※本記事は、株式会社東武住販の有価証券報告書(第43期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東武住販ってどんな会社?
中国・九州地方に密着し、リフォームを施した中古戸建住宅の買取再販を主力事業として展開しています。
■(1) 会社概要
1984年9月に山口県下関市で設立されました。2009年に自社不動産売買事業を本格的に始動し、中古住宅の買取再生ビジネスを確立しました。2014年5月に上場し、2016年には福岡支社を開設するなど、中国・九州地方で着実に営業エリアを拡大しています。
従業員数は単体で125名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役社長を務める荻野利浩氏で、第2位は資産管理会社と思われるOTC、第3位には社員持株会が名を連ねています。地域に密着した店舗展開と独自のノウハウを強みに、安定した事業基盤を築いています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 荻野利浩 | 38.65% |
| O T C | 5.10% |
| 東武住販社員持株会 | 1.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は荻野利浩氏が務めています。また、役員総数のうち社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 荻野利浩 | 代表取締役社長 | 1972年東洋通信機入社、1984年同社設立および代表取締役社長就任。関係会社の社長等を経て現職。 |
| 細江直樹 | 常務取締役山口営業部長(兼)住まいサポート事業部長(兼)事業開発部長 | 1995年伊藤機械工業入社、1999年同社入社、2015年常務取締役就任。各地域の営業部長等を経て現職。 |
| 三浦直樹 | 取締役福岡支社長(兼)福岡支社営業部長(兼)九州西部営業部長 | 1995年東洋商事入社、1999年同社入社、2010年取締役就任。各地域の営業部長や福岡支社長等を経て現職。 |
| 河村和彦 | 取締役経理部長 | 1983年山口銀行入行、各支店長を経て2015年同社入社および取締役就任。2021年より現職。 |
社外取締役は、白水一信(白水公認会計士事務所代表)、岡村聖爾(元石川金属工業代表取締役専務)、宝田めぐみ(宝田グローバルアドバイザーズ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産売買事業」「不動産賃貸事業」「不動産関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■不動産売買事業
築年数20~40年程度の中古戸建住宅やマンションを仕入れ、水回り設備等をリフォームして販売する自社不動産売買事業と、他者所有不動産の売買仲介を展開しています。主な顧客層は年収200~500万円前後、20~30代の一次取得者です。顧客のニーズに応じて新築戸建や土地の販売、リフォーム工事の請負も行います。
自社不動産売買事業では顧客への物件販売代金を、不動産売買仲介事業では売買契約の締結を支援した際に受け取る仲介手数料を主な収益源としています。また、リフォームでは工事の請負代金を受け取ります。これらの事業運営は、東武住販が主体となって行っています。
■不動産賃貸事業
他者所有の不動産の賃貸仲介、賃貸管理業務の受託、および自社所有の不動産の賃貸を展開しています。賃貸住宅を探す顧客への物件紹介や、オーナーに代わって物件を管理するサービスを通じて、不動産売買事業とのシナジーも生み出しています。
賃貸仲介事業では入居者やオーナーからの仲介手数料を、管理受託事業ではオーナーからの管理料を主な収益源としています。また、自社所有物件の賃貸では入居者からの家賃収入を得ています。これらの事業はすべて東武住販が単独で運営しています。
■不動産関連事業
住宅などの火災保険を中心とした代理店販売を行っています。自社の不動産売買事業や賃貸事業で住宅を購入または賃借する顧客に対して最適な保険商品を提案し、安心な住まいづくりをサポートしています。
保険会社との代理店契約に基づき、保険契約の締結および更新状況に応じて保険会社から受け取る代理店手数料を主な収益源としています。この事業は東武住販が運営しています。
■その他事業
主に介護福祉に関する用品の販売や器具のレンタル、高齢者や身体障害者が安全に暮らせるように住宅を改装・改良するシルバー・リフォーム工事の請負を展開しています。
顧客に対する介護福祉用品の販売代金、器具のレンタル料金、およびシルバー・リフォーム工事の請負代金が主な収益源となっています。この事業の営業活動は、東武住販の事業開発部内で行われています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は72億円から82億円の間で推移しています。利益面では、前期に大きく改善した後、当期は売上高が減少したものの、平均販売単価の上昇や利益率の高い売買仲介手数料の増加により、経常利益および当期利益は引き続き増加傾向にあります。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 75億円 | 77億円 | 73億円 | 82億円 | 77億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 5億円 | 3億円 | 5億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | 7.6% | 7.1% | 4.3% | 6.2% | 7.6% |
| 当期利益 | 4億円 | 4億円 | 2億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
当期の売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益率は改善し、営業利益率も上昇しました。これは、自社不動産売買事業においてリフォーム内容の精査等により売上原価が低減したことや、利益率の高い仲介手数料収入が増加したことが寄与した結果です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 82億円 | 77億円 |
