ダイコー通産 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイコー通産 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するダイコー通産は、ケーブルテレビや情報通信ネットワーク向けのケーブル、材料、通信機器などを取り扱う独立系の専門商社です。直近の業績は、防災行政無線案件や通信設備案件の受注が堅調に推移し、前年度に引き続き増収増益を達成するなど、安定した成長を続けています。


※本記事は、ダイコー通産株式会社の有価証券報告書(第51期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイコー通産ってどんな会社?


同社は、CATVや情報通信ネットワーク構築に必要な部材を幅広く供給する独立系の専門商社です。

(1) 会社概要


同社は1975年、電話用電線の卸販売を目的として設立されました。翌1976年にはケーブルテレビ用の電線や材料の卸販売を開始し、1994年からは輸入品の取り扱いも始めています。2014年には情報通信事業の強化と顧客基盤の拡大を目的に睦通信を買収し、2019年には東京証券取引所への上場を果たしました。

同社は連結子会社を持たない単体経営を行っており、現在の従業員数は140名です。筆頭株主は同社の社長が代表を務める法人であり、第2位および第3位の株主には投資事業有限責任組合が名を連ねています。

氏名 持株比率
ディー・ケー・コーポレーション 33.39%
UHPartners2投資事業有限責任組合 6.98%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は河田晃氏が務めており、社外取締役の比率は約36%となっています。

氏名 役職 主な経歴
河田 晃 代表取締役社長 1999年アルメックス入社。2007年同社入社。2009年取締役、2011年取締役副社長を経て、2014年より現職。ディー・ケー・コーポレーション代表取締役を兼任。
西村 晃 代表取締役専務 1976年愛媛東芝商品販売入社。1985年同社入社。1987年取締役、2005年常務取締役を経て、2017年より現職。東日本、西日本、東海北陸の各ブロック長を兼任。
岡野 拓哉 取締役 1978年サンテレホン入社。2000年同社入社。2002年より現職。
白井 充 取締役管理部長 1999年宇都宮税理士事務所入所。2002年同社入社、管理部配属。2006年内部監査室長を経て、2010年より現職。
髙本 克哉 取締役本社営業部長 1984年同社入社。2011年本社営業部長、執行役員を経て、2015年より現職。
三木 哲也 取締役大阪営業所長 1984年サンテレホン入社。1994年同社入社。2019年執行役員を経て、2025年より現職。
玉井 清二 取締役東京営業所長 1992年日本交通社入社。1999年同社入社。2011年執行役員を経て、2025年より現職。


社外取締役は、土居慎一(元伊予銀行コンプライアンス統括部長・監査等委員長)、河端民平(元河端民平司法書士事務所所長)、武智弘泰(公認会計士および税理士)、高桑リエ(みかん法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社は、CATV関連市場向けおよび情報通信関連市場向け販売事業の単一セグメントで事業を展開しています。

同社は、ケーブルテレビや情報通信ネットワークで使用される多様な商品を取り扱う専門商社です。主な取扱商品は、光信号や電気信号を伝達するケーブル、配線の連結や保護に用いる材料、信号の変換や送受信を行う通信機器などです。これらは、屋内外の通信工事や電力工事を行う通信工事施工業者、電気通信事業者、官公庁などの顧客に提供されています。

収益は、国内外のメーカーから仕入れた最先端の部材を顧客に販売することで得ています。特定のメーカーに依存しない独立系商社の強みを活かし、自社企画の汎用品を海外で製造委託してコスト競争力を高めるなど、顧客ニーズに合った提案営業を行っています。すべての事業運営はダイコー通産が単体で行っており、全国の営業拠点と自社物流網を活用して展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は一時的な伸び悩みがあったものの、2025年5月期以降は大型案件の獲得などにより210億円台へと大きく成長しています。経常利益も売上の拡大に連動して増加傾向にあり、直近では13億円に達するなど、収益力の向上が確認できます。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 176億円 171億円 172億円 217億円 220億円
経常利益 11億円 9億円 9億円 12億円 13億円
利益率(%) 6.0% 5.4% 5.2% 5.5% 5.9%
当期利益 7億円 6億円 6億円 8億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高は前年度から微増となりましたが、利益率の高い自社企画商品などコストリーダーシップを発揮できる商品の販売に注力したことで、売上総利益率および営業利益率が改善しています。これにより、各利益項目において増益を達成しました。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 217億円 220億円
売上総利益 31億円 33億円
売上総利益率(%) 14.3% 14.9%
営業利益 12億円 13億円
営業利益率(%) 5.4% 5.8%


