シイエヌエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シイエヌエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シイエヌエスは、東京証券取引所(グロース市場)に上場するシステムインテグレーターです。システムエンジニアリングサービス事業を単一セグメントとし、デジタル革新推進やビッグデータ分析、システム基盤構築などを展開しています。直近の業績は、売上高が70億円と増収を達成した一方、経常利益は5.9億円と減益になりました。


※本記事は、株式会社シイエヌエス の有価証券報告書(第40期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シイエヌエスってどんな会社?


シイエヌエスは、システムエンジニアリングサービスを主力とし、企業のDX推進やビッグデータ分析、クラウド基盤構築などを手掛ける独立系SIerです。

(1) 会社概要


同社は1985年に設立され、金融・通信業界向けのシステム開発を中心に事業を拡大しました。2006年にビッグデータ分析事業に着手し、2018年にはServiceNowを活用したシステム運用自動化業務を開始するなど、技術トレンドに合わせた事業展開を行っています。2021年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場を果たし、2022年には自社オリジナルブランド「U-Way」の提供を開始しました。

現在、同社グループは連結子会社1社(シイエヌエス北海道)を含む体制で運営されており、従業員数は連結で265名(単体221名)です。筆頭株主は創業者で会長の富山広己氏の資産管理会社であるN&KTで、第2位は富山広己氏本人、第3位は社長の関根政英氏となっており、経営陣が株式の多くを保有するオーナーシップの強い構成です。

氏名 持株比率
N&KT 20.64%
富山 広己 13.91%
関根 政英 6.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は関根政英氏が務めています。なお、社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
富山 広己 代表取締役会長 日本ユニバック(現BIPROGY)等を経て1987年同社入社。1996年社長就任。2015年より現職。
関根 政英 代表取締役社長 住信情報サービス(現三井住友トラストS&S)を経て1993年同社入社。2015年より現職。
小野間 治彦 取締役 1996年同社入社。シイエヌエス北海道社長等を経て、2020年管理本部長。2009年より現職。
猪子 昌俊 取締役コーポレート本部本部長経営管理統括部部長 2004年同社入社。経営戦略本部長、管理本部長等を経て、2025年より現職。
宮川 秀彦 取締役常勤監査等委員 日本ネットワーク等を経て2006年同社入社。執行役員、監査役を経て2022年より現職。


社外取締役は、大西徳昭(BIG WEST BROTHERS合同会社代表)、福田英明(福田英明税理士事務所所長)、堀田隆之(堀田隆之税理士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システムエンジニアリングサービス事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) デジタル革新推進事業


企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するための技術ソリューションを提供しています。具体的には、ServiceNow製品を活用したシステム保守・運用業務の変革や、データベースのアクセス性能改善コンサルティングなどを手掛けています。NTTデータなどのパートナー企業と連携し、データベース技術のコンサルティングや性能設計・チューニングなども行います。

収益は、顧客企業からのシステム開発やコンサルティングに対する対価として得ています。運営は主にシイエヌエスが行っています。

(2) ビッグデータ分析事業


企業に蓄積されたユーザー情報や行動ログなどのビッグデータを活用し、ビジネス課題を解決する事業です。分析モデルの作成から実施、結果に基づくビジネスアクションの提案までを行います。通信、金融、流通など幅広い分野で実績があり、SAS Institute Japanとパートナー関係にあります。

収益は、データ分析業務や予測モデル構築などの役務提供に対する対価として得ています。運営は主にシイエヌエスが行っています。

(3) システム基盤事業


業務システムやEC、SNSなどのサービスに必要なコンピュータやネットワークなどのITインフラを構築・運用支援する事業です。AWSやOCI(Oracle Cloud Infrastructure)などのクラウド技術に強みを持ち、導入提案から構築、運用までを支援します。自社ブランド「U-Way」によるクラウド導入支援サービスも展開しています。

収益は、インフラ構築や運用支援、自社サービスの導入支援に対する対価として得ています。運営は主にシイエヌエスが行っています。

(4) 業務システムインテグレーション事業


顧客のビジネス課題に応じたシステムの企画、要件定義、開発、運用までをトータルで支援する事業です。特に金融業界の信用リスク管理や規制対応、流通業界の顧客管理・販売管理などの領域で実績があります。アプリケーション開発を通じて、個別の業務ニーズに対応します。

収益は、システム開発や運用・保守業務に対する対価として得ています。運営は主にシイエヌエスが行っています。

(5) コンサルティング事業


DXの企画・戦略フェーズから参画し、ビジネス変革までを伴走支援する事業です。DX戦略カルテを用いた課題抽出や戦略策定、生成AI活用コンサルティングなどを提供しています。また、ITリテラシー教育やデジタル人材育成の支援も行っています。

