ダイト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイトは東京証券取引所プライム市場に上場する企業です。原薬や製剤(医療用医薬品・一般用医薬品)の製造販売・仕入販売、製造受託などを主な事業として展開しています。直近の業績トレンドとしては、製剤のジェネリック及び受託製造が堅調に推移し、売上高は横ばいながらも各利益項目で大幅な増益を達成しています。


※本記事は、ダイト株式会社の有価証券報告書(第84期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイトってどんな会社?


原薬から製剤までの一貫製造体制を持つ、総合医薬品メーカーです。

(1) 会社概要


1942年に富山県で設立され、1991年に現在のダイトへ商号を変更しました。その後、2007年に大和薬品工業を完全子会社化し、2010年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。近年では中国市場での事業も強化しており、2012年に現地法人を子会社化するなど、国内外で事業基盤を拡大しています。

同社グループは、連結で1,085名、単体で987名の従業員を擁しています。筆頭株主は信託業務を行う日本カストディ銀行で、第2位には海外ファンドであるJAPAN ABSOLUTE VALUE FUND、第3位には同じく信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本カストディ銀行(投資信託口) 10.18%
JAPAN ABSOLUTE VALUE FUND(常任代理人 立花証券) 9.32%
日本マスタートラスト信託銀行(管理有価証券信託口) 6.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長兼CEOは松森浩士が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松森浩士 代表取締役社長兼CEO ファイザー等を経て、2023年に同社へ入社。取締役副社長等を経て、2025年1月より現職。
大津賀保信 代表取締役会長 日医工を経て、1975年に同社入社。代表取締役社長等を歴任し、2024年8月より現職。
日詰和重 取締役常務執行役員 1985年に同社入社。原薬本部原料薬品部長、執行役員製薬本部長等を経て、2025年8月より現職。
石田 徹 取締役常務執行役員 武田薬品工業等を経て、2022年に同社入社。執行役員生産本部長等を経て、2026年6月より現職。


社外取締役は、小松紀美子(マインドプラス富山代表)、山本一三(山本一三法律事務所所長)、西能淳(特定医療法人財団五省会理事長)、内田稔(高千穂大学商学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、医薬品事業の単一セグメントのもと、以下の販売品目ごとに事業を展開しています。

(1) 原薬


原薬は医薬品を製造するための原材料であり、同社グループはその製造販売、仕入販売および製造業務受託を行っています。主にジェネリックメーカー向けに自社開発の原薬を供給しており、大量生産から少量多品種生産まで幅広く対応しています。

ジェネリックメーカーなどの顧客企業に原薬を販売、または受託製造することで収益を得ています。事業の運営は同社および中国の関連会社である千輝薬業や鼎旺医薬などが連携して行っています。

(2) 製剤


医療用医薬品や一般用医薬品の製剤について、製造販売、仕入販売、および製造業務受託を行っています。多様な剤形に対応できる生産設備と高い品質管理能力を持ち、ジェネリック医薬品の開発・製造にも注力しています。

国内大手メーカーからの先発品の製造受託や、ジェネリック医薬品の販売によって収益を得ています。事業の運営は同社や中国の関連会社である大桐製薬などが連携して行っています。

(3) 健康食品他


健康食品や医薬部外品などの医薬関連商品の販売を行っています。医薬品製造で培った品質管理ノウハウを活かした商品の提供を通じて、人々の健康な生活に寄与しています。

消費者に向けた健康食品などの商品の販売を通じて収益を得ています。事業の運営は主に同社が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は着実に拡大を続けており、成長傾向にあります。一方で経常利益は一時的に減少傾向が続いていましたが、直近の期においては増益に転じています。当期利益も直近の期で大幅に増加しており、収益力の改善が見られます。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 435億円 451億円 469億円 506億円 507億円
経常利益 67億円 52億円 39億円 27億円 38億円
利益率(%) 15.5% 11.5% 8.4% 5.3% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 44億円 35億円 32億円 15億円 78億円

