※本記事は、三協立山株式会社 の有価証券報告書(第80期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三協立山ってどんな会社?
ビル・住宅用建材やエクステリア製品を主力とし、素材から加工、商業施設、海外事業まで多角的に展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
1960年に三協アルミニウム工業として設立されました。2006年に立山アルミニウム工業と合併し三協立山アルミとなり、2012年には三協マテリアル及びタテヤマアドバンスを合併して現在の三協立山へ商号変更を行いました。同年に三協・立山ホールディングスを合併し東証一部に上場しています。2015年には米国企業の事業部門買収等により国際事業を本格化させています。
連結従業員数は10,012名、単体では4,686名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は取引先であり資本関係を持つ化学メーカー、第3位は従業員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.98% |
| 住友化学 | 4.98% |
| 三協立山社員持株会 | 4.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長 社長執行役員は平能正三氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平能 正三 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1982年三協アルミニウム工業入社。三協アルミ社ビル事業部長、三協マテリアル社社長、国際事業管掌などを歴任。2020年8月より現職。 |
| 吉田 経晃 | 取締役常務執行役員 | 1984年北陸銀行入行。同行常務執行役員などを経て、2020年同社入社。総務人事統括室長、情報システム統括室長などを務め、2023年8月より現職。 |
| 久保田 健介 | 取締役常務執行役員 | 1987年住友信託銀行入社。三井住友信託銀行大阪本店営業第一部長などを経て、2020年同社入社。2020年8月より財務経理統括室長として現職。 |
| 黒畑 靖之 | 取締役常務執行役員 | 1989年三協アルミニウム工業入社。三協アルミ社東北支店長、経営企画統括室長などを歴任。2025年6月より経営企画統括室長兼事業開発統括室長として現職。 |
| 豊岡 史郎 | 取締役常務執行役員 | 1990年三協アルミニウム工業入社。三協アルミ社関東ビル建材支店長、事業統括部長などを経て、2024年8月より三協アルミ社社長として現職。 |
| 東 一郎 | 取締役常務執行役員 | 1987年立山アルミニウム工業入社。三協アルミ社関西ビル建材支店長、九州支店長などを経て、2024年8月よりタテヤマアドバンス社社長として現職。 |
| 篠田 寛子 | 取締役 | 1997年クレオ取締役。岐阜県男女共同参画二十一世紀審議会委員などを務め、2024年8月より現職。特定非営利活動法人GEWEL代表理事も務める。 |
社外取締役は、篠田寛子(クレオ取締役)、長谷川弘一(元国家公務員共済組合連合会資金運用部長)、荒牧宏敏(元日本精工取締役)、戸田和範(戸田和範税理士事務所所長)、吉川美保(高岡駅南法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建材事業」「マテリアル事業」「商業施設事業」「国際事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建材事業
ビル建材、住宅建材、エクステリア製品の製造・販売を行っています。オフィスビルや集合住宅向けのサッシ、ドア、カーテンウォールから、戸建住宅向けの断熱サッシ、玄関ドア、カーポートやフェンスなどの外構商品まで幅広く提供しており、建設会社、工務店、リフォーム会社などが主な顧客です。
商品の販売代金や工事請負代金が主な収益源です。運営は同社(三協アルミ社)を中心に、三協テック、STメタルズ、三協化成、協立アルミなどのグループ会社が製造・加工・販売・物流等の機能を分担して行っています。
■(2) マテリアル事業
アルミニウムおよびマグネシウムの鋳造・押出・加工製品の製造・販売を行っています。形材や加工品を提供し、建材分野だけでなく、自動車等の輸送機器分野や一般機械分野など幅広い産業分野の顧客へ素材や部材を供給しています。
製品の販売代金が収益源です。運営は同社(三協マテリアル社)が中心となり、三協ワシメタル、三協サーモテック、石川精機などの関係会社とともに、国内最大級の生産能力を持つ一貫生産体制で事業を展開しています。
■(3) 商業施設事業
店舗用陳列什器や看板の製造・販売、店舗および関連設備のメンテナンスを行っています。コンビニエンスストア、ドラッグストア、スーパーマーケットなどの流通小売業や商業施設、一般企業などが主な顧客です。
店舗用什器や看板の販売代金、店舗内装工事代金、メンテナンス料が収益源です。運営は同社(タテヤマアドバンス社)および三精工業などの関係会社が行っており、店舗づくりの提案から設計・製作・施工・メンテナンスまでトータルにサポートしています。
■(4) 国際事業
海外においてアルミニウムの鋳造・押出・加工製品の製造・販売を行っています。欧州、タイ、中国などに拠点を持ち、現地の自動車産業や電機・電子産業、建材市場などの顧客へ高付加価値製品を提供しています。
製品の販売代金が収益源です。運営は、タイのThai Metal Aluminium、SANKYO TATEYAMA (THAILAND)、欧州のSankyo Tateyama Europe BVなどの海外現地法人が行っています。
■(5) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸事業や植物工場事業などを展開しています。
不動産賃貸料や植物工場設備の販売・運営支援などが収益源です。運営は主に同社および関係会社が行っており、新規事業の発掘やオープンイノベーションの推進にも取り組んでいます。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年5月期から2025年5月期までの5期間を見ると、売上高は3,000億円台で推移しており、2023年5月期に3,700億円台まで伸長しましたが、その後は横ばい傾向です。利益面では、経常利益が減少傾向にあり、特に直近2期は利益率が1%を下回る低水準となっています。当期純損益は直近2期連続で赤字となり、厳しい業績状況が続いています。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,012億円 | 3,406億円 | 3,704億円 | 3,530億円 | 3,594億円 |
