※本記事は、東海ソフト株式会社 の有価証券報告書(第56期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東海ソフトってどんな会社?
独立系のソフトウエア開発会社として、自動車関連の組込みシステム、製造業向けの業務システム、金融・公共システムの3領域を柱に事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1970年に産業向けシステム開発を目的として設立されました。1980年に民生機器向け組込み事業、2001年に車載関連開発を開始し、現在の主力事業の基盤を築きました。2019年に株式上場を果たし、2024年にはAJ・Flatを完全子会社化するなど、組織拡大を進めています。
連結従業員数は808名(単体579名)です。大株主構成については、筆頭株主は同社執行役員を務める水谷慎介氏、第2位は従業員持株会、第3位は同社会長の伊藤秀和氏となっており、経営陣と従業員が主要な株式を保有する安定的な株主構造となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 水谷 慎介 | 18.06% |
| 東海ソフト社員持株会 | 9.28% |
| 伊藤 秀和 | 5.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は尾上雅憲氏が務めています。取締役会における社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊藤 秀和 | 取締役会長 | 1982年入社。技術統括部長などを経て2010年社長に就任。2023年代表取締役会長CEOを経て2025年8月より現職。 |
| 尾上 雅憲 | 代表取締役社長 | 1997年入社。産業技術本部本部長、専務取締役などを経て2023年社長COOに就任。2024年12月よりAJ・Flat社長を兼務。 |
| 山下 一浩 | 常務取締役 | 大正製薬を経て1989年入社。管理本部本部長として管理部門を統括し、2024年CFOに就任。2025年8月より現職。 |
| 赤尾 洋行 | 取締役 | 2002年入社。ソリューション技術本部本部長などを歴任し、2025年上席執行役員経営管理本部本部長を経て2025年8月より現職。 |
社外取締役は、神谷俊一(弁護士)、阿知波知子(公認会計士・税理士)、吉永明宏(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「組込み関連事業」「製造・流通及び業務システム関連事業」「金融・公共関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■組込み関連事業
自動車のECU(電子制御ユニット)や民生・産業機器の制御ソフトウエアを開発しています。自動車分野ではCASE(自動運転・電動化等)に対応した開発を行い、民生分野では自動販売機やデジタル家電等の制御を手掛けています。
収益は、自動車部品メーカーや機器メーカー等の顧客からの受託開発費用および技術者派遣による対価です。運営は主に同社が行っています。
■製造・流通及び業務システム関連事業
工場の生産ラインや物流システムを制御するソフトウエア、および生産管理や在庫管理などの業務システムを開発しています。IoTやAIを活用した工場DXの支援も行っています。
収益は、製造業や流通業を中心とした顧客企業からのシステム受託開発費用およびソリューション提供の対価です。運営は主に同社が行っています。
■金融・公共関連事業
大手システムインテグレーター(SIer)の協力会社として、金融機関や官公庁、自治体向けのソフトウエア開発を行っています。
収益は、大手SIerからの受託開発費用および技術支援の対価です。運営は主に同社が行っています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、連結子会社におけるソフトウエア開発に係る役務提供などを行っています。
収益は、顧客企業への技術者派遣や一般事務派遣等による対価です。運営は主にAJ・Flatが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社は第56期より連結財務諸表を作成しています。連結初年度の売上収益は100億円を超え、利益率も10%を超える高水準を維持しています。単体ベースの過去の推移を見ても売上高・利益ともに拡大傾向にあり、連結化により事業規模が一層拡大しています。
| 項目 | 2025年5月期 |
|---|---|
| 売上高 | 107億円 |
| 経常利益 | 11億円 |
| 利益率(%) | 10.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 |
■(2) 損益計算書
第56期より連結決算へ移行したため、当期の数値のみを掲載します。売上総利益率は約24%、営業利益率は約10%となっており、ソフトウエア開発事業として安定した収益性を確保しています。
| 項目 | 2025年5月期 |
|---|---|
| 売上高 | 107億円 |
| 売上総利益 | 25億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.9% |
| 営業利益 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.3億円(構成比37%)、賞与が1.4億円(同10%)を占めており、人件費が主要なコストとなっています。
■(3) セグメント収益
各事業とも堅調に推移しています。特に製造・流通及び業務システム関連事業はDX投資の活発化により最大の売上規模となっています。組込み関連事業も安定しており、金融・公共関連事業はパートナー活用拡大等により収益に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) |
|---|---|
| 組込み関連事業 | 35億円 |
| 製造・流通及び業務システム関連事業 | 53億円 |
| 金融・公共関連事業 | 19億円 |
| その他 | 0.7億円 |
| 連結(合計) | 107億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.9%で市場平均(スタンダード市場非製造業平均48.5%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「顧客に信頼される誠実な企業である」「技術・商品を常に研く企業である」「社員に信頼される誠実な企業である」を経営理念として掲げています。日本の製造業をソフトウエア技術で支えることを中心に据え、顧客・社員・社会すべてに信頼される企業を目指しています。
■(2) 企業文化
顧客に対して新しい技術への挑戦やトレンドを先取りしたビジネス展開を行うとともに、ワンストップソリューションの提供を重視しています。また、社員に対しては良好な労働環境と安定雇用の維持に努め、コンプライアンスや環境保全にも真摯に対応する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、利益の還元と財務体質の維持を目指し、以下の経営指標を目標として掲げています。
* 営業利益率:10%以上
* 自己資本当期純利益率(ROE):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「変革に挑み新たな安定と成長のステージへ」をスローガンに、既存事業の強化、新たな事業基盤の確立、新技術・新事業の開拓、生産体制の強化に取り組んでいます。特にDX推進やCASE分野への注力、M&Aを含めたパートナー戦略を推進しています。
* 組込み主要顧客と中核技術への選択と集中
* IoT事業を起点とした産業界のDX推進
* 車載SPFをベースとした車載関連開発へのシフト
* 積極的な採用活動と社内教育体制の強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
労働集約型から顧客事業協業型企業への転換を目指し、技術者教育とリスキリングによる多能工化を進めています。新卒・中途採用の強化に加え、M&Aやパートナー企業との連携により開発体制を拡大し、社員のキャリアパスと会社のビジョンを合致させる風土の再構築を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 36.3歳 | 11.6年 | 6,317,539円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 54.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 76.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 81.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用に占める女性比率(25.0%)、男性労働者の育児休業取得率(62.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材確保に関するリスク
事業の継続・拡大には優秀な技術者の確保が不可欠ですが、獲得競争は年々厳しくなっています。採用計画の未達や、プロジェクトマネジメントを担う中核社員の離職が発生した場合、開発力の低下を招き、グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 景気変動によるリスク
ソフトウエア受託開発は景気の影響を受けやすい傾向にあります。経済情勢の変動や災害等により、顧客企業の事業縮小やIT投資計画の見直し、開発案件の縮小・中止が発生した場合、受注や売上が減少し、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 不採算プロジェクトの発生リスク
システムの大規模化・複雑化により開発難易度が高まっています。品質不良や納期遅延が発生した場合、追加コストによる赤字計上だけでなく、顧客からの信頼失墜や損害賠償請求につながる恐れがあります。これらはグループの業績や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。



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