※本記事は、東海ソフトの有価証券報告書(第57期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東海ソフトってどんな会社?
同社は、独立系ソフトウェア開発会社として、製造業や公共インフラ等を支える受託開発を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1970年に産業向けコンピュータシステム開発を目的として設立されました。2001年に組込み関連事業の一環として車載関連開発を開始し、2019年に東京・名古屋両証券取引所に上場を果たしました。2024年にはAJ・Flatを子会社化するなど、事業基盤の拡大を続けています。
現在の従業員数は連結で795名、単体で601名です。筆頭株主は同社の執行役員である水谷慎介氏で、第2位は社員持株会です。第3位には製造業向けソリューション分野で協業関係にあるビジネスエンジニアリングが名を連ねており、業務提携と連動した資本関係が構築されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 水谷慎介 | 15.93% |
| 東海ソフト社員持株会 | 7.44% |
| ビジネスエンジニアリング | 5.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は尾上雅憲氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 尾上雅憲 | 代表取締役社長 | 1997年入社。産業技術本部長等を経て、2023年に社長就任。2025年より現職。 |
| 伊藤秀和 | 取締役会長 | 1982年入社。社長や最高経営責任者(CEO)などを歴任し、2025年より現職。 |
| 山下一浩 | 常務取締役 | 大正製薬を経て1989年入社。管理本部長等を経て最高財務責任者に就任し、2025年より現職。 |
| 赤尾洋行 | 取締役 | 2002年入社。ソリューション技術本部長等を経てAJ・Flat取締役に就任し、2026年より現職。 |
社外取締役は、神谷俊一(正信法律事務所所長)、阿知波知子(あちわ行政書士事務所代表)、吉永明宏(吉永明宏公認会計士・税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「組込み関連事業」「製造・流通及び業務システム関連事業」「金融・公共関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 組込み関連事業
自動車、産業機器、民生機器等に搭載される組込みソフトウェアや関連システムの設計・開発を行っています。車載分野では電動化関連や先進運転支援システム、民生・産業分野では機器制御や通信制御などの開発を手掛けています。
収益源は、自動車メーカーや産業機器メーカーなどからのソフトウェア受託開発による開発費です。長年にわたる顧客との継続的な取引を通じ、製品のライフサイクルを通じた開発支援を行っています。運営は主に同社が行っています。
■(2) 製造・流通及び業務システム関連事業
工場の生産ラインや物流システムの搬送装置等を監視・制御するシステムや、製造業向けの生産管理、在庫管理等の業務システム開発を行っています。IoTやAI技術を活用したデジタルトランスフォーメーション支援も提供しています。
収益源は、製造業や流通業を中心とした顧客からのシステム受託開発費やパッケージソフトウェア導入に係るソリューション提供費です。顧客の業務システムを一括して受託する案件が多くを占めており、運営は主に同社が行っています。
■(3) 金融・公共関連事業
大手システムインテグレーターのパートナー企業として、主に大手金融機関向けのシステム開発や、官公庁、地方自治体、大学、公益法人などの特定業務に関するソフトウェア開発を行っています。
収益源は、大手システムインテグレーターからプロジェクト型で受託する大規模開発の開発費です。長年の実績により安定的かつ継続的な受注基盤を構築しています。運営は主に同社が行っています。
■(4) その他
上記の主要なソフトウェア開発事業の区分に属さない、一般事務等の人材派遣サービスなどを提供しています。顧客の多様なニーズに柔軟に対応し、グループ全体の事業展開をサポートしています。
収益源は、派遣先企業から受け取る人材派遣に係る役務提供の対価です。この事業の運営は、2024年に子会社化したAJ・Flatが主に行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の直近数年間の業績は、売上高および利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)投資の加速を背景に受注が拡大しており、不採算プロジェクトの抑制や生産性の向上も寄与して、収益力の継続的な強化が図られています。
| 項目 | 第54期 | 第55期 | 第56期 | 第57期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | 107億円 | 123億円 |
| 経常利益 | - | - | 11億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | - | - | 10.7% | 11.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 7億円 | 8億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は二桁増収を記録し、それに伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は安定した水準を維持する一方で、営業利益率は上昇傾向にあり、事業拡大による利益の増加を実現しています。
| 項目 | 第56期 | 第57期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 107億円 | 123億円 |