| 経常利益 | 53億円 | 42億円 | 34億円 | 39億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 1.7% | 1.2% | 0.9% | 1.1% | 0.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 4億円 | 16億円 | -10億円 | -23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増となりましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。さらに販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益は前期比で半減以下となりました。売上総利益率は約20%の水準を維持しているものの、販管費の負担が重く、営業利益率は0.4%まで低下しています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,530億円 | 3,594億円 |
| 売上総利益 | 701億円 | 698億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.9% | 19.4% |
| 営業利益 | 38億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 1.1% | 0.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料賞与が285億円(構成比42%)、荷具及び運賃が127億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建材事業は売上高・利益ともに減少しました。マテリアル事業は増収増益となり、利益の柱となっています。商業施設事業は増収ながらも減益、国際事業は増収ですが赤字幅が拡大しました。全体として、国内の建材事業の不振と国際事業の赤字が連結業績の重荷となっています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建材事業 | 1,823億円 | 1,787億円 | 22億円 | 2億円 | 0.1% |
| マテリアル事業 | 531億円 | 598億円 | 15億円 | 26億円 | 4.4% |
| 商業施設事業 | 427億円 | 445億円 | 15億円 | 15億円 | 3.3% |
| 国際事業 | 746億円 | 761億円 | -13億円 | -26億円 | -3.4% |
| その他 | 4億円 | 3億円 | -0億円 | -1億円 | -19.6% |
| 調整額 | -470億円 | -464億円 | -1億円 | -1億円 | - |
| 連結(合計) | 3530億円 | 3594億円 | 38億円 | 15億円 | 0.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業で現金を稼ぎ出しつつ(営業CFプラス)、それを上回る投資を行い(投資CFマイナス)、不足分を借入等で調達している(財務CFプラス)ため、「積極型」に分類されます。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 172億円 | 32億円 |
| 投資CF | -86億円 | -143億円 |
| 財務CF | -68億円 | 75億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-2.5%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業の原点である「お得意先」「地域社会」「社員」の三者が協力し共栄するという協業の精神に基づき、新しい価値を創造し、お客様への喜びと満足の提供を通じて、豊かな暮らしの実現に貢献することを理念としています。
■(2) 企業文化
行動指針として「お客様満足(信頼される存在)」「価値創造(新たな製品・サービスへの挑戦)」「社会との調和(人と自然にやさしい企業)」「自己研鑽(働き甲斐のある企業風土)」の4つを掲げています。また、CSポリシーを定め、常にお客様の視点で考え行動することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「VISION2030」の実現に向け、2027年5月期を最終年度とする中期経営計画を推進しています。収益基盤再構築と成長投資を優先するフェーズと位置付けています。
* 2027年5月期目標:売上高3,850億円、営業利益70億円、ROE 3.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
建材事業では生産機能集約や戦略的営業活動により収益構造を改革し、マテリアル事業では自動車分野の拡大に向けた投資を強化します。商業施設事業は新領域への挑戦や物流改革を進め、国際事業はタイでの事業拡大と欧州拠点の黒字化を目指します。また、全社的に間接コスト削減や業務効率化等の収益構造改革に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
必要なタレントの確保と人材総合力の発揮のため、働きやすさを基盤とした成長の場の構築に取り組んでいます。多様かつ優れたスキルを持つ人材の獲得、個性を生かす風土醸成、自律的人材の育成を目指し、階層別研修やDX人材育成、女性活躍推進などを実施しています。また、健康経営やエンゲージメント向上にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 46.2歳 | 22.5年 | 5,569,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.2% |
| 男性育児休業取得率 | 62.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 73.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、温室効果ガス排出量(Scope1・2)(34.6%削減)、建材向けアルミリサイクル率(52.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済環境に関するリスク
国内の建設・住宅市場や海外景気の動向、為替・金利の変動が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、事業の多角化によるリスク分散や、ヘッジ取引による金利・為替変動リスクの低減に努めています。
■(2) 原材料・資材等の価格変動リスク
アルミニウム地金等の原材料価格や電力等のエネルギー価格、物流費の高騰は収益を圧迫する要因となります。長期購入契約やデリバティブ取引による調達価格の安定化、コストダウンの推進、取引価格の適正化協議などで対応しています。
■(3) 海外事業に関するリスク
タイ、欧州、中国などに拠点を有しており、各国の政治・経済情勢の変化、法規制の変更、地政学リスクなどが事業活動に影響を及ぼす可能性があります。現地情報の早期把握と変化への対応体制の整備を図っています。



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