室町ケミカル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

室町ケミカル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

室町ケミカルは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、医薬品原薬の製造・販売や、イオン交換樹脂等の化学品事業を展開しています。直近の業績では、既存商品の販売好調や化学品事業の伸びにより増収となった一方、減損損失の計上が影響し最終減益となりました。技術力を活かし安定成長を目指しています。


※本記事は、室町ケミカルの有価証券報告書(第80期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 室町ケミカルってどんな会社?


医薬品や化学品など、液体処理技術に強みを持つ事業を展開するメーカー兼商社です。

(1) 会社概要


同社は1917年に売薬の製造販売を目的に設立されました。1998年に現在の室町ケミカルに社名を変更しています。2014年には原薬合成事業へ本格参入し、2021年に株式上場を果たしました。事業の選択と集中を進めており、2026年5月には健康食品事業から撤退し、医薬品と化学品に経営資源を注力しています。

現在の従業員数は単体で199名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は個人の村山哲朗氏で、第2位は代表取締役社長の青木淳一氏、第3位には同社の従業員持株会が名を連ねており、個人株主や社内関係者が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
村山哲朗 10.19%
青木淳一 8.85%
室町ケミカルグループ従業員持株会 6.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は青木淳一氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
青木淳一 代表取締役社長 カネボウや日東紡績などを経て、2010年に同社入社。工場長や生産本部長を歴任し、2019年12月より現職。
井内聡 取締役 旭精機やリコー九州を経て、2007年に同社入社。総務部長や経営企画室長、管理本部長を歴任し、2024年6月より現職。
井ノ口浩俊 取締役 東洋平成ポリマーなどを経て、2010年に同社入社。機能材料部長や化学品事業部長を歴任し、2023年6月より現職。
坂谷孝 取締役 セントラル硝子などを経て、2018年に同社入社。医薬品事業部長を歴任し、2025年6月より現職。
中村弘 取締役 複数の企業を経て、1998年に同社入社。品質管理本部長や生産本部長を歴任し、2023年8月より現職。


社外取締役は、松本隆司(元野村證券)、髙橋智(アクロスザシー代表取締役)、山本洋臣(山本経営会計事務所代表)、野田芳(野田公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」、「健康食品事業」、「化学品事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 医薬品事業


中国やインドなどの海外から医薬品の有効成分である原薬を調達・販売するほか、自社での原薬合成や異物除去、精製等の加工を行っています。商社とメーカー両方の機能を併せ持ち、製薬会社や医薬品商社を主要顧客としています。

収益源は、輸入原薬や自社で合成・精製した原薬の販売代金です。同社が主体となって事業を運営しており、自社内で日本薬局方に基づいた試験・分析ができる体制も保有し、原薬のトータルサービスを提供しています。

(2) 健康食品事業


主にスティックゼリータイプやTパウチゼリータイプの健康食品の企画および製造を行っていました。

収益源は、販売先からのOEM製造を通じた受託製造代金です。運営は同社が行っていましたが、投下資本の有効活用と経営資源の集中の観点から、2026年5月期をもって本事業からは撤退を完了しています。

(3) 化学品事業


純水の製造などに使われるイオン交換樹脂や分離膜などの液体処理関連製品の販売、および水処理装置の設計・製造を行っています。化学メーカーや機械メーカー向けに、用途に合わせた加工や再生処理も提供します。

収益源は、イオン交換樹脂や水処理装置の販売代金に加え、顧客から預かった溶液の精製や接着剤等の受託加工による手数料です。同社が運営を担い、長年培ってきた液体処理技術による課題解決を強みとしています。

3. 業績・財務状況


同社の単体業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5年間で継続的な右肩上がりとなっており、着実な事業成長が見て取れます。利益面でも本業の好調から経常利益は大きく伸長しましたが、直近では事業計画の見直し等に伴う減損損失の計上により最終利益が減少する結果となりました。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 56.8億円 62.9億円 63.7億円 66.5億円 78.4億円
経常利益 4.2億円 3.5億円 4.3億円 4.3億円 7.1億円
利益率(%) 7.4% 5.6% 6.7% 6.5% 9.0%
当期純利益 4.6億円 2.6億円 3.3億円 2.4億円 1.6億円

