0.9億円 |
| 利益率(%) | -14.3% | 0.6% | -17.2% | -19.3% | -34.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.4億円 | 0.3億円 | -1.1億円 | -0.7億円 | -1.3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を見ると、売上高は前期の4.4億円から当期は2.7億円へと大きく減少しました。売上総利益も減少しており、営業損失は前期の0.9億円から1.1億円へと拡大しています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4.4億円 | 2.7億円 |
| 売上総利益 | 2.9億円 | 1.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 64.8% | 60.6% |
| 営業利益 | -0.9億円 | -1.1億円 |
| 営業利益率(%) | -21.0% | -38.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.1億円(構成比40%)、支払手数料が0.4億円(同14%)、株主優待引当金繰入額が0.4億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はマーケティング事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの詳細な分析は省略します。全社的な売上高の減少は、一部既存案件の解約や海外法人の解散・清算による影響を含んでいます。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) |
|---|---|---|
| マーケティング事業 | 4.4億円 | 2.7億円 |
| 連結(合計) | 4.4億円 | 2.7億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがマイナスである一方、投資CFは資産の売却や回収等によりプラスとなっており、財務CFは借入返済によりマイナスとなっています。本業の収益性が低下し、事業の見直しや縮小を進めている状況がうかがえます。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.2億円 | -0.5億円 |
| 投資CF | 0.4億円 | 0.0億円 |
| 財務CF | 0.3億円 | -0.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「独創的な考え方で課題を解決し、笑顔に溢れた社会づくりに貢献します」を使命(ミッション)として掲げています。日本市場のみならず、グローバル市場においてマーケティング事業を展開し、社会への貢献を目指しています。
■(2) 経営文化
同社は、「汗」「協」「成」「誇」「楽」という5つの価値観(バリュー)を掲げています。これらは、「自他のため率先して汗をかいているか」「仲間との協力関係を大切にしているか」「毎日の着実な成長を実感できているか」「家族・友人・社会は私を誇りに思うか」「わくわくとした人生を楽しんでいるか」という問いかけに基づいています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、「業績回復」を最優先課題としています。具体的な数値目標としてのKPI等は記載されていませんが、グループ全体の効率化・合理化を図り、収益力を高めた新たな組織体制の構築を目指しています。特に、6期連続で営業損失を計上している状況を踏まえ、黒字回復に向けた取り組みを強化しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長戦略として、グローバルBtoB企業向けのアウトバウンドマーケティング支援(海外進出、海外市場向けプロモーションなど)の領域へ重点的に経営資源を配分する方針です。特に、同社の強みである多言語分野において、大手グローバル企業向けに付加価値の高いSEOコンサルティングサービスの販売を強化していく計画です。また、経営資源を日本本社に集約し、営業活動の抜本的な強化を図ることで、収益力の向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、性別・国籍・年齢・学歴などの区別なく、多様な視点や価値観を有する人材を採用し、平等に登用の機会を提供しています。また、リモートワーク制度やスーパーフレックス勤務(5時~22時の間で月間勤務時間自由裁量)、1時間単位の有給休暇、副業制度などを導入し、社員一人ひとりの自律的・主体的なキャリア形成と柔軟な働き方を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 37.3歳 | 7.4年 | 4,632,836円 |
※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 66.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員に占める女性の割合(82.6%)、男女間賃金格差(75.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネット広告市場の推移について
同社グループはインターネットマーケティングサービスを主力としており、市場動向や顧客ニーズの変化に即座に対応する必要があります。競合他社との競争が激化する中で市場の変化への対応が遅れた場合、競争力が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) インバウンド市場の推移について
同社は訪日外国人旅行者を対象としたインバウンドプロモーション支援を行っています。市場は回復基調にありますが、感染症の拡大等により各国で渡航制限や活動自粛が行われた場合、インバウンド需要が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 技術革新の対応について
インターネット広告分野では技術革新が急速に進んでおり、検索連動型広告などに代わる新たな手法が普及する可能性があります。これらの変化に対応できない場合、サービスの競争力が低下し、収益性が悪化するリスクがあります。
■(4) 企業情報の管理・システムトラブルについて
クライアントの企業情報等をサーバーで管理しており、サイバー攻撃や自然災害等によりシステム障害や情報漏洩が発生した場合、業務停止や損害賠償請求、社会的信用の失墜につながり、業績に影響を与える可能性があります。



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