※本記事は、株式会社シイエヌエスの有価証券報告書(第41期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. シイエヌエスってどんな会社?
システムエンジニアリングサービス事業を主力とし、最先端技術を活用した顧客企業の課題解決を支援しています。
■(1) 会社概要
1985年にシステム開発に関する受託業務を目的として設立されました。1995年に金融機関向け等のビジネスソリューション事業を開始し、その後クラウド・インフラ事業やビッグデータ分析事業へと領域を拡大しました。2021年に東京証券取引所マザーズへ上場し、現在は3つの事業本部体制へと移行しています。
現在の従業員数は連結で258名、単体で213名です。筆頭株主は同社の取締役である富山広己氏の資産管理会社であり、第2位も同氏個人の保有となっています。第3位には代表取締役社長の関根政英氏が名を連ねており、経営陣に関連する株主が上位を占める構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| N&KT | 20.64% |
| 富山 広己 | 13.92% |
| 関根 政英 | 6.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は関根政英氏が務めており、社外取締役の比率は約44%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 関根 政英 | 代表取締役社長 | 1988年住信情報サービス入社。1993年同社入社、2003年取締役等を経て2015年より現職。 |
| 富山 広己 | 取締役 | 1976年日本ユニバック入社。1987年同社入社、1996年代表取締役社長等を経て2025年より現職。 |
| 猪子 昌俊 | 取締役コーポレート本部長 | 2004年同社入社。2018年執行役員、2023年経営戦略本部長などを経て2025年より現職。 |
| 前田 和寛 | 取締役テクノロジー事業本部長 | 2005年エヌ・ティ・ティ・システム開発入社。2010年同社入社、2021年執行役員等を経て2025年より現職。 |
| 宮川 秀彦 | 取締役常勤監査等委員 | 1987年日本ネットワーク入社。2006年同社入社、執行役員等を経て2022年より現職。 |
社外取締役は、大西徳昭氏(元日本郵船)、岩男玲子氏(元大東証券)、福田英明氏(元日本ユニバック)、堀田隆之氏(元ヰセキクレジット)です。
2. 事業内容
同社グループは、「システムエンジニアリングサービス事業」の単一セグメントですが、主に3つの領域で事業を展開しています。
■(1) テクノロジーソリューション事業
ServiceNowに関するコンサルティングから導入・運用までのサービス、次世代技術(AI、IoT、クラウド等)を活用したアジャイル開発等のシステム構築、インフラ環境全般の技術コンサルティングなどを提供しています。
顧客からの請負や準委任契約に基づき、システム開発や運用保守の対価として収益を得るモデルです。事業の運営は主に同社および連結子会社のシイエヌエス北海道が行っています。
■(2) ビジネスソリューション事業
金融機関および小売流通業向けの業務アプリケーション設計・開発・運用保守やデータ分析を行っています。また、一般事業会社向けに自社オリジナルブランド「U-Way」を通じたインフラ基盤からアプリ開発までのシームレスなサービスも提供しています。
システム開発の請負や準委任、クラウド型ERP導入支援などから収益を獲得しています。特にオラクル社が提供するクラウド関連サービスに強みを持ち、同社およびシイエヌエス北海道が運営を担っています。
■(3) コンサルティング事業
顧客のビジネス変革をリードするため、潜在・顕在課題を抽出して戦略を構築し、解決策までを提供するDXコンサルティングを展開しています。生成AIを活用した業務改革やデジタル人材育成などのサービスも提供しています。
コンサルティングサービスの提供により、専門的なアドバイザリー業務やデータ分析、システム開発などの一連のプロセスから対価を得ています。主に同社が事業の運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は右肩上がりの成長を続けており、毎期連続して増収を達成しています。利益面では一時的な踊り場も見られましたが、直近の期では大幅な増益を記録し、売上高・経常利益ともに過去最高水準を更新する堅調な推移を見せています。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 54億円 | 60億円 | 67億円 | 70億円 | 78億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 6億円 | 7億円 | 6億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 11.0% | 9.8% | 9.8% | 8.4% | 9.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 4億円 | 4億円 | 4億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の順調な拡大に伴い、売上総利益も着実に増加しています。利益率も安定して推移しており、増収効果によって営業利益も大きく伸びるなど、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 70億円 | 78億円 |
| 売上総利益 | 17億円 | 19億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.4% | 24.5% |
| 営業利益 | 6億円 | 7億円 |
| 営業利益率(%) | 7.9% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3億円(構成比28%)、支払手数料が2億円(同15%)を占めています。また、単体の売上原価においては経費が41億円(構成比75%)を占め、その多くが外注費となっています。
