※本記事は、室町ケミカル株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 室町ケミカルってどんな会社?
同社は「健康」と「環境」をテーマに、医薬品原薬の製造販売や水処理関連の化学品販売などを展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社のルーツは1917年に設立された大洋製薬合資会社に遡り、1998年に現在の室町ケミカルへ商号変更しました。2014年にムロマチテクノスを吸収合併し、2017年には本社に医薬品合成工場を新設するなど製造体制を強化してきました。2021年にJASDAQ(スタンダード)へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。
同社(単体)の従業員数は203名です。筆頭株主は同社元役員と思われる村山哲朗氏で15.24%を保有しており、第2位は代表取締役社長の青木淳一氏、第3位は従業員持株会となっています。その他、資本業務提携先の日邦産業や、取引関係のある室町機械などが大株主に名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 村山哲朗 | 15.24% |
| 青木淳一 | 8.73% |
| 室町ケミカルグループ従業員持株会 | 6.57% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は青木淳一氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 青木淳一 | 代表取締役社長 | 1986年カネボウ(現カネボウ化粧品)入社。日東紡績を経て2010年同社入社。生産本部長などを歴任し、2019年12月より現職。 |
| 井内聡 | 取締役 | 1998年旭精機入社。リコー九州(現リコージャパン)を経て2007年同社入社。管理本部長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 井ノ口浩俊 | 取締役 | 1987年日之出工業(現東洋平成ポリマー)入社。ピラミッドを経て2010年同社入社。化学品事業部長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
| 坂谷孝 | 取締役 | 1993年セントラル硝子入社。岡安商店(現オカヤス)を経て2018年同社入社。医薬品事業部長を務め、2022年8月より現職。 |
| 中村弘 | 取締役 | 1989年九州不二サッシ(現不二ライトメタル)入社。東泉工業を経て1998年同社入社。生産本部長などを歴任し、2023年8月より現職。 |
社外取締役は、鳥居玲子(弁護士)、髙橋智(アクロスザシー代表取締役)、山本洋臣(山本経営会計事務所代表)、野田芳(野田公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品事業」「健康食品事業」「化学品事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■医薬品事業
この事業では、医薬品の有効成分である原薬の販売および製造を行っています。中国、インド、オランダなどの海外メーカーから原薬を調達して販売するほか、自社工場での原薬合成や精製、異物除去などの加工も行います。主な顧客は国内の製薬会社や医薬品商社です。
収益は、製薬会社などの顧客に対する原薬の販売代金や加工賃から得ています。同社は商社機能とメーカー機能を併せ持ち、原料調達から試験・分析、製造までトータルサービスを提供しています。運営は主に室町ケミカルが行っています。
■健康食品事業
この事業では、主にスティックゼリータイプの健康食品の企画・製造を行っています。顧客である健康食品メーカーや通販会社からの受託製造(ODM)が中心であり、商品設計から関わる案件が大半を占めています。独自のマスキング技術により、成分の苦みなどを調整した製品を提供しています。
収益は、顧客への製品納入による販売代金や受託製造料から得ています。なお、同社は投下資本の有効活用の観点から、2026年5月を目途に当事業から撤退することを決定しており、経営資源を他事業へ集中させる方針です。運営は主に室町ケミカルが行っています。
■化学品事業
この事業では、イオン交換樹脂や分離膜といった液体処理関連製品の販売・加工を行っています。純水製造をはじめ、液体の精製や金属回収などの用途向けに、国内外のメーカーから製品を仕入れて販売するほか、自社設備での洗浄や加工、水処理装置の設計・製造も手掛けています。
収益は、化学メーカーや機械メーカーなどの顧客に対する製品の販売代金、加工賃、装置の販売代金から得ています。また、受託加工として溶液の精製や接着剤の混合・充填なども行っており、これらも収益源となっています。運営は主に室町ケミカルが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。経常利益については、増減はあるものの概ね安定した水準を維持していますが、利益率は低下傾向が見られます。当期純利益に関しては変動があり、直近では減益となりました。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 49億円 | 57億円 | 63億円 | 64億円 | 67億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 4億円 | 4億円 | 4億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 6.9% | 7.4% | 5.6% | 6.7% | 6.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 5億円 | 3億円 | 3億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上総利益率の改善幅に対して販売費及び一般管理費の増加等の影響があり、営業利益率は微減となりました。全体として収益性は横ばい圏内で推移しています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 64億円 | 67億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 20億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.1% | 29.5% |
