Enjin 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Enjin 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場する同社は、PRコンサルティングサービスを主軸に、メディアプラットフォームサービスも展開しています。第19期連結会計年度の業績は、売上高29億円(前期比10.6%減)、経常利益8億円(同21.7%減)と減収減益となりました。


※本記事は、株式会社Enjin の有価証券報告書(第19期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Enjinってどんな会社?


企業や医療機関向けにPR支援を行うコンサルティング事業と、メディアマッチングプラットフォームを展開する企業です。

(1) 会社概要


2007年に株式会社矢動丸enjinとして設立され、WEBメディア「KENJA GLOBAL」を開設しました。2020年にメディアマッチングサービス「メディチョク」を開始し、2021年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場しました。2023年にはアズ・ワールドコムジャパンを子会社化し、PR支援の体制を強化しています。

2025年5月31日現在の従業員数は、連結で136名、単体で129名です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社であるS&Sホールディングスで、第2位は代表取締役社長の本田幸大氏、第3位は取締役の資産管理会社であるWiseWealthとなっています。

氏名 持株比率
S&Sホールディングス 42.59%
本田 幸大 15.95%
WiseWealth 1.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名、計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は本田幸大氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
本田 幸大 代表取締役社長 2004年矢動丸プロジェクト入社。2007年同社設立に伴い代表取締役社長に就任。Candy Action代表理事を兼任。2007年より現職。
原口 博光 取締役 経済産業省を経て、ダントーホールディングス社長、三井農林執行役員等を歴任。2023年より現職。
平田 佑司 取締役 税理士事務所等を経て、2007年同社入社。経営企画本部長、コーポレート本部本部長等を歴任。2023年より現職。
多鹿 晴雄 取締役(常勤監査等委員) ソフトバンクBB等を経て、2007年同社入社。同社代表取締役、常勤監査役を経て、2024年より現職。


社外取締役は、工藤竜之進(TMI総合法律事務所パートナー)、吉田桂公(のぞみ総合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「PRコンサルティングサービス」および「メディアプラットフォームサービス」を展開しています。

(1) PRコンサルティングサービス


企業メッセージの発信を支援するため、テレビ、新聞、雑誌、ラジオ等の既存メディアに加え、WEBやSNSを通じたマルチメディア戦略を提供しています。「KENJA GLOBAL」「私のカクゴ」等の自社メディアも運営し、顧客ニーズに合わせたブランディング構築をサポートしています。

収益は、顧客から受領するコンテンツの「制作費」とメディアへの「掲載費」から構成されています。運営は、主にEnjinが行うほか、子会社のアズ・ワールドコムジャパンがメディアリレーションやイベント支援、リスクマネジメントなどのオーダーメイドPR支援を提供しています。

(2) メディアプラットフォームサービス


広報担当者が介在せず、PCやスマートフォン上でメディアと企業を直接マッチングさせるサービス「メディチョク」を展開しています。企業は情報発信を行い、メディアは掲載情報を募集することで、双方向のアプローチが可能となります。

収益は、サービスを利用する顧客企業からのシステム利用料等によって構成されています。運営はEnjinが行っており、オプションとしてニュースリリースの作成代行なども提供することで、広報活動のサポート体制を構築しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第18期から第19期にかけて、売上高は減少傾向にあります。利益面でも、経常利益および当期利益ともに減少しており、減益となっています。利益率は依然として高い水準を維持していますが、前期間と比較すると低下しています。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 33億円 29億円
経常利益 11億円 8億円
利益率(%) 33.0% 28.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 5億円

(2) 損益計算書


直近2期間において、売上高の減少に伴い売上総利益も減少しています。売上総利益率は高い水準を維持しています。営業利益については、売上高の減少に加え、固定費の負担などにより減益となりました。営業利益率も低下傾向にあります。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 33億円 29億円
売上総利益 27億円 23億円
売上総利益率(%) 81.2% 80.0%
営業利益 10億円 8億円
営業利益率(%) 32.0% 28.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.4億円(構成比36%)、地代家賃が1.5億円(同10%)を占めています。売上原価においては、外注費が主要な要素を占めています。

(3) セグメント収益


PRコンサルティングサービスは、売上高、利益ともに減少しており、全体業績の押し下げ要因となっています。メディアプラットフォームサービスも売上高は微減、利益は大幅に減少しました。両セグメントともに厳しい事業環境がうかがえます。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
PRコンサルティングサービス 29億円 26億円 10億円 8億円 31.5%
メディアプラットフォームサービス 4億円 4億円 0.7億円 0.3億円 8.4%
連結(合計) 33億円 29億円 10億円 8億円 28.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動によるキャッシュ・フローもプラス、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから「改善型」と判定されます。本業で得た現金に加え、投資の回収等により資金を確保し、借入金の返済や株主還元を進めている状況です。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 2.3億円 6.9億円
投資CF -1.7億円 1.6億円
財務CF -5.9億円 -2.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.0%で市場平均を大きく上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会の役に立つ立派な人間を一人でも多く輩出すること」をパーパス(存在意義)として掲げています。また、「あらゆる価値を可視化する」ことを全てのサービスの根幹となるミッションと位置付け、PR事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、「社会の役に立つ立派な人間を一人でも多く輩出する」という理念を共有し、創造力と実行力を兼ね備えた人材を重視しています。顧客の課題や要望に応じてカスタマイズされたPR戦略を提供するため、既存の媒体や手法にとらわれず、顧客の価値を高めていく姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長と企業価値の向上を目指しており、主な経営指標として以下の数値を特に重視しています。また、KPI(重要業績評価指標)として、適正な人員規模、教育体制による事業運営に努める方針です。

* 売上高
* 営業利益

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、変化するメディア環境に対応し、高品質なサービスをワンストップで提供できる体制強化に取り組んでいます。今後は、積極的な広告推進によるサービスの認知度向上や、マーケティング強化、紹介パートナー拡大を通じて営業機能を強化します。また、生成AIを活用し、コンテンツ制作の効率化やパーソナライズされた情報発信を推進します。

* 人材の確保及び育成強化(新卒・中途採用の強化、トレーニングメニュー拡充)
* 組織・管理体制の強化(管理部門の生産性向上)
* 新しい広報・PR手法の開発(サービス機能の拡充)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最大の資産と捉え、新卒・中途を問わず積極的な採用を行っています。人事部門に教育機関を設け、OJT形式の研修カリキュラムを通じてオンボーディングを推進し、早期戦力化を図っています。また、入社年数や属性に関わらず、能力のある従業員が平等に管理職へ登用される人事制度を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 29.1歳 3.6年 4,201,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気の変動について


PR業界の予算は景気変動の影響を受けやすいため、景気悪化が進んだ場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。顧客ニーズの掘り起こしに努めていますが、予算縮小の影響は避けられないリスクがあります。

(2) 新規事業開発と競合状況


独自の企画による差別化を図っていますが、新規事業が顧客に受け入れられない場合、業績に影響する可能性があります。また、参入障壁は高いものの、他社の新規参入や環境変化により競争が激化した場合、差別化が困難になるリスクがあります。

(3) 法的規制への対応


下請法や著作権、個人情報保護法、医療法(医療広告ガイドライン)などの法的規制を遵守する必要があります。万が一これらに違反する事象が発生したり、第三者の権利侵害が生じた場合、損害賠償請求や信用の低下により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 検索エンジンへの依存


一部のサービスはYahoo!やGoogle等の検索エンジンの結果に依存しています。検索アルゴリズムの変更や運営方針の転換により検索結果を利用できなくなった場合、または検索エンジンの利用者が減少した場合、事業展開や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。