(2) 損益計算書


全事業で売上を伸ばしたことで大幅な増収となっています。高付加価値品の販売伸長や工場稼働率の向上により利益率も改善し、営業利益は前期比で大きく増加する結果となりました。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 66.5億円 78.4億円
売上総利益 19.6億円 23.6億円
売上総利益率(%) 29.5% 30.1%
営業利益 4.3億円 7.4億円
営業利益率(%) 6.5% 9.5%


販売費及び一般管理費のうち、その他が6.0億円(構成比37%)、給料及び手当が4.8億円(同30%)を占めています。売上原価のうち、製品売上原価が29.4億円(構成比54%)、商品売上原価が25.4億円(同46%)を占めています。

(3) セグメント収益


医薬品事業は既存商品の需要拡大を背景に輸入原薬が大きく伸び、全体の増収を牽引しました。化学品事業も半導体向け等の需要を取り込み好調に推移し、健康食品事業も需要増で売上を伸ばしました。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
医薬品事業 32.2億円 39.9億円
健康食品事業 10.4億円 11.9億円
化学品事業 23.9億円 26.7億円
連結(合計) 66.5億円 78.4億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 2.2億円 8.1億円
投資CF -3.7億円 -2.4億円
財務CF 1.2億円 3.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も40.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「健康」と「環境」をテーマに社会に貢献することを目指すというパーパスを掲げています。また、「私たちは人々との出会いを大切にし、常に新たなチャレンジと実現化の努力により、社会に貢献する企業を目指します。」を経営理念として定めています。

(2) 企業文化


経営戦略を実現し、一人ひとりが安心して活躍し学び合える組織文化の構築を目指しています。そのために、「チャレンジ」「技術・ソリューション」「エンゲージメント」「地域から世界へ」「安心・安全」の5つからなる「大切にする価値観(コアバリュー)」を設定し、求める人材像を明確にしています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な企業価値の向上を実現するため、新たに「中期経営計画2031」を策定しています。資本コストを意識した効率的な経営を掲げ、2031年5月期を最終年度とする数値目標を設定しています。

* 売上高:108億円
* 営業利益:11.6億円
* 営業利益率:10%以上
* EBITDA:14億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


「事業の再構築と更なる成長に向けた基礎固め」をテーマに、医薬品と化学品事業へ経営資源を集中します。既存事業の伸長とともに、新市場や新技術へのチャレンジ、アライアンスの積極活用を進めます。

また、医薬品原薬の安定供給体制の強化や、化学品での海外メーカーとの共同開発を通じた新規用途の開拓など、重点事業の成長に向けた設備投資と人的資本経営への取り組みを推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を会社を成長させる重要な資産と位置付け、優秀な人材の確保と定着を重要リスクへの対処と捉えています。「人材育成方針」では、公平な評価制度の運用や管理職研修を通じて従業員が自立的に能力を発揮できる体制を整備します。また、「社内環境整備方針」のもと、有給休暇や男性育児休業の取得推進など働きやすい環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 40.2歳 9.9年 5,434,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.2%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全) 67.2%
男女賃金差異(正規) 79.3%
男女賃金差異(非正規) 50.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場と特定顧客への依存リスク


医薬品原薬や液体処理市場における需要変動が業績に影響する可能性があります。また、売上高の上位5社が占める割合が約35.7%と高く、特定の取引先の販売戦略変更や生産調整、企業再編などによる取引額の減少が懸念されます。

(2) 法的規制と許認可リスク


医薬品原薬の販売において薬機法やGMP省令などの法的規制を受けており、各種の許認可を取得しています。意図せぬ法令違反により許可の取り消しや業務停止などの不利益処分を受けた場合、事業継続や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製品の品質低下に関するリスク


取り扱う医薬品原薬やイオン交換樹脂等の製品について品質管理体制の維持に努めていますが、仕入先での製造工程の問題等により品質上の問題が判明した場合、製品回収や損害賠償、社会的信用力の低下につながるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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