※本記事は、ダイコー通産株式会社 の有価証券報告書(第50期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ダイコー通産ってどんな会社?
CATVおよび情報通信インフラ構築に必要なケーブルや機器を扱う独立系専門商社です。
■(1) 会社概要
1975年に電話用電線の卸販売を目的として愛媛県松山市で設立されました。翌年にはCATV用電線等の取扱いを開始し、事業を拡大しました。2019年に東証二部へ上場し、2020年には東証一部へ指定替えとなりました。その後、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
同社の従業員数は単体で142名です。大株主構成については、筆頭株主は代表取締役社長が代表を務める法人で、第2位は通信サービス等の事業会社です。創業家や関連企業が安定的に株式を保有しており、経営の安定性が高い資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ディー・ケー・コーポレーション | 33.39% |
| 光通信 | 7.57% |
| 河田 晃 | 6.21% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は河田 晃氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河田 晃 | 代表取締役社長 | アルメックスを経て2007年入社。2014年より現職。 |
| 西村 晃 | 代表取締役専務 | 四国通信機工業を経て1985年入社。2017年より現職。 |
| 岡野 拓哉 | 取締役大阪営業所長 | サンテレホンを経て2000年入社。2017年より現職。 |
| 白井 充 | 取締役管理部長 | 宇都宮税理士事務所を経て2002年入社。2010年より現職。 |
| 髙本 克哉 | 取締役本社営業部長 | 1984年入社。2015年より現職。 |
| 三木 哲也 | 取締役名古屋営業所長 | サンテレホンを経て1994年入社。2025年より現職。 |
| 玉井 清二 | 取締役東京営業所長 | 日本交通社を経て1999年入社。2025年より現職。 |
社外取締役は、土居 慎一(元伊予銀行執行役員)、河端 民平(司法書士)、武智 弘泰(公認会計士・税理士)、高桑 リエ(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「CATV関連市場向け及び情報通信関連市場向け販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■CATV・情報通信関連販売事業
CATV事業者や通信事業者、電力会社などがネットワークを構築するために必要な資材を供給しています。取扱商品は、光ファイバーや同軸ケーブルなどの「ケーブル」、接続材や架線金物などの「材料」、通信機器や測定器などの「機器」に分類されます。国内外のメーカーから商品を仕入れ、顧客のニーズに合わせて提案・販売を行っています。
収益は、通信工事施工業者や電気通信事業者等の顧客に対する商品販売代金として得ています。運営は主にダイコー通産が行っており、全国の営業所を通じて地域密着型の営業活動を展開しています。独立系商社として特定のメーカーに依存せず、約43,000点にのぼる多種多様な商品を取り扱えることが特徴です。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は170億円から210億円台へと拡大傾向にあります。特に当期は大幅な増収を達成しました。経常利益も9億円から12億円の間で推移しており、安定した収益力を維持しています。利益率は5〜6%台で推移しており、堅実な経営が続いています。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 181億円 | 176億円 | 171億円 | 172億円 | 217億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 11億円 | 9.2億円 | 9.0億円 | 12億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | 6.0% | 5.4% | 5.2% | 5.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7.9億円 | 7.0億円 | 6.2億円 | 6.0億円 | 8.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は15%前後で安定的に推移しており、商社としての適正なマージンを確保できています。営業利益率も5%台を維持しており、販売費及び一般管理費のコントロールが適切に行われていることが読み取れます。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 172億円 | 217億円 |
| 売上総利益 | 26億円 | 31億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.2% | 14.3% |
| 営業利益 | 8.9億円 | 12億円 |
| 営業利益率(%) | 5.1% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が7.8億円(構成比40%)、その他が5.1億円(同26%)を占めています。売上原価については、商品売上原価が186億円(構成比93%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は全ての製品区分で増収増益となりました。特に「機器」は大型消防デジタル通信設備案件等により大幅な増収となりました。「ケーブル」や「材料」も、屋内通信設備や高速道路設備等のインフラ整備需要を取り込み、順調に推移しました。「その他」も電気通信工事により大きく伸長しました。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ケーブル | 43億円 | 53億円 | 6.6億円 | 7.7億円 | 14.5% |
| 材料 | 86億円 | 104億円 | 14億円 | 17億円 | 16.3% |
| 機器 | 43億円 | 60億円 | 5.1億円 | 6.4億円 | 10.6% |
| その他 | 0.1億円 | 0.4億円 | 0.0億円 | 0.0億円 | 7.8% |
| 連結(合計) | 172億円 | 217億円 | 26億円 | 31億円 | 14.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 22億円 | 14億円 |
| 投資CF | -22億円 | 1.0億円 |
| 財務CF | 1.9億円 | -3.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
CATV及び情報通信業界へ、国内外の高度な技術情報及び高品質・低価格の商品を顧客に提供することを通じて、高度化するネットワーク社会の発展に貢献することを社是としています。信頼される企業であり続けるために、コンプライアンス経営を最優先課題として取り組んでいます。
■(2) 企業文化
「企業は人なり」の考え方に基づき、従業員とその家族、株主及び関係取引先に対し最大限の利益を供給することを目指しています。全てのステークホルダーと良好な信頼関係を築き、経営の健全性を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社では、「売上総利益率」(粗利率)を最も重視する経営指標としています。卸売業を展開する同社にとって、利益を確保するために最も重要な指標であるため、業績管理においては当該指標の進捗を特に注視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
売上増加のために、顧客基盤の拡充、取扱商品数の拡充、イベント需要の取り込みを含む大型案件の獲得を重点施策としています。特に、売上高1億円以上100億円未満の中堅クラス顧客の開拓や、防災無線デジタル化等の需要取り込みに注力しています。また、収益性向上のため、自社企画商品の製造委託や大量ロット仕入によるコスト・リーダーシップの発揮、自社物流網の強化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
各営業拠点に情報通信分野関連の専門知識を有した人材を配置しています。今後の成長のために、これらの知識を豊富に有する人材を育成・確保することを課題としており、OJTによる社員教育の充実や、専門知識を有する優秀な人材の確保に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 38.8歳 | 13.0年 | 6,398,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 管理職に占める女性労働者の割合 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | - |
※同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定による公表義務の対象でないため、女性管理職比率および男女賃金差異の記載を省略しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報通信関連市場の需要変動
ICT設備等の需要拡大が予想されていますが、予期せぬ要因により市場の成長が鈍化した場合や、顧客の需要に応じた商品を適切に供給できない場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 輸入品の品質リスク
海外メーカーとの連携により品質維持に努めていますが、予期せぬ不具合による補償問題が発生した場合、対策費用の発生により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、カントリーリスクや為替変動の影響を受ける可能性もあります。
■(3) 自然災害による事業中断
複数の倉庫での在庫保管やデータバックアップ等の防災策を講じていますが、大規模な地震や風水害等により営業・物流拠点が甚大な被害を受けた場合、事業遂行に支障をきたし、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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