※本記事は、株式会社Enjinの有価証券報告書(第20期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Enjinってどんな会社?
Enjinは、PRコンサルティングやメディアマッチング等のPR事業を中核に展開する企業です。
■(1) 会社概要
2007年に中小企業や医療機関向けPR事業を目的に設立されました。2017年に現在のEnjinへ社名を変更し、2020年にはメディアマッチングサービス「メディチョク」を開始しました。2021年に東京証券取引所マザーズへ上場し、直近ではM&A等を通じて不動産や観光分野へも事業領域を拡大しています。
従業員数は連結149名、単体126名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の本田幸大氏の資産管理会社であるS&Sホールディングスで、第2位も本田幸大氏個人となっています。第3位には元役員の資産管理会社であるWiseWealthが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| S&Sホールディングス | 43.98% |
| 本田幸大 | 16.47% |
| WiseWealth | 2.24% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。本田幸大氏が代表取締役社長を務め、社外取締役の比率は66.7%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 本田幸大 | 代表取締役社長 | 2004年矢動丸プロジェクト入社。2007年同社を設立し代表取締役社長に就任。Candy Action代表理事を務める等し現職。 |
| 平田佑司 | 取締役 | 税理士事務所等を経て2007年同社入社。社長室長、経営企画本部長、コーポレート本部本部長を歴任し、2023年より現職。 |
社外取締役は、菊川怜(タレント・キャスター等)、工藤竜之進(TMI総合法律事務所パートナー)、吉田桂公(のぞみ総合法律事務所パートナー)、古田靖幸(元監査法人トーマツ公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「PRコンサルティングサービス」「メディアプラットフォームサービス」「不動産事業」および「その他」の事業を展開しています。
■PRコンサルティングサービス
テレビ、新聞、雑誌、ラジオ等の既存メディアと、自社メディアを通じたWEB・SNS展開を組み合わせたマルチメディア戦略により、中小企業や医療機関等のクライアントのブランド価値最大化を支援しています。多岐にわたるオーダーメイドのメディアリレーションやイベント支援等を提供しています。
顧客からコンサルティングやPR支援の対価として収益を得るモデルです。運営は主に同社および子会社のアズ・ワールドコムジャパンが担当しており、グローバルPRネットワークを活用した海外アプローチも視野に入れた総合的なサービスを提供しています。
■メディアプラットフォームサービス
PRプランナーを介さずに、PCやスマートフォン上で顧客とメディアが直接情報をやり取りできるマッチングサービス「メディチョク」を展開しています。企業からの積極的な情報発信やメディアからの掲載募集を双方向で行うことが可能です。
プラットフォームの利用料等を顧客から受け取ることで収益を得るモデルです。情報発信を得意としない顧客向けに有償でニュースリリースの作成を代行するオプション等も提供しており、同社が運営を行っています。
■不動産事業
東京23区およびその近郊を主たる対象エリアとし、資産運用型マンションや収益不動産の開発、価値が低下した不動産の再生(バリューアップ)と売買、ならびに投資用不動産の賃貸および管理等を行っています。
顧客への不動産販売代金や、保有物件からの賃貸収入を主な収益源としています。既存のPR事業で構築した顧客基盤とのシナジーを活かし、子会社のクロスロードが事業を運営しています。
■その他
関西国際空港や大阪市内へのアクセスが良好な拠点を活かし、訪日観光客や国内観光客を対象とした貸切バスの運行や、海外旅行会社に対するBtoBの旅行手配等の観光関連事業を行っています。
旅行や輸送サービスの対価として収益を得るモデルで、子会社のEn Journeyおよびホタルスが運営しています。また、AI AcceleratorによるAI関連事業や、Enjin Payment Serviceによるファクタリング事業等の新規事業も展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績は、売上高および経常利益ともに減少傾向で推移しています。主力事業における人員減少等の影響で売上が減少したことに加え、M&A等による先行投資や子会社の事業特性による原価率の上昇があり、利益面でも減益となっています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 33億円 | 29億円 | 27億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 8億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 33.0% | 28.9% | 15.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 5億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に加え、新規連結子会社の事業特性による売上原価の増加等により、売上総利益および営業利益ともに減少しています。利益率も低下傾向にあり、事業領域の拡大に伴う一時的なコスト増が影響している状況です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 29億円 | 27億円 |