(2) 損益計算書


売上高は横ばいながらも、売上総利益および営業利益はともに増加しています。利益率も改善しており、棚卸資産の評価減の解消やコスト管理の徹底など、効率的な事業運営が進んでいることがうかがえます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 506億円 507億円
売上総利益 86億円 99億円
売上総利益率(%) 17.1% 19.5%
営業利益 26億円 36億円
営業利益率(%) 5.2% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が22億円(構成比36%)、給与手当が10億円(同16%)、支払手数料が7億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


医薬品事業のみの単一セグメントであるため、販売品目ごとの売上高を比較します。原薬がやや減少したものの、製剤におけるジェネリック医薬品および受託製造が堅調に推移し、全体の売上を支えています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
原薬 229億円 225億円
製剤 276億円 280億円
健康食品他 2億円 2億円
連結(合計) 506億円 507億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型といえます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 59億円 94億円
投資CF -74億円 -44億円
財務CF 10億円 -63億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「社員が『楽しい会社、楽しい仕事』を実感できる働きやすい職場を作り、健康な社会作りに貢献し、選ばれ続ける企業を目指します」と掲げています。「楽しい会社」とは社員自らの成長と会社の成長が連動し、いきいきと仕事ができる環境を指し、「楽しい仕事」とは製品を供給する喜びを味わえる仕事を意味しています。

(2) 企業文化


社是として「創造 闘志 誠実」を掲げ、「アイデアをもち考える人間」「実行力と根性のある人間」「自分は企業を守る人間」となることを求めています。また、行動指針において、誠実な姿勢、信頼の獲得、社会への貢献、環境との調和、更なる挑戦、世界への飛躍を規定しており、高品質な医薬品の安定供給を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「DTP2027(Daito Transformation Plan 2027)」を推進しており、以下の数値目標を掲げています。

・売上高:540億円
・営業利益:40億円
・経常利益:40億円
・当期利益(親会社株主帰属):30億円

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の達成に向けて「既存ビジネスの効率化」「中国ビジネスの強化」「新規ビジネスへの参入」「PBR1倍割れ対策と資本配分の高度化」「人的資本への投資」の5つの柱を推進しています。特に中国での集中購買制度への参画を通じた市場開拓や、オーファンドラッグの開発・受託といった新領域への展開に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を企業価値創造の源泉となる重要な経営資本と位置づけ、人材の確保・育成・定着およびエンゲージメントの向上に取り組んでいます。教育研修やeラーニングを活用した能力開発のほか、ローテーションプログラムやキャリアパスプログラムの導入を通じたキャリア形成支援を行い、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 39.2歳 11.1年 5,165,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.5%
男性育児休業取得率 81.3%
男女賃金の差異(全労働者) 77.6%
男女賃金の差異(正規雇用労働者) 79.2%
男女賃金の差異(パート・有期労働者) 59.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(98.8%)、ストレスチェック受検率(89.0%)、障がい者雇用率(2.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ジェネリック医薬品市場の動向


政府によるジェネリック医薬品の使用促進策が停滞した場合や、競争環境の変化により、主力事業であるジェネリック医薬品向けの原薬販売および製剤の製造販売が影響を受けるリスクがあります。

(2) 法改正及び法規制等への対応


医薬品の製造・販売には薬機法やGMPなどの厳しい規制が伴います。法令違反による許認可の取り消しや、新たな規制の導入による事業活動の制約が生じた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製品の品質・安全性に関する問題


医薬品の予期せぬ副作用の発生や、製造過程での異物混入、製品回収等の事態が生じた場合、損害賠償の発生やブランドイメージの毀損により、経営成績や財政状態が悪化するリスクがあります。

(4) 設備投資に伴う負担


多種多様な製造品目を取り扱うため、大規模な設備投資が継続的に必要です。想定した受注が獲得できなかった場合や、減価償却費の先行的な発生により、利益率が低下する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。