東武住販 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東武住販 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東武住販は東証スタンダード・福証Q-Board上場。中国・九州地方で中古住宅の買取再販を行う不動産売買事業が主力です。2025年5月期は、中古住宅市場の活性化や仲介手数料規制緩和等を追い風に、売上高12.7%増、経常利益64.0%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社東武住販 の有価証券報告書(第42期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東武住販ってどんな会社?


中国・九州地方を地盤に、中古住宅を買取りリフォームして販売する「買取再販」を主力とする不動産会社です。

(1) 会社概要


1984年に山口県下関市で不動産の販売・賃貸等を目的として設立されました。その後、中古住宅の「買取再販」ビジネスモデルを確立し、2014年に上場を果たしました。2022年の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行しています。現在は中国・九州地方の17市町村で店舗を展開し、エリアを拡大しています。

単体従業員数は121名です。筆頭株主は創業社長の荻野利浩氏で、第2位は創業地である山口県の資産管理会社である株式会社OTC、第3位は東武住販社員持株会となっており、創業者と従業員、地元関係者が主要な株主構成となっています。

氏名 持株比率
荻野利浩 38.65%
O T C 5.10%
東武住販社員持株会 1.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名、計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は荻野利浩氏です。社外取締役比率は約43%です。

氏名 役職 主な経歴
荻野利浩 代表取締役社長 東洋通信機等を経て1976年東洋地所入社。1984年同社設立、代表取締役社長就任。グループ会社代表等を歴任し現職。
細江直樹 常務取締役 1999年入社。北九州営業部長、本店営業部長、九州東部営業部長等を経て2015年常務取締役就任。現福岡支社長兼九州西部営業部長。
三浦直樹 取締役 1999年入社。九州西部営業部長、福岡支社長、広島営業部長等を経て2010年取締役就任。現山口営業部長兼事業開発部長。
河村和彦 取締役経理部長 山口銀行赤坂門支店長、唐戸支店長等を経て2015年入社、取締役就任。同年管理部長、2021年より現職。


社外取締役は、白水一信(公認会計士)、岡村聖爾(石川金属工業特別顧問)、宝田めぐみ(日本CFA協会元会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産売買事業」、「不動産賃貸事業」、「不動産関連事業」および「その他」事業を展開しています。

不動産売買事業


主に築20~40年程度の中古戸建住宅やマンションを仕入れ、水回り等のリフォームを施して販売する「自社不動産売買事業」と、他者所有不動産の売買仲介を行う「不動産売買仲介事業」を展開しています。主な顧客層は年収300万円前後の一次取得者です。

収益は、リフォーム済み中古住宅の販売代金や、仲介業務における仲介手数料です。運営は同社が行っており、自社独自の再生ノウハウを活用してリーズナブルな価格で住宅を提供しています。

