ダイト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場し、原薬及び製剤の製造販売や受託製造を行う医薬品メーカーです。原薬から製剤までの一貫製造体制を強みとし、国内外の製薬企業と取引を行っています。2025年5月期の連結業績は、売上高が506億円で増収となった一方、経常利益は27億円で減益となりました。


※本記事は、ダイト株式会社 の有価証券報告書(第83期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイトってどんな会社?

原薬から製剤までの一貫製造体制を持つ医薬品メーカーです。ジェネリック医薬品を中心に、開発から製造販売まで展開しています。

(1) 会社概要

1942年に富山家庭薬の輸出統制会社として設立されました。戦後、国内向け家庭薬や配置用医薬品の製造を開始し、1976年には医療用医薬品の製造へ進出しました。1979年にGMP適合の本社工場を新設して以降、原薬・製剤の一貫製造体制を強化し、2011年に東証一部(現プライム市場)へ指定されました。

現在の連結従業員数は1,073名、単体では847名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に資産管理を行う日本カストディ銀行です。第3位には投資ファンドが名を連ねており、国内外の機関投資家等が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.29%
日本カストディ銀行(信託口) 8.31%
JAPAN ABSOLUTE VALUE FUND 8.14%

(2) 経営陣

同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長兼CEOは松森浩士氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
松森浩士 代表取締役社長兼CEO ファイザー等を経て、武田テバファーマ社長兼CEOなどを歴任。2023年同社入社、2025年1月より現職。
大津賀保信 代表取締役会長 1975年同社入社。常務、専務、副社長を経て2012年社長就任。2024年8月より現職。
日詰和重 取締役常務執行役員 1985年同社入社。原薬本部原料薬品部長、製薬本部長などを歴任。2022年6月より現職。
石田 徹 取締役執行役員 武田薬品工業を経て、武田ヘルスケア社長などを歴任。2022年同社入社、2024年8月より現職。
埜村益夫 取締役(常勤監査等委員) 三協立山を経て、2008年同社入社。管理本部長、財務部長などを歴任。2023年8月より現職。


社外取締役は、小松紀美子(マインドプラス富山代表)、堀仁志(公認会計士・税理士)、山本一三(弁護士)、西能淳(特定医療法人理事長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「医薬品事業」の単一セグメントで、原薬、製剤および健康食品他を展開しています。

(1) 原薬

医薬品を製造するための原材料である原薬の製造販売、仕入販売および製造業務受託を行っています。国内外の医薬品メーカーや商社と取引があり、特にジェネリック医薬品向けの原薬供給に強みを持ちます。

主な収益源は、医薬品メーカー等への原薬販売による代金や受託製造に伴う加工賃です。自社開発品のほか、共同開発品も取り扱っています。運営は主にダイトが担い、連結子会社の大和薬品工業や中国の関連会社とも連携して製造・調達を行っています。

(2) 製剤

医療用医薬品(先発品・後発品)や一般用医薬品の製剤について、製造販売、仕入販売および製造受託を行っています。国内大手メーカーからの先発品製造受託や、ジェネリック医薬品の自社開発・共同開発も手掛けています。

収益は、製剤の製品販売や製造受託による対価から得ています。同社はMRを持たないため、販売力のある医薬品メーカーと連携し、販売・販促活動を依頼するビジネスモデルを採用しています。運営はダイトおよび中国の大桐製薬などが担っています。

(3) 健康食品他

健康食品や医薬部外品等の医薬関連商品を取り扱っています。配置販売業者等を通じて製品を供給しています。

収益源は、配置販売業者等への商品販売代金です。同社が製造および販売を行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね増加傾向にあり、事業規模は拡大しています。一方で、利益面では2022年5月期をピークに減少傾向が続いています。特に直近の2025年5月期は、売上高が増加したものの、利益率は低下し、減益となりました。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 487億円 435億円 451億円 469億円 506億円
経常利益 61億円 67億円 52億円 39億円 27億円
利益率(%) 12.5% 15.5% 11.5% 8.4% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 42億円 47億円 36億円 33億円 19億円