| 営業利益 | 4億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 6.6% | 6.5% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が6億円(構成比37%)、給料及び手当が5億円(同34%)を占めています。売上原価においては、商品売上原価が21億円(構成比45%)を占めています。
■(3) セグメント収益
医薬品事業は主力製品の需要反動等により減収となりましたが、健康食品事業は大型OEM案件等の寄与により大幅な増収となりました。一方、化学品事業はイオン交換樹脂等が好調で増収増益となり黒字転換を果たしました。健康食品事業は撤退関連費用の計上もあり営業損失が拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 医薬品事業 | 33億円 | 32億円 | 5億円 | 5億円 | 14.7% |
| 健康食品事業 | 8億円 | 10億円 | -0.4億円 | -1億円 | -9.4% |
| 化学品事業 | 23億円 | 24億円 | -0.2億円 | 0.6億円 | 2.4% |
| 連結(合計) | 64億円 | 67億円 | 4億円 | 4億円 | 6.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
室町ケミカルは、医薬品開発センター移転に伴う設備投資や、長期借入れによる資金調達を行いました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益や売上債権の減少等により増加したものの、棚卸資産の増加や仕入債務の減少により、前事業年度と比較して減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、医薬品開発センター移転に関連した有形固定資産の取得により、前事業年度よりも支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入が長期借入金の返済や配当金の支払いを上回ったため、前事業年度の支出から収入へと転じました。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 2億円 |
| 投資CF | -2億円 | -4億円 |
| 財務CF | -2億円 | 1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「健康」と「環境」をテーマに社会に貢献することを目指し、「私たちは人々との出会いを大切にし、常に新たなチャレンジと実現化の努力により、社会に貢献する企業を目指します。」という経営理念を掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、人的資本経営の土台として「大切にする価値観(コアバリュー)」を設定しています。具体的には、「チャレンジ」「技術・ソリューション」「エンゲージメント」「地域から世界へ」「安心安全」の5つを掲げ、これらを重視する企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は2028年5月期を最終年度とする「中期経営計画2028」を策定し、事業の再構築と更なる成長に向けた基礎固めを進めています。2028年5月期の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:72億円以上
* 営業利益:3.6億円以上
* 営業利益率:5%以上
* EBITDA:6.5億円以上
* ROE:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は「医薬品」「化学品」の2事業に経営資源を集中させ、持続的な成長を目指します。医薬品事業では調達ネットワークの強化や設備投資による製造能力増強、化学品事業では共同開発を通じた用途開発や海外市場の開拓を進めます。一方、健康食品事業からは2026年5月を目途に撤退し、人員やスペース等の経営資源を成長事業へ再配分する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、年齢・国籍・性別を問わず優秀な人材を採用し、働きがいを感じながら能力を発揮できる体制を確保することを方針としています。また、社員の安全と心身の健康維持、能力発揮のための環境整備を重視しており、有給休暇や男性育休の取得推進、インフラ整備などを進めています。これらを推進するため、「評価」「育成」「採用」「職場環境」の4つの委員会を設置しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 39.8歳 | 9.5年 | 5,272,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.8% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 46.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(77%)、男性育児休暇取得率(0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料・商品の仕入に関するリスク
医薬品原薬は特定の製剤仕様に応じて主に海外から継続的に調達しています。市況や為替変動による価格変動、あるいは海外メーカーの経営状態や現地情勢等の影響で調達が困難になった場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場及び顧客動向に関するリスク
医薬品原薬の販売は製剤市場の需要変動の影響を受けます。また、特定の相手先への依存度が比較的高く(2025年5月期の上位5社比率は32.8%)、顧客の戦略変更や企業再編等により取引額が減少した場合、経営成績に影響が出る可能性があります。
■(3) 許認可及び法的規制に関するリスク
医薬品原薬の販売に関して薬機法等の規制を受けており、各種許認可を保持しています。法令違反等によりこれらの許認可が取り消しや停止となった場合、経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、健康食品や化学品についても関連法規制の遵守が求められます。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。