収益は、コンサルティングサービスや教育・研修に対する対価として得ています。運営は主にシイエヌエスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、48億円から70億円規模へと成長しています。一方、利益面では経常利益が5〜6億円台で推移しており、売上高の拡大に伴う利益の伸びはやや緩やかです。直近期では増収ながらも減益となっており、利益率は低下傾向にあります。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 48.4億円 54.2億円 59.9億円 66.6億円 70.0億円
経常利益 4.9億円 5.9億円 5.9億円 6.5億円 5.9億円
利益率(%) 10.1% 11.0% 9.8% 9.8% 8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.0億円 3.6億円 3.7億円 4.3億円 3.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高は増加していますが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減少しています。特に売上原価の増加率が売上の伸びを上回っており、利益率を圧迫する要因となっています。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 66.6億円 70.0億円
売上総利益 16.4億円 17.1億円
売上総利益率(%) 24.6% 24.4%
営業利益 6.2億円 5.6億円
営業利益率(%) 9.3% 7.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.4億円(構成比29.4%)、支払手数料が1.4億円(同11.8%)、役員報酬が1.3億円(同11.3%)を占めています。人件費や業務委託関連の費用が主なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


各事業区分の売上動向を見ると、デジタル革新推進事業がServiceNow関連の受注増により大きく伸長しています。ビッグデータ分析事業も体制拡大により増収となりました。一方、コンサルティング事業は体制縮小の影響で減収となりましたが、全社的には主力事業の堅調な推移により増収を確保しています。なお、同社は単一セグメントのため、利益の内訳データはありません。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期)
デジタル革新推進事業 18.2億円 22.0億円
ビッグデータ分析事業 11.4億円 13.3億円
システム基盤事業 17.8億円 18.1億円
業務システムインテグレーション事業 15.2億円 15.4億円
コンサルティング事業 4.0億円 1.2億円
連結(合計) 66.6億円 70.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の儲けを示す営業CFがプラスである一方、将来への投資(投資CF)と借入返済や配当(財務CF)にお金を使っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。営業活動で得た資金を、定期預金や敷金等の投資および株主還元に充当しています。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 5.6億円 4.4億円
投資CF -0.8億円 -2.7億円
財務CF -1.3億円 -1.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは国際化社会の中で、社員ひとり一人の個性を尊重し、誠実を旨とし、情報技術の先進的活用により顧客企業と社会の発展に貢献する。」を企業理念として掲げています。技術力を通じて顧客と社会に貢献しつつ、社員の個性も尊重する姿勢を示しています。

(2) 企業文化


同社は経営方針として、「顧客に信頼される会社となる」「創造性あふれる専門家集団であり続ける」「社会への貢献、個人への還元バランスをはかる」の3点を掲げています。専門性を高めつつ、顧客からの信頼と社会貢献、そして社員への還元をバランス良く追求する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年5月期から2027年5月期までの中期経営計画において、最終年度に以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:100億円
* 営業利益率:10.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は中期経営計画の達成に向け、高度プロフェッショナル人材の登用やERP・生成AI領域の強化を進めています。また、グローバルネットワークの構築や新規顧客開拓により事業規模の拡大を図るとともに、Oracle ERP等への参入でソリューションを拡充する方針です。社会課題を起点としたビジネス創出にも注力しています。

* 2026年5月期 売上高:83億円
* 2026年5月期 営業利益:5.6億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は優秀な人材の確保と育成を不可欠とし、働きやすい環境づくりと能力向上のための研修や資格取得支援を推進しています。特に高度IT人材の不足に対応するため、評価制度の構築や高度人材の認定制度の確立に取り組んでいます。また、フルテレワーク制度の導入など、働き方の多様化も促進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 32.7歳 6.0年 6,839,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新と市場環境の変化


情報サービス業界は技術革新が速く、新しい技術やサービスが次々と生まれています。同社グループは最新技術の習得やエンジニアの育成に努めていますが、想定を上回る急激な技術革新や市場環境の変化に適切に対応できない場合、事業競争力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材およびパートナーの確保・育成


事業拡大には優秀なエンジニアやプロジェクトマネージャーの確保が不可欠ですが、IT人材の獲得競争は激化しています。また、開発案件では協力会社の活用も重要です。必要な人材や協力会社を十分に確保・育成できない場合、受注機会の損失やプロジェクトの品質低下を招く恐れがあります。

(3) 特定の大口顧客への依存


同社グループの売上高において、NTTデータグループや野村総合研究所グループなどの特定の大口顧客への依存度が高くなっています。これらの顧客との取引拡大を図りつつも、他顧客の開拓を進めていますが、大口顧客の事業方針変更や取引縮小が生じた場合、同社の業績に大きな影響を与える可能性があります。

(4) 情報セキュリティとシステムトラブル


顧客の機密情報や個人情報を多く取り扱っており、サイバー攻撃やシステムトラブルによる情報漏洩のリスクがあります。また、システム開発における不測の事態による品質低下や納期遅延、長時間労働の発生などもリスク要因です。これらが発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。