(2) 損益計算書

売上高は増加しましたが、売上総利益および営業利益は減少しました。売上原価の増加率が売上高の増加率を上回っており、利益率を圧迫しています。営業利益率は前期の一桁台後半からさらに低下し、5%台となりました。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 469億円 506億円
売上総利益 98億円 86億円
売上総利益率(%) 21.0% 17.1%
営業利益 39億円 26億円
営業利益率(%) 8.3% 5.2%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が25億円(構成比42%)、給与手当が8億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益

同社は医薬品事業の単一セグメントですが、販売品目別の売上状況を分析します。すべての品目で売上の増減が見られますが、特に製剤と原薬が売上の大半を占めており、これらが全体の増収に寄与しました。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期)
原薬 216億円 229億円
製剤 251億円 276億円
健康食品他 2億円 2億円
連結(合計) 469億円 506億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ダイト社のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加等があったものの、税金等調整前当期純利益や棚卸資産の減少等により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、生産設備の拡充に伴う有形固定資産の取得による支出が主な要因となり、使用額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入が主な要因となり、獲得額となりました。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 52億円 59億円
投資CF -59億円 -74億円
財務CF -2億円 10億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

社員が「楽しい会社、楽しい仕事」を実感できる働きやすい職場を作り、健康な社会作りに貢献し、選ばれ続ける企業を目指すことを経営理念としています。「楽しい会社」とは社員と会社の成長が連動する会社、「楽しい仕事」とは社会への貢献を通じて喜びを味わえる仕事と定義しています。

(2) 企業文化

「誠実な姿勢」「みなさまからの信頼」「社会への貢献」「環境との調和」「更なる挑戦」「世界への飛躍」を行動指針として掲げています。法令遵守や公正な活動、品質向上、環境配慮に加え、新たな分野や技術への挑戦、世界を舞台とした医薬品提供を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標

中期経営計画「DTP2027」において、業績改善と企業価値向上を目指しています。重要な経営指標として売上高、EBITDA、ROIC、ROEなどを採用し、持続的な成長と株主還元を図る方針です。

* 2026年5月期 売上高:525億円
* 2026年5月期 営業利益:30億円
* 2026年5月期 親会社株主に帰属する当期純利益:23億円

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画「DTP2027」に基づき、「既存ビジネスの効率化」「中国ビジネスの強化」「新規ビジネスへの参入」「PBR1倍割れ対策と資本配分の高度化」「人的資本への投資」の5つの柱を推進しています。具体的には、製品ポートフォリオの選択と集中、中国市場での販売強化、オーファンドラッグ等の新規領域開拓に取り組みます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

中期経営計画の基盤として「人的資本への投資」を掲げています。人口減少や採用競争激化に対応するため、賃上げやエンゲージメント向上施策を実施し、従業員の満足度と定着率の向上を図っています。また、研修の充実やダイバーシティ推進を通じて、人材育成と働きやすい環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 39.0歳 10.8年 4,869,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 55.5%
男女賃金差異(全労働者) 79.1%
男女賃金差異(正規雇用) 81.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 77.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(1.9%)、ストレスチェック受検率(92.0%)、健康診断受診率(97.9%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法改正及び法規制等

医薬品の製造販売に関連する薬機法やGMP等の規制を受けており、許認可の取り消しや規制強化があった場合、事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対応するため、関連法規の情報収集と法令遵守を徹底しています。

(2) 製品回収等の品質リスク

予期せぬ副作用や異物混入、品質不良等により、販売中止、製品回収、損害賠償が発生した場合、業績やブランドイメージに影響を与える可能性があります。品質管理・保証体制の整備や賠償責任保険の付保によりリスク低減を図っています。

(3) 設備投資に関するリスク

多種多様な品目を扱うため設備投資負担が相対的に大きく、投資の遅延や、投資後の稼働遅れ、受注不足等が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。経営戦略や収益性を十分に検討した上で投資判断を行っています。

(4) 原材料調達リスク

一部の原材料や商品を海外を含む特定の取引先に依存しており、災害等で調達が困難になった場合、製造停止等により業績に影響を及ぼす可能性があります。複数購買によるルート確保等で安定調達に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。