三協立山 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三協立山 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三協立山は東京証券取引所プライム市場に上場し、建材、マテリアル、商業施設、国際事業を幅広く展開する企業です。直近の業績トレンドでは、売上高は前年比微減となり、営業利益は横ばいを維持したものの、原材料価格の高騰や減損損失等の特別損失計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な赤字となっています。


※本記事は、三協立山株式会社の有価証券報告書(第81期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三協立山ってどんな会社?


建材やマテリアル、商業施設などの事業をグローバルに展開するアルミニウム総合メーカーです。

(1) 会社概要


1948年に立山鋳造として設立され、1960年に立山アルミニウム工業に改称するとともに、三協アルミニウム工業が設立されました。両社は生産統合を経て2006年に合併し、三協立山アルミとなりました。2012年には三協マテリアルおよびタテヤマアドバンスを合併して現在の三協立山となり、海外展開も進めています。

同社の従業員数は連結で9,542名、単体で4,472名です。大株主については、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社の持株会、第3位は事業会社である住友化学となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.53%
三協立山持株会 5.00%
住友化学 4.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長社長執行役員は平能正三氏が務めています。社外取締役は5名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
平能正三 代表取締役社長社長執行役員 1982年三協アルミニウム工業入社。ビル建材部長、ビル事業部長、国際事業統括室長などを歴任。2020年より現職。
吉田経晃 取締役常務執行役員 1984年北陸銀行入行。同行執行役員や北海道銀行取締役などを経て、2020年同社顧問に就任。2023年より現職。
久保田健介 取締役常務執行役員 1987年住友信託銀行入社。三井住友信託銀行人事部主管などを経て、2020年同社顧問に就任。2026年より現職。
黒畑靖之 取締役常務執行役員 1989年三協アルミニウム工業入社。東北支店長、事業開発統括室長、経営企画統括室長などを経て、2026年より現職。
豊岡史郎 取締役常務執行役員 1990年三協アルミニウム工業入社。横浜支店長、関東ビル建材支店長などを経て、2024年より現職。
東一郎 取締役常務執行役員 1987年立山アルミニウム工業入社。北陸支店長、関西ビル建材支店長、九州支店長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、篠田寛子(クレオ取締役)、森明彦(日本政策投資銀行監査役室長)、荒牧宏敏(日本精工取締役)、戸田和範(戸田和範税理士事務所所長)、吉川美保(高岡駅南法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建材事業」「マテリアル事業」「商業施設事業」「国際事業」および「その他」事業を展開しています。

建材事業


オフィスビルや集合住宅向けのビル建材製品、住まい向けの住宅建材製品、空間をアレンジするエクステリア製品の製造・販売を行っています。多様なニーズに対応する高い商品開発力や全国に広がる販売網が強みです。

製品の販売等により顧客から対価を受け取ります。運営は主に三協立山や、子会社の三協テック、STメタルズなどが行っています。

マテリアル事業


アルミニウムおよびマグネシウム素材・押出形材における設計から試作、製造、デリバリーまでのトータルソリューションを提供しています。国内最大級の生産能力を持つ合金鋳造、形材押出、加工の一貫体制が特徴です。

素材や加工製品の販売により顧客から対価を受け取ります。運営は主に三協立山や、子会社の三協サーモテック、石川精機などが行っています。

商業施設事業


ショッピングセンターや専門店などの商業施設向けに、商品陳列什器や看板・サインの製造・販売、店舗関連設備のメンテナンスサービスを提供しています。快適な商業空間の創造をトータルで支援しています。

什器や看板の販売、店舗メンテナンス等により顧客から対価を受け取ります。運営は主に三協立山や、子会社の三精工業、上海立山商業設備有限公司などが行っています。

国際事業


欧州、タイ、中国にある海外拠点において、アルミニウムの鋳造・押出・加工を行っています。日本や欧州の高度な技術をグローバルに展開し、高付加価値製品を各地域で同一品質にて供給しています。

海外市場でのアルミニウム製品の販売により顧客から対価を受け取ります。運営は主にSankyo Tateyama Europe BVやThai Metal Aluminium Co.,Ltd.などの海外子会社が行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、植物工場事業などを展開しています。オープンイノベーションを通じて新規事業の創出や新たなビジネスモデルの構築を目指しています。