■(3) セグメント収益
テクノロジーソリューション事業は生成AI関連やシステム基盤領域の案件拡大により大幅な増収増益を牽引しました。一方、ビジネスソリューション事業は人材育成等の先行投資により利益が減少しました。コンサルティング事業はプライム案件の獲得により収益性が大きく改善しています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益(2026年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| テクノロジーソリューション事業 | 28億円 | 36億円 | 8億円 | 10億円 | 28.9% |
| ビジネスソリューション事業 | 35億円 | 35億円 | 7億円 | 6億円 | 17.8% |
| コンサルティング事業 | 7億円 | 7億円 | 2億円 | 3億円 | 34.2% |
| 連結(合計) | 70億円 | 78億円 | 17億円 | 19億円 | 24.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で生み出したキャッシュをもとに、借入の返済や事業に必要な投資を行っている健全な状態です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.0%といずれも市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 6億円 |
| 投資CF | -3億円 | -3億円 |
| 財務CF | -1億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「私たちは国際化社会の中で、社員ひとり一人の個性を尊重し、誠実を旨とし、情報技術の先進的活用により顧客企業と社会の発展に貢献する。」を企業理念として掲げています。また、「顧客に信頼される会社となる」「創造性あふれる専門家集団であり続ける」という経営方針のもと、持続可能な新しい価値の創造を目指しています。
■(2) 企業文化
「人を想う」事業やサービスを通じて社会的課題を解決し、人や社会、未来に貢献する企業グループの実現を目指しています。従業員一人ひとりの個性を尊重し、多様な人材が能力を最大限に発揮できるような環境づくりを重視しています。また、エンパワーメントの促進とイノベーションの醸成を基本方針とし、新たな分野へ躊躇なく挑戦する先取性のある文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画(2025年5月期~2027年5月期)を策定しており、最終年度における連結売上高と営業利益率を目標として掲げています。既存事業の拡大と新たな成長領域の創出を両輪として、収益力の強化を進めています。
* 連結売上高:100億円
* 連結営業利益率:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
事業基盤の強化、新たな顧客獲得による事業規模拡大、ソリューションの拡充による市場拡大などを成長戦略として掲げています。具体的には、M&Aやアライアンスの推進、高度プロフェッショナル人材の確保、オラクル社との連携によるERP事業の拡大、生成AIの活用による生産性向上などを重点施策として展開し、社会課題を起点としたビジネス創出を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業成長には優秀な人材の確保と育成が不可欠であり、働きやすい環境づくりを推進しています。一人ひとりの「考え・創り・伝える力」を磨き、ビジネスリーダーを強化するとともに、チャレンジを促す心理的安全性の確保を目指しています。また、人事制度改革を進め、成果を重視した評価制度や高度人材の認定制度の確立に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 33.8歳 | 7.0年 | 6,775,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.2% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※対象となる有期労働者を雇用していないため、パート・有期労働者の男女賃金差異は該当がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 生成AIのリスクについて
生成AIをコード生成などに活用することで生産性を高めることが可能ですが、機密情報の漏洩や著作権侵害等の懸念があります。生成AIがビジネス環境を崩すような形で活用された場合、同社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の確保、育成について
さらなる事業拡大および高付加価値サービスの提供には、高い技術力を持つエンジニアやプロジェクトマネージャーなどの優秀な人材確保と育成が不可欠です。これらが想定通りに進まなかった場合、事業計画の達成や競争力に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 大口顧客への依存に関するリスク
NTTデータグループや野村総合研究所グループなどの主要取引先に対する売上高の依存度が比較的高くなっています。これらの顧客の事業運営が変化し、取引が急激に減少した場合には、同社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。
■(4) ビジネスパートナーの確保
案件ごとの必要技術や効率性の観点から協力会社を活用しており、機会損失の低減に努めています。しかし、協力会社の確保や良好な取引関係の維持が十分に行えなかった場合、事業規模の拡大やプロジェクトの遂行に支障をきたす恐れがあります。



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