※本記事は、E・Jホールディングス株式会社の有価証券報告書(第19期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. E・Jホールディングスってどんな会社?
官公庁案件を中心に企画・計画から施工監理までを担う、総合建設コンサルタント企業です。
■(1) 会社概要
2007年、エイトコンサルタントと日本技術開発の経営統合により設立され、東京証券取引所市場第二部に上場しました。2018年に同市場第一部へ指定され、2022年にはプライム市場へ移行しています。近年はM&Aを積極的に推進しており、2026年には気象工学研究所を子会社化して事業領域を拡大しています。
現在の従業員数は連結で2,144名、単体で23名です。筆頭株主はその他の関係会社として保険代理業等を行う八雲で、第2位および第3位には資産管理業務等を行う信託銀行が名を連ねています。純粋持株会社としてグループ全体を統括し、傘下の事業会社を通じて総合的なコンサルタントサービスを提供しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 八雲 | 19.20% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.65% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は小谷裕司氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小谷裕司 | 代表取締役社長 | 1990年アイ・エヌ・エー退職。同年エイトコンサルタント(現エイト日本技術開発)入社。同社社長等を経て、2007年より現職。 |
| 永田裕司 | 取締役事業統括本部長 | 1981年八雲建設コンサルタント(現エイト日本技術開発)入社。同社常務執行役員等を経て、2026年より現職。 |
| 金声漢 | 取締役企画本部長 | 1987年日本技術開発(現エイト日本技術開発)入社。同社常務執行役員管理本部長等を経て、2021年より現職。 |
| 小谷満俊 | 取締役CSR本部長 | 2001年エイトコンサルタント入社。那賀ウッド社長やエイト日本技術開発中国支社長等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、二宮幸一(元大和証券岡山支店長)、阿部宏史(元岡山大学理事兼副学長)、新田東平(新田公認会計士事務所開所)、磯﨑淳子(ふたば司法書士法人代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「総合建設コンサルタント事業」を展開しています。
■(1) 建設コンサルタント業務
官公庁の公共事業等において、企画・計画から設計、診断、マネジメント、発注者支援、補償コンサルタント等のサービスを提供しています。国土交通省や地方自治体が主要顧客です。
官公庁等から業務を受託し、成果品を納品した時点、あるいは役務提供が完了した時点で対価として委託料を受け取ります。運営は主にエイト日本技術開発、近代設計、共立エンジニヤなどの事業会社が行っています。
■(2) 調査業務
建設コンサルタント業務の基礎となる測量や地質調査等の業務を提供しています。公共事業の計画・設計に必要な地形や地盤のデータを収集・解析し、正確なインフラ整備を支援します。
主に国や地方自治体から調査業務を受注し、収集したデータや解析結果を成果品として納品することで調査委託料を受け取ります。運営は主にエイト日本技術開発や東京ソイルリサーチ等のグループ会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、M&Aや公共投資の底堅い需要を背景に、売上高が順調な右肩上がりの成長を続けています。経常利益も概ね安定して推移しており、当期利益についても毎期着実に増加するなど、安定した収益基盤と着実な成長傾向が確認できます。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 367億円 | 375億円 | 372億円 | 427億円 | 466億円 |
| 経常利益 | 47億円 | 46億円 | 46億円 | 46億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 12.8% | 12.3% | 12.4% | 10.8% | 10.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 13億円 | 14億円 | 17億円 | 23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および売上総利益はともに前年度から増加しており、順調に事業を拡大しています。一方で、給与水準の引き上げなどのコスト増加もあり、営業利益の伸びは売上高の成長に比べて緩やかですが、安定した利益率を維持しています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 427億円 | 466億円 |
| 売上総利益 | 143億円 | 157億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.4% | 33.7% |
| 営業利益 | 45億円 | 47億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% | 10.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が37億円(構成比34%)、賞与が9億円(同8%)、法定福利費が9億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各業務において、国土強靭化施策などを背景とした官公庁からの底堅い需要を取り込み、売上高は増加しています。特に主力の建設コンサルタント業務が順調に推移し、調査業務とともに全体の増収を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) |
|---|---|---|
| 建設コンサルタント業務 | 335億円 | 365億円 |
| 調査業務 | 92億円 | 101億円 |
| 連結(合計) | 427億円 | 466億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 41億円 | 31億円 |
| 投資CF | -79億円 | -7億円 |
| 財務CF | 59億円 | 13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
現在と未来の人々にとって、真に価値ある環境を求めて「今、なにをすべきか」を常に念頭におき、社会の進化と人類の豊かさへの願いを胸に、わが国第一級のインフラ・ソリューション・コンサルタントグループを目指しています。「環境」「防災・保全」「行政支援」をコア・コンピタンスとして位置付けています。
■(2) 企業文化
ESG経営を軸とし、社会課題の解決から価値創造へと進化する「未来型社会インフラ創造グループ」の実現を志向しています。持続可能な社会の実現と企業価値の向上にグループ全体で取り組んでおり、多様な視点・価値観を尊重するダイバーシティ経営を実践し、持続的成長を成し遂げる組織文化の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
第6次中期経営計画「E・J-Plan2027」において、長期ビジョンの最終的な数値目標の前倒し達成と資本コストを意識した経営を目指しています。持続的な企業価値の向上を図るため、以下の財務目標を掲げています。
* 売上高:500億円
* 営業利益:59億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:39億円
* 自己資本利益率(ROE):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
基幹事業である重点6分野の拡充や新領域の開拓、アフリカ・アジアを中心とした海外ビジネス本格化への挑戦を掲げています。また、オープンイノベーションによるプロダクト開発やIT・AI活用による業務プロセスの改善など、バリューチェーンの強化を推進し、サステナビリティ経営を実践することで企業価値向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を経営基盤と位置づけ、高度な専門性を有する技術者やDX人材の育成に取り組んでいます。「倫理・あり方」「リーダーシップ・マネジメント」「技術・ノウハウ」の3領域を連携させた体系的な人材育成を推進し、働き方改革や健康経営の実践により、多様な人材が能力を最大限発揮できる職場環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 52.6歳 | 8.4年 | 9,015,541円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.7% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.0% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 63.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック回答率(96.0%)、グループ全体の離職率(3.3%)、新卒採用社員女性比率(30.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 官公庁等への売上依存
同社グループの主要顧客は国土交通省や地方自治体であり、売上の約70%を官公庁等に依存しています。そのため、国や地方自治体の公共投資額の変動が業績に影響を与える可能性があります。このリスクを軽減するため、海外案件や民間からの受注拡大に向けた営業活動を推進しています。
■(2) 経営成績の季節的な変動
官公庁を主要顧客とする事業特性上、成果品の納品が年度末に集中する傾向があります。このため、売上高および利益が第4四半期に偏重する構造となっており、期間ごとの業績変動が大きくなるリスクがあります。
■(3) 災害による事業活動への影響
同社グループの事業拠点は、大規模地震や水害のリスクが想定される地域にも存在しています。BCP(事業継続計画)の策定や国土強靭化貢献団体の認証取得など防災体制を強化していますが、大規模な自然災害により事業拠点やデータが損傷し、事業活動に支障をきたす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。