| 売上総利益 | 23億円 | 19億円 |
| 売上総利益率(%) | 80.0% | 69.1% |
| 営業利益 | 8億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 28.8% | 13.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.4億円(構成比36.1%)、地代家賃が1.5億円(同9.7%)、役員報酬が1.1億円(同7.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のPRコンサルティングサービスおよびメディアプラットフォームサービスは、人員減少等の影響により前年を下回る結果となりました。一方で、当期より新たに事業領域に加わった不動産事業が新たな収益源として寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) |
|---|---|---|
| PRコンサルティングサービス | 26億円 | 22億円 |
| メディアプラットフォームサービス | 4億円 | 2億円 |
| 不動産事業 | - | 4億円 |
| 連結(合計) | 29億円 | 27億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業・投資・財務のいずれもマイナスとなっており、資金繰りが厳しく見える末期型の状況です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | -0.4億円 |
| 投資CF | 2億円 | -15億円 |
| 財務CF | -3億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.9%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「社会の役に立つ立派な人間を一人でも多く輩出すること」をパーパス(存在意義)とし、「あらゆる価値を可視化する」ことを全てのサービスの根幹となるミッションと位置付けています。提供するサービスの価値を高め、社会全体の幸福度を高めていけるようなサービスを提供していくために事業を営んでいます。
■(2) 企業文化
パーパスの体現に向け、社員一人ひとりの市場価値を高め、顧客に必要とされる人材になれるよう様々な取り組みを行っています。「社会の役に立つ立派な人間を一人でも多く輩出する」という理念を共有し、創造力と実行力を兼ね備えた多彩な人材によって他社に対する優位性を発揮することを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
持続的な成長と企業価値の向上を目指し、主な経営指標として連結売上高および連結営業利益を特に重視しています。今後の成長を見据え、適正な人員規模や教育体制による事業運営をKPIとして推進し、持続的な事業拡大を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存のPR事業においては、生成AIの活用やDXの推進によりコンテンツ制作の効率化や提案の高度化を図ります。また、新たに加わった不動産・観光・AI・金融分野を含め、創業以来培ってきた顧客基盤を核にグループ横断での相互送客を進め、シナジー創出と事業基盤の確立を通じた早期の収益化を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「各事業を牽引する専門人材および経営人材の確保・育成」「成果に応じた公正な処遇による従業員の意欲および生産性の向上」「生成AIの活用等による業務効率化と人的リソースの成長分野への最適配置」を基本方針としています。新卒・中途を問わず積極的な採用と育成を行い、限られた人員で持続的成長を実現できる体制構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 30.6歳 | 3.9年 | 5,565,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 61.8% |
※同社は公表義務の対象ではないため、男性労働者の育児休業取得率の記載はありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気変動によるPR予算への影響
企業のPRに関連する予算は景気変動の影響を受けやすいため、景気が悪化した場合には同社グループの売上高に影響を及ぼす可能性があります。また、新たに開始した不動産事業や観光関連事業も不動産市況や金利動向、国内外の観光需要等の影響を受けやすく、環境悪化が業績に影響するリスクがあります。
■(2) 事業多角化と新規事業の不確実性
M&Aや新会社の設立により、不動産や観光、AI関連、ファクタリング事業等へと領域を拡大しています。これらの展開にあたっては市場調査を行っていますが、想定通りに顧客に受け入れられる保証はありません。特に先行投資段階にあるAIやファクタリング事業の収益化が遅れた場合、投資を回収できず業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 新規参入と競争激化
PR事業においては新規参入事業者が絶えず発生しています。同社は多様なメディアリレーションにより高い参入障壁を築いていると判断していますが、競争がさらに激化し効果的な差別化が行えなくなった場合、業績に影響が及ぶリスクがあります。また、新規参入した他分野でも十分な競争力を確保できない懸念があります。



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