| 売上総利益 | 25億円 | 29億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.9% | 23.8% |
| 営業利益 | 11億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% | 11.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比36%)、賞与が2億円(同10%)を占めています。また、売上原価においては、人件費等の労務費と協力会社への外注加工費が高い割合を占めており、ソフトウェア開発特有の労働集約的なコスト構造となっています。
■(3) セグメント収益
組込み関連事業は車載・産業機器向け開発の需要が旺盛で増収となりました。製造・流通及び業務システム関連事業も企業のDX投資を背景に成長しています。一方、金融・公共関連事業は受注は堅調なものの、売上規模は前年をやや下回りました。
| 区分 | 売上(第56期) | 売上(第57期) |
|---|---|---|
| 組込み関連事業 | 35億円 | 42億円 |
| 製造・流通及び業務システム関連事業 | 53億円 | 62億円 |
| 金融・公共関連事業 | 19億円 | 18億円 |
| その他 | 1億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 107億円 | 123億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金を使って投資や借入金の返済を進める、健全な財務状態を示しています。
| 項目 | 第56期 | 第57期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 12億円 |
| 投資CF | -2億円 | -1億円 |
| 財務CF | -0億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も61.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「東海ソフトは顧客に信頼される誠実な企業である」「東海ソフトは技術・商品を常に研く企業である」「東海ソフトは社員に信頼される誠実な企業である」という3つの経営理念を掲げています。日本の製造業をソフトウェア技術で支えることを経営の中心に据え、社会が持続的に発展する未来の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、新しい技術への挑戦と提案を行い、トレンドを先取りしたビジネス展開を目指す文化を重視しています。高品質な製品と高信頼なサービスを提供するだけでなく、良好な労働環境と人材育成、安定雇用に努め、コンプライアンスやセキュリティへも真摯に対応することで、顧客・社員・社会すべてから信頼される組織風土を築いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、優秀な人材による高付加価値の開発案件の受注とプロジェクト管理力の向上が利益を生むと考え、中長期的な経営目標として以下の数値を設定しています。
* 営業利益率:10%以上
* 自己資本当期純利益率(ROE):12%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「AI時代における持続的成長への戦略投資」を中期経営計画のスローガンとし、生成AIなどの先端技術を活用した開発生産性の向上と付加価値創出を図っています。労働集約型から顧客事業協業型への転換を進め、製造業のDX支援やSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)領域の拡大、公共・社会インフラ領域での安定収益基盤の構築に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「社員の成長を企業の成長につなげる」を人材戦略の基本方針としています。採用から定着までの人材マネジメントサイクルを一体的に運営し、専門性やマネジメント力に加え、誠実さなどの「人間力」向上を重視しています。また、多様な人材が能力を発揮できるよう、柔軟な働き方の推進や健康経営を通じたエンゲージメント向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 第57期 | 36.4歳 | 11.8年 | 6,746,164円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.9% |
| 男性育児休業取得率 | 53.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 74.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気変動によるリスク
国内外の景気悪化や大規模災害等により、顧客企業の設備投資や製品開発計画が見直された場合、受注の減少が同社の業績に影響を与える可能性があります。同社は事業領域を3つの分野に分散させることで、景気変動の影響を抑え業績の安定化を図っています。
■(2) 大口顧客依存に関するリスク
同社の各事業部門には大口取引先が存在しており、取引先の事業方針変更等により取引が大幅に縮小した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、顧客の開発手法への習熟や品質向上を通じて信頼関係を維持しつつ、新規開拓による顧客基盤の拡大に努めています。
■(3) 協力会社依存に関するリスク
同社は生産性向上などを目的としてソフトウェア開発の一部を協力会社に委託していますが、技術者の需給バランスの変化により要員確保が困難になったり、発注価格が高騰した場合、事業拡大や業績に影響を与える可能性があります。これに対し、外部人材の活用や関係強化に積極的に取り組んでいます。



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