販売費および一般管理費(20億円)のうち、給料が8億円(構成比39%)、賞与が2億円(同12%)、役員報酬が2億円(同10%)を占めており、人件費関連が中心となっています。

(3) セグメント収益


各営業ブロック別の業績を見ると、東日本ブロックが大型案件や日常取引の増加により増収増益を牽引しています。一方、四国九州ブロックは大型の消防デジタル通信設備案件の終息により減収となりましたが、全体としては他のブロックが堅調に推移し、業績を支えています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期) 利益(2025年5月期) 利益(2026年5月期) 利益率
四国九州ブロック 54億円 49億円 7億円 7億円 15.0%
東日本ブロック 77億円 85億円 11億円 12億円 14.1%
西日本ブロック 60億円 60億円 9億円 9億円 15.7%
東海北陸ブロック 26億円 26億円 4億円 4億円 15.9%
合計 217億円 220億円 31億円 33億円 14.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


キャッシュ・フローの状況を見ると、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入の返済を行いながら、手元資金で投資も賄う「健全型」の優良な状態にあります。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 14億円 10億円
投資CF 1億円 -6億円
財務CF -3億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.9%となっており、いずれもスタンダード市場の平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「CATVおよび情報通信業界へ、国内外の高度な技術情報および高品質・低価格の商品を顧客に提供することを通じて、高度化するネットワーク社会の発展に貢献する」ことを社是として掲げています。通信インフラの構築を支える専門商社として、社会基盤の整備を通じた貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「和を以って努力せよ」を社訓として掲げるとともに、「企業は人なり」という考え方を基盤としています。この考え方のもと、社員とその家族、株主、関係取引先といったすべてのステークホルダーに対し、最大限の利益を供給することを重視しており、ESGを意識した持続可能な社会づくりにも取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、卸売業としての利益を確実に確保するため、「売上総利益率(粗利率)」を最も重視する経営指標として設定し、業績管理においてその進捗を厳密に注視しています。また、顧客基盤の拡充においては、収益性が高く取扱高も多い売上高1億円以上100億円未満の中堅クラスの顧客を増加させることを重要課題としています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は今後の成長に向け、東日本などシェアの低い地域への営業所開設による顧客基盤の拡充や、CATVの光ファイバー化(FTTH化)および防災無線デジタル化等の需要取り込みを推進します。また、自社企画商品の拡充によるコストリーダーシップの発揮や、新たな領域(建築、土木、医療等)の開拓にも注力する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業成長の基盤として専門知識を有する人材の育成を重視しており、商品や通信ネットワーク設備に関する知識を深めるため、OJTによる社員教育を推進しています。また、魅力ある職場の実現に向け、ノー残業デーの定着などによるワークライフバランスの推進や、従業員の健康増進を図る労働環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 39.0歳 13.8年 6,740,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 60.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 40.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) CATV・情報通信市場の需要変動リスク

情報通信ネットワークの拡大やCATVの4K・8K放送対応に伴う設備投資が期待される一方で、予期せぬ要因により市場の成長が鈍化した場合や、顧客ニーズに合った商品を適切に供給できない場合は、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 価格競争と仕入価格上昇リスク

同社は仕入価格の変動を販売価格へ転嫁することや自社企画商品の開発で競争力を高めていますが、材料価格の高騰による仕入原価の上昇や、建設・通信投資の低迷によって価格競争が激化した場合には、利益率の低下など業績への影響が懸念されます。

(3) 海外輸入品に関する品質・為替リスク

同社は海外企業から商品を輸入しており、海外メーカーとの連携で品質維持に努めていますが、予期せぬ不具合で補償費用が発生するリスクがあります。また、ドル建て仕入の価格変動を販売価格へ転嫁しきれないほどの為替の急変動が起きた場合も業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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