植物工場運営の支援や関連設備の提供等により顧客から対価を受け取ります。運営は主に同社が中心となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は3,400億円から3,700億円の範囲で安定して推移していますが、経常利益や利益率は緩やかな低下傾向にあります。特に直近の事業年度では、当期利益が大幅な赤字へと転落しており、原材料価格の高騰などの厳しい事業環境が影響していることがうかがえます。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 3,406億円 3,704億円 3,530億円 3,594億円 3,575億円
経常利益 42億円 34億円 39億円 9億円 9億円
利益率(%) 1.2% 0.9% 1.1% 0.3% 0.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 5億円 17億円 4億円 -197億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績をみると、売上高はわずかに減少していますが、売上総利益および売上総利益率は改善しています。営業利益についても前年並みの水準を維持しており、厳しい外部環境のなかでも本業における一定の収益性を確保しようとする動きが確認できます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 3,594億円 3,575億円
売上総利益 698億円 705億円
売上総利益率(%) 19.4% 19.7%
営業利益 15億円 15億円
営業利益率(%) 0.4% 0.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料賞与が286億円(構成比41.5%)、荷具及び運賃が126億円(同18.2%)を占めています。売上原価は2,870億円で、売上高に対する構成比は80.3%となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、マテリアル事業や国際事業が増収となっている一方で、建材事業や商業施設事業は減収となっています。自動車などの輸送分野での需要増や販売価格の上昇が寄与した分野がある一方、建築市場の落ち込みや物価高騰の影響を受けた分野もあり、事業によって明暗が分かれる結果となっています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
建材事業 1,787億円 1,675億円
マテリアル事業 598億円 677億円
商業施設事業 445億円 426億円
国際事業 761億円 792億円
その他 3億円 4億円
連結(合計) 3,594億円 3,575億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う積極型の状態にあります。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 32億円 54億円
投資CF -143億円 -60億円
財務CF 75億円 75億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-14.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.6%となっており、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


お得意先・地域社会・社員の協業のもと、新しい価値を創造し、お客様への喜びと満足の提供を通じて、豊かな暮らしの実現に貢献します、という経営理念を掲げています。創業の原点である三者が協力し共栄するという協業の精神に基づき、健全な企業活動を通じて社会に貢献していくことを自らの使命と位置付けて事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社は行動指針として「お客様満足」「価値創造」「社会との調和」「自己研鑽」の4つを定めています。常にお客様の視点に立ち、新たな製品開発とサービス提供に挑戦し続ける姿勢を重視しています。また、環境や地域社会との調和を考え、自己研鑽に励みながら互いに切磋琢磨する働き甲斐のある企業風土を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


「VISION2030」を掲げ、2030年(2031年5月期)に向けた長期的な目指す姿を設定しています。持続的な成長に向けて事業ポートフォリオの変革を推し進めており、中期経営計画における目標値として以下のような数値を掲げています。

* 売上高:3,700億円
* 営業利益:40億円
* 自己資本比率:28.0%
* ROE:0.4%

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の収益力強化とともに、成長分野や高収益分野への経営資源の戦略的再配分を進め、安定的な利益を創出する強固な事業構造への変革を図っています。具体的には、建材事業における構造改革や欧州子会社の収益改善に加え、自動車関連など成長市場への展開、オープンイノベーションによる新規ビジネスの構築に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員一人ひとりが自ら成長し価値を高められる「成長とやりがいを伴う自己実現の場」の構築を目指しています。最適な組織体制と人員配置に加え、女性やシニア、キャリア採用者など多様な人材の獲得と定着を推進しています。また、安全で健康的な職場環境の整備や、キャリア形成を支援する教育体系の充実を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 46.4歳 22.6年 5,551,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.6%
男性育児休業取得率 92.7%
男女賃金差異(全労働者) 77.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 73.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、建材向けアルミリサイクル率(53.5%)、温室効果ガス排出量(Scope1・2)削減率(38.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料や資材の価格変動


アルミ地金や鋼材等の原材料価格、エネルギー調達価格、物流費などの変動は、同社の業績に大きな影響を与えます。これに対し、同社はデリバティブ取引の導入や長期購入契約による価格変動リスクの分散、部品の共通化等を通じた原価抑制に努めています。

(2) 海外事業の展開とカントリーリスク


同社は欧州やタイ、中国などに事業拠点を有しているため、海外における政治的不安や経済的混乱、為替の変動などが生じた場合、事業活動の停止や業績悪化につながる可能性があります。金融機関と連携したヘッジ取引や、現地の情報収集を通じてリスク低減を図っています。

(3) 労働力不足と人材確保の課題


持続的な成長に向けて人材の確保が不可欠ななか、少子高齢化に伴う労働人口の減少や雇用競争の激化により、有能な人材の確保が困難になるリスクがあります。同社はキャリア採用の推進や多様な人材の活用、ワークライフバランスの推進等を通じた離職防止に注力しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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