不動産賃貸事業


他者所有の不動産の賃貸仲介、賃貸管理受託業務、および同社が所有する不動産の賃貸を行っています。

収益は、賃貸借契約成立時の仲介手数料、管理物件のオーナーから受け取る管理委託手数料、および自社物件の賃料収入です。運営は同社が行っています。

不動産関連事業


住宅等の火災保険などの代理店販売を行っています。

収益は、保険契約の成立に伴い保険会社から受け取る代理店手数料です。運営は同社が行っています。

その他事業


介護福祉事業として、主に介護福祉に関する用品の販売、器具のレンタル、高齢者向けリフォーム(シルバー・リフォーム)工事の請負を行っています。

収益は、介護用品の販売代金、レンタル料、およびリフォーム工事代金です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期の業績を見ると、売上高は70億円台後半から80億円台へと推移しています。2024年5月期に一時的な利益の落ち込みが見られましたが、2025年5月期はV字回復し、過去最高の売上高を記録するとともに、各利益項目も大きく伸長しました。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 78億円 75億円 77億円 73億円 82億円
経常利益 5.7億円 5.7億円 5.5億円 3.1億円 5.1億円
利益率(%) 7.4% 7.6% 7.1% 4.3% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.9億円 3.9億円 3.8億円 2.1億円 3.4億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も増加しました。販売費及び一般管理費の増加率は売上の伸びに比べて低く抑えられたため、営業利益および営業利益率は前年から大きく改善しています。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 73億円 82億円
売上総利益 20億円 22億円
売上総利益率(%) 27.6% 27.3%
営業利益 3.1億円 5.1億円
営業利益率(%) 4.3% 6.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.9億円(構成比34.0%)、その他が2.7億円(同15.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の不動産売買事業は、自社不動産の販売件数増加や単価上昇により大幅な増収増益となり、全社業績を牽引しました。一方、不動産賃貸事業やその他事業は減収となり、利益も減少または横ばいとなりました。不動産関連事業は増収増益でした。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
不動産売買事業 69億円 79億円 7.9億円 10.0億円 12.7%
不動産賃貸事業 2.0億円 2.0億円 0.3億円 0.2億円 10.0%
不動産関連事業 0.3億円 0.4億円 0.2億円 0.2億円 51.5%
その他事業 0.8億円 0.8億円 -0.0億円 0.0億円 0.1%
調整額 - - -5.3億円 -5.3億円 -
連結(合計) 73億円 82億円 3.1億円 5.1億円 6.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「エコモデルの創造を通して人と環境に優しい暮らしづくりに貢献します」を経営理念として掲げています。既存の住宅をリフォームして再利用することで、廃棄物を削減し、環境負荷の少ない循環型社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


「あるものを活かす」をキーワードに、中古住宅の買取再生や売買仲介等を営んでいます。創業者が幼少期に持ち家への憧れを抱いた経験から、顧客に近い地域密着型の事業展開を重視しており、小規模な店舗を中心に組織を構成して日々の営業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標


2026年5月期を最終年度とする第3次中期経営計画を推進しており、最終年度の数値目標を上方修正しています。

* 売上高:78億円
* 経常利益:3.8億円
* 税引後当期純利益:2.5億円
* 自社不動産の販売件数:460件

(4) 成長戦略と重点施策


次の成長段階である「Next Stage」を目指し、人材育成強化、ビジネスモデルの再構成、業務プロセス改革、組織整備とガバナンス強化の4つを経営戦略として掲げています。具体的には、既存店舗周辺への新規出店(ドミナント出店)による営業エリアの拡大や、在庫回転率向上による買取再販の利益率改善を図ります。また、仲介手数料規制緩和を機に不動産情報の収集を強化し、収益源の多角化を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


営業体制を支えるのは人材であると考え、中途入社者を含む採用強化と研修の充実を推進しています。人材の確保と離職防止のため、給与や勤務時間等の雇用条件の改善、および福利厚生の充実を図る方針です。また、公正な評価と報酬への反映を通じて、従業員の定着と営業力の向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 40.9歳 8.7年 4,362,446円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 58.6%
男女賃金差異(正規雇用) 60.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 39.6%


※男性労働者の育児休業取得率については、同社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため公表義務の対象ではないと考えられ、有報には本項の具体的な数値記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性正社員の勤続年数(9.0年)、女性正社員の勤続年数(8.1年)、正社員の勤続年数(8.7年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客の購入意欲について


同社の不動産売買事業は、景気動向、金利、地価、税制等の影響を受けやすく、これらによって顧客の購入意欲が左右されます。特に、物価上昇による実質所得の低下や、今後の追加的な金融引き締めによる金利上昇が発生した場合、ローン負担の増加を懸念した買い控えが起こり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合について


不動産売買事業は技術的な独自性が必須ではないため参入障壁が低く、異業種からの参入等により競争が激化する可能性があります。競合の増加に伴い、中古住宅の仕入価格が上昇したり、販売競争において差別化のためのコストが増加したりすることで、同社の財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 販売用不動産の仕入れ及び工事原価について


事業の継続には、顧客ニーズに合った物件を安価かつ安定的に仕入れることが不可欠です。しかし、競争激化による仕入価格の高騰や、建材価格・人件費の上昇によりリフォーム費用が増加した場合、あるいは再生基準に適合する中古住宅を十分に確保できなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。