| 売上総利益 | 22億円 | 24億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.3% | 30.6% |
| 営業利益 | 5億円 | 6億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 7.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比35%)、その他が3億円(同15%)、広告宣伝費が2億円(同12%)を占めています。売上原価の内訳としては、不動産取得費が36億円(構成比67%)、外注加工費が15億円(同28%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力の不動産売買事業は、販売件数の減少により売上高が減少しましたが、売上高原価率の改善により利益は微増となりました。不動産賃貸事業とその他事業は増収となり、特に不動産賃貸事業は収益物件の売却等の影響で大幅な増益を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益(2026年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産売買事業 | 79億円 | 74億円 | 10億円 | 10億円 | 14.2% |
| 不動産賃貸事業 | 2億円 | 2億円 | 0.2億円 | 0.6億円 | 27.1% |
| 不動産関連事業 | 0.4億円 | 0.3億円 | 0.2億円 | 0.2億円 | 46.5% |
| その他事業 | 0.8億円 | 0.8億円 | 0.0億円 | 0.0億円 | -0.8% |
| 調整額 | - | - | -5億円 | -5億円 | - |
| 連結(合計) | 82億円 | 77億円 | 5億円 | 6億円 | 7.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | -0.2億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -0.1億円 |
| 財務CF | -8億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.6%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「東武住販は、エコモデルの創造を通して人と環境に優しい暮らしづくりに貢献します」を経営理念に掲げています。既存住宅ストックを有効活用する「あるものを活かす」をキーワードに、中古住宅の買取再生を展開し、住まいの循環型社会の実現と持続可能な環境保護への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
「物を作る(消費する)時代から、物を活かす(活用する)時代へ」というスローガンの下、環境への配慮と地域密着を重視する文化が根付いています。小規模な店舗展開で顧客に寄り添い、持ち家を諦めていた層に中古住宅という選択肢を提供するなど、人に優しく、地域社会の活性化に貢献する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2026年5月期を最終年度とする第3次中期経営計画を推進しており、同計画後の成長軌道「Next Stage」に向けた組織強化を優先課題としています。そのため明確な経営指標の目標値は掲げていませんが、安定的な株主還元の指標としてDOE(自己資本配当率)2.5%の維持を掲げ、ROEの推移を注視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「中国地方と九州地方の中古住宅再生No.1企業」を目指し、既存店舗周辺への新規出店(ドミナント出店)による営業地域の拡大を進めます。また、WEB広告等を活用した情報収集による仕入の強化、在庫管理の高度化による資産回転率の向上、および自己資本比率60%以上の維持による財務基盤の強化に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業拡大と組織強化のため、多様な人材の確保と育成を最重要課題としています。OJTや研修によるスキルアップを図るとともに、評価と報酬の連動、時差出勤や有給休暇の半日付与といった柔軟な働き方の推進により、従業員の定着とウェルビーイング向上を支援する環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 41.6歳 | 8.9年 | 5,057,583円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.3% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 63.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 33.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性の平均勤続年数(9.0年)、女性の平均勤続年数(8.9年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客の購入意欲の変動リスク
景気動向、金利の上昇、実質所得の低下や税制の変更などにより、中古住宅に対する顧客の購入意欲が減退した場合、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 販売用不動産の仕入れと工事原価上昇
競合他社の参入による仕入競争の激化や、建材価格・人件費の上昇が生じた場合、適切な価格で良質な物件を十分に確保できず、利益率の悪化や業績への影響が懸念されます。
■(3) 滞留在庫と有利子負債の増加リスク
不動産の仕入れから販売までに先行して資金負担が発生するため、借入金を活用しています。引渡しの遅延などで滞留在庫が増加すると、有利子負債が膨らみ、財務体質が悪化するリスクがあります。
■(4) 契約不適合責任と自然災害リスク
引渡し後の物件に契約不適合が発見された場合の対応コストや、台風・豪雨等の自然災害により引渡し前の物件が破損・倒壊するリスクがあり、これらが業績に影響を与